元Mayhemのルネ”ブラスフィーマー”エリクセン(G)、元Morbid Angelのデイヴィッド・ヴィンセント(Vo)、そしてCryptopsyのフロ・ムニエ(Dr)。エクストリーム・メタル界のスーパースターが集結したVltimasが、5年ぶりのセカンド・アルバム『Epic』をリリース。ルネに色々と話と聞いてみた。
ー ニュー・アルバム『Epic』がリリースになります。デビュー・アルバムと比べて、どのような変化、進化があるでしょう。
ルネ:そうだな、一番の違いは曲がダイレクトであること。俺は75年生まれだから、最初のハードロック、ヘヴィメタル体験というのは70年代終わりから80年代の初めにかけて。『British Steel』やMotörheadのレコード。もちろんBlack Sabbathも。Judas PriestやKissの曲にはビッグなサビがあっただろう?聴けばすぐに歌える。おそらく俺はそこに惹かれたのだと思う。本当に良い曲だったということ。原点回帰と言うか、俺とデイヴィッドはそういうものに戻りたかったんだ。ファースト・アルバムは、ほとんどフロと俺で書いて、俺たちの間には、プログレッシヴなクリエイティヴィティがあった。デイヴィッドとの間では、もっとストレートな感じなんだ。そこが一番の違いだと思う。それから曲の構成も、ファーストに比べて基本的なものになっているよ。
ー デビュー作から5年を要した理由は何だったのでしょう。
ルネ:俺はポルトガルにいて、デイヴィッドはテキサス、フロはカナダにいるからね。実は19年のサマー・フェスティヴァルのあとにテキサスで集まって、ジャムをして、今回のアルバムに入っている曲の多くはその時に手をつけていたんだ。20年にはAbbathとのツアーでロシアに行って、そしてデイヴィッドが家に帰ったあと、何かが起き始めているという感じになった。イタリアでアウトブレイクが起きているとかで。俺も曲は書き続けていたのだけれど、Vltimasはオーガニックなバンドだからね。会ってリハーサルをやるというのがスタイルだから。だけど、国境が封鎖されたから、それは不可能だった。そんな状態が2年ほど続いただろ。それでデビュー・アルバムを出したはいいけれど、勢いを失ってしまって。また一からやり直しという感じだった。一からは言い過ぎかもしれないけれど、第2章というより、また第1章からやる感じになった。曲作りは続けていたけれど、それを仕上げるには、テキサスに集まる必要があったからね。2年半くらい無駄になってしまったよ。最終的にはスピリットを取り戻すことができたけれど、Vltimasにとっては苦しい時期だった。
ー 今回のアルバムでは、イペ・TVSがベーシストとしてクレジットされています。現在Vltimasの正式メンバーは4人なのでしょうか。ライヴではセカンド・ギタリストを加えて、5人編成でやっていますよね。
ルネ:イペはこのアルバムのレコーディング中に、正式メンバーになったんだ。ファースト・アルバムでは俺がベースを弾いたけれど、今回はやりたくなかったし、イペはとてもしっかりしたベース・プレイヤーだし。良いアイデアをたくさん持っているし、ドラムにきちんと合わせられるし、とてもヘヴィなベースを弾く。彼はオランダのライヴハウスで働いていて、そこも俺たちのリハーサル場所になっている。彼は曲作りなどには関わっていないけれど、バンドのロジスティクスを色々と手がけてくれているんだ。という訳で、彼は正式メンバーになった。ライヴでは音を厚くするために、ポルトガルのセカンド・ギタリストも入れているよ。
ー タイトルの『Epic』というのは、非常にストレートで力強いものです。何故このタイトルにしたのでしょう。
ルネ:今回のアルバムには「ヴォレンス・ディスコーダント」というギターのイントロが入っている。これは20年頃に俺が書いたもので、「とてもエピックなサウンドだ」と思って、凄く気に入っていたんだ(笑)。それでこれを他のメンバーに送る時に、仮のタイトルを「Epic」としていたんだよ。ジャケットには鷲を使うことは決まっていてね。最初のライヴのステージのバックドロップにも登場していて、マスコットとは言わないけれど、俺たちのシンボルのような存在だから。それで、力強くてシンプルなタイトルにしようと思っていて、さらにデイヴィッドが俺がつけた仮タイトルと同じタイトルの曲を書くと決めてね。そのままアルバムのタイトルになったのさ。俺個人的には、このアルバムの仰々しさには自信があるし、『Epic』というのは強さ、うーん、何と言ったらいいかな、俺たちは自分たちのやっていることをはっきりとわかっているし、Vltimasというバンドの一体感を表していると思うんだ。
ー 今話に出ましたが、アートワークはとてもシンボリックなものになっています。
ルネ:そう、あれは19年のフェスティヴァルのバックドロップに使用した鷲。イタリア人アーティストのDaniel Valerianiが描いたものさ。今ではマスコットみたいな存在になっていて、バックドロップだけでなく、Tシャツのデザインにもなっている。アイコニックな存在だから、しばらく使い続けるつもりさ。
ー あなたはVltimas、Aura Noir、Earth Electricに加え、Ruïmというバンドも始めましたが、現在はインスピレーションに溢れている状態なのでしょうか。
