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ルカ・デイヴ・スカルラッテ
(サン・オブ・ザ・サンズ)
独占インタビュー

エクストリームなのは確かだけれども
同時に雰囲気やメロディがなくてはいけない
それが俺たちの音楽にとっては重要なことなんだ

                                   

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文:川嶋未来

イタリアのデス・メタル・バンド、サン・オブ・ザ・サンズがデビュー・アルバムをリリース。ドラムを担当しているのは、フレッシュゴッド・アポカリプスのフランチェスコ・パオリ。ベースはDGMのシモーネ・ムラローニだ。ヴォーカリストのルカに、色々と話を聞いてみた。

 

― まず、サン・オブ・ザ・サンズが結成された経緯を教えてください。

 

ルカ:俺と他の2人のギタリスト、マルコとルドヴィコはCarnalityという別のプロジェクトを一緒にやっていて、これはブルータル・デス・メタルのバンドなんだ。それで新しいアルバムの曲作りセッションをやったのだけど、それまでやってきたブルータル・デス・メタルとは違う、何か新しいことをやりたいと思った。曲作りが進んでいくに連れて、これは新しいプロジェクトにしようというアイデアが出てきたんだ。新しい名前をつけてね。

 

 

 

― 他のメンバーはどうやって見つけたのですか。

 

ルカ:最近ベーシストとしてフィリッポ・スクリマを加入させた。発表は来月になると思うけれど。彼はNightlandというバンドでベースを弾いてきたから、経験も豊富なんだ。Nightlandもスカーレット・レコードの所属で、友人でもある。曲を書いていた時は、まだドラマーが決まっていなかったので、フレッシュゴッド・アポカリプスのフランチェスコ・パオリに連絡をとったんだ。彼とも友人なのだけど、彼に「俺たちのアルバム用にドラム・パートを書いてくれないか?」とお願いをしたら、幸運にも引き受けてくれたのさ。彼はただドラマーというだけではなく、ギタリストでもあるから、ドラム・パートを書く時に、ギタリストとしての見方もできるんだ。彼のドラミングのおかげで、ギター・リフにも素晴らしい価値が加わったよ。素晴らしいね。

 

― アルバムでベースを弾いているのはDGMのシモーネですよね。

 

ルカ:フィリッポが加入したのは数ヶ月前のことで、すでにアルバムのレコーディングは終わっていたからね。レコーディング中はメンバーは3人しかいなかったけれど、マルコがベース・パートも書いていたんだ。マルコやルドヴィコがベースを弾くこともできたけれど、レコーディングはDGMのシモーネがやっているドミネイション・スタジオでやっていたからね。彼も素晴らしい友人で、ベースを弾いてくれないかとお願いをしたら、快諾してくれたんだ。イタリア最高のギタリストの一人が俺たちのためにベースを弾いてくれて、クールだったよ。

 

ー フランチェスコが正式加入する可能性はありますか。

 

ルカ:フランチェスコが加入してくれたら夢みたいなことだけれどね。それは無理だと思う。彼は自分のバンドで、年に200本ものギグをやっているし。だから今はフェデリコ・レオーネにコンタクトしている。イタリアのモダン・スレイヴァリーというバンドのドラマーさ。とりあえずはセッション・メンバーという形での参加だけれど、フルタイムで参加することになるかもしれない。

 

ー サン・オブ・ザ・サンズの音楽的スタイルを説明するとしたらどうなるでしょう。

 

ルカ:言葉で説明をするのはなかなか難しいな。俺たちは、いつも何か新しいことをやろうとしている。みんな「新しいね」と言ってくれるけど、何が新しいのかということになるとね(笑)。俺たちはもともとデス・メタル・バンドとしてスタートした。聴いてもらえれば、デス・メタルの要素がはっきりとわかるよね。だけど一方で、曲作りには最もモダンなプロセスも取り入れるようにしているし、デスコアからの影響を指摘する人もいるだろう。だけど、個人的には自分たちの音楽をデスコアとは言いたくない。デスコアからは影響を受けていないからね。なかなか正確に自分たちのスタイルを描写する言葉は無いな。モダン・デス・メタルだとは思うけれど。

 

ー ではデス・メタル以外からの影響となるとどうですか。ジャズやクラシック、映画のサントラとか。

 

