元アクセプトのピーター・バルテス(B)を新たに迎え、ニュー・アルバム『Touchdown』をリリースするU.D.O.。フロントマンのウド・ダークシュナイダーに、ピーター加入の経緯等、いろいろと聞いてみた。
ー まず、ピーター・バルテスがバンドに加入したことについて教えてもらえますか。
ウド:なるべく手短に話すことにしよう(笑)。ヨーロッパ・ツアーが始まって、2回目か3回目のショウだったかな。ミュンヘンで、ベースのTilenがステージで倒れてしまったんだ。2年続いたコロナの後だったから、ツアーをストップする訳には行かず、どうしようか考えた。ピーターとはDirkschneider & the Old Gangでも一緒に作品を作っていたから、よく連絡をとっていて、彼なら助けてくれるかと思ったんだ。それでピーターに連絡をしてみると、1時間くれと。そして「オーケー、やれるよ」と連絡が来て、Tilenが回復するまでヘルプをしてくれることになった。その後、あれはいつだったかな、確か南米ツアー中に、TilenはもうU.D.O.でプレイしたくないようだという話を聞いてね。何故かはわからないから、理由は聞かないでくれ。ある晩ブラジルで夕ご飯を食べながら、メンバーたちと「次のベース・プレイヤーはどうしようか?」って話し合っていたら、ピーターが「ぜひバンドに加入したいんだけど」って(笑)。「雰囲気もいいし、楽しいし、音楽も良いから」って。私も驚いてしまったよ(笑)。そして彼は「2日くれ」と言ってアメリカに戻ってね。彼はフロリダに住んでいて、他のプロジェクトなど、色々やっているんだ。結局2日後に「加入できる」と連絡が来た。それで「オーケー、ニュー・ベース・プレイヤーのピーター・バルテス!」ということになった訳さ。まあ私にとってはニュー・ベース・プレイヤーではないけれど(笑)、『Game Over』のツアーで久々に彼と一緒にステージ立った時は、やっぱり少々変な感じはしたな(笑)。今はすべてがうまく行っていて、彼もU.D.O.のすべてを楽しんでいるようだ。
ー ファンにとって彼の加入は最高のニュースでした。
ウド:そうだろうね。
ー ニュー・アルバム『Touchdown』の音楽性をどのように説明しますか。過去のU.D.O.の作品と比べ、異なっている点はあると思いますか。
ウド:前作よりも少々アグレッシヴな作品になっていると思う。色んなことがあったからね。コロナがあって、さらに洪水で息子の家がめちゃくちゃになってしまった。さらに(ギターの)アンドレイはウクライナに住んでいたから、新しいアルバムを作るに当たり、まずは彼をウクライナから脱出させなくてはならなかった。少々時間がかかったけれど、彼はその方法を見つけ、ポーランドとの国境まで来ることができた。彼は今ドイツに住んでいるのだけれど、あまりに酷い出来事だったから、脱出後も音楽に取り掛かれるようになるまでに、時間が必要だった。そんな訳で、みんな、何というかな、とにかくアグレッシヴな作品に仕上がったんだよ。さまざまな要素が入っているアルバムだし、私としてもとてもその出来に満足している。私の周りにいるメンバーは私よりも若くて、私とは違った音楽を聴いているということもある。私は典型的なオールド・ファッションな人間だからさ(笑)。彼らは色々と良いアイデアを思いつくし、息子と一緒に歌詞を書くようになってから、これで2枚目か3枚目かな?彼はヴォーカルのメロディを考えることもある。彼らは色々と私とは違ったアイデアを思いつくのだけど、私は決して「ノー」とは言わないんだ。いつもオープンマインドでいて、「どうなるかやってみよう」と言うようにしている。そうやってうまく行っているんだよ。
ー 今回ピーターは曲作りにも参加したのですか。それともベースをプレイしただけでしょうか。
ウド:今回はベースを弾いただけ。彼が加入した時、曲はすべて出来上がっていたからね。実はすでに次のアルバム制作を楽しみにしているんだよ(笑)。ピーターには色々なアイデアがあるから、次のアルバムはどんな感じになるだろうってね。まあ、でも今は『Touchdown』の方に専念しないと。
