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エイドリアン・ヴァンデンバーグ
独占インタビュー

私にとってヴァンデンバーグは
新鮮でダイナミックな、歴史的な名前を持つ
"まったく新しいバンド"さ。

                                   

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文:川嶋未来

ヴァンデンバーグ名義としては、実に35年ぶりとなるニュー・アルバム『2020』をリリースするエイドリアン・ヴァンデンバーグに、色々と話を聞いてみた。本インタビューが行われたのは4月13日。会話のスタートは、やはり全世界を脅かしているコロナ・ウィルスからだ。

 

 

エイドリアン:ハロー。元気かい?こんな状況だけど、調子はいいよ。みんな家にこもっているから外は静かだし、とにかくリラックスするようにしている。音楽もあるし、コロナにさえかからなければね。

 

— 日本も状況がどんどん悪化しているようで、正直恐ろしいです。終わりも見えないですし。

 

エイドリアン:もちろん恐ろしいけど、私はとてもポジティヴな人間だからね。こんな状況からも何か良いものは生まれるかもしれないし、遅かれ早かれウィルスもコントロール下におかれるはずだしね。一度そうなれば、新しいウィルスもそうすぐには出てこないだろう。SARSはいつだったっけ。10年くらい前?あれも新しいウィルスで、みんな恐れていたけど、今は収まっているだろう?コロナもいずれそうなるよ。考えすぎると恐ろしくなるからね。あまり考えないようにはしている。本当に非現実的なことだよね。

 

— 今はどちらにいるのですか。

 

エイドリアン:私のホームタウンのエンスヘーデというところで、ドイツとの国境から5kmくらいにある。オランダの東側なのだけど、ご存知の通りオランダはとても小さいからね。東側から西側のアムステルダムまで2時間で行けてしまう。小さい国なんだよ(笑)。

 

— オランダの状況はどのような感じですか。

 

エイドリアン:他と同じくらい悪いよ。だけど、ここ数日は感染者の数は減ってきている。もちろんみんな家にいるわけだから、その影響は大きいけどね。中国ではまた感染者が増えたという記事を読んだけど、中国は活動の再開が早すぎたんじゃないかな。オランダではお店などの再開にはゆっくりと時間をかけて取り組もうとしている。それが数字に表れはじめているんじゃないかと思う。

 

 

ー ではインタビューを始めましょう。ヴァンデンバーグという名前でのアルバムは35年ぶりです。なぜ今、ヴァンデンバーグ名義でアルバムを発表しようと思ったのでしょう。さんざん聞かれている質問だと思いますが。

 

エイドリアン:まあ、でも論理的な質問だよ。ヴァンデンバーグの名前を使うことについては、私も色々と考えなくてはいけなかったから。そこには2つの重要な理由がある。1つはムーンキングスのヴォーカリスト、ヤンのこと。周知のとおり、彼は非常に大きな農業に関する会社を持っていて、せいぜい1−2日しか休めないんだ。それだとオランダ国外でのライヴは殆ど不可能さ。私は海外をツアーするのが大好きなんだ。オランダのような小さな国では14−15回のライヴ、フェスティヴァルをやれば、それで終わりだからね。それが理由の1つ。もう1つは、音楽的にもっとハードで、速く、深いものを探求したかったから。ムーンキングスの名前で違うシンガーを入れて、『2020』のような音楽をやるというのはピンと来ないものだったんだ。それで、ムーンキングスをリスペクトし、そのファンのために知っている人たちにはムーンキングスをムーンキングスのままにしておくことにしたんだ。何年かのうちには、また同じラインナップでムーンキングスをやる可能性もあるわけだし。レコード会社から「ヴァンデンバーグ名義でやっては」と提案されたときに、ただノスタルジックな気持ちでやるのではなく、どうせやるのなら、信じられないような素晴らしいシンガーやラインナップでなければ意味がないと思ったのだけど、その通りになったと思うよ。私はロニー・ロメロの大ファンだし、ドラマーもベーシストも素晴らしい。私にとってこれは新鮮でダイナミックな、歴史的な名前を持つまったく新しいバンドさ。素晴らしいことだと思うよ。

 

— やはり、あなたにとってヴァンデンバーグ名義で作品を発表するというのは特別なことですね。

 

エイドリアン:間違いないね。多くの人が知っているとおり、80年代のメンバーたちは、「ヴァンデンバーグ」というバンド名の所有権を巡って私を訴え、その名前を使えないようにしようとした。そのせいでせっかくの当時の素晴らしい思い出が台無しになってしまっていたからね。ヴァンデンバーグの名で素晴らしいメンバーと共に素晴らしいアルバムを作れて、訴訟による嫌な思い出を払拭できたよ。この名前が使えてとてもハッピーさ。

