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角松敏生ワークス-GOOD DIGGER-
発売記念
独占インタビューVol.1

杏里のプロデュースもしていたので、そこで培ったメソッドであったり、ニューヨークで吸収したヒップホップのエッセンスであったり、いろいろなものを組み合わせて出来たのが「Through the night」

                                   

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文:藤井徹貫

80年代から、アーティスト(シンガーソングライター)活動と並行し、プロデュース活動も行っていた角松敏生。そのプロデュースワークにスポットを当てたのが『角松敏生ワークス -GOOD DIGGER-』(7月22日発売)。西城秀樹、杏里、布施明、中森明菜などのビッグネームからNOBU CAINE、青木智仁などのインストゥルメンタルまで、まさに縦横無尽な角松ワールドが濃縮されている。

 

 

──たとえば選曲など、本作の制作にあたり、角松さんが直接関わった部分はありますか?

角松:企画書が届いた時点で、すでに選曲もされていましたから(笑)、僕が新たに何かしたということはありません。20周年頃から、5年ごとに横浜アリーナでのライブなどの、周年記念をやっています。来年が40周年なので、今から10年前、30周年のときだったかな、<今、埋もれている角松ワークスをコンパイルでもリマスターでもいいから掘り起こしたら面白いんじゃない?>と提案したけど、誰も乗ってくんなかったんだよね(笑)。なのに、10年後にこういう形でまとめてもらえたのは驚きでもあり、不思議でもあります。

 

──なぜ10年前は実現できず、今なら実現できたとお考えですか?

角松:YouTubeが世界中に行き渡った2010年代頃から、海外で80年代の日本のポップスが評判になっているというニュースがありますよね。にわかに信じがたいけど(笑)。それでも5年くらい前、「ニューヨークのクラブで角松さんの曲がかかってますよ」「パリのクラブでかかってますよ」と、風の噂では聞いてました。そういう潮流の中に、今回のコンパイルもあるのかもしれません。70年代から80年、邦楽アーティストたちは様々な洋楽の模倣をしながらジャパンオリジナルとでもいうべきスタイルを確立して行った時代です。アメリカやイギリスの洋楽コンプレックスの時代でしたから。欧米の音楽をどれだけ自分のものとして吸収して格好よく聴かせるか、そのセンスやスキルが問われた時代。60年代から音楽に目覚めた僕も、例に漏れずアメリカ発の音楽へのコンプレックスや憧れが強かったので、模倣や借用から始まりました。そうやって創った作品群を、今になって欧米のリスナーが面白がるのは、思いもしなかったパラドクスです。

 

──そのパラドクスがさらに逆転して、日本へ逆輸入されたのかもしれませんね。

角松:逆転の逆転(笑)。そういう側面もあると思います。若いリスナーも楽しんでくれるなら、それはそれでいいことです。当時、僕がどういう思いで作っていたのかなんて考える必要もないし。今の大衆音楽の基礎となっているメソッドは、70年代から80年代前半にかけて、ほぼ出尽くしていると言っても過言でありません。その頃、レコーディングはスタジオアートの時代。ライブでの再現なんて考える必要もなかった時代。そうやってスタジオアートとして必死に作り込んでいたエネルギーなのか、熱なのか、圧みたいなものを、若いリスナーも感じてくれているんじゃないかと捉えています。今のトラックメーカーたちが提供するサウンドと、僕らの音は違って当然ですよ。僕らは、不便な環境で、機械に頼らず何度も人力でトライ&エラーを繰り返して作り上げていたわけですから。不便ゆえ、模倣実験を繰り返していくうちに、だんだんオリジナリティーが芽生えていたと思います。ところが、便利な時代、データの時代になると、模倣しなくても、サンプリングにより簡単に出来合いのものを手に入れることができるようなったわけです。だから、昔と比べたらかなり簡単に音楽制作のプロになれてしまう時代になった。有名なトラックメーカーになるのは、優秀なミュージシャンになろうとするより、優秀なゲーマーになろうとするのと似ているかもしれないね。

 

 

──角松敏生名義での作品とプロデュース作品の違いはどこですか?

角松:プロデュースの場合、基本的には、そのアーティストの方達それぞれファンがいらっしゃるわけだから、責任を持っていいものを作りたい、という思いは常にあります。では、いいものとは何か?80年代や90年代、その答えは<スタジオ・アートとして研ぎ澄まされたもの>でした。だから、僕の中では、必ずしも<いいもの=売れるもの>ではありませんでした。そこが90年代、商業レベルで成功したプロデューサーの皆さんと決定的な違いでしょうね。売れなきゃ意味がないのに、それ以前に品質にばかりこだわるのでね(苦笑)だから、「なぜ僕なんですか?」と、毎回のように依頼してくれた相手に尋ねていました(笑)。どの歌手やグループの場合でも、それぞれ意識するポイントは変えています。相手が何を望んでいるのかでも変わりますし。「僕がやるなら、こうなっちゃいますけど、大丈夫ですか?」みたいな確認を取ったこともあるし、「すべてお任せします」と言われたこともありました。だから、売れる売れないは別にして、どの作品も全力を尽くしています。自分の作品とプロデュース作品の違いですが、自分の作品は僕が表に出る、矢面に立つけど、プロデューサーは裏方であるべきだと思っているところでしょうか。プロデューサーとしては、アリフ・マーディンのスタイルが好きです。彼は、優秀な編曲家であり作曲家でもあり自分で譜面も書けるけど、作曲やアレンジを敢えて自分ではやらない。各分野のエキスパートを集め、適材適所で組み合わせて、最終的に素晴らしい作品を完成させます。それが本当の意味でのプロデューサーだと思います。

