チルドレン・オブ・ボドムのキーボーディスト、ヤンネ・ウィルマンと弟のアンティ・ウィルマンによるバンド、ウォーメンに、エンシフェルムのヴォーカリスト、ペトリ・リンドロスが加入し、ニュー・アルバムをリリース!ということで、ヤンネに色々と話を聞いてみた。
ー ウォーメンというプロジェクトを始めた理由は何だったのですか。
ヤンネ:ウォーメンを始めたのはずっと前のことだけれど、俺としてはチルドレン・オブ・ボドム以外の何かをやりたかったんだ。毎日の「仕事」以外の何かをね(笑)。チルドレン・オブ・ボドムとは違う音楽をやりたいというのがあってね。他の音楽スタイル表現をするプロジェクトさ。
ー チルドレン・オブ・ボドム以外のクリエイティブな捌け口みたいな感じですか。
ヤンネ:そう、その通り。
ー ウォーメンというのはあなたの苗字、ウィルマンから来ているのですよね。
ヤンネ:そう、Wirman(ウィルマン)との言葉遊び。チルドレン・オブ・ボドムの初期のクレジットでは、俺の名前はWarmanになっていたし。
ー 弟さんとのバンドということで、複数形のWarmen(ウォーメン)ということなのですね。
ヤンネ:そう。
ー チルドレン・オブ・ボドムとは違った音楽スタイルというのは、具体的にどのようなものだったのでしょう。具体的なアーティストやバンドからのインスピレーションはありましたか。
ヤンネ:うーん、たくさんあったよ。確かにチルドレン・オブ・ボドムも様々な音楽からインスパイアされていたけれど、ウォーメンでは何と言うか、もっとインストを中心にやったりとか。初期のウォーメンでは、イングヴェイ・マルムスティーンからディープ・パープルに至るまで、あらゆるところからインスピレーションを得ていたな。
ー ニュー・アルバム『ヒア・フォー・ナン』がリリースになりますが、こちらは過去の作品と比べてどのような内容になっていると言えるでしょう。
ヤンネ:いくつか大きな変更点があって、今回新しいドラマーが加入したことが一つ。以前はミルカというドラマーに叩いてもらっていて、彼は最高のハードロック・ドラマーだった。だけど、今回はもっとアグレッシヴなことがやりたかったから、新しいドラマーを入れたんだ。そしてドラムのレコーディングが終わった後、ヴォーカルをどうするか考えた。初期には色々なヴォーカルのアイデアがあったのだけれど、ドラムのレコーディングが終わってみると、思ったよりもずっとアグレッシヴな内容になったので、新しいヴォーカル・スタイルが必要だと感じてね。エンシフェルムのペトリのことはずっと知っていて、チルドレン・オブ・ボドムもNortherも、みんなリハーサル・ルームも同じだったから。それでペトリにヴォーカリストとして加入してもらおうと考えた。彼が加わって、ウォーメンの新しい時代、新しいスタイルが完成したんだよ。ペトリは最後のピースというか、彼が加わって、パーフェクトなサウンドになった。
ー もっとアグレッシヴな方向に向かおうと思ったきっかけは何だったのでしょう。
ヤンネ:数年前にチルドレン・オブ・ボドムが解散した。俺はチルドレン・オブ・ボドムの音楽の大ファンだったからね。チルドレン・オブ・ボドムが健在だった頃は、ウォーメンでは違うことをやろうという考えだった。サイド・プロジェクトとして。チルドレン・オブ・ボドムが無くなった今、曲を書いてみたら自然とずっとアグレッシヴなものが出来上がったんだよ。もう少々アグレッシヴなスタイルをやることが、とてもしっくり来たんだ。
ー つまりチルドレン・オブ・ボドムの遺志を継ぐという気持ちがあったということですか。
