今年5月に衝撃の初来日を果たし、多くのメタル・ファンを魅了したフィンランドのディスコ・メタル・バンド、Turmion Kätilöt。ニュー・アルバムがリリースされるということで、ヴォーカリストの1人、MCラーカ・ペーに話を聞いてみた。
ー ニュー・アルバム『Reset』がリリースになります。過去のアルバムと比べ、どのような作品になっていると言えるでしょう。
MCラーカ・ペー:そうだな、過去のアルバムではたくさんのバックグラウンド・ヴォーカリストを使って曲にメロディを与えていて、俺とサクはスクリーミング・パートに集中していた。だけど今回は、バックグラウンド・ヴォーカルも全部バンドでやって、俺とサク(シャグ-U)もたくさんのメロディを歌っているんだ。まあ今回も(Lord of the Lostの)クリス・ハームズが歌っているけれど。それから今回は、俺の娘であるネッタもバッキング・ヴォーカルで参加している。彼女は17歳で、ギグにも来てくれるんだ。Turmion Kätilötの大ファンだし、一度ステージに上がるとその味が忘れられなくなる。彼女もそうさ。と言うわけで、ヴォーカルとか歌が、以前のアルバムとは大きく違っているということ。まあ俺たちはアルバムごとに新しい要素を取り入れていくのだけれど、今回はハードコア・テクノのエッジやポップ・ミュージックからメタルまでの要素が入っているよ。ファースト・アルバムの頃から未来の音楽を作ろうと思っていたからね。どんな種類のものでもやる。ジャンルや枠組みに囚われずに。結局はそれは音楽でありエンターテインメントだから、ポップだと思ったら、突然ロックやファンクになる。もちろんメタルもたくさん。
ー タイトルの『Reset』にはどのような意味が込められているのですか。
MCラーカ・ペー:そうだな、人生や、例えばコンピューターなかでもリセットを必要とする機会がたくさんある。何かを削除したり、忘れたり、みたいにね。自分が持っているもの、手に入るものをリセットするのさ。俺たちが言いたかったのは、これの逆。同じものを再アレンジすることで、それが新たな人間、生活、環境みたいなものに生まれ変わる。人々は自分たちをリセットすることで、自分自身にするのさ。人生ではそのようなことが何度も起こっているけれど、それに気づいている人は少ない。今回のアルバムでも俺たちの音楽は進化していて、それは俺にとってリセットのように感じられもする。俺たちは毎朝目覚める度に、自分自身をリセットしているのさ。それがこのタイトルの意味するところ。バンドのケミストリーの中で、数多くの変化が起こり、以前よりも深くなっていく。そして新しい何か、エキサイティングな何かを手にする。そういう意味でのリセットだよ。
ー アートワークもやはり「リセット」を表しているようですが。
MCラーカ・ペー:壁に4枚の絵がかかっていて、目はそれを捉えるけれど、とても奇妙なデザインで、基本的には何も意味していないけれど、多くのことを伝えてくる。このアートワークは、Turmion Kätilötの元シンガーのトゥオマスの手によるもの。彼は今回も素晴らしい仕事をしてくれたよ。アートワークの中の男の子は、俺の双子の息子の1人、ヤッケだよ。
ー 歌詞のテーマはどのようなものですか。
MCラーカ・ペー:歌詞の内容はさまざま。最近書いたものだけでなく、昔のものもあるからね。今回は非常に強い感情が入っているように思う。たいていはアルバムが仕上がると、数回しか聴かず、あとはギグに集中するのだけれど、今回はマスタリングのあとに何百回も聴いたよ。何度も何度も聴き返したくなる何かがあるということさ。まあ、これは歌詞を覚えるという点に関してとても良いことさ。俺は歌詞を書く時は、とにかく歌ってみて様子を見る。それを紙に書き留めたりはしないんだ。
ー 前作の『Omen X』は昨年リリースされたばかりです。アルバム制作に4-5年かけるバンドも少なくない中、あなたたちの創作ペースは非常に速いですよね。