 

──本作のDISC1には、西城秀樹さんに提供した楽曲「Through the night」と「Sweet Surrender」が収録されていますね。

角松:秀樹さんとの初セッションは「Through the night」でした。84年のアルバム『GENTLE・A MAN』収録曲です。僕がニューヨークに住み始めた頃で、ヒップホップ勃興期でした。そういうものを吸収していた時代です。今は、小さな子供たちですらダンスを踊っていますが、その源流が形成された時代でもあります。そういう最先端のダンス・カルチャーの影響を受けた音楽を秀樹さんがやったら、面白いケミストリーが起こると思い、「Through the night」を提供しました。とはいえ、あの頃の僕は、とにかくニューヨークの最先端のダンスミュージックに傾倒していたので、作るものすべてがそっち寄りだったのも事実です(笑)。

 

 

──楽曲提供以前、西城さんとは面識がおありでしたか?

角松:はい。秀樹さんとは同じレコード会社でしたし、担当ディレクターが同じという縁がありました。だから、僕がデビューして間もない頃、秀樹さんのヴォーカル・レコーディングとかを見学させてもらっていました。当然、ご挨拶もさせてもらって。秀樹さんは、国民的大スターなので、緊張しましたよ。私も当時は22やそこらの洟垂れでしたし。でも、すごく気さくに接していただいて。周りを緊張させるスターもいるけど、秀樹さんは逆でした。大らかな兄貴のようでした。何度か飲み会にも参加させてもらえました。時代的にバブルの走りだったこともあり、音楽業界やテレビ業界とか、いろいろな方々が集まっていて。僕はただ目を丸くするばかりだった記憶があります。担当ディレクターに「お金は?」と尋ねると、「全部、秀樹の奢り」と言われ、やっぱり西城秀樹って凄い!と思いました(笑)。そういう距離感だったある日、ディレクターが「角松君に1曲書いて欲しいと、秀樹が言ってるよ」と伝えられ。光栄でしたね。ただ、「僕でいいんですか?」「僕がやるなら、こうなっちゃいますけど、大丈夫ですか?」みたいな確認は、それとなくした気もします(笑)。当時、杏里のプロデュースもしていたので、そこで培ったメソッドであったり、ニューヨークで吸収したヒップホップのエッセンスであったり、いろいろなものを組み合わせて出来たのが「Through the night」です。それまでの秀樹さんのオリジナル曲の中にはないタイプのビートだったこともあり、秀樹さんにも凄く気に入ってもらえました。

 

──シングル曲ではないのにテレビで歌っている映像も残っていますね。

角松:そうみたいですね。テレビでもコンサートでもバックダンサーを入れて歌っている姿をお見かけしていました。

 

──その「Through the night」の評価が高かった証明が、翌85年のアルバム『TWILIGHT MADE···HIDEKI』ですね。

角松:

「アルバムを半分、頼むよ」と言ってもらえました。当時、僕が勝手に思っていたのは、脱歌謡曲的な方向を示したいのかな、ということ。でも、秀樹さんを熱烈に支えている人たちに受け入れてもらえる詞を書く自信がなかったので、当時、仲良くしていただいていた吉田美奈子さんに作詞をお願いしました。僕は、その時代をリアルタイムで描く文学を持ち得ていても、西城秀樹さんのための文学を持ち得ていなかったということです。だけど、吉田美奈子さんは独自の文学をお持ちですが、アーティストでありながら職人的なこともやってのけてしまう方なので、<あの西城秀樹が私の書く詞を歌うんだ>という、面白さも感じてもらえるだろうと考えたからです。作詞は吉田美奈子さんと決定するのがプロデュースであって、どういうテーマであるとか、どういう方向であるとかは、お任せしました。結果、秀樹さんにも喜んでもらえました。

 

 

 

文 藤井徹貫

 

 

 