ー タイトル曲ではヴァイオリンが使われていますが、これはあなたとしては珍しいアレンジではないですか。
ウド:あれは面白いことに、『Touchdown』というアルバム・タイトルが決まって、「フットボールを歌詞にしたタイトル曲が必要だ」っていうことになってね。ギターのディー・ダマーズが曲を書いたのだけれど、ツアー中だったんだ。それで彼はギターを弾くことができず、キーボードでデモを作って、ヴァイオリンのサウンドでギター・ソロのようなものを入れていた。それを聴いてみたら、「これは面白いぞ。そのままヴァイオリンを使おう。こういう曲調にヴァイオリンなんて、誰も予想しないだろう」って(笑)。時にこういう偶然からアレンジが生まれることもあるんだよ。
ー アルバムのタイトルは『Touchdown』ですが、あなたはアメリカン・フットボールの大ファンなのでしょうか。
ウド:大ファンだとは言わないけれど、ここドイツで時々テレビで見ているよ。最初はタイトルが決まっていなくて、「どんなタイトルがいいかな」って考えていたんだ。これもやっぱりブラジルで、空港のスポーツ・バーでフットボールの試合が放送されていてね。タッチダウンのシーンを見て、私が「みんな、アルバムのタイトルは『Touchdown』にしよう」って。試合はとてもパワフルで、チームプレイでボールをゴールに持っていくだろう?みんなもアルバムにピッタリのタイトルだということで、デザインも含めてすべてフットボールにしたのさ。フットボールのプレイが、アルバムのサウンドにピッタリだったんだ。ピーターはアメリカ在住だから詳しくて、彼がフットボールのルールを説明してくれてね。実は最近ドイツでもフットボールが人気になってきているんだよ。
ー そうなんですね。ドイツでフットボールというと、むしろサッカーという印象が強いですが。
ウド:そう、もちろんサッカーは大人気だよ。だけど、最近はメジャーな放送局の一つが、アメリカン・フットボールも放映しているんだよ。
ー 歌詞の内容はどのようなものですか。どのようなところからインスピレーションを受けているのでしょう。
ウド:例えば「アイソレイション・マン」は、コロナやパンデミックについて。ステイホームで兄弟にも会えないというシチュエーションは、とても奇妙なものだった。「ファイト・フォー・ザ・ライト」は、ウクライナとロシアの戦争について。「ザ・フラッド(=洪水)」は、ドイツで起こった洪水について。さっきも言った通り、息子の家が流されてしまった。実話に基づいた曲だよ。「フォーエヴァー・フリー」は、自由な生活、自由な思想があると信じること。これもウクライナ、ロシアで起こっていることにも関係している。「ザ・ダブル・ディーラーズ・クラブ」は、不正というものが横行していて、人々のお金を奪っている人間がいるということ。金持ちはより金持ちになって、より良い生活を送るようになり、貧しいもたちはさらに貧しくなる。ミドルクラスはもはや存在しないのさ。多くは我々の周りで起こっていること。私は朝ニュースを見るのも好きだし。いつも新聞を読んでいて、「これは歌詞にいいな」と思う記事を見つけるんだ。私の歌詞の題材は、世界で起こっていることで、こういうことは、ドラゴンや中世、魔女みたいなものよりも重要だと思うんだ(笑)。そういうものは私たちらしいものではないよ。
ー 「サッド・マンズ・ショウ」には”Playing dirty tricks, couldn’t write a hit for life.(=汚い手を使い、生涯ヒット曲を一つも書けなかった)”というフレーズが出てきます。これは具体的に誰かを想定しているのでしょうか。
ウド:しているよ。だけど、名前は言いたくない(笑)。音楽業界にいる多くの人々は、心からやりたいと思っている音楽をやっていないと思うんだ。ただのフェイク・ショウで、本当にやりたいことをやれていないのさ。あの曲で歌っているのはそういうこと。
ー 今回もマーティン・プファイファーがプロデュース、ミキシングを担当しています。
