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ウド・ダークシュナイダー
独占インタビュー

この50年間で、私が見せてこなかった面を見せたんだ
とにかくカヴァー・アルバムを作ってみて
最初のインタビューは少々緊張したよ
「一体みんなこの作品をどう思っているのだろう?」
ってね

                                   

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文:川嶋未来 Photo by tm-studios

元アクセプト、現U.D.O.の顔として、半世紀近くドイツのヘヴィメタル・シーンを牽引してきたウド・ダークシュナイダー。そんなウドが、カヴァー・アルバムをリリースする。今年4月に70歳を迎えるというウドに、色々と話を聞いてみた。

[インタビュー実施:2022年2月8日]

 

 

ー 今回カヴァー・アルバムを作ろうと思い立ったきっかけは、何だったのですか。

 

ウド:そうだな、カヴァー・アルバムは、時に批判の的になることもあるけれど、私の場合はまず第一にコロナのせいで十分に時間があったということ。それで2-3曲やってみて、どんな感じになるのか見てみようと。最初にアーサー・ブラウンの「Fire」をやって、その次にティナー・ターナーの「They Call It Nutbush」。それで「これは悪くないね、もっとやってみようか」みたいな感じになったから、カヴァーする候補をすべてリストアップした。私のキャリア初期、70年代、80年代にインスピレーションを受けた曲をね。それからステファン・カウフマンとも相談をして、「この曲は君に合ってるんじゃないか」なんて意見をもらって。カヴァーをする際はアレンジをして、オリジナルっぽくしたよ。まったく新しいアレンジメントを施した曲もあるよ。例えばアレックス・ハーヴェイの「Faith Healer」なんかは、彼は特別な雰囲気があるからね。あれをコピーするのは無理。だから、もう少々ヘヴィにして、私なりの雰囲気に変えたんだ。ローリング・ストーンズの「Paint It Black」なんかも、まったく新しいアレンジにした。とても興味深い作業だったよ。出来上がりにはとても満足している。それにこれは私自身への誕生日プレゼントでもある。2ヶ月後には70歳を迎えるからね。この50年間で、私が見せてこなかった面を見せたんだ。とにかくカヴァー・アルバムを作ってみて、最近インタビューをたくさんやっているのだけれど、最初のインタビューは少々緊張したよ。「一体みんなこの作品をどう思っているのだろう?」ってね。みんな「こういう作品は予想していなかったので、驚きました」という感じだよ。とてもハッピーさ。

 

ー いくつかの曲には「Udo Dirkschneider Version」という注記がありますが、これらは先ほど言われたように、かなりのアレンジが施してあるということなのでしょう。

 

ウド:そう。「Paint It Black」では、新たにギター・ソロを付け加えたりもした。それにカヴァーをする際、曲をアレンジする場合は、パブリッシャーの許可を取る必要があるんだ。それで、「Udo Dirkschneider Version」と入れてくれと言われたり。でも特に問題はなかったよ。ストーンズのパブリッシャーはとてもヘヴィだと聴いていたんだけどね(笑)。だけど、すぐに「ファンタスティック。やって構わないよ」と許可してくれた。とてもハッピーだったよ。

 

ー カヴァー対象はレッド・ツェッペリンからティナ・ターナーと、非常にヴァリエーションに富んでいますが、どのような基準で選んだのでしょう。シンプルに影響を受けた、好きだという以外にも、何か基準はありましたか。

 

ウド:もちろんどの曲も好きだというのがあるけれど、例えば「Faith Healer」なんかは、70年代、ディスコとかに行くといつもかかっていた曲で、とても気に入っていたから必ずカヴァーしたかった。どの曲もミュージシャンとして成長していく中で、自分の一部となったものばかりさ。モーターヘッドの「No Class」なんかはずっとお気に入りだし、AC/DCの「T.N.T.」、レッド・ツェッペリンの「Rock and Roll」、スウィートも大好き。ロニー・ジェイムズ・ディオが歌っている曲も絶対にやりたかった。だけど、様々なスタイルが混在していたから、ヴォーカル的には難しい部分もあった。今回「Kein Zuruck」というドイツ語の曲もカヴァーしたけれど、ドイツ語で歌うのは初めてだった。これはどう説明したら良いかな。この曲を02年か03年頃に聴いて、歌詞の内容が私のキャリアそのものだと思ったんだ。良い時もあれば、悪い時もあるけれど、決して振り返るなというもの。歌詞的にも私にピッタリだし、初めてドイツ語で歌ってみるのも面白いだろうと思ったんだ。ところが歌ってみると、英語で歌う方がよほど簡単だとわかったんだ(笑)。ドイツ語は難しいよ(笑)。

