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ブラックヴァルト
(Twilight Force)
独占インタビュー

オーケストラの要素、アドベンチャー
ファンタジーの要素はとても重要であり
俺たちのお気に入りのものだけれど
今回はちょうど良いバランスを見つけられたと思う

                                   

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文:川嶋未来

6月に来日公演を予定しているスウェーデンのシンフォニック・パワー・メタル・バンド、トワイライト・フォース。キーボード、ヴァイオリン等を担当するブラックヴァルトに話を聞いてみた。

 

 

 

ブラックヴァルト:やあ、日本でのコンサートをとても楽しみにしているよ。前回からずいぶんと時間が経っているし、日本ではいつも素晴らしい時間を過ごせる。パンデミックもあったし、やっとだよ。

 

ー スウェーデンのパンデミックの状況はいかがでしたか。

 

ブラックヴァルト:他のところと同じだよ。スウェーデンは少々奇妙な政策をとっていたのだけど、知ってる?

 

ー はい、ニュースなどで見ました。

 

ブラックヴァルト:ロックダウンもほぼなく、人々もマスクもせずで。まあ、俺はスタジオにこもってアルバムを作り、人々と接触しないようにしていたからあまり問題なかったのだけど。大変ではあったけれど、スウェーデンは人口密度も高くないしね。ソーシャル・ディスタンスを守るのもそんなに難しくないんだ(笑)。

 

ー ではコロナにもかからずですか。

 

ブラックヴァルト:パンデミック中は大丈夫だったんだけれどね。去年の春、アメリカのプログ・パワーでもらっちゃったよ(笑)。プレイした訳ではなく、ただ見に行っただけなのだけど。まあ、でもワクチンも3回打っていたし、大丈夫だった。

 

ー 今年の1月にニュー・アルバム『アット・ザ・ハート・オブ・ウィンターヴェイル』がリリースになりました。ファンなどからの反応はいかがですか。

 

ブラックヴァルト:とても素晴らしいよ。驚いたとまでは言わないけれど、何と言うか、いつでもインターネット上で不満を言う人はいるからね(笑)。みんな気に入ってくれているようで、賞賛ばかりさ。トワイライト・フォースのファンは、オーケストレーションを気に入っている人たちがいる一方、「もっとメタルっぽい方がいい。もっとギターを強調してほしい」という人たちもいる。トワイライト・フォースにとって、オーケストラの要素、アドベンチャー、ファンタジーの要素はとても重要であり、俺たちのお気に入りのものだけれど、今回はちょうど良いバランスを見つけられたと思う。エピックなオーケストラの要素と、もっとストレートなパワー・メタルの要素のバランス。古いトワイライト・フォースと、新しいトワイライト・フォースがうまく組み合わさったと言うのかな。とにかくほとんどが賞賛なので、とてもハッピーだよ。

 

 

ー そもそもレビューというのは気になりますか。

 

ブラックヴァルト:(笑)。まあ、音楽を作るものとして、レビューを見て何も感じないということは不可能だろうね(笑)。たまにはグサッと来ることもある。だけど、俺はあまり気にしないようにすることを学んだよ。自分たちのやりたいことはわかっているし、自分たちのできる限りのことをやった結果だし。まず自分たちがハッピーで、それが他の人たちにも響いて、彼らも楽しんでくれるのが一番なんだ。俺たちが音楽に注ぎ込んだ時間、努力、愛と情熱をみんなに感じて欲しい。「みんなが言っているから、もっとチューニングを下げてヘヴィにプレイしよう」なんていうことをやったら、それは自分自身に嘘をつくことになるからね。

 

ー 先ほどバランスの話が出ましたが、ニュー・アルバムは、過去の作品と比べた場合、どんな作品に仕上がっていると言えるでしょう。

 

ブラックヴァルト:良い質問だね。もともと俺たちはわりと厳格なパワー・メタル・バンドとしてスタートして、そこから非常に大仰なオーケストラを伴ったスタイルへと冒険していき、サード・アルバムの『ドーン・オブ・ザ・ドラゴンスター』ではうまくバランスを構築し、かつ新しいヴォーカリストのアリオンが加入した。今回のアルバムは、最初からアリオンの声を想定して作られているんだ。そこが前作とは大きく違うところ。どんなサウンドになるか、前もって分かっていて作ったんだよ。それにパンデミックのおかげで、時間もたくさんあったし。ミックスが終わり、その後数週間かけてじっくりと仕上がりを聴いて、「こことあそこは変えたいな」みたいな作業に時間をかけることができた。とても仕上がりには満足しているよ。もちろんどのアルバムにも満足はしていて、改めて聴いて「ここは変えたいな」みたいには思わないし、完成したものは完成したものと考えているけれどね。とにかく今回は時間と明確なアイデアがあったし、アリオンのレンジもわかっていて、それを念頭に曲も書いたし。ヴォーカルのレコーディング時も、友人としてお互いをよく知るようになっていたから、彼がパイナップル・ジュースが必要なこともわかっていたし(笑)。前回の時は知らなかったのだけど。だからやりやすかったよ。

