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角松敏生ワークス-GOOD DIGGER-
発売記念
独占インタビューVol.2

自分の作品より愛が強いかもしれない。
1曲1曲に詰まっている思い出やドラマが甦りました。
だから、プロデュースワークスはどこを切り取ってもらっても構いません。どれも自信作です。

RELEASE INFO

文:藤井徹貫

もうひとつの角松敏生ヒストリーとも言える『角松敏生ワークス -GOOD DIGGER-』(7月22日発売)。プロデュースワークにスポットを当てたコンパイルアルバム(CD2枚組)。前回は、本作の意義や角松流プロデューサー哲学を聞かせていただいたが、今回は…。プロデューサー角松敏生史上、避けては通れぬ出来事、<三大ビックリ>にも言及。

 

──DISC2は、西城秀樹さんの52枚目のシングル曲「BEAT STREET」から始まりますね。吉田美奈子さんのコーラスが歌の世界を広げていると思いました。

角松:そうですね。そういう作品にするのがプロデューサーとしての狙いでもありました。美奈子さんには文学があるから、ご自分で歌われると、「これは私が書いた言葉です」という印が見えるというか。匂いがするというか。その有無が作品を豊かにするわけです。もちろん秀樹さんのファンの中には「吉田美奈子って誰?」という方もいらっしゃったと思います。それでも、美奈子さんのコーラスが入っていることにより、絶対に特別な響きに聴こえていたはずです。秀樹さんの声を聴きながらも、美奈子さんの声も渾然一体となって耳に入っていたはずで、その点では、僕がメロディとトラックを作り、美奈子さんが歌詞を書き、コーラスを入れ、秀樹さんが歌うと、こういう面白い作品になるとイメージしたとおりの曲になりました。

 

──「BEAT STREET」をはじめ、トラック・ダウン(ミックス)もプロデュースの範疇ですか?

角松:はい。特に80年代は、エンジニアの隣に貼りついて、フェーダーをいじっていました(笑)。あの時代は、特に最重要視していました。ケース・バイ・ケースですが、「ヴォーカル・ディレクションとトラック・ダウンまでやらせてもらえますか」と、そこまでやらせてもらうのが、プロデュースを引き受けるときの条件にさせてもらっています。

 

──だから、すべての本作収録曲が角松印なんですね。

角松:前回もお話した「僕がやるなら、こうなっちゃいますけど、大丈夫ですか?」の一環ですね。

 

──本作で重要な位置を占めているのが杏里さんの作品。

角松:僕がデビュー時に所属していた事務所を辞めたとき、杏里が所属していた事務所に移籍したのが縁でした。そして、82年の杏里のアルバム『Heaven Beach』に3曲くらい書きました。でも、作詞と作曲をやっただけで、そのアルバムのアレンジは瀬尾一三さんでした。当時、僕は2枚目のアルバムを出したばかりの、まだ修行中の身だったので、すでに音楽プロデューサーとしてのポジションを築いていた瀬尾さんの仕事ぶりを見て勉強させていただきました。次の年、83年、「CAT’S EYE」が大ヒットした直後、「杏里をプロデュースしてくれないか?」という話が持ち上がりました。ナンバー・ワン・ヒットの次作だから、もの凄いプレッシャーでした。そのとき、大好きなアリフ・マーディンが脳裏をよぎりました。当時、人気だったテレビ番組『ザ・ベストテン』で1位になるような曲を書けるか?と自問しました。答えは、「無理」でした。なので、<この人なら>と思った作詞家と作曲家に依頼しに行きました。作詞家は康珍化さん。70年代末から活躍されていた方で。

 

──1985年に中森明菜「ミ・アモーレ」で日本レコード大賞を受賞することになる作詞家。

角松:康さんには「彼氏に友達を紹介したら、その友達に彼氏を取られちゃった女の子のストーリーを書いてください」とお願いしました。作曲家は林哲司さん。「今、モータウン的な音が面白いと思っているので、それっぽいメロディの曲をお願いします」と。その詞と曲を僕がアレンジして、ミックスしたのが「悲しみが止まらない」です。秀逸な才能を配して最後の仕上げを自分自身が行うことで面白いものを作る、という意味では、秀樹さんの「BEAT STREET」や「SWEET SURRENDER」とも似た手法です。