 

ー そういうものなのですね。

 

ウド:難しい言語なんだ。歌詞の内容を感じながらドイツ語で歌うのは容易ではなかったけれど、ひとまずうまく行ったよ。

 

ー となると、このアルバムの中で一番大変だったのは、そのドイツ語の曲ということになりますか。

 

ウド:そうだね。ある意味あの曲が一番大変だった。私の母国語だというのにね(笑)。面白いものさ。英語は流れがあって、歌っていくのが楽なんだ。まあとにかくうまく行ったし、仕上がりには満足しているよ。

 

ー ほとんどの人は母国語で歌うのが一番楽なものですよね。

 

ウド:ほとんどの人にとってはね(笑)。

 

 

 

ー ファンはこのアルバム、あるいはDirkschneider and the Old Gangで、あなたとピーター・バルテスが再び手を組んだことを嬉しく思っていると思うのですが。

 

ウド:U.D.Oの『We Are One』で、これはドイツの陸軍のバンドとのコラボだったのだけれど、「Where the Angels Fly」という曲がアルバムに入り切らず残っていてね。他にもう2曲アイデアがあったので、これも仕上げてしまおうと。Dirkschneider & The Old Gangというのはチャリティとして始めたんだ。パンデミックのせいで、バンドもクルーも仕事がなくなってしまったから。このEPで得た収益は、すべてミュージシャンとクルーに渡す。ピーターと仕事をするのはいつでも面白いよ。彼には『We Are One』にも参加してもらったし。ピーターとは問題があったことはないし。彼もアクセプトを脱退して、私の知る限りではソロ・アルバムなんかも作っているようだ。このカヴァー・アルバムを作ろうとステファン・カウフマンのスタジオで作業をしていた時に、ピーターが「素晴らしいアイデアだ。私がベースを弾くよ」と言い出してね。それで「弾いてくれるならぜひ」なんて感じで。私にとってピーターは、最高のヘヴィメタルのベーシストの一人だからね。素晴らしい仕事をしてくれたよ。ドラムはすべて私の息子がプレイして、ユーライア・ヒープの「Sympathy」では、マシアス・ディース(元U.D.O.)がギターを弾いてくれた。それからアレンジをやったのはドイツ人で、君は知っているかわからないけれど、ドイツでは有名なヘレーネ・フィッシャーという女優がいて、そこでギターを弾いている人物(Peter Koobs)なんだ。彼はヘヴィメタルも大好きで、ぜひこのアルバムにも参加したいということだった。ステファン・カウフマンもアレンジに携わったし、私のヴォーカルのプロデュースもやってくれた。それからThe Old Gangや『We Are One』でも一緒にやった女性ヴォーカリストのマニュエラ(ビバート)も参加しているし、とても楽しかった。アルバムがリリースされたら、世界はどう反応するだろうね。やって良かったよ。

 

ー あなたとピーター、ステファンが揃って、まさに”The Old Gang”が集まった感じですよね。

 

ウド:(笑)。確かにある意味そうだね。多くの人から「The Old Gangとしてアルバムは作らないんですか」って聞かれる。私としては「ノー」とは言いたくないけれど、少なくとも今のところはない。時間が必要なんだ。5曲だけ作ってアルバムなんて言うわけもいかないしね。10曲以上は必要になる。だけど、今は私も忙しい。ピーターもステファンも忙しい。曲を作っていって、いつか十分な曲が出来上がったらアルバムを作るかもしれないけど、今は約束はできないな。やるかもしれないけど、そうだとしても2年後とか。今ははっきりとは言えない。

 

ー 今回このアルバムをU.D.O.でもなく、The Old Gangでもなく、個人名でリリースした意図は何だったのですか。

 

ウド:これはとてもパーソナルなアルバムだから、U.D.O.でもThe Old GangでもDirkschneiderでもなく、ウド・ダークシュナイダーという名義で出したかったんだ。それにさっきも言ったように、自分への70歳の誕生日プレゼントにしたかったし(笑)。

