2022年8月14日、Download Japan 2022でソウルフライを見てきた。この日のライヴは、多くのヘヴィメタル・ファンにとって、大きな意味があったことだろう。19年終わり頃、謎の肺炎のニュースがテレビを賑わすようになった。だが、それによってまさかヘヴィメタルの来日公演が途絶えてしまうなんて、一体誰が想像しただろう。20年の春頃には、次々と海外アーティストによるライヴの延期、中止が発表されたが、それでもそんな事態は長くは続かないだろうと楽観視していたものだ。だが、待てど暮らせどコロナが終息する気配はなく、気づけば悠に2年を超える年月が過ぎていた。22年に入り、Download Japan 2022開催の発表があり、ヘヴィメタル・ファンたちは歓喜しつつも心のどこかで「本当に開催できるのだろうか?」と不安に思っていたことだろう。ましてや7月に入り、BA.5とかいう新たな変異株が猛威を振るい始め、連日新規感染者数が物凄い勢いで伸びていくのを見るにつけ、その不安はふくらんでいく一方であった。だが、ついにヘヴィメタルのフェスティヴァルは帰ってきた!
ソウルフライの来日公演は02年のBeast Feast以来だから、実に20年ぶり。さらにはオールドスクール魂全開のニュー・アルバム『トーテム』を引っ提げての来日ということで、多くのファンが彼らのライヴを心待ちにしていたに違いない。予定通りの14時30分ジャストに、そのステージはスタート。メンバーはマックス・カヴァレラ(G,Vo)、ザイオン・カヴァレラ(G)、マイク・レオン(B)、そしてギターはフィア・ファクトリーのディーノ・カザレス!まずはイントロから「Superstition」。非常にスラッシーな、『トーテム』のオープニング・ナンバーだ。マックスはケルティック・フロストののTシャツに、イモータルのパッチのついた皮のヴェストを着用。このヴェスト、アリゾナの友人がわざわざ作ってプレゼントしてくれたものだそう。続いては大名曲、04年の4thアルバム『Prophecy』のタイトル・ナンバー。「This is the prophecy!」の大合唱が、会場に鳴り響く。
続く「No Hope = No Fear」は、98年のデビュー・アルバム『Soulfly』収録の、ニュー・メタルの権化とでも言うべきグルーヴィなナンバー。本来ならば会場も大暴れになるところであろうが、この日はモッシュ禁止。オーディエンスは抑えきれない興奮を、何とか手拍子で発散しようとする。巨体のマックスやディーノに比べると、細身加減が目立つザイオンであるが、そのドラミングのパワフルさは尋常ではない。とにかく一打一打がすべて全力投球なのだ。マックスによれば、あれは「Bad Brainsなどのパンクからの影響」なのだそう。
続いては、02年のサード・アルバムから、オープニング・ナンバーの「Downstroy」。マックスはこの時点で汗びっしょり。ヘッドバンギングするごとに、もの凄い量の汗が飛び散っている。ファースト・アルバム収録の「Bleed」でも、ザイオンの全力ドラミングが映える。あまりに思い切り叩き過ぎて、スティックを飛ばしてしまうこともしばしば。それがまたカッコいい!ここでマックスは衣装チェンジ。というか、皮のヴェストが暑過ぎるので、パーカーに着替えただけなのかもしれないが。そして、ファースト・アルバム収録のエスニックな名曲「Tribe」へ。マックスからオーディエンスにジャンプの指示。モッシュはダメでもジャンプならOKだ!スピーディな『Primitive』(00年)のオープニング・ナンバー「Back to the Primitive」でも、ザイオンの激しすぎるドラミングがオーディエンスを魅了。あの体のどこに、あれほどのパワーが詰まっているのだろう。
最新作から「Filth upon Filth」を披露後、ギターのディーノを紹介。となれば、次はフィア・ファクトリー・ジャムの時間だ!昨年からツアーにディーノを帯同しているソウルフライだが、フィア・ファクトリーのカヴァーを披露するのがお約束になっているのだ。この日は「Replica」(『Demanuacture』(95年))をプレイ。さすが本家も参加していることもあり、その完成度は見事というほかない。続く「Eye for an Eye」は、言うまでもなく記念すべきデビュー・アルバムのオープニング・ナンバー。サビでは大合唱も発生し、場内の盛り上がりも最高潮に!ここでマックスが、オーディエンスにしゃがむように指示を出す。となればこれしかない!ということで、ラストは「Jumpdafuckup」。『Primitive』収録のこの曲、アルバムではスリップノットのコリー・テイラーをフィーチャ。これまでライヴで披露されることはあまりなかったが、昨年のツアーからセットリストに載るようになっている。オーディエンスの凄まじい盛り上がりに、マックスも激しいヘッドバンギングで答える。まさに大団円。まさにクライマックス。
という訳で、あっという間の45分間。あれ、持ち時間って50分じゃなかったっけと思ったのだが、マックスによれば「時間をオーバーして他のメンバーやスタッフに迷惑をかけるより、少し短めの方が良いんだ」とのこと。確かにその通りのような気がしなくもないが。とにかく演奏も最高。新旧織り交ぜたセットリストも最高。これぞソウルフライといったグルーヴィでパワフルなステージに、オーディエンスも大満足の様子。それはソウルフライのメンバーも同様で、マックスは「マスク越しでも大合唱してくれているのがわかったよ」とご満悦の様子。ザイオンも「最高のオーディエンスだった」とご機嫌だった。ぜひとも近いうちにまた来日公演を実現してもらいたいところ。そうそう、個人的にはマックスの「『Bestial Devastation』や『Morbid Visions』の曲ばかりをやるツアーも考えているよ」という発言が気になって仕方がないところです。
文 川嶋未来
【セットリスト】
2022.8.14(日) Download Japan 2022
- Superstition
- Prophecy
- No Hope = No Fear
- Downstroy
- Bleed
- Tribe
- Back To The Primitive
- Filth Upon Filth
- Body Hammer (Fear Factory cover)
- Replica (Fear Factory cover)
- Eye for an Eye
- Jumpdafuckup
【メンバー】
マックス・カヴァレラ(ヴォーカル/ギター)
ザイオン・カヴァレラ(ドラムス)
マイク・レオン (ベース)
ディーノ・カザレス (ギター)[フィア・ファクトリー]