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ウズ・ベイダルス
(モラセス)独占インタビュー

モラセスの音楽はまったく新しいものだし
まったく違った新しいバンドとも言えるね
フレッシュな内容さ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by:Ryannevan Dorst

そしてこちらは現モラセス、ザ・デヴィルズ・ブラッドのギタリスト、ウズ・ベイダルスのインタビュー。

ヴォーカリスト、ファリーダのインタビューと併せて読んで頂きたい。

 

 

ー モラセス結成の経緯を教えてください。きっかけはロードバーンへの出演でしょうか。

 

ウズ:ザ・デヴィルズ・ブラッドが解散したあと、俺たちは一緒にプレイすることはなかった。もちろん頭の中では、いつかまた何かを一緒にやれたらいいな、とは考えていたのだけど。だけど、各自それぞれが忙しくてね。ところが、ウォルター(ロードバーンのプロモーター)のおかげで、突如道が開けた。だから、ロードバーンが大きなトリガーであったことは間違いない。ロードバーンがなければ、まだこのバンドはスタートしていなかっただろうね。いずれはやっていたかもしれないけれど、ロードバーンのおかげで早まったと言える。

 

ー モラセスはザ・デヴィルズ・ブラッドとは違うバンドと捉えるべきなのでしょうか。

 

ウズ:過去に作った、演奏していた音楽というのは、その人のDNAに刻まれると感じている。だからモラセスも同じさ。一方で、モラセスのメンバーは、ザ・デヴィルズ・ブラッドでは曲を書いていなかったし、ザ・デヴィルズ・ブラッドに参加していなかったメンバーもいる。だからダイナミクスはまったく違ったものだ。そういう意味で、モラセスの音楽はまったく新しいものだし、まったく違った新しいバンドとも言えるね。フレッシュな内容さ。

 

― 非常にプログレッシヴな印象を受けますが、どのような音楽、バンドから影響を受けているのですか。

 

ウズ:メンバーがそれぞれ違ったものを持ち寄っているからね、とても多様なものになっているよ。俺たちは様々な音楽のスタイルに対してオープンだし、それぞれが違ったバックグラウンドを持っている。俺はもともとパンクとクラシックがバックグラウンドなんだ。色々なものが持ち込まれているから、アルバムにも様々な要素が入っている。

 

ー モラセスの音楽を言葉で説明するとしたらどうなりますか。

 

ウズ:お互いを結びつけるためのツール。神やエネルギーなど、音楽無しでは到達できないものへと至るツール。音楽的なテクニックというものには興味がない。自分たちの表現したいもの、フィーリングを正しく音楽で表現できれば良いんだ。

 

― では無理やりにでもカテゴライズするとしたらどうでしょう。

 

ウズ:それは難しいな。たいていはどう呼ぶかは他人に任せているよ。カテゴライズはビジネスに属するものだからね。俺たちアーティストがやるものではなく、ビジネス的にどうやって作品を売るかに使われるものだから。俺がやるべきことではない。人々が「プログレッシヴ」、「サイケデリック」だと呼ぶならば、俺はそれで構わないよ(笑)。

 

― 具体的に影響を受けたバンドはどのあたりですか。

 

ウズ:過去にやってきたバンド、プロジェクトから学んだことは多い。俺はセリム(ザ・デヴィルズ・ブラッドのリーダー)からも多くを学んだからね。入った時、俺はまだ若かったし。音楽教育という点で、ザ・デヴィルズ・ブラッドにおける経験は大きいものだった。パンクとクラシックがバックグラウンドの俺が、70年代の音楽、それからマグマやキング・クリムゾンから影響を受けたバンドをやるようになったんだ。長い道のりを経て、あらゆるものに対してオープンにやってきたんだよ。

 

ー パンクというのは具体的には?

 

ウズ:70年代のイギリスのパンクから、80年代のハードコアだね。バッド・ブレインズやポイズン・アイデアとか。もっと古いMC5とかも。若い頃はそういうのが大好きだった。

 

 

 

ー デビューでいきなり2枚組は珍しいですよね。

 

ウズ:確かにそうだね(笑)。だけど、みんなで相談して「長い曲を書こう」と決めたわけではない。言いたいことが多くて曲が長くなったり、曲自身の行き着くところに任せた結果が長くなったり。合理的に考えたものじゃないよ。あくまで曲の自然の流れに任せただけ。

 

― 曲を絞って一枚にしようという案はなかったのですか。

 

ウズ:それはない。アート自身に語らせたいからね。そんなことをするのは、自らを切り刻むようなもの。可能な限りピュアなフォームで作品を発表したかった。

 

― 曲や歌詞は誰が書いているのでしょう。

 

ウズ:歌詞はファリーダと俺が中心となって、お互いを補完するように、お互いの言いたいことをきちんと伝えて書いた。曲はロンと俺がフレームワークを設定して、それぞれが自らのパートのアレンジメントを仕上げる感じだった。だから、全員のコラボレーションと言えるね。

 

― 歌詞の内容はどのようなものですか。

 

ウズ:音楽無しで説明するのは難しいな。過去からの旅。ザ・デヴィルズ・ブラッドが解散してからのファリーダ、そして俺たちが経験した旅。セリムの死であるとか、なかなか表現できなかったものを、やっと表現する声を見つけたというのかな。こういった旅がテーマの中心で、フィーリングであるとか、アルバム内の様々なレヴェルで語られている。

