フィンランドのメロディック・デス・メタル・バンド、Winersunが7年ぶりのニュー・アルバム『Time II』をリリース!ということで、リーダーのヤリ・マーエンパーに話を聞いてみた。
ー 『Time I』の次に『Time II』を続けて出さなかったのは何か理由があるのでしょうか。
ヤリ:あるよ。2012年当時、『Time I』のミックスに完璧に満足していて、『Time II』はさらにそれを改善したものにしたかった。『Time I』のツアー中、『Time II』のミックスをやったのだけど、自分の求めるレベルには届かず、2014年頃には燃え尽きてしまった感じだった(笑)。それで「これはダメだ、まったく違うことをやろう」と。それで横道に逸れて、『The Forest Seasons』に手をつけ始めたんだ。
ー その『The Forest Seasons』からも7年の期間を要しました。
ヤリ:そうだね。時間が過ぎるのはとてもはやくて。『The Forest Seasons』のツアーを3年ほどやった。パンデミックの直前までね。だけど、いまだ『Time II』のミックスに手をつける気にはなれず、当時4枚のアルバムを作っていて、パンデミック中はそれらのアルバムの作業をしていたんだ。『The Forest Seasons』のキャンペーンがうまくいったおかげで、この新しいスタジオを手に入れられて、非常に効率的に作業ができるようになった。その4枚のうち、1枚は80%くらい完成していたのだけれど、どうしてもサウンドが気に入らなくて。もっとヘヴィなサウンドが欲しかったから。だけど、そのサウンド自体はとても気に入っていて、ただそのアルバムとしては十分ヘヴィではないというだけだった。そして、「このサウンドは『Time II』に合うんじゃないか?」って思いついてね。ギターやベースのサウンドをコピー・アンド・ペーストしてみたら、「まあ悪くないな」という感じで、作業を続けていったらだんだんと「これだ!」というクオリティになったのさ。今こそ『Time II』を完成させる時だって思ったんだよ。だけど、そのことは秘密にしておいた。期待だけ持たせたくないからね(笑)。バンドのメンバーにも知らせずに、こっそりとミックスをしていたよ(笑)。ミックスが出来上がってからメンバーに知らせて、その1ヶ月後に公にしたんだ。
ー 4枚のアルバムというのは、すべてWintersunのものですか。
ヤリ:そうだよ。スタイルの違うアルバムを同時に作っていくというのが、俺のやり方なんだ。同じことをずっとやっていると、退屈だからね。こういうやり方のほうが、色々とインスピレーションも湧いて来るんだ。
ー 『Time II』の音楽性はどのようなものだと言えるでしょう。
ヤリ:もちろん『Time I』に近いもの。もともとは、ただ『Time』という1枚のアルバムになるはずだった訳だからね。ただ、80分以上になってしまったから、2枚に分けた。一方で、『Time II』は曲同士にコントラストがあって、『Time I』よりバラエティに富んでいると思う。だけど、ファースト・アルバムと比べると、『Time I』、『Time II』は、オーケストレーションが豊富で、もっとシネマティックでエピック。そこそこにアンビエントなパートもあるし。曲同士につながりがあって、旅のようになっている。ファースト・アルバムは、長い間かけて俺が書いた別々の曲のコレクションという感じだったけれど。『The Forest Seasons』もまた違ったスタイルで、これはよりプリミティヴ。もちろんメロディックな部分もあるけれど。Wintersunを始めた時から、違った音楽スタイルを探究していこうと考えていたし、Wintersunとして限界はない。もちろんコアなトラディショナルな要素は必要だけれどね。
ー 『Time I』、『Time II』はコンセプト・アルバムということですよね。
ヤリ:そう。時間、宇宙、エネルギー、人生、なぜ我々はこの世界にいるのか、とかね(笑)。
ー 今回は非常に日本的なイメージを多用していますが、これは何故なのでしょう。
ヤリ:子供の頃、コモドール64で「The Last Ninja」や「The Last Ninja 2」をやっていてね。当時まだ6歳くらいで、あのゲームやサウンドトラックは俺にとって魔法みたいで、大好きだったんだ。アジアっぽい庭園とか建物、桜とかね。俺にとっては本当に魔法みたいだった。それが始まりで、ギターを弾くようになってからも、まあただのペンタトニック・スケールにしても、日本的、中国的なエキゾティックなものを弾いたり。それが始まりで、04年、05年くらいに、『Memoirs of a Geisha』や『Crouching Tiger, Hidden Dragon』みたいな映画を見てね。その映画やサウンドトラックが大好きになった。そこからこういう要素を持った音楽を作りたいと思うようになったんだよ。子供の頃にやったゲームと見た映画という2つが大きな影響源さ。漢字や建物とか、アジアの文化の雰囲気が大好き。俺にとってはとても魅力的なんだ。音楽的にも日本の民族音楽から少々影響を受けているし、アートワークもそう。桜というのは魔法みたいだし、とても落ち着いた感じがする。日本的な庭園というのかな。何だかわからないけれど、とても魅力を感じるんだよ。