ルネ:Ruïmをやった時、それからVltimasをやりにテキサスにいた時も、疲れ切っていたよ。1人で歌詞を書いたり、バンドの哲学を考える作業も、本当に疲れる。魂を込める必要があるからね。とても疲れていて、対面のセッションをやるのは大変だった。だけど、たくさんのリフやアイデアに溢れていたし、そう、やっぱり自分はクリエイティヴな人間なのだと思う。朝4時にベッドに入った途端、頭にリフが浮かぶ。すると部屋の電気をつけて、ガールフレンドは朝7時に仕事に行かなくてはいけないのに(笑)、朝の4時に起き上がって電気をつけて、リフを録音するのだからね。少々迷惑だろうな(笑)。実は今、7-8年ぶりのEarth Electricのアルバムも作っているんだ。やりたいと思ったサウンドにならなかったから、しばらく寝かせていたんだよ。今作っているのは、最高にヘヴィなやつ。ギターもダウンチューンして、俺も時々グロウル・ヴォーカルをやったり。ゴシックであると同時に、デス/ドゥームっぽくもある。とてもヘヴィでダークな作品になるよ。4月にはフランスに行って、Ruïmのセカンド・アルバムも作る予定さ。やれる限りは続けていくつもり。
ー 最近はどんな音楽を聴いているのでしょう。
ルネ:前回話した時と変わっていないよ(笑)。まったく同じ。最近聴いているのは、今もスティーヴ・ハケットやジェネシス。いまだに70年代のものばかり。80年代のものも聴くけれどね。KISSとか。あとはRainbow、Deep Purple。それ以上にハードなもの、エクストリーム・メタルはほとんど聴くことはない。聴くとしても古いDarkthroneやBathoryくらい。ピュアなアンビエントを聴くこともある。特別なものは聴いていないよ。たいていは気分次第。いずれにせよ、ここ5-10年聴くものは変わっていない。何で新しいものはチェックしないんだろう。まあ、ノスタルジアかな。前回も言ったRenaissanceもよく聴いているよ。それからThe Who。The Whoはよく聴いているんだ。『Tommy』や『Quadrophenia』。素晴らしいレコードだよ。
ー Vltimasの今後の予定を教えてください。
ルネ:直近で決まっているのはアルバムのリリース・ショウ。オランダで2回、デンマーク、それからInferno Fesitavalでやる。それからアテネでVio-lenceとのライヴがある。
ー それはいいですね。
ルネ:そうなんだよ。俺はVio-lenceが大好きで、まあ、ファースト・アルバムだけだけど。ファーストは本当に良いよ。それからサマー・フェスティヴァルをやって、Immolationとのコ・ヘッドライナー・ツアーも計画している。まだ決定ではないのだけれど。あれは何て言うタイトルだっけ、Into何とか?あれ、Immolationのファーストって何だっけ?
ー 何とかPossessionですよね。
ルネ:そうそう、何とかPossession。
ー 『Dawn of Possession』。
ルネ:そうそう!あれは素晴らしいデス・メタルのアルバムだよ。ちょっと変わったバンドともツアーをしたいんだよね。みんな俺たちのことをデス・メタル・バンドだと思っているけれど、俺はそうは思わない。俺の書くリフはデス・メタルとは無関係だと思うんだ。CryptopsyやMorbid Angelのメンバーがいるから、デス・メタルだと言いたくなるのだろうけれど、特に今回のアルバムは、それ以上のものがあるよ。なので、違ったバンドともツアーをしたのだけれどね。いずれにせよImmolationは素晴らしいバンドだけれど。
ー Vltimasの音楽がデス・メタルではないとすると、何なのだと思いますか。
ルネ:「Miserere」にはスラッシュの要素があるし、「Mephisto Manifesto」なんかはほとんどハードなヘヴィメタル・ソング、エクストリーム・ヘヴィメタル。「Nature’s Fang」はまったく違って、いくつかのリフにはブラックなフィーリングがある。ピンポイントにこういうものをやっていると言うのは難しいな。君はどう思う?
ー 難しいですね。デイヴィッドはかなりメロディをつけて歌っていますし、確かにデス・メタルではないですよね。他に近いバンドもいないですし、非常にオリジナルなスタイルだと思います。
ルネ:確かに俺も、他にこういうスタイルのバンドを知らない。結局エクストリーム・メタルと言ったところかな。あまり複雑なことは言いたくないし、カテゴライズをするのが俺の役目でもないし。俺はただ自分のやりたいことをやっているだけだよ。誰にも「これをやってはダメだ」とは言わせない。何でもやりたいことはやれるんだ。次のアルバムは究極にブルータルなものになるかもしれないし、アコースティックになるかもしれないよ。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ルネ:ぜひまた君達の素晴らしい国に行ってプレイしたい。日本の大ファンなんだ。一度しか行けていないけれど、その美しさ、文化には息を呑んだよ。みんなぜひ心と耳を開いてアルバムを聴いて、俺たちの旅についてきて欲しい。
文 川嶋未来