 

ー ニュー・アルバムの内容は、特に80年代のアルバムと比較場合、どのようなものだと言えるでしょう。

 

エイドリアン:80年代にやったハードな曲とのつながりは大きいと思う。「This Is War」とか、「Waiting for the Night」や、ファーストに入っていた「Wait」とか、「Your Love Is in Vain」あたりの、当時のヴァンデンバーグのヘヴィな曲は、今回の「Shadows of the Night」や「Shout」なんかとつながりがあるよ。私にとっては、初期のヴァンデンバーグのサウンドを『2020』に持ち込むというのは自然な展開だった。

 

— やはり意識したのは最初の2枚ですか。

 

エイドリアン:そうだね。だけどサードでも「Fighting against the World」や「Dressed to Kill」みたいな曲とのつながりがあると思う。ヘヴィな曲はね。というのも、当時ああいったサウンド、当時のバンド、スコーピオンズやマイケル・シェンカー、ヴァン・ヘイレンなどはヘヴィだと考えられていたよね。もちろん、今は変わってしまったけど。もし当時、今のような知識があったら、『2020』のようなアルバムを作っただろうね。

 

— ルディ・サーゾ、ブライアン・ティッシーが参加していますね。

 

エイドリアン:ルディとブライアンにアプローチしたときは、まだこのバンドのラインナップが決まっていなかったんだ。アルバムの締め切りが迫っていたから、彼らにプレイしてくれないかと聞いてみたら、「ぜひに」ということだった。ところが、レコーディングを始める2週間前になって、クーンとランディを見つけたので、再度ルディとブライアンに連絡をして、数曲ゲスト参加ということでも良いかと確認したら、もちろん構わないと。結局彼らがスペシャルゲストとして参加してくれて、とてもハッピーだよ。2人ともとても良い友人だから、彼らと一緒にスタジオに入れただけでも良かった。

 

— やはり、バート・ヒーリンクに再び声をかけるという選択肢はなかったのでしょうか。

 

エイドリアン:それはなかった。やっぱり数年前の訴訟の件があったから、私と彼らの間の雰囲気がね。それに、バートのことはリスペクトしているけど、ロニーは別次元のヴォーカリストだよ。リッチー・ブラックモアと一緒にやっているわけだし。ロニーの表現力は本当に素晴らしい。深い、非常に感情的な表現ができるというのは私にとってとても重要なこと。ロニーは歌詞を深く感じることができるんだ。バートは当時あまり英語がわからなかったということもあって、歌詞をよく理解していなかった。テクニック的には優れたシンガーだったけど、感情的にはね。ロニーの感情的な掘り下げはとても印象的だよ。

 

 

— ロニーのことはレインボーを通じて知ったのですか。

 

エイドリアン:そうだよ。5年くらい前だったかな。いや、6年前かな。リッチー・ブラックモアがレインボーのライヴをやるというので、だけど残念ながらロニー・ジェイムズ・ディオはすでに亡くなってしまっていたからね。誰が歌うんだろうと興味深く思ってYouTubeで見てみたら、ロニー・ロメロだったんだ。彼の歌に一発でノックアウトされてしまった。「彼は何者なんだ?名前も聞いたことなかったけど、本当に素晴らしい歌を歌う」ってね。それでヴァデンバーグの新しいアルバムを作ろうと思ったときに、ふと彼のことを思い出し、コンタクトしてみたんだ。アルバムの参加に興味はあるかって。そしたら、カヴァデールと私がアコースティックでやった『スターカーズ・イン・トーキョー』というアルバムが、彼がシンガーになろうと思ったきっかけだと。これは素晴らしい偶然だと思ってね。ロニーはレインボーで5年やっていて、私はホワイトスネイクで13年プレイしていた。その2人が一緒にやるということは、これらのバンド、私たちが大好きな、そして私たちが関わってきたバンドからの影響を聞けるということだよ。

 

 去年ロニーが日本に来たときに言っていました。興奮気味に、「絶対誰にも言わないでくれ、実はヴァンデンバーグと一緒にやるんだ」と。『スターカーズ・イン・トーキョー』のエピソードも教えてくれました。

 

エイドリアン:それは素晴らしい(笑)。それは面白いね(笑)。

 

— 現在正式メンバーは、ベースがランディ・ファン・デル・エルセン、ドラムがクーン・ヘルフストです。彼らの加入経緯を教えてください。

 