ウド:お互いよく理解しあっているからね。それに彼はとてもアレンジ力に優れていてね。「ああ、その方がずっといいな」と思わされることがしばしばある。私たちはチームなんだよ。ステファン・カウフマンともいつも一緒にやっていて、彼はプロデューサーではないけれど、私のヴォーカルや息子のドラムのレコーディングをやってくれている。マーティンとステファンの関係もとても良いものなんだ。完全なチームワークなのさ。チームが勝っている時に、まあ勝っているという言い方はしたくないけれど、良いチームをわざわざ変える必要はないからね。
ー U.D.O.は2-3年に一枚というペースでアルバムをリリースし続けています。これはポリシーなのでしょうか。それともあくまでサイクルですか。
ウド:どうだろう。ツアーが終わる頃には新しいアイデアが湧いてきていて、そこからゆっくりニュー・アルバムに取り掛かるという感じなんだ。まあ、動き続けるのが好きだし、新しい作品を作るのも好きなんだよ。さっきも言った通り、ピーターが入って、すでに次のアルバムを作るのが楽しみだし。昨日のインタビューで、「多くのバンドが新作制作に乗り気ではない、アルバムも売れないからEPばかりを作っている」みたいなこを言われたのだけれど、間違いなく私の方向性はそういうものではないね。
ー アルバム・リリース後はやはりツアーですか。
ウド:そう、この後はたくさんのインタビュー、じゃなかった、ツアーをやる。まあインタビューもやるけれど(笑)。10月の終わりまで、たくさんのフェスティヴァルに出て、11月の初めからクリスマスまで、アメリカに行くことになると思う。コロナのせいで、アメリカ・ツアーは3度もキャンセルになっているからね。その後、年明けはヨーロッパ・ツアー。そして南米があってと、とても忙しくなる予定。多くの人が、「君の年齢でやりすぎじゃないか」と言うけれど、そんなことはない。ツアーが大好きだし、年齢なんてただの数字だから。自分がどう感じるか次第さ。体調も良いし、声の調子も良い。もう10年はやり続けられるかもしれないな。わからないけれど(笑)。
ー この間の東京でのショウを2晩とも見ましたが、とても声の調子が良さそうでしたね。
ウド:そうなんだよ。みんなに「何か特別なことをしているの?」と聞かれるのだけれど、ショウの前にウォームアップすらしない(笑)。ただステージに上がって歌うだけ。私はとてもラッキーなんだろうね。この業界にいる同じ年齢の人々の多くは、何らかの問題を抱えているから。
ー 現在ツアーに関してはコストの高騰に頭を悩ませているバンドも多いようですが。
ウド:パンデミック後は、ツアー用のバス、ホテル、クルー、あらゆるコストが上がっている。幸いにも私たちはツアーを続けられているけれど、問題に直面しているバンドも多いだろう。その点においても、私はラッキーだと言えるよ。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ウド:久しぶりに東京で2回のショウをやれて良かったよ。来年また日本にいって、もっとショウをやれるといいな。それまでの間、ぜひニュー・アルバム『Touchdown』を聴いていてくれ。Stay heavy!
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- アイソレイション・マン
- ザ・フラッド
- ザ・ダブル・ディーラーズ・クラブ
- ファイト・フォー・ザ・ライト
- フォーエヴァー・フリー
- パンチライン
- サッド・マンズ・ショウ
- ヒーローズ・オブ・フリーダム
- ベター・スタート・トゥ・ラン
- ザ・バトル・アンダーストゥード
- リヴィング・ヘル
- タッチダウン
【メンバー】
ウド・ダークシュナイダー (ヴォーカル)
アンドレイ・スミルノフ (ギター)
スヴェン・ダークシュナイダー (ドラムス/バッキング・ヴォーカル)
ファビアン・ディー・ダマーズ (ギター)
ピーター・バルテス (ベース)