 

──プロデューサーとしての読みが的中したわけですね。

角松;はい。だから、次のアルバム『Timely!!』は、僕の好きにやらせてもらえました(笑)。「CAT’S EYE」と「悲しみが止まらない」のヒット曲が入っているから、セールス的にも間違いないので。アルバムは角松色一色。このコンパイル盤でも聴くことができる「WINDY SUMMER」は、そのアルバムの収録曲です。彼女は、素晴らしいシンガーです。でも、先ほども言ったとおり、僕のプロデュースの中には、ヴォーカル・ディレクションも含まれますから。僕があまりにも何回も歌い直させるので、嫌気がさしていたかもしれません(笑)。杏里の凄さのひとつは、彼女には彼女なりのスタイルがあり、彼女なりの合格ラインがあるはずなのに、僕のプロデュースだから、僕のリクエストに誠実に応えてくれるその真摯な姿勢です。

 

 

──チアキさんの「いのち」は、ピアノ1台だけの伴奏ですね。角松印において重要なアレンジの占める割合が極端に小さくなるわけですが…。

角松:僕がヴォーカルに自信が持てるようになった頃から、角松敏生名義でもピアノだけという作品も出しています。純粋に歌詞とメロディだけを聴かせたいときは、そういう形にする場合があります。しかし、やはり歌唱する人の力量次第という側面もあります。チアキだからこそやったというか、やれたトラックです。

 

──本作には、インストゥルメンタルも含まれています。角松さん名義でもインスト・アルバムを発表されていますし、歌ものとインストは、音楽活動の両翼的な存在でしょうか?

角松:僕は、ギターを弾きたくて、この世界に入ったところもありますから。楽器の重要性を常に意識してきました。同時に、僕は自分の歌に失望していましたから(笑)、デビュー当時は。ギターも歌も中途半端なままデビューしてしまったから、デビューしてからが大変でしたし、日々研鑽でした。80年頃の角松敏生は、アイデアはそこそこ秀でていたかもしれませんが、実力はありませんでした。だから、すべてのレコーディングが学びの場。歌に自信を持てるようになったのは、30年以上経ってからです(笑)。

 

──歌にもギターにも自信が持てるようになると、より自由自在・縦横無尽になれますね。

角松:いや、やはり試行錯誤です。ある程度の自信を持てた分、自分に課すハードルも高くなりましたから。先ほど、<両翼>という言葉を使われましたが、それは違います。歌のバッキングにしても、各プレイヤーの演奏技術があった上でのアレンジです。スタジオアートという意識ですから。作曲者・アレンジャー・プレイヤー・エンジニアなどの総力戦みたいな発想は、歌ものもインストも同じです。かつて消費者のみなさまも、間奏でギター・ソロやサックス・ソロが出てくると、「あの曲のあのソロが格好いい」と評価してくださっていたわけです。だから、歌手のレコードであっても、ミュージシャンのクレジットを見てしまったり。今、そういうのはない(笑)。僕らは、「あのソロ凄いね」とか、「あのフレーズ格好いい」とか、それありきの曲作りなので、歌ものであろうと、その中にはインストが含まれているんですよ。両翼と言うほど、分かれていません。一体です。

 

 

──本作中、もっとも「なぜ僕なんですか?」と思われた作品は、どれですか?

角松:「角松さんにプロデュースをお願いします」という案件の、三大ビックリが布施明さん・JIMSAKU・中山美穂さんでした。JIMSAKUは、櫻井哲夫さんから突然、電話がかかってきて。「次のアルバム、プロデュースしてくれないかな」と。意表を突かれました(笑)。中山美穂さんも、当時まだ10代だった彼女自身のご指名とうかがいビックリしました。プロデュースとしては、少し背伸びをして大人の仲間入りをしようとしているハイティーンの女の子を意識して、それが当時の彼女とうまく重なったと思います。三大ビックリのもう一人が布施明さん。

 

──本作収録の布施明 MEETS KADOMATSU「 IF YOU LOVE SOMEBODY」がそうですか?