エイドリアン:さっきも言ったように、最初はルディやブライアンに連絡をとったわけだけど、私はオランダのシーンのことは全然知らなかったんだ。というのも、いくつかの例外、昔のフォーカスやゴールデン・イヤリングを除いて、オランダのロック・バンドから感銘を受けることがなかったから。だけど、できればオランダのミュージシャンを入れたいと思っていた。というのも、すでにロニーはオランダ在住ではなかったから、そこにアメリカやイギリスのミュージシャンを入れたら、それこそ面倒なことになりかねない。それでふと、オランダのドラム・マガジンに毎年出ているベスト・ドラマーのリストのことを思い出したんだ。これは、ドラマーたちが投票をするのだけど、クーンはそこでベネルクスのベスト・ドラマーに7年連続で選ばれていたんだ。彼のことは知らなかったので、YouTubeで見てみたら凄くてね。彼のドラムソロを見て、「こんな素晴らしいドラマーを、なぜ今まで知らなかったんだ!」って思った。コンタクトしてみたら、ずっとこんなオファーを待っていたと。彼は世界レベルのドラマーだけど、オランダではこの世界ではあまり多くのことが起こらないからね。ランディは、オランダの音楽学校で教師をしている有名なベーシストからの紹介だった。まだ27歳だけど、素晴らしいベーシストだし、レッド・ツェッペリンやレインボーがお気に入りだからと。それでコンタクトしてみたら、一発で決まった感じだった。クーンとランディは、まるで20年間一緒にやってきたみたいにピッタリ来てね。とてもタイトで。2人を見つけられて、とてもハッピーだよ。

 

ー クーンはエピカのライヴ・ドラマーとして知られているし、ランディはタンクのベーシストですよね。ヴァンデンバーグとエピカ、タンクという組み合わせはとても面白いと言うか、意外と言うか。

 

エイドリアン:わかるよ(笑)。クーンはもともととてもプログレッシヴな音楽をやっていたんだ。とても複雑なね。エピカは女性ヴォーカルの、ゴシックのようなバンドだけれど。オランダでは、というかアメリカでも同じだけど、この世界でミュージシャンが生き残るためには、幅広い射程を持っていなくてはいけない。ランディも数年前タンクに誘われて、これはツアーをしたりさまざまな経験をする良い機会だと思ったわけさ。オランダではミュージシャンへの選択肢は多くないから、インターナショナルなオファーがあったときは、それがどんなスタイルのバンドであれ、受けるべきなんだ。自分の好きなスタイルだけでインターナショナルにやっていくというのは容易ではないからね。色々なスタイルをこなすべきなのさ。私も20代の最初のころは、ジャズ・バンドやブルース・バンドでもプレイしていたよ。どんなものでもプレイした。それは良い経験になるからね。ランディはタンクでプレイしているけど、彼が好きなのは、レッド・ツェッペリンやレインボー、ディープ・パープルなどさ。クーンはもともと物凄くプログレッシヴなバンドをやっていたから、テクニック的にも素晴らしい。『2020』における彼のプレイに関する重要な点は、彼はテクニック的にもっと難しいことをやる余裕があるということ。だからこういうスタイルのロックを、非常にソリッドに叩けるんだよ。持っているテクニックのギリギリで叩くのではないから、グルーヴのある、味のあるプレイが可能なのさ。君が感じたように、私も彼がどのようなアプローチで叩くのか興味があったから、最初に話をしたんだ。「君に宿題を出す。ジョン・ボーナムやブライアン・ティッチー(注:とエイドリアンは発音)、イアン・ペイスなどのプレイを見てみてくれ」と伝えた。そしたら「実を言うと、私が初めて買ったレコードは、ディープ・パープルの『Live in Japan』なんです」って。「私もそういうドラマーを聞いて育ったのだけど、テクニック的にどこまでが可能なのかを試したかったんです」って。私のギターも同じだよ。ときにジプシー・ジャズなど、他のスタイルもプレイしてみる。そうすることによって、自分がプレイしたいスタイルに、ボキャブラリーが増えるからね。

 

 

— プロデューサーとしてボブ・マレットを起用したのは何故ですか

 