ー あなた自身は具体的にどのようなバンド、アーティストからインスピレーションを受けていますか。
ヤリ:子供の頃、初めて接したヘヴィな音楽は、KissとW.A.S.P.だった。ハードロックから聴き始めたんだ。メロディがあるやつね。俺はメロディがあるものが好きで、同時にコンピューター・ゲームも好きだった。Ensiferumもやるようになったけれど、あれもとてもメロディックなバンドだったし、彼らからの影響も大きい。だけど一番大きな影響となると、Metallicaかな。ギターを弾き始めた理由が、Metallicaだからね。もちろんMegadethも。その後、フィンランドやスウェーデン、ノルウェーなどのブラック・メタルやメロディック・メタルを聴くようになった。Dissectionもお気に入りのバンドの一つだし、At The GatesやDark Tranquility、フィンランドだとAmorphis。これらのバンドからの影響は大きい。『Time I』、『Time II』に関して言えば、デヴィン・タウンゼンドの果たした役割は大きいよ。Strapping Young Ladが大好きで、それから彼のソロ、Ocean Machineが始動して、特に『Infinity』にはぶっ飛んだよ。『Time I』、『Time II』では、ああいうウォール・オブ・サウンドが欲しかったから、彼からの影響は大きい。もちろん彼の歌い方もね。色々な歌を違ったリズムで重ねたり。ああいうスタイルを、これらのアルバムで取り入れたかった。
ー Wintersunの音楽はフィンランド的だと思いますか。
ヤリ:部分的にはそうだと思う。例えば「Land of Snow and Sorrow」のメロディなんかはフィンランドのフォークソングに基づいている。Ensiferumもフィンランドのフォーク・ミュージックに基づいていて、俺自身にも今もその影響がある。だけど、さっきも言ったように、俺は色々なものを探究して、さまざまなものを取り入れたいんだ。いずれにせよフィンランド的なもの、ノルディックな、さらに言うとケルティックな要素もあると思うよ。こういったフォーク・ミュージックのメロディ・スタイルは大好きなんだ。
ー バンド名をWintersunとしたのはなぜですか。どのような意味が込められているのでしょう。
ヤリ:バンド名はファースト・アルバムのサウンドを表しているというのかな。とても冷たく、冬っぽい。俺はフィンランドに住んでいて、ここはとても冬が長いんだ。そしてsun=太陽は、俺にとっては生命を意味する。この2つの要素を合わせたかったんだ。だけど、実を言うとこの名前を思いついたのは俺じゃないんだ。友人に、こういう感じのバンド名が欲しいんだと説明したら、彼がリストを作ってくれてね。その中に「Wintersun」があって、「これだ!」と思った。その友人というのは、Arthemisiaのヴォーカリスト、Niko。俺もArthemisiaでプレイしていて、アルバムも一枚参加しているよ。
ー オールタイムのお気に入りのアルバムを3枚教えてください。
ヤリ:そうだな、最初に思いつくのはSkid Rowの『Slave to the Grind』。ハードロックだけれど、パーフェクトなアルバムさ。悪い曲が1つもないし、セバスチャン・バックのヴォーカルも狂っている。Metallicaも入れなくちゃ。だけど、どのアルバムにするかな。『Master of Puppets』かな。『Kill ‘Em All』も好きなんだよ。ああいうオールドスクールなスラッシュ。ああいうリフはギターでプレイするととても楽しいんだ。あとは何だろう。良いアルバムはたくさんあるから。さっきも言ったけれど、デヴィン・タウンゼンドの『Infinity』にしよう。デヴィン・タウンゼンドのアルバムはすべて凄まじく素晴らしいよ。
ー 今後の予定を教えてください。さきほどアルバム4枚制作中とのことでしたが。
ヤリ:そうだね、『Time II』がリリースされたら、さっき言ったほとんど完成しているアルバムに手をつけたいと思っている。もっとサウンドをヘヴィにしなくてはいけないという課題が残っているから。Wintersunらしいメロディックな要素もあるけれど、とてもヘヴィな作品になる予定。80%できているんだけど、何しろ俺だからね(笑)。どうなるかわからない。
ー とりあえず7年かかることはなさそうですね。
ヤリ:一応そのつもりなんだけどね(笑)。その次のアルバムについてもとてもエキサイティングで、また違ったものになる予定だよ。まあ、どうなるかな。とりあえず確実な約束はしたくはないけれど、可能な限り早く仕上げるつもり。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ヤリ:日本のファンのみんな、ずっとサポートしてくれてありがとう。一度日本に行った時も、素晴らしい経験だった。本当に素晴らしい国だよ。みんな親切で寛容で。ぜひまた日本に行きたいな。何よりも、サポートしてくれてありがとう。
文 川嶋未来