 

ー そもそもヘヴィな音楽にハマったきっかけは何だったのでしょう。

 

ウド:14歳頃かな、ビートルズやローリング・ストーンズなんかを聴き始めた。それからスウィート、テン・イヤーズ・アフター、ユーライア・ヒープ、ブラック・サバスみたいなバンドに興味を持つようになった。ディープ・パープル、それからAC/DCなどが出てきて。そしてマイケル・ワーグナーとアクセプトを始めて、たくさんのラインナップ・チェンジがあって、79年にアルバム・デビューを果たした。このアルバムも違うドラマーで、ステファンが入ったのは『I’m a Rebel』からだけれど。ともかく音楽にはずっと興味があって、最初は趣味で、それがスクール・バンドになってと、一歩ずつ進んでいった感じかな。私の中では、ドイツで一番ヘヴィでラウドなバンドをやりたいというヴィジョンがあったんだよ(笑)。スコーピオンズは大好きだったけれど、まだハードさが足りなかった。良いバンドだし、今回のカヴァー・アルバムでも「He’s a Woman, She’s a Man」を取り上げたけれど、私はもっともっとハードでラウドなものをやりたいと思っていたんだ。それで76-77年くらいからアルバムを作り始めて、その後はご存知の通りさ。

 

ー 自分がヴォーカリストだと気づいたのはいつですか。

 

ウド:最初はキーボードを弾きながら歌っていたんだよ。だけどキーボードはあまりうまく弾けなくてね。そのうち「君の声はスペシャルだね」とか、「ずいぶん高い声が出るね」なんて言われるようになって、それでキーボード・プレイヤーになるのはやめて、ヴォーカルに専念しようと(笑)。だけど、一度もレッスンを受けたことはないし、誰かのコピーをしようと思ったことはない。自分自身のテクニックを見つけて行ったんだよ。とてもユニークな歌い方だと思う。誰も私みたいには歌えないよ。ユニークであるということは、この世界においてとても重要なことさ。

 

ー 確かにあなたの歌い方は、他のヴォーカリストとはまったく違うものです。

 

ウド:その通りだよ。

 

ー 歌い方もすべて独学なのですね。

 

ウド:そうだよ。だけど、特別何かをやった訳じゃない。自然にこういう声が出てくるんだ。ステージに上がる前も、控室でウォームアップをしたことなんて一度もない。ただステージに上がってこの声を出すだけ。それに幸運なことに、喉にトラブルがあったこともない。毎年医者に診てもらっているけれど、毎回「何も問題なし」と言われるよ。私はラッキーなんだ。

 

ー では、若い頃にお気に入りのヴォーカリストというのはいましたか。

 

ウド:もちろんいたよ。最初はミック・ジャガー。それからオジー・オズボーン。ボン・スコットももちろん私のお気に入りの一人。イアン・ギラン。ロッド・スチュワートの声は、特にフェイセズの頃はクレイジーだけれど、大好きだった。このあたりが私のお気に入りのヴォーカリストだけれど、さっきも言ったように、誰かをコピーしようと思ったことはないよ。でも、一番のお気に入りということになると、やっぱりロニー・ジェイムズ・ディオかな。彼はこの世を去ってしまったけれど、私にとって最も偉大なヴォーカリストの一人さ。

 

ー 現在のロックやヘヴィメタルのシーンをどう見ますか。

 

ウド:そうだなあ、全部話そうとするととても長くなってしまうけれど、個人的意見としては、ヘヴィメタル・シーンにはバンドが多すぎると思う。それに変化もとても早い。例えば、何かバンドが出てきて、ある程度有名になるとする。ところが2年も経つと、消えてしまう。昔のバンド、例えばアイアン・メイデンやハロウィンなんかはそうじゃないよね。AC/DCやサクソンも、今でも大人気だし。ところが最近のバンドは、出てきたかと思うと、あっという間にバイバイ。これはビジネスの裏の問題だと思うのだけど。私たちやアイアン・メイデン、オジー・オズボーン、ブラック・サバスなんかが始めた頃は、レコード会社がお金儲けを始める前に、4-5枚のアルバムを猶予としてもらえたものさ。バンドを立ち上げる期間をね。ところが今はレコード会社にそれほどの経済的余裕がないから、アルバムを作らせて思ったほど売れないなとなると、すぐ次のバンドに行ってしまう。ここ20-30年で、物事の進みがとても早くなっているんだよ。もちろん興味深いバンドもいるけれど、ビジネスのやり方というものがまったく変わってしまったのだと思う。私たちのような古いバンドは、ツアーをしたりで今でもやっていけるけれどね。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ウド:間違いなくディープ・パープルの『Made in Japan』。それからレインボーの『On Stage』。3枚目は何だろう。たくさんあるからなあ。AC/DCの『Highway to Hell』。