エイドリアン:ムーンキングスの2枚を自分でプロデュースしたから、今回はプロデューサーを入れてみるのも良いかと思ったんだ。新鮮な耳を持った人物、客観的な判断をする人物をね。同じことを繰り返すことはしたくなかったから。レーベルとマネジメントとも話してみたんだけど、どちらもプロデューサーを入れてみることに賛成だった。それで色々な候補を探していたんだけど、ボブ・マレットは最初に行き当たった人物の1人だった。彼と話してみると、すぐに返事があり、ぜひやりたいと。彼はルディ・サーゾとは非常に仲の良い友人であり、80年代の初めの頃、彼とルディ、フランキー・バネリで一緒にバンドをやっていたというから、彼しかいないと思ったんだよ。どういうサウンドにしたいかと聞かれたので、パーフェクトなバンドのリハーサルをステージの目の前で聞いているような感じ、それぞれのメンバーがラウドで新鮮でパリっとしていてダイナミックに聞こえ、すべて攻撃的で、モダンなアプローチのクラシック・ロックだと伝えると、彼も同じ考えだと。だからとてもやりやすかったよ。アルバムを聴いてもらえれば分かる通り、音はとてもオーガニックで、作り上げたものではなく、とても攻撃的でタイトでパリっとしているだろ。

 

— タイトルは『2020』と非常にシンプルです。このタイトルにはどのような意味が込められているのでしょう。

 

エイドリアン:そうだね、これが良いタイトルだと思ったのにはいくつかの理由があって、まず見た目が良いだろ(笑)。それにこれは新しいヴァンデンバーグであることを示している。古いのではなくてね。だから、ロゴも少しアップデートしたんだ。すぐにヴァンデンバーグだとわかると同時に、少し古びた感じも出している。このロゴも長いこと存在しているから、少し傷ついているんだ。クラシックであり、2020年の作品であるということがわかるようになっているということだよ。とても論理的で、とてもクリアだろ。それにこのタイトルは凄くパワフルだしね。歌詞か何かから抜き出した長ったらしい文章ではなく、「ジャーン、2020!」っていう感じで。ビッグでパワフルさ。

 

— そもそもの音楽との出会いはどのようなものだったのですか。

 

エイドリアン:実は先週、94歳になる母とその話をしたんだ。彼女は昔のことをとてもよく覚えていてね。彼女によると、私は4歳の頃、空になった父のタバコの箱にゴムを巻いて、それをビョンビョンとはじきながら家を歩き回っていたそうだよ。父と姉はクラシック・ピアノ奏者だったから、いつもピアノを弾いていてね。家にはいつも音楽が流れていた。6−7歳になると、自分の頭に流れているメロディをピアノで弾いてみたりもした。その後、ギターを聴いて、ジミ・ヘンドリクスは最初に聴いたギタリストだったけど、他にもスティーヴィ・ウィンウッドがギターを弾いているスペンサー・デイヴィス・グループの曲、「Keep on Running」なんかを聴いたり、スティーヴ・ウィンウッドがテレビでフェンダー・ストラトキャスターを腿あたりに、とても低く構えてリフを弾いているのを見たりしてね。「これはカッコいい、こういうことをやりたい」って思ったんだよ。ジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトン、ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズとか、ギターのリフを聴くたびに、これが自分のやりたいことだと思ったのさ。

 

— あなた自身への影響という意味では、クラシックではなくロック一辺倒だったということでしょうか。

 

エイドリアン:いや、クラシックからの影響もあるよ。私は楽譜は読めないし、ギターのレッスンも受けたことはないけれど、クラシックは私の頭の中に存在している。いつも家でかかっていたからね。ギターを弾くようになり、曲を書き始めると、いつでもクラシック的なものは出てきていた。ヴァンデンバーグのアルバムでやったアコースティック・ギターによるクラシックな作品も、私が思いついたものだよ。ホワイトスネイクの「Sailing Ships」なんかも同じ。母のためにちょっとしたメロディを書いたのだけど、それをデイヴィッド(カヴァデール)が聞いてね。「良い曲だね。メロディをつけて良いか」と言うので、もちろんだと。彼がヴォーカルを加えたあと、ラストにラウドなパートを付け加えることを思いついた。「天国への階段」が、突然ビッグなサウンドのパートに変容するみたいな感じ。そうやって「Sailing Ships」はできたのさ。

 

 

— ロニーやランディといった若いミュージシャンと一緒にバンドをやっていますが、現在の音楽シーンについてはいかがですか。80年代と比べて状況は良くなっていると言えるでしょうか。

 

