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ファリーダ・レムーシ
(モラセス)独占インタビュー 

私はいろいろな本を読むし
イデオロギーや哲学にも興味がある
新しいことを学べば
ものの見方も変わってくるし
私は何にも属さないし、自由なのよ(笑)

                                   

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文:川嶋未来 Photo by:Ryannevan Dorst

今や伝説とも言えるオランダのサイケデリック・オカルト・バンド、ザ・デヴィルズ・ブラッドのメンバーが再結集。新バンド、モラセスとしてアルバム・デビューを果たす。いきなり2枚組の大作で、プログレあり、クラシックあり、ジャズあり、メタルありと、そのスタイルを形容するのは容易ではない。ザ・デヴィルズ・ブラッド時代からヴォーカリストを務めてきたファリーダ・レムーシに色々と話を聞いてみた。ちなみの彼女の弟、セリム・レムーシはザ・デヴィルズ・ブラッドのリーダー兼ギタリストであり、バンド解散後に自殺をしてしまっている。

 

 

― まず、ザ・デヴィルズ・ブラッドの解散について教えてください。解散の理由は何だったのでしょう。

 

ファリーダ:申し訳ないけど、詳細については触れたくないわ。昔のことだし、理由もたくさんあって、話したくないの。とにかく解散してしまった。

 

ー ではモラセスの結成の経緯はいかがでしょう。ロードバーンへの出演がきっかけだったのでしょうか。

 

ファリーダ:ロードバーンのウォルターが私たちそれぞれに連絡をしてきて、ロードーバーン用に何か特別なものをプレイする気はあるかと。最初はそれだけで終わりのはずだったの。だけど、結局リハーサルをして新曲を書いて。とても楽しかったし、しっくり来たから、ロードバーンでプレイした後、バンドとしてやっていこうと決めた。だから、ロードバーンがトリガーなのは間違いないわ。

 

― 「モラセス」(=糖蜜)というバンド名にしたのはなぜですか。あなたのソロの楽曲名であるとのことですが。

 

ファリーダ:モラセスというのはいくつかの意味において非常に象徴的な名前。ザ・デヴィルズ・ブラッドというバンドは弟とやっていたわけだから、私にとってとても大切で愛しいもの。糖蜜というのはとても濃くてベタベタしていて、簡単には取り払えないものでしょう。これは、数年間の休止のあとも再び集まってバンドをやっているという私たちを象徴しているわ。過去の歴史が常に後ろにピッタリとついて回っているということ。仮にそれを望まないとしても。

 

ー モラセスの音楽は、ザ・デヴィルズ・ブラッドの続きと言えるでしょうか。それともまったく別の新しいものなのでしょうか。

 

ファリーダ:モラセスでやっていることは、いかなる点においてもザ・デヴィルズ・ブラッドの続きではないわ。ザ・デヴィルズ・ブラッドはかつて存在し、今はもう無いバンド。解散後いろいろなことが起こった。私たちもいろいろなバンドをやった。Selim Lemouchi & His Enemiesとか。だから、ザ・デヴィルズ・ブラッドの続きではない。まったく新しく、違うものよ。

 

ー モラセスの音楽を形容するのは非常に難しいのですが、具体的にどんなバンド、ジャンルから影響を受けているのですか。

 

ファリーダ:(笑)。確かに説明するのは難しいわね。たくさんのバンドから影響を受けている。私も含め、みんな様々な音楽を聴いているし。ドラマーとキーボーディストはまったく違ったバックグラウンドを持っているし。

 

― どんなバックグラウンドですか。

 

ファリーダ:彼らはもっとジャズ寄りのミュージシャンで、音楽学校を出ているような人たち。もちろん私たちにはメタルのバックグラウンドもあるし、あまりにいろいろありすぎて、バンド名を挙げるのも難しいわ。その中のいくつかだけを挙げるというのもバカみたいだし。

 

― では、あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのでしょう。

 

ファリーダ:私は小さい頃からいつも歌っているような子だった。フルートもやったり、母親と一緒にいろいろなことをやっていたわ。大きくなってからは自分でレコードも買ったし、向かいに住んでいたずっと年上の男の子がよくミックステープを作ってくれた。母親が所有していたクイーンやイエス、ケイト・ブッシュのレコードなんかも聴いていた。そうそう、もらったミックステープにはモーターヘッドやレインボー、アクセプトなんかが入っていて、それで新しい世界が開けた感じだった。いつも音楽をやっていたの。たくさんのバンドもやったわ。ここで名前を挙げるほど、真面目なバンドではないけれどね。その後、弟がザ・デヴィウルズ・ブラッドを始めて、私もそこで歌うようになって。