ヤンネ:いや、それはない。曲を書き始めた頃は、少々アグレッシヴにして、ヴォーカルもグロウルと思っていたけれど、サビはクリーン・ヴォーカルにしようと考えていたんだ。それで、最初はソイルワークのビョーン・ストリッドにヴォーカルを頼もうと思っていたんだよ。ちょうどパンデミック中で、彼もFacebookに「ヴォーカリストが必要だったら連絡をしてくれ」って書いていたから。そのことが頭にあって、最初の1-2曲書き上げた時に、サビはクリーンと考えていたから、ビョーンに連絡しようと思ったんだ。だけど、さらに曲が出来上がってくると、「ファック、思っていたよりずっとアグレッシヴになってきたぞ!」なんていう感じで、曲中ずっとグロウルにしようと考えはじめた。だから、アルバムを作り始めた時は、チルドレン・オブ・ボドムの遺志を継ごうとはまったく考えていなかったんだ。ただウォーメンのアルバムを作ろうというだけで。だけど、ペトリがヴォーカルをやると決まると、初期の構想よりずっとチルドレン・オブ・ボドムに近いものになった(笑)。仕上がりにはとても満足しているよ。
ー タイトルの『ヒア・フォー・ナン』(=誰かのためにここにいる訳ではない)には、どのような意味が込められているのですか。
ヤンネ:このタイトルも多少音楽性の変更に関係していて、俺はウォーメンの過去の作品も大好きだし、こんな奇妙なバンドをサポートしてくれているファンには大きな感謝をしているけれど、一方で俺たちは誰かを喜ばせるためにやってる訳ではなく、ただ自分たちのやりたいことをやっているということ(笑)。もちろん、誰の気分も害したくはないよ。ウォーメンをサポートしてくれる人には本当に感謝しているし。
ー 歌詞のインスピレーションはどのようなところから得ているのでしょう。
ヤンネ:日々の生活の中で、腹の立つことは色々とある。セカンド・シングルの「ヘル・オン・フォー・ホイールズ」は、飲酒運転の車に轢き殺されるという酷い話について。ウクライナで起こっている戦争についての曲もある。本当にクレイジーだよ。戦争からインスパイアされた曲は多いよ。本当に戦争というのは酷いものだからね。
ー アートワークについてはいかがですか。ホラー映画に出て来る家みたいな感じですが、何を表しているのでしょう。
ヤンネ:バンド写真がもともと同じ色使いだったんだ。カメラマンのアイデアで赤い光と青い光を使って。それで、アートワークも同じ色使いにしてみたらどうかと思ってね。そして、このアルバムの曲はほとんど俺のおばあちゃんの小屋で書いたから、アートワークにも小屋を使いたくてね。
ー Ultravoxのカバーが収録されています。これは意外な選曲ですが。
ヤンネ:そうなんだよ。チルドレン・オブ・ボドムは色んなカバーをやっていただろう?ブリトニー・スピアーズとか、ポップスなんかも含めて。それで俺もカバーする曲のアイデアが尽きていたのだけれど、バンドに入ったばかりのドラマーが、Ultravoxはどうかと。それで「それはいいね、ぜひやってみよう」ということになったんだ(笑)。楽しかったよ。ペトリのヴォーカルもクソアグレッシヴで。オリジナルとまったく違う仕上がりになったよ(笑)。
ー そもそもあなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのですか。
ヤンネ:5歳の時に、両親が俺にピアノのレッスンを始めさせたんだ。そして、10歳から18歳の間、ヘルシンキのポップ・ジャズ・コンセルヴァトワールに通って、ジャズ、ジャズ・ピアノを学んだ。チルドレン・オブ・ボドムが結成された頃、ちょうどピアノにうんざりしていて、少々ドラムもやってみた。チルドレン・オブ・ボドムに入ることになって、キーボードを始めたんだよ。ピアノとキーボードは似たような楽器に見えるかもしれないけれど、実際は全然違うんだ。だから、俺のバックグラウンドはジャズ・ピアノだけれど、チルドレン・オブ・ボドムに加入したことで、キーボーディストになったのさ。
ー ヘヴィメタルやエクストリーム・メタルにハマったきっかけは何だったのですか。