エイドリアン:もちろん状況は違う。今は80年代の頃のようにレコードは売れないし、人々はただで音楽が聞けるからね。大きな違いさ。バンドの数もとても多いし、新しいバンドを始めるのは容易ではないだろう。何百万というバンドがいて、誰でもリハーサル・ルームでレコーディングができる。私やロニー、クーンやランディの共通点は、ハンドメイドのロックが好きだということ。例えばレッド・ツェッペリンなんかは、今も当時と同じように素晴らしく聞こえるよね。ディープ・パープルなんかもそう。彼らは今も、大きなフェスティヴァルでヘッドライナーを務めているだろ。ヴァン・ヘイレンやAC/DCも同じ。つまり、ああいう種類のロックは今もあの頃と同じように現役で、パワフルだということ。こういうバンドから影響を受けた新しいバンドは数多いけど、私見では、同じクオリティでやれているバンドは少ない。というのも、自分の音、スタイルを持ったシンガーやギタリストがいないからだよ。ジョー・サトリアーニやスティーヴ・ヴァイ、イングヴェイ・マルムスティーンになりたいギタリストはいくらでもいる。だけど、私が好きなギタリストというのは、例えば最初の5音を聞いただけで、それが誰かわかるものさ。ブライアン・メイ、ジェフ・ベック、ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・ヴァイ。彼らには自分のサウンドがあり、私にとってそれはとても大事なことなんだ。

 

— 例えばYouTubeなどで簡単にレッスン動画が見られたりとか、情報過多になっているのが原因なのでしょうか。

 

エイドリアン:その通りさ。12歳の子がギターを弾きたいと思ったとする。すると、インターネットで簡単にジョー・サトリアーニやスティーヴ・ヴァイの動画を見ることができる。ところが多くのキッズが忘れてしまうのが、すでにサトリアーニやヴァイというギタリストが存在しているということさ。シンガー同様、ギタリストにも自分の声というものが必要だというのに。例えば、ロニー(ロメロ)はディオやカヴァデール、それからメロディな面ではスティーヴ・ペリーからも大きな影響を受けている。確かにロニーもこういった影響を受けているけれど、ライン1つ聞けば、それがロニーだとわかる。彼自身のサウンドやアプローチがあるからね。その中に、時にディオやカヴァデールが聞こえることはあるけれど。パイを作るのと同じだよ。素材があって、アップルパイを作るのに、そこにもうちょっとシナモンを加えてみるとか、ナッツを入れてみるとか。素材は同じでも、そこに何かを加えて自分なりのパイ、音楽、絵画などを作るんだよ。ただ他人のコピーをするのではなく、自分の声に語らせるのさ。

 

— お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

エイドリアン:ウー、とりあえず順不同で。順番は日によって変わるからね(笑)。フリーの『Fire and Water』。ジミ・ヘンドリクスの『Axis: Bold as Love』。3枚目は難しいな、ヴァン・ヘイレンのファーストかな。

 

— では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

エイドリアン:みんな同じようなことを言うだろうからありきたりに聞こえるかもしれないけど、日本は私の心の大きな部分を占めていると本気で思っているよ。ヴァンデンバーグのファースト・アルバムで、私のキャリアは日本から始まったと思っているし、想像できるかぎりの最高の歓迎をしてくれるエモーショナルな人々のことを思うと、本当にすぐまた日本に行きたい。ムーンキングスのライヴでは、涙を流してくれるファンもいたからね。日本のファンはとても一途で、フェイスブックやレーベルなどにたくさんのメッセージをくれる。そういう一途なファンを見ると、とても心が温まるし、私には大きな意味のあることだよ。最高のアルバムを作るということは私にとってとても重要なこと。ファンをがっかりさせたくはないからね。日本のファンの存在は、私にとって重要なインスピレーションなんだ。一途な日本のファンたちに、ありがとうと言いたい。日本に行くのが待ちきれない。ぜひ、みんなにそう伝えてくれ。日本に行って、新旧のヴァンデンバーグの曲、レインボーやホワイトスネイクとか、素晴らしいセットリストを披露したい。ロニーはレインボーをやっているし、私はホワイトスネイクにいたからね。このバンドには歴史があるから、ぜひみんなが聴きたいという曲を盛り込んだ、長いセットリストでやりたいね。

 

文 川嶋未来

 


 

 

2020年5月22日日本先行発売

ヴァンデンバーグ

『2020』

直筆サインカード付CD

CD

【CD収録曲】

  1. シャドウズ・オブ・ザ・ナイト
  2. フレイト・トレイン
  3. ヘル・アンド・ハイ・ウォーター
  4. レット・イット・レイン
  5. ライド・ライク・ザ・ウィンド
  6. シャウト
  7. シットストーム
  8. ライト・アップ・ザ・スカイ
  9. バーニング・ハート2020
  10. スカイフォール

 

【メンバー】
エイドリアン・ ヴァンデンバーグ (ギター)
ロニー・ロメロ (ヴォーカル)
ランディ・ファン・デル・エルセン (ベース)
コーエン・ヘルフスト (ドラムス)

 

【ゲスト・ミュージシャン】
ルディ・サーゾ (ベース)
ブライアン・ティッシー (ドラムス)