角松:はい。布施さんからのご指名でした。秀樹さんは距離感が近かったので、「角松君、書いてよ」という流れでしたが、布施さんとはまったく接点がなかったので驚きました。うかがったところでは、僕の「君をこえる日」をラジオでたまたま聴いたそうです。布施さんいわく「この曲は僕が歌うべきだ」とおっしゃっていました。ですから、まずは「君をこえる日」のレコーディングをしました。その中で、布施さんの制作チームから「ミニアルバムを作りませんか?」という提案がありました。僕からもいくつかアイデアを出しました。たとえば「今だからこそAORをやりませんか?」とか。96年ですから、小室哲哉氏全盛期なので、誰も乗ってくれませんでしたけど(笑)。布施さんにAORをやってもらいたかったんです。ボズ・スキャッグスみたいなのを。僕は、歌にコンプレックスがありますから、歌が上手い方と出会うと、嬉しくなってしまって、いろいろやっていただきたくなっちゃう(笑)。それは西城秀樹さんもそうでした。だから、もう途中から完全に押し売り。「これやりましょう」「次はこれやりましょう」と。布施さんも面白がってやってくださいました。とはいえ、角松流の曲を歌ってもらうと、やはりそれまで歌ってこられた曲とは異なるところも多々あるので、布施さんご自身も、どう歌おうか戸惑っていらっしゃるのがわかる場面もありました。ところが、布施さんの「霧の摩周湖」を僕なりにアグレッシヴにアレンジしたトラックを作り、「歌ってください」とお願いしました。原形がほぼないようなアレンジでしたが、布施さんは快く歌ってくださって。そのときビックリしました。テイク1で圧倒されました。思わず「OKです!」と言いそうになりました。でも、冷静さを取り戻し、テイク2も録っておいたほうがいいかなと思い直し、結局3、4回歌っていただきました。そのすべてのテイクが寸分たがわず同じなのにまた驚きました。ずっと歌ってこられた曲なので、もう完全に布施さんのものになっているし、血となり肉となっている。偉大なシンガーの偉大さを思い知りました。

 

──まだまだお話をうかがいたいくらい、1曲1曲にドラマがありますね。

角松:特にプロデュースものには、ドラマがあります。それくらい1曲1曲に全力を注いできた証明だと思います。だから、プロデュース作品に関しては、「これ入れるの?」という疑問や否定はありません。自分名義で出した曲の中には後悔が残っている曲もあるから、勝手にコンパイルされると、すぐダメ出しします(笑)。でも、プロデュースものは、どの作品もみなさんがしっかり歌ってくれているし、トラックももちろんしっかり作り込んでいますから。ある意味、自分の作品より愛が強いかもしれない。自分の過去の作品を改めて聴き返す機会は少ないですが、このコンパイル盤は聴いちゃいましたね。聴きながら、1曲1曲に詰まっている思い出やドラマが甦りました。だから、プロデュースワークスはどこを切り取ってもらっても構いません。どれも自信作です。

 

 

文 藤井徹貫

 