ヤンネ:実を言うと、ドラムのヤスカにチルドレン・オブ・ボドムに誘われた時点で、俺が聴いていた一番ヘヴィな音楽はMetallicaだったんだ。Metallicaは大好きだったけれど、エクストリーム・メタルについては知らなかった。それでチルドレン・オブ・ボドムのリハーサルに行くようになって、これはとても興味深い音楽だなと思ったんだ。そこからヘヴィメタルというものを色々と聴くようになった。チルドレン・オブ・ボドムに入る前は、エクストリーム・メタルのバックグラウンドはなかったのさ。
ー ウォーメンの今後の予定を教えてください。ツアーなども予定していますか。
ヤンネ:ドイツでのアルバムのリリース・ショウが予定されている。それからフィンランドでのショウもいくつか予定がある。今回ペトリがアルバム全体を通して歌っているけれど、1人のヴォーカリストがすべてを歌ったのは初めてのことなんだ。おかげでよりリアルなバンドになったと思うし、ぜひたくさんのショウをやりたいね。それに最大の夢は日本でプレイすることさ。
ー オールタイムのお気に入りのアルバムを3枚教えてください。
ヤンネ:それは難しいな。チルドレン・オブ・ボドムが終わった時、しばらく音楽を聴けなかったんだよ。今また色々聴くようになってきたのだけれど。オールタイムとなると、難しいな。ジャズも入れないとな。まず、チック・コリアの『Paint the World』。最高のジャズ・アルバムの1つさ。ポップスも入れよう。俺が最も影響を受けているアーティストの1人、プリンスの『Gold Experience』。最高のアルバムだよ。メタルは入れないでおこうと思う。Red Hot Chili Peppersの『Blood Sugar Sex Magik』。つまるところ、15歳〜18歳の頃に聴いていた音楽が、一番体に染み込んでいるだろう?俺がその年齢の頃に聴いていたのが、これらのアルバムなんだ。もちろんGuns N’ RosesやMetallica、Skid Rowなども聴いていたけれど、メタルのアルバムを挙げるのは違う気がするんだ。超正直に言うと、おそらくさっき挙げたレコードが、俺が一番インスピレーションを受けているものだと思うんだ。
ー あなたにとってチック・コリアが一番のキーボーディストですか。
ヤンネ:そう。ハービー・ハンコックとか、素晴らしいプレイヤーはたくさんいるけれど、チック・コリアのモダンなフュージョン・スタイルは最高だし、彼のバンドはいつも素晴らしかった。ドラムのデイヴ・ウェックルとかね。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ヤンネ:これまでウォーメンをサポートしてくれて、どうもありがとう。日本のファンがニュー・アルバムを気に入ってくれることを、本当に期待しているよ。音楽スタイルは変わったけれど、ウォーメンはウォーメンだし、さっき”Here for none”なんて言ったけれど、俺たちは日本のファンのためにここにいるからさ(笑)。日本は俺のお気に入りの国だから、新しいウォーメンが新しい音楽を引っさげて、日本に行かなくちゃならない。ウォーメンとして日本でプレイするのが、俺の夢なんだ。日本のファンのみんな、ぜひ実現させてください。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- ウォーメン・アー・ヒア・フォー・ナン
- ザ・ドライヴィング・フォース
- ア・ワールド・オブ・ペイン
- トゥー・マッチ、トゥー・レイト
- ナイト・テラーズ
- ヘル・オン・フォー・ホイールズ
- ジ・エンド・オブ・ザ・ライン
- デスズ・オン・イッツ・ウェイ
- ザ・コールド・アンノウン
- ダンシング・ウィズ・ティアーズ・イン・マイ・アイズ《ボーナストラック》
【メンバー】
ヤンネ・ウィルマン (キーボード)
ペトリ・リンドロス (ヴォーカル)
アンティ・ウィルマン (ギター)
イーリ・ヘイコ (ベース)
セッポ・タルヴァイネン (ドラムス)