 

ー 今後の予定を教えてください。カヴァー曲でのコンサートなどは予定されているのでしょうか。

 

ウド:いや、カヴァーだけのコンサートというのはやるつもりはないよ。アンコールで今回カヴァーした曲をいくつかプレイするかもしれないけれどね。U.D.O.のニュー・アルバムをサポートするツアーもまだやれていないし。本当なら今もロシアにいるはずなんだ。なのに、こうやって家にいる訳だからね(笑)。予定されていた南米ツアーも、今のところ6月に延期になっている。5月から夏にかけては、フェスティヴァルが開催されるかもしれない。ロシアには10月に行く予定。ヨーロッパ・ツアーも年末に延期になっている。とりあえずツアーを再開できそうではあるけれど、祈るしかないね。

 

ー ヨーロッパの国々は規制を撤廃し始めているようですが、今年の夏はフェスティヴァルは復活すると見ていますか。

 

ウド:現状どこへでも行くことはできる。だけど、コンサートに関しては、例えば1000人の会場に200人しか入れられないみたいな規制があって、プロモーターとしてはコンサートをやる意味がない状況なのさ。だけど、デンマークやスウェーデン、イギリス、スペイン等、次々と規制を撤廃し始めていて、マスクの強制もなく、好きにどこへでも行けるようになってきている。ゆっくりと以前の状況に戻り始めているよ。ドイツは、私個人的にはあまりに話し合いに時間をかけすぎているように見えるのだけど、どうなるだろうね。おそらく3月末くらいには、ヨーロッパは普通の状況になるんじゃないかな。夏のフェスティヴァルもあると思うよ。もしかしたら検査みたいなものをやりながらになるかもしれないけれど、例えばヴァッケンなんかには世界中から人が集まるから、どうやってテストをするのかわからないけれど、少なくともヨーロッパに住んでる限りは問題がなくなると思う。

 

ー 日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ウド:日本のファンに何を言ったらいいかな。とにかく本当にまた日本に行きたいよ。日本という国も、オーディエンスも大好きなんだ。日本に行くといつも楽しいし、ぜひまた近いうちに行きたいね。

 

 

文 川嶋未来

 

 


 

 

 

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2022年4月22日発売

ウド・ダークシュナイダー

『マイ・ウェイ』

CD

【CD収録曲】

  1. フェイス・ヒーラー [アレックス・ハーヴェイ]
  2. ファイア [クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン]
  3. シンパシー [ユーライア・ヒープ]
  4. ゼイ・コール・イット・ナットブッシュ (ウド・ダークシュナイダー・ヴァージョン) [ティナ・ターナー]
  5. 銀嶺の覇者 [レインボー]
  6. ヘル・レイザー [ザ・スウィート]
  7. ノー・クラス [モーターヘッド]
  8. ロックン・ロール [レッド・ツェッペリン]
  9. ザ・ストローク (ウド・ダークシュナイダー・ヴァージョン) [ビリー・スクワイア]
  10. 黒くぬれ (エディット・ヴァージョン) [ザ・ローリング・ストーンズ]
  11. ヒーズ・ア・ウーマン・シーズ・ア・マン [スコーピオンズ]
  12. T.N.T. [AC/DC]
  13. ジェラシー [フランキー・ミラー]
  14. ヘル・ベント・フォー・レザー [ジューダス・プリースト]
  15. ウィ・ウィル・ロック・ユー [クイーン]
  16. カイン・ツリュック [ヴォルフスハイム]
  17. マイ・ウェイ [フランク・シナトラ]

 

【メンバー】
ウド・ダークシュナイダー(ヴォーカル)

 

ピーター・バルテス(ベース/コーラス)
ピーター・クーブス(ギター)
ステファン・カウフマン(ギター)
スヴェン・ダークシュナイダー(ドラムス/コーラス)