2020年7月22日発売

角松敏生

角松敏生ワークス-GOOD DIGGER-

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【CD収録曲】

[DISC-1]
  1. Tokyo Ensemble Lab / Lady Ocean (作曲・編曲:角松敏生、ブラス・アレンジ:数原晋)(1988 年発表)
  2. 青木智仁 / Manhattan Love Affair (作曲・編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  3. 杏里 / WINDY SUMMER (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1983 年発表)
  4. Sala from VOCALAND / Splendid Love (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  5. 米光美保 / 恋は流星 SHOOTING STAR OF LOVE (作詞・作曲:吉田美奈子 編曲:角松敏生)(1995 年発表)
  6. TAMARA CHAMPLIN / NIGHT BIRDS (作詞:WILLIAM SHARPE 作曲:ROGER ODELL 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  7. 中森明菜 / UNSTEADY LOVE (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1985 年発表)
  8. 西城秀樹 / Through the night (作詞・作曲・編曲:角松敏生 ブラス編曲:磯広行)(1984 年発表)
  9. 杏里 / Goodbye Boogie Dance (作詞・作曲・編曲:角松敏生 /ブラス・ストリングス編曲:佐藤準)(1983 年発表)
  10. 西城秀樹 / Sweet Surrender (作詞・コーラス編曲:吉田 美奈子、作・編曲:角松敏生 ブラス編曲:数原晋)(1985 年発表)
  11. JADOES / Heart Beat City (Extended New Re-mix)(作詞:角松敏生 作曲:角松敏生/ 藤沢秀樹 編曲:角松敏生)(1987 年発表)
  12. 青木智仁 / Triboro Bridge〜Memories of M. K. (作曲・編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  13. 凡子 / Desert Butterfly (作詞・作曲: 凡子 編曲:角松 敏生)(2010 年発表)
  14. 友成好宏 / THE BLUE CLIF (作曲・編曲:角松敏生)(1993 年発表)
  15. Anna from VOCALAND / Heart to you 〜夜が終わる前に〜(作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  16. 吉沢梨絵 Duet with KADOMATSU T. / NEVER GONNA MISS YOU (作詞・作曲:角松敏生 編曲:角松敏生/ 塩谷哲)(1997 年発表)

 

[DISC-2]
  1. 西城秀樹 / BEAT STREET (作詞:吉田美奈子 作曲・編曲:角松敏生 ブラス編曲:数原晋 コーラス編曲:吉田美奈子)(1985 年発表)
  2. JADOES / All My Dream (Single Version)(作詞:斉藤謙策、角松敏生 作曲:伝田一正 編曲:角松敏生)(1988 年発表)
  3. 杏里 / SURPRISE OF SUMMER (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1984 年発表)
  4. JADOES / FRIDAY NIGHT (Extended Dance Mix)(作詞: 斉藤謙策 作曲: 藤沢秀樹 編曲:角松敏生 ホーンズ編曲:数原晋)(1986 年発表)
  5. JIMSAKU / DISPENSATION (作詞:角松敏生 作曲:桜井哲夫 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  6. 布施 明 MEETS KADOMATSU/ IF YOU LOVE SOMEBODY (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  7. NOBU CAINE / NIGHT IN KOZA (作曲・編曲:角松敏生 )(1989 年発表)
  8. 凡子 / Movin’ on (作詞・作曲: 凡子 編曲:森俊之)(2010 年発表)
  9. 佐藤 博 / ANGELINE -Extended Power Club Mix- (作詞:リリカ新里 作曲・編曲:佐藤博 リミックス:角松敏生)(1987 年発表)
  10. 鈴木雅之 / 最後のレビュー (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(2005 年発表)
  11. 友成好宏 / I SAW THE LIGHT (作詞・作曲:Todd Rundgren 編曲:友成好宏)(1993 年発表)
  12. NOBU CAINE / ソバカスのある少女 (作詞:松本 隆 作曲:鈴木 茂 編曲:角松敏生)(1989 年発表)
  13. PAULINE WILSON& PHILLIP INGRAM from VOCALAND / THE TWO OF US
    (作詞:MARK EDWARD VIEHA / ROBERT QUINN WILSON 編曲:角松敏生)(1996 年発表)
  14. 杏里 / Remember Summer Days (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(1983 年発表)
  15. チアキ / いのち (作詞・作曲・編曲:角松敏生)(2010 年発表)
  16. AGHARTA / WA になっておどろう~ILE AIYE~ (NHK みんなのうた VERSION)(作詞・作曲:長万部太郎[角松敏生]) 編曲:AGHARTA)(1997 年発表)

 

 

 

1984年3月5日発売

西城秀樹

『GENTLE・A MAN』

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【CD収録曲】

  1. センチメンタル・モーテル
  2. Onesided night
  3. 彼女は不機嫌
  4. Do You Know
  5. 帰港
  6. Through the night
  7. かぎりなき夏
  8. Love・Together
  9. Winter Blue
  10. ポートレート

 

 

1985年7月21日

西城秀樹

『TWILIGHT MADE・・・』

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【CD収録曲】

  1. SWEET SURRENDER
  2. BEAT STREET
  3. HALATION
  4. ワインカラーの衝撃
  5. PLATINUMの雨
  6. リアル・タイム
  7. オリーブのウェンズディ
  8. BEAUTIFUL RHAPSODY
  9. TELEVISION
  10. レイク・サイド