 

ー あなたはヴァイオリンからピアノに至るまで、色々な楽器を演奏します。どのような音楽的バックグラウンドをお持ちなのでしょう。

 

ブラックヴァルト:メインの楽器はヴァイオリンなんだ。4歳から弾き始めて、今も続けている。ピアノは大人になってから、独学で学んだ。俺のバックグラウンドはクラシック。子供の頃からクラシックを演奏していたからね。バックグラウンドがクラシックだから、そこから映画のサントラなどを聴くようになるのはわりと当然だったんだ。今は毎日ヴァイオリンを練習する訳ではないけれど、自転車に乗るのと同じで、それでも弾けるのさ。

 

ー 音楽理論やオーケストレーションなども学んだのですか。

 

ブラックヴァルト:トワイライト・フォースでは、リンドが理論担当で、俺はもっと音を聴いてフィーリングで判断する方なんだ。スタジオで俺が「この方がいいんじゃないかな」なんて言うと、リンドが「いや、これはCメジャーだからここにはそぐわなくて」なんて言って、「いやでも聴いてみてよ、良いサウンドじゃないか!」みたいな会話になる(笑)。俺もヴァイオリンをやって来たから譜面は読めるけれど、トワイライト・フォースのために理論を使うことはなくて、これまで聴いてきたさまざまなアーティストのテクニックなんかを使ってオーケストラのアレンジをやっているんだ。

 

ー クラシックから出発後、どのようにヘヴィメタルと出会ったのですか。

 

ブラックヴァルト:ルーツに戻ると(笑)、俺は常に2つのまったく異なるサウンドやジャンルを混ぜ合わせることに興味があった。ヘヴィメタルには常に興味があって、ヘヴィメタルという訳ではないけれど、ガンズ・アンド・ローゼズみたいなハードロック、ニルヴァーナやラムシュタインとかね。同時に俺に馴染みのあったクラシックに近いものも探し続けていた。あの時のことははっきりと覚えているけれど、確か1998年、当時はレコード店に行って、あの頃はヘッドホンでCDを視聴できたよね?ちょうどラプソディが『Symphony of Enchanted Lands』を出した頃で、すでに『Legendary Tales』は出ていたけれど、俺は聴いたことがなかった。それで友達に勧められて、『Symphony of Enchanted Lands』を聴きに行って、今でもはっきり覚えているけれど、「何でこんなことが可能なんだ!」って、脚がガクガクと震えたよ。「メタルと俺が聴いてきたクラシックをこんな風にミックスできるのか!」ってね。本当にブッ飛んだよ。まるでマジックだった。あの時に、俺が惹かれるものの基礎が出来上がったのだと思う。その後ブラック・メタル・バンドでエレクトリック・ヴァイオリンやキーボードを弾いていたこともあるけれど、パワー・メタルとクラシックこそが、常に俺のハートの中にあるものなんだ(笑)。トワイライト・フォースを始めるまでには時間がかかったけれど、このバンドこそ、俺がラプソディを聴いて体験したことそのものを体現しているのさ。これこそが俺が作りたかったものだよ。

 

ー つまりトワイライト・フォースの音楽を説明するとしたら、パワー・メタルとクラシック、あるいは映画のサウンドトラックを混ぜ合わせたものということになりますか。

 

ブラックヴァルト:ラプソディがメタルと混ぜ合わせたのは、ヴィヴァルディやモーツァルトのようなクラシックだった。俺たちは、もっと現代のサウンドトラック、ジョン・ウィリアムズやハワード・ショア、『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなスタイルにフォーカスしていると思う。俺たちのインスピレーションは、ヴィヴァルディやチャイコフスキーではないから。とは言っても、もちろんすべてはそういうクラシックから派生して、受け継がれて来たものだけれど、俺たちが作りたかったのは、エピックなライトモチーフやテーマ、例えば『スーパーマン』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のサウンドトラックで聴けるもの。そういう意味で、俺たちのスタイルはメタルとサウンドトラックをミックスしたものと言えると思う。だから自分たちの音楽をアドヴェンチャー・メタルと呼んでいるんだ。アドヴェンチャー映画のような、冒険に出るようなメタルさ。

 

 

 

ー ではメタル・パートについては、どのようなバンドからインスピレーションを受けているのでしょう。

 

ブラックヴァルト:メタルに関しては、そうだな、俺は古いものばかり聴いているからね(笑)。そこまで古いものではないけれど、ラプソディのファーストとか、ルカ・トゥルーリのファーストとか。ディセクションやDawnのような、古いブラック・メタルを聴くこともある。メロディック・ブラック・メタルは、今でも時々聴きたくなるんだ。最近のバンドにはついていけてない。新しい作品が出ると、どんなものなのか軽くチェックをすることはあって、それでとても興味深いバンドを見つけることもある。今聞いている唯一の最近のバンドはアメリカのWilderun。オーペスがオーケストラとプレイしたらこうなるというサウンドの、素晴らしいバンドだよ。曲も素晴らしいから、本当に良いオーケストラルな新しいバンドを聴きたかったら、チェックしてみるといいと思う。それ以外は専ら昔の作品ばかり聴いているな。あとはビデオゲームのサウンドトラック。聴いているとリラックスしてインスピレーションを得られるんだ(笑)。