 

― お気に入り、影響を受けたシンガーは誰でしょう。

 

ファリーダ:ロニー・ジェイムズ・ディオは、いつでも私のトップリストにいるシンガー。あとはフレディ・マーキュリー。おそらくこの2人が地球上で最高のシンガーだと思う。多分だけど(笑)。彼らは歌いかただけではなく、動きなども優れているし。彼らから学んだことは多いわ。

 

― お気に入りのバンドはどのあたりですか。

 

ファリーダ:それも難しいわ。常に変わるから。1つのバンドを挙げるとしたら、ワテインは大好き。ダークスローンも好き。イン・ソリチュードも大好きだったけれど、解散してしまって悲しい。あと、60年代や70年代の音楽も聴く。

 

― 例えば?

 

ファリーダ:ロッキー・エリクソンとか、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングとか。

 

ー ザ・デヴィルズ・ブラッドはブラック・ウィドウやコヴェンみたいなサタニックなバンドからの影響を指摘されていましたが、こういうバンドからの影響はあるのですか。

 

ファリーダ:あると思うわ。たくさんのバンドから影響を受けているけれど、それらのバンドからの影響もあると思う。

 

 

ー モラセスの音楽を無理やりにでもカテゴライズするとしたらどうなるでしょう。

 

ファリーダ:うーん、わからないわ。とても難しい。あなたはどう思う(笑)?プログレだという人もいるし。ただ私たちが作っている音楽以上のことはわからないわ。モラセスとしか言いようがない。

 

ー ではメタルをプレイしているという意識はありますか。

 

ファリーダ:いえ、私たちはメタルをプレイしているとは思わない。もちろんメタルからの影響はあるけれど。でもプレイしているのがメタルというジャンルかというと、間違いなく違うわ。

 

― やはりプログレッシヴ、サイケデリックとしか言いようがないのでしょうか。

 

ファリーダ:サイケデリックという描写は正しいと思う。サイケデリックな要素はたくさんあるわ。メタルな要素やダークな要素もあって、新しいジャンル名を考えないといけないわね(笑)。

 

ー ドラッグからの影響もあるということでしょうか。

 

ファリーダ:私たちはみんなサイケデリックなドラッグの経験はあるけれど、大量にLSDを摂取してリハーサル・ルームに行って曲を書く、みたいなことはしていないわ。私たちの曲にはメンバーそれぞれの過去の体験が反映されているから、その中にドラッグもあるとは言えるわ。

 

ー ジャズへの言及がありましたが、モラセスはメタル以外からの影響も大きいのでしょうか。

 

ファリーダ:私はいろいろな音楽を聴くから、クラシックも好き。マーラーも好きだし。ディアマンダ・ギャラスなんかも聴く。何でも聴く。私は魂のある音楽は何でも好き。リアルで本物の音楽ならね。そういうものであれば、感ずるものがあるし、スタイルはどんなものでも構わない。私はただのメタル・ガールではないから。さまざまなスタイルがあるというのが音楽の素晴らしいところよ。

 

― あなたの歌唱には民族音楽的なものを感じることがあるのですが。

 

ファリーダ:うーん、何と言えばいいかしら。私はアラブ系の血筋だから、アラブの音楽も聴く。だからその影響が感じられるのかもしれない。キッチンに座ってヴォーカルラインを考えている時、ギタリストのウズが、えーと、英語で何と言うのかしら、ちょっとグーグルで調べてみる。そう、スケール。アラブのスケールはまったく違ったものでしょう。時々そういうものを試してみることはあるわ。だけど、基本的に私のヴォーカルは常に直観的なものよ。まずインプロしてみて、あとからこれは良いとか決めていく感じ。

 

― 曲が非常に長く、アルバムも2枚組です。これは、例えば世界観を表現するにあたって、曲は長くなくてはいけないというような意図に基づいているのでしょうか。

 

ファリーダ:まったく意図的なものではない。少なくとも私たちは意図的に音楽を作るタイプではないの。曲を書いてリハーサルをして、もっと何かが必要だと感じたり、これで完成だと感じたり、気づいたらいくつかの曲が10分になっていたというだけ。わざと長くしようとしたわけではない。自然になったのよ。