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2020年7月22日発売

角松敏生

角松敏生ワークス-GOOD DIGGER-

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【CD収録曲】

[DISC-1]
  1. Tokyo Ensemble Lab / Lady Ocean (作曲・編曲:角松敏生、ブラス・アレンジ:数原晋)(1988 年発表)
  2. 青木智仁 / Manhattan Love Affair (作曲・編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  3. 杏里 / WINDY SUMMER (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1983 年発表)
  4. Sala from VOCALAND / Splendid Love (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  5. 米光美保 / 恋は流星 SHOOTING STAR OF LOVE (作詞・作曲:吉田美奈子 編曲:角松敏生)(1995 年発表)
  6. TAMARA CHAMPLIN / NIGHT BIRDS (作詞:WILLIAM SHARPE 作曲:ROGER ODELL 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  7. 中森明菜 / UNSTEADY LOVE (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1985 年発表)
  8. 西城秀樹 / Through the night (作詞・作曲・編曲:角松敏生 ブラス編曲:磯広行)(1984 年発表)
  9. 杏里 / Goodbye Boogie Dance (作詞・作曲・編曲:角松敏生 /ブラス・ストリングス編曲:佐藤準)(1983 年発表)
  10. 西城秀樹 / Sweet Surrender (作詞・コーラス編曲:吉田 美奈子、作・編曲:角松敏生 ブラス編曲:数原晋)(1985 年発表)
  11. JADOES / Heart Beat City (Extended New Re-mix)(作詞:角松敏生 作曲:角松敏生/ 藤沢秀樹 編曲:角松敏生)(1987 年発表)
  12. 青木智仁 / Triboro Bridge〜Memories of M. K. (作曲・編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  13. 凡子 / Desert Butterfly (作詞・作曲: 凡子 編曲:角松 敏生)(2010 年発表)
  14. 友成好宏 / THE BLUE CLIF (作曲・編曲:角松敏生)(1993 年発表)
  15. Anna from VOCALAND / Heart to you 〜夜が終わる前に〜(作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  16. 吉沢梨絵 Duet with KADOMATSU T. / NEVER GONNA MISS YOU (作詞・作曲:角松敏生 編曲:角松敏生/ 塩谷哲)(1997 年発表)

 

[DISC-2]
  1. 西城秀樹 / BEAT STREET (作詞:吉田美奈子 作曲・編曲:角松敏生 ブラス編曲:数原晋 コーラス編曲:吉田美奈子)(1985 年発表)
  2. JADOES / All My Dream (Single Version)(作詞:斉藤謙策、角松敏生 作曲:伝田一正 編曲:角松敏生)(1988 年発表)
  3. 杏里 / SURPRISE OF SUMMER (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1984 年発表)
  4. JADOES / FRIDAY NIGHT (Extended Dance Mix)(作詞: 斉藤謙策 作曲: 藤沢秀樹 編曲:角松敏生 ホーンズ編曲:数原晋)(1986 年発表)
  5. JIMSAKU / DISPENSATION (作詞:角松敏生 作曲:桜井哲夫 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  6. 布施 明 MEETS KADOMATSU/ IF YOU LOVE SOMEBODY (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  7. NOBU CAINE / NIGHT IN KOZA (作曲・編曲:角松敏生 )(1989 年発表)
  8. 凡子 / Movin’ on (作詞・作曲: 凡子 編曲:森俊之)(2010 年発表)
  9. 佐藤 博 / ANGELINE -Extended Power Club Mix- (作詞:リリカ新里 作曲・編曲:佐藤博 リミックス:角松敏生)(1987 年発表)
  10. 鈴木雅之 / 最後のレビュー (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(2005 年発表)
  11. 友成好宏 / I SAW THE LIGHT (作詞・作曲:Todd Rundgren 編曲:友成好宏)(1993 年発表)
  12. NOBU CAINE / ソバカスのある少女 (作詞:松本 隆 作曲:鈴木 茂 編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  13. PAULINE WILSON& PHILLIP INGRAM from VOCALAND / THE TWO OF US
    (作詞:MARK EDWARD VIEHA / ROBERT QUINN WILSON 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  14. 杏里 / Remember Summer Days (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1983 年発表)
  15. チアキ / いのち (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(2010 年発表)
  16. AGHARTA / WA になっておどろう~ILE AIYE~ (NHK みんなのうた VERSION)(作詞・作曲:長万部太郎[角松敏生]) 編曲:AGHARTA)(1997 年発表)

 

 

1993年9月22日発売

西城秀樹

History Of Hideki Saijo Vol.2 ~Best Of Best

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【CD収録曲】

  1. YOUNG MAN (Y.M.C.A)
  2. ホップ・ステップ・ジャンプ
  3. 眠れぬ夜
  4. ジプシー
  5. 聖・少女
  6. ギャランドゥ
  7. ナイト・ゲーム
  8. 抱きしめてジルバ-Careless Whisper-
  9. 一万光年の愛
  10. BEAT STREET
  11. 追憶の瞳~Lola~
  12. Rain of Dream夢の罪
  13. NEW YORK GIRL
  14. 夏の誘惑
  15. 33才
  16. リバーサイドで逢いましょう
  17. SHAKE MY DAY