 

ー トワイライト・フォースはずっとファンタジックなテーマを扱っていますが、どのようなところに惹かれるのでしょう。

 

ブラックヴァルト:俺、というかバンド全員だけれども、そういうものに接して育ってきたからね。俺は『ウォーハンマー・ファンタジー・バトル』をプレイしたり、『ロード・オブ・ザ・リング』を読んだりと、常にファンタジーに接してきた。それに俺たちは現実の世界に生きていて、どこか別の場所に逃避できるというのも良いものだろう?魔法の世界とか。例えば『ロード・オブ・ザ・リング』などは、世界中のあらゆる世代の人々を惹きつけているよね。俺はこういう世界に接して来て、そしてそれがパワー・メタルにピッタリのテーマだと思う。ブラインド・ガーディアンも長い間『ロード・オブ・ザ・リング』を題材にしているよね。ラプソディも自分たちの世界を展開している。こういうタイプの音楽に、このテーマが合うと思うんだ。それに俺はファンタジーの世界についての歌詞を書くのも好き。例えばアルドリアという街について書く。そこからそれに関連する曲を書いていって、大きな世界を作っていけるのさ。今年はその世界を一生懸命作っていて、うまくすれば今年後半、音楽とその世界を繋ぐイカしたものを発表できるかもしれない。トワイライト・キングダムをより良いものにするもの。ステージにしてもそう。ステージに出ていって、ドラゴンや古代の神話、魔法の剣について歌うのだから、ジーンズとTシャツという訳にはいかない(笑)。自分たちが語る世界を生きなくてはいけないからね。ストーリー、そして音楽とステージが繋がって、一つの世界を体験できるんだ。俺はそういうものが好きだから、みんなも楽しんでくれているといいな。

 

 

ー メタル、クラシック、サウンドトラック、何でも構わないので、オールタイムのトップ・アルバム3枚を教えてください。

 

ブラックヴァルト:とても良い質問だね。何だろうな。そうだな、オールタイムか。ロリーナ・マッケニットの『The Mask and Mirror』。カナダのミュージシャンで、アイルランドや中東のようなフォーク・ミュージックをやっている。素晴らしいアーティストだよ。90年代の古いアルバムさ。『The Mask and Mirror』か『The Visit』。3枚か。10枚ならずっと簡単なんだけどね(笑)。これを聴いて育ったから、ガンズ・アンド・ローゼズの『Use Your Illusion I』。『II』でもいいかな。3枚目はやっぱりブラインド・ガーディアンの『Nightfall in Middle-Earth』。伝説的な素晴らしいアルバムだよ。そして決して色褪せない。今聴いても、すべての瞬間を楽しめる。まだまだ他にも素晴らしいアルバムはあるけれど、少なくともこの3枚を挙げておけば、俺としては嘘をついていないということになるな(笑)。

 

ー 来日公演が控えています。どんなステージが期待できるでしょう。

 

ブラックヴァルト:ヘッドライナー・ショウをやれるというのは素晴らしいことだよ。ステージに色々な要素を追加することができるからね。オーディエンスも参加できるような、アドヴェンチャーを提供するよ。お客さんともやりとりして、ストーリーを伝えていくのさ。ヨーロッパ・ツアーを終えているから、その延長のような内容になる。ちょっとしたサプライズもあるかもしれないな。あまりたくさんを明かしたくはないけれど(笑)。フェスティヴァルだと、40分ほどプレイしてバイバイという感じだけれど、ヘッドライナー・ショウなので、長いフルのセットをやるよ。お客さんとのやりとりも含め、誰にとっても興味深い楽しいショウになる。俺たちも楽しみにしているよ。

 

 

文:川嶋未来

 

 


 

【公演日程】
■Twilight Force Japan Tour 2023

6月23日(金) 仙台 MACANA [仙台]

6月24日(土) 赤羽 ReNY alpha [東京]

6月25日(日) HOLIDAY NEXT NAGOYA [名古屋]

6月26日(月) 梅田 amHALL [大阪]

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2023年1月20日発売

Twilight Force

『At The Heart Of Wintervale』

CD+直筆サインカード

CD

【CD収録曲】

  1. トワイライト・フォース
  2. アット・ザ・ハート・オブ・ウィンターヴェイル
  3. ドラゴンボーン
  4. ハイランズ・オブ・ジ・エルダー・ドラゴン
  5. スカイナイツ・オブ・アルダリア
  6. ア・ファミリアー・メモリー
  7. サンライト・ナイト
  8. ザ・ラスト・クリスタル・ベアラー

 

【メンバー】
アリオン(ヴォーカル)
リンド(ギター)
エレンディール(ギター)
ディアッシュ(ドラムス)
ボルン(ベース)
ブラックヴァルト(キーボード)