90年代初頭のブラック・メタルが持っていた危険な雰囲気を現代に伝えるバンド。それがスウェーデンのヴァーテインだ!ニュークリア・ブラストに移籍し、ニュー・アルバム『ジ・アゴニー・アンド・エクスタシー・オブ・ヴァーテイン』をリリースするということで、リーダーでヴォーカリストのエリック・ダニエルソンに話を聞いてみた。
ー ニュー・アルバム『ジ・アゴニー・アンド・エクスタシー・オブ・ヴァーテイン』がリリースになります。過去の作品と比べてどのような点が進歩している、異なっていると言えるでしょう。
エリック:このアルバムは、俺たちのこれまでの経験、歴史すべての集大成になっていると思うよ。今回のアルバムこそ、俺たちがずっと作りたいと思っていたものに仕上がっていると言える。
― 「ヴァーテインの苦痛とエクスタシー」というのは非常に面白いタイトルだと思うのですが、どのような意味が込められているのでしょうか。
エリック:このタイトルは、ヴァーテインの持つ極端な二面性を表している。「苦痛」というのは存在すること、深い闇、いずれ死ぬといったことへの足掻きへの言及。一方の「エクスタシー」は、存在として最高の状態にあること、魔術的超越、狂気、トランス、神々との交流への言及なんだ。この2つの極が、それらの間の乱流摩擦と大変動の中で、魔術的興奮を作り出し、そしてそれこそがヴァーテインの音楽、芸術なのさ。
― 歌詞の内容はどのようなものですか。どのようなところからインスピレーションを得るのでしょう。
エリック:歌詞のテーマは、基本的に昔ながらのブラック・メタルの伝統にのっとった、古典的なものさ。つまりサタニズム、死、魔術、犯罪とか、禁断の道の驚異について。何しろこういうことについて、もう人生の半分も書き続けているからね。今となっては洞察力、経験、真実に基づいて歌詞は書けると言える。俺にとって歌詞は音楽と同じくらい重要なんだ。
― 「セリモサ」という曲がありますが、これはどういう意味なのでしょう。
エリック:「セリモサ」は、「ヴァーテイン」と同じように、歴史なき世界に現れ、熟慮と畏敬の念を持って扱われることを要求する、神の起源を通じた力を表す言葉、名前なんだ。言語的ルーツは、ラテン語のSeri(血清)とDolorosa(苦痛)、Nebulosa(星の霧)、Lacrimosa(涙でいっぱいの)に求められるだろう。あたかもこれらの言葉や意味が、一つのものとして語られるように。彼女は手の中に、復活、変身、慈悲なき浄化の恐ろしい光を握っている。この極は、やって来る巨大な力のエレクトリックな概念のようなものを描く目的で書いた。巨大な海の氾濫を抑えるダムに現れるヒビ。テーマ的にセリモサは、ナタラジャ、永劫の終わりに宇宙の消滅を示す、シヴァによる審判の日のダンスが持つ激烈なサムハラ的見方との類似性を持っている。
― 元ザ・デヴィルズ・ブラッド、現モラセスのファリーダ・レムーチ、元イン・ソリチュードのGottfrid Åhmanがゲスト参加をしています。
エリック:彼らとは強い絆で結ばれているからね。一緒に音楽を演奏したり、友人として何年も世界を旅したこともある。彼らがやっていたバンド、ザ・デヴィルズ・ブラッドとイン・ソリチュードのことは非常に高く評価しているよ。俺にとってファリーダの声は魔法のようなもので、まるでエディット・ピアフかニーナ・シモンがアルバムに参加してくれたみたいな感じ。Gottfridは、文字通りの意味で、音楽的魔術師なんだ。このコラボレーションのことは本当に誇りに思っているし、「ウィー・リメイン」はこのアルバムの原初の海の暗い深淵で脈打つ心臓のようなものさ。
― アートワークは何を表しているのですか。
エリック:あれはタイトルそのものだよ。2本の柱はそれぞれ「苦痛」と「エクスタシー」を表していて、その間にある混沌とした渦巻く地獄は、この2つの極がどちらもヴァーテインにとって不可欠な要素である結果。アートワークのスタイルに関する俺のインスピレーションは、Evil Records時代の(日本の)サバトの信じられないようなアートワークと、1960年代のバイカーの地獄のアシッド・トリップを混ぜ合わせたものさ。
― ヴァーテインにとって音楽的なインスピレーションとなるバンドはどのあたりでしょう。
エリック:そうだな、バソリー、初期のメタリカ、ディセクション、日本のサバト、モーターヘッド、初期のメイヘム、初期のソドム、サディスティック・エクセキューション、ベヘリット、ジューダス・プリースト、マーシフル・フェイト、GGアリン、ヴェノムあたり。
― メタル以外からの影響はありますか。もしあるとすれば、何でしょう。
エリック:俺たちの影響は、ほぼ音楽以外のものからだよ!巨大な炎、蓋の開いた墓の悪臭、夜空、犯罪行為、悪魔の永遠の謎とかね。
― お気に入りのヴォーカリストは誰ですか。
エリック:ディアマンダ・ギャラス、ブラッキー・ローレス、カール・マッコイ、スクリーミング・ジェイ・ホーキンス、ニュークリア・ホロコースト・ヴェンジェンス、レミー、それからデッドだね。
― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。
エリック:無理だよ!でもまあ頑張ってみよう。フィールズ・オブ・ザ・ネフィリムの『Elizium』。ディセクションの『Reinkaos』。バソリーの『Blood Fire Death』。
― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
エリック:『ジ・アゴニー・アンド・エクスタシー・オブ・ヴァーテイン』がリリースされたら、すぐにまた日本に行って、君たちの素晴らしい国にトラディショナルな禁断のブラック・メタルをお届けしたい。キープ・ブラック・メタル・デンジャラス!日本のブラック・メタル・マスターズ、サバトとサイ万歳!もし日本のサタニック・ゴス・バンド、Judithについて知っている人がいたら、ぜひ俺に知らせてくれ。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- エクスタシーズ・イン・ナイト・インフィニ
- ザ・ハウリング
- セリモサ
- ブラック・カント
- レパーズ・グレイス
- ノット・サン・ノア・マン・ノア・ゴッド
- ビフォア・ザ・カタクリズム
- ウィ・リメイン
- フューネラル・ウィンター
- セプテントリオン
【メンバー】
E・ダニエルソン(ヴォーカル)
P・フォシュベリ(ギター)
H・エリクソン(ギター)
A・リロ(ベース)
E・フォルカス(ドラムス)
【ゲスト・ミュージシャン】
ファリーダ・レムーシ(ヴォーカル)[元ザ・デヴィルズ・ブラッド、現モラセス]
ゴットフリド・オーマン(ベース) [元イン・ソリチュード]