 

 

 

ー アルバムのテーマは何ですか。

 

ファリーダ:テーマは、さっき説明した簡単には取り払えないという糖蜜の性質とも関係していて、人生で経験しなくてはいけなかった喪失や悲しみ、暗い出来事との戦いとか。諦め、つらいことを振り払い、より強くなるために先へ進んで行くことすること。今私たちがいるところへ来るために、進まねばならなかった道を象徴しているわ。

 

ー コンセプト・アルバムなのでしょうか。

 

ファリーダ:いえ、コンセプト・アルバムだとは思わない。

 

ー アートワークはとても幾何学的ですよね。これは何を表しているのでしょう

 

ファリーダ:これもとても自然に出来上がったもので、このアートワークを描いたのは私のいとこなの。彼とはとても親しくて、たくさんのことを話し合った。彼にとってもセリムの死は非常に大きかった。彼とは人生において同じテーマを持っていて、このアルバムを作り始めた頃から彼は関わっていて、このアートワークは彼なりにこのアルバムを表現したもの。これが何を表しているのかを説明しようとするのは奇妙に感じるわ。というのもあのアートワークはそれ自体しかなくて、あれを見て他の人々がどう感じるかの方が興味深いから。曲を聴いて、アルバムを体験して、そしてあのアートワークがリスナーにどう見えるか。

 

 

― あなたはかつて、Mouth of Satanを自称していました。ご自分をサタニストだと考えますか。

 

ファリーダ:確かに私はザ・デヴィルズ・ブラッドにおいてはMouth of Satanだった。だけど、今は違う。私自身のことはいかなる名前でも呼ばない。私はいろいろな本を読むし、イデオロギーや哲学にも興味がある。新しいことを学べば、ものの見方も変わってくるし。私は何にも属さないし、自由なのよ(笑)。

 

ー モラセスに近いバンドを思いつかないのですがが、親近感を感じるバンドはいますか。

 

ファリーダ:音楽的に?ということであれば、ロードバーンに出るようなバンド、例えばオランシ・パズズなどは最高だし、音楽の作り方も近い部分もあると思う。彼らはブラック・メタルだけれど、サイケデリックだし。

 

― 今後の予定を教えてください。

 

ファリーダ:アルバムをリリース後、トリビュレーションとベルザーとツアーをする予定。実現すると良いのだけど(笑)。どうなるかしらね。曲も作り続けているので、次のアルバムも作るかもしれない。とりあえず続けて、どうなるかを見てみるわ。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください

 

ファリーダ:そうねえ(笑)。今日何を聴いていたかにしましょう。今日聴いていたのはルート。

 

ー チェコのですか?

 

ファリーダ:そうよ。大好きなの。歌が本当に素晴らしい。あとは、何だったかしら。ごめんなさい、今日二日酔いが酷くて(笑)。頭が回らないの。ロッキー・エリクソンの新しいやつ。

 

ー ブラック・メタルが好きなのですか。

 

ファリーダ:いつも聴いているというわけではないけれど、気分によってね。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ファリーダ:アルバムを気に入ってもらえると嬉しい。まだ日本に行ったことがないから、ぜひ一度行ってみたい。ファンが気に入ってくれたなら、日本でプレイするのも素晴らしいわ。

 

 

文 川嶋未来

 

▶︎ウズ・ベイダルス(ギター) インタビューはこちら


 

 

2020年10月16日 世界同時発売

モラセス

『スルー・ザ・ホロウ』

CD

【CD収録曲】
[DISC1]

  1. スルー・ザ・ホロウ
  2. ゲット・アウト・フロム・アンダー
  3. フォームレス・ハンズ
  4. コープス・オブ・マインド
[DISC2]
  1. ザ・メイズ・オブ・スタグナント・タイム
  2. アイ・アム・ノー・ロンガー
  3. デス・イズ
  4. トンネル
  5. ザ・デヴィル・リヴス

 

【メンバー】
ファリーダ・レムーシ(ヴォーカル)
ウズ・ベイダルス(ギター)
ロン・ファン・ヘルペン(ギター)
ヨブ・ファン・デ・ザンデ(ベース)
マタイス・ストロンクス(キーボード)
ボブ・ホーゲネイスト(ドラム / パーカッション)