MCラーカ・ペー:俺たちはたいてい2年周期でアルバムをリリースしているから、1年というのは少々急いでいる感もあるけれど、このアルバムに関してはそういう感覚はないな。コロナもあったからね、その間は作曲をする時間がたっぷりあった。アルバム1枚分たっぷり曲が残っていたのさ。たいてい2年に一枚作るのは、そのアルバムからの曲をライヴでやると、オーディエンスの反応がわかるからね。次に何をやれば良いかがはっきりとわかる。たくさんアルバムをリリースしてきているから、なかなかライヴのセットを決めるのは難しいよ。時にはスペシャルなセットをやろうとも思っている。何かのアルバムをまるまるプレイしたりとか。今回のアルバムはとても素晴らしいから、できれば全曲やりたいのだけれどね。古い曲もやらないといけないから。
ー Turmion Kätilötはどのようなアーティストから影響を受けていると言えますか。
MCラーカ・ペー:初期の頃は、さまざまな違った音楽から影響を受けてはいたけれど、やっぱりインダストリアル・メタルかな。当時はまったくメインストリームではなかったけれど。RammsteinやPain、それからもちろんロブ・ゾンビも。当時こういうバンドを聴いていた。まあ、最初のデモを作った時は、まだインダストリアル・メタルを聴いたことがなかったけれど、すでにこういうスタイルでやっていたのだけどね。それから90年代のダンス・ミュージックからの影響も大きい。ロブ・ゾンビにも同じような曲、スタイルがあるかもしれないな。それからSuicide Commandoみたいなテクノもよく聴いていた。サイトランスとかもね。
ー お気に入りのヴォーカリストは誰ですか。
MCラーカ・ペー:そうだな、フィンランド人ヴォーカリストのTopi Sorsakoski。もう死んでしまったのだけれど、フォーク・ミュージックをやっていた人物。Topi Sorsakoski & Agentsというバンドで、メランコリックなロックフォークをやっていた。本当に素晴らしいシンガーだよ。さっきも言ったように、今回のアルバムでは俺もたくさんクリーン・シンギングをやったけれど、Topi Sorsakoskiみたいに歌えたらなあと思ったよ。まあ、彼のタイミングはとてもレイドバックしているのだけれどね。俺たちはもっとリズムをきちんとしなくてはいけない。俺もたくさんクリーン・ヴォーカルを練習しているよ。だから気に入ってもらえるかわからないけど、アルバムに入ってる。
ー オールタイムのお気に入りのアルバムを3枚教えてください。
MCラーカ・ペー:そうだな、The Prodigyの『Music for the Jilted Generation』か『The Fat of the Land』。それからロブ・ゾンビの『Hellbilly Deluxe』。Topi Sorsakoski & Agentsの『Besame Mucho』。俺はあらゆる種類の音楽を聴くからね。嫌いなジャンルというのはないんだ。あらゆる種類のテクノも大好き。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
MCラーカ・ペー:オーケー、コンニチハ、Turmion KätilötのMCラーカ・ペーだよ。本当に日本が恋しい。また会えることを期待しているよ。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- ユクシ・ユマリスタ
- パースタ・イルティ
- プルッシ
- シナ 2.0
- ムスタ・ピステ
- トラウマ
- オタヴァ
- セ・ミタ・エト・ナエ
- ケルラン・クオルット
- プーットゥヴァ・ナウラ
- シュラフター (feat. クリス・ハームス)
- リセット 7 (ノット・トゥ・ビー・コンティニュード)
【メンバー】
MC ラーカ・ペー (ヴォーカル)
シャグ-U (ヴォーカル)
ボビー・アンダーテイカー (ギター)
マスター・ベイツ (ベース)
ランQ (シンセサイザー/キーボード)
DQ (ドラムス)