 

― 個人的な内容ということでしょうか。

 

ウズ:深い部分で言えば、個人的なテーマと言えるだろうね。ただ、オープンに書かれているから、読んだ人がそれぞれの解釈をすることが可能だし、自らの人生と関連するものを見つけ、共感することはできると思う。

 

ー アートワークは非常に幾何学的で抽象的ですが、何を表しているのですか。

 

ウズ:アートワークも、見たものによって違った解釈ができるものだ。俺はレコードのフィーリングにダイレクトにつながるものを感じるよ。色合いもとてもあっているし。アルバムはある意味探求なので、アルバムを聞いたりアートワークを見たりした人が、内容について考えるトリガーになりうるだろう。

 

 

― あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのでしょう。先ほどパンクとクラシックという話が出ましたが、この2つは対照的なスタイルですよね。

 

ウズ:もともとはチェロをプレイしていたんだ。その後、自分のエネルギーを放出する手段が欲しくてギターを始めた。ギターは完全に独学で、バンドも始めた。パンクロックは自分自身を見つける手段だったし、ヨーロッパには素晴らしいシーンもあった。14歳や15歳の頃にはツアーをしていたよ。バンドをやって自分たちの曲を作るにはどうすれば良いかを学んだ。それからデヴィルズ・ブラッドに加入して、もっと真剣にバンドをやるようになったんだ。確かに君の言うとおり、パンクとクラシックというのは対極にある音楽だよね。だけど、そのどちらもが1つの流れとして俺の中にあるんだ。

 

― 今おいくつですか。

 

ウズ:32だよ。

 

― その若さでバッド・ブレインズやポイズン・アイデアのようなバンドを知るきっかけは何だったのでしょう。

 

ウズ:アムステルダムにはスクワットのシーンがあってね。たくさんライヴをやっていて、そういうところに行くと、いろいろなTシャツを着ている人がいるんだ。それで古いバンドをいろいろと知った。確かにこれらのバンドは、ポピュラー・ミュージックではないからね(笑)。

 

ー プライベートではクラシックも聴くのですか。

 

ウズ:若い頃は聴かなかった。クラシックはプレイするもので、聴くのはメタルやパンクばかりだった。ところが、今はそれがすっかり反対になっているんだ。プレイするのはヘヴィなもので、聴くのはクラシックがメインなんだよ。逆転しているんだ。

 

― どのような作品を聴くのでしょう。

 

ウズ:最近はペンデレツキにハマってる。

 

― なるほど(笑)。

 

ウズ:俺は不協和音や暗い音楽が好きだからね。自分たちの音楽にも影響が現れていると思う。

 

ー モラセスの音楽にペンデレツキからの影響があると思いますか。

 

ウズ:まあ聴いているものはダイレクトではないにしても、何らかの形で作る音楽に影響を与えるだろうからね。はっきりとはわからなくても、影響はあるのだと思うよ。

 

ー ザ・デヴィルズ・ブラッドはブラック・ウィドウやコヴェンといった古いサタニックなバンドからの影響が指摘されていましたが。

 

ウズ:うーん、そのあたりのバンドがデヴィルズ・ブラッドに音楽的に影響を与えていたのかはよくわからないな。ものの考え方みたいな点での影響はあったかもしれないけど。だけど、個人的にはそれは古典的なサタニックなオカルトである必要はないと思ってるし、音楽としては悪くないけど、それほど興味深いものではないから。

 

― ではどんなバンドからの影響があったと言えるでしょう。

 

ウズ:俺は曲を書いていなかったから、はっきりと答えることはできないけれど、聴いてみるとロッキー・エリクソンやアイアン・メイデン、ホークウィンド、ウィッシュボーン・アッシュなんかの影響があるように思う。70年代のヘヴィなもの、60年代のポップでサイケデリックなものからの影響が大きいと思う。ブラック・メタルからの影響もある。

 

ー バンド名はワテインの曲名からとられたんですよね。

 

ウズ:そう。ブラック・メタルは破壊的なタッチのある音楽だから。甘い曲だと思っても、一皮剥けばね。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ウズ:それは難しいな。そうだね、マグマの最新アルバムはとても気に入っている。あれはとても深くて扱われているトピックにも共感できる。オーケストレーションも素晴らしい。これ1枚で3枚分の価値があるよ(笑)。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ウズ:アルバム聴いてくれ。いつかぜひ日本でもプレイしたいね。

 

 

文 川嶋未来

 

▶︎ファリーダ・レムーシ(ヴォーカル) インタビューはこちら


 

 

2020年10月16日 世界同時発売

モラセス

『スルー・ザ・ホロウ』

CD

【CD収録曲】
[DISC1]

  1. スルー・ザ・ホロウ
  2. ゲット・アウト・フロム・アンダー
  3. フォームレス・ハンズ
  4. コープス・オブ・マインド
[DISC2]
  1. ザ・メイズ・オブ・スタグナント・タイム
  2. アイ・アム・ノー・ロンガー
  3. デス・イズ
  4. トンネル
  5. ザ・デヴィル・リヴス

 

【メンバー】
ファリーダ・レムーシ(ヴォーカル)
ウズ・ベイダルス(ギター)
ロン・ファン・ヘルペン(ギター)
ヨブ・ファン・デ・ザンデ(ベース)
マタイス・ストロンクス(キーボード)
ボブ・ホーゲネイスト(ドラム / パーカッション)