ルカ:俺たち3人の音楽的影響は、とても多様性があるんだ。みんな最高にエクストリームなメタルから、ビョークやクラシックなんかも聴くし。本当に多くのものから影響を受けているよ。最も影響を受けたバンドとなると、古いクラシックなデス・メタル、例えばナイルみたいなモンスター(笑)。モダンなメタル・モンスターとなると、ジョブ・フォー・ア・カウボーイ、ホワイトチャペルだね。最近の、デスコア色が薄いやつね。音楽に関しては、360度全部聴いている。クールな影響を与えてくれるものならば何でも。魂に語りかけてくる音楽であれば何でも、最高にエクストリームな形で自分たちの音楽に取り入れるようにしている。エクストリームなのは確かだけれども、同時に雰囲気やメロディがなくてはいけない。それが俺たちの音楽にとっては重要なことなんだ。ただ速くてブラストビートでエクストリームというだけではなくてね。テクニックというのは、あくまで自分たちの音楽のフィーリングを伝えるための手段でしかないのさ。

 

 

 

― では個人的に好きなアーティストはどのあたりでしょう。

 

ルカ:ヴォーカリストとして、さっき挙げたジョブ・フォー・ア・カウボーイやホワイトチャペルからの影響は大きい。ナイル、モービッド・エンジェル、それからザイ・アート・イズ・マーダーだね。あと、ピンク・フロイドからの影響も大きい。俺たちのスタイル、ジャンルは、彼らとはまったく違うから、影響を聴きとることはできないかもしれないけれど。あとはゴジラ。

 

― 自分たちの音楽はイタリア風だと思いますか。

 

ルカ:どうだろう。それは無いんじゃないかな。いや、でもあるかもしれない。ここイタリアにはたくさんの素晴らしいデス・メタル・バンドがいる。だけど、彼らはクラシックなデス・メタルの曲作りをしているんだ。俺たちは、クラシックなデス・メタルのドグマから抜け出そうとしているからね。

 

ー バンド名はどのような意味なのでしょう。これはアルバムのコンセプトとも関係があるようですが。

 

ルカ:その通りさ。バンド名は、俺、マルコとルドヴィコという3人の実験的ミュージシャンたちが、自分たちの音楽という太陽の周りを公転しているということ。まわりにはいくつかの太陽があって、メインの太陽というのが自分たちの音楽。俺たちの目的は、新しい音楽の実験をすること。このバンド名は、アルバムのコンセプトとも関係がある。コンセプトはSF的なもので、ストーリーは生物や人間のゲノム、DNAなんかの研究をしている人物を中心に展開していくんだ。核戦争後、彼は生き残った人たちを集めて閉鎖した都市を作る。すべての人間を把握し、新しい人類の世界を始めるためにね。世界は核戦争で完全な荒野になってしまっているから。生物学や科学を使って人間のゲノムやDNAの研究をしていくと、主人公のヘリオは、古い宇宙に関する神話に取り憑かれていくようになる。シュメール文明の神話などにも出てくる、人類はエイリアンが地球にやってきて作ったというやつだよ。アルバムでもシュメール文明や聖書の記述についても触れている。タイトルの「ティート」というのも聖書からとったヘブライ語で、「イメージを含んだ生命」のこと。神のイメージ、宇宙人のイメージ。ツェレム、これもヘブライ語なのだけど、つまり神と人間の要素をミックスして、人類という新しい種を作り出したんだ。そしてヘリオは新しい種を作り出すことに成功するのだけど、彼の仲間がそれを破壊してしまう。核戦争を起こしたのも、ヘリオ本人だったからさ。

 

ー アートワークもこのストーリーを表しているのでしょうか。

 

ルカ:そうだよ。4本の腕がある、レオナルド・ダヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』みたいな感じで、彼は宇宙の中心なんだ。彼は何かを創造し、物事は彼の周りを回っている。胸にはロゴが描かれているんだ。宇宙の中心のものということで、バンド名も表しているよ。バンド名、歌詞、アートワーク、いずれも宇宙の中心が描かれているんだ。アートワークに描かれているのは神のような存在で、歌詞に出てくる主人公のようなものさ。

 

 

― お気に入りのヴォーカリストは誰ですか。

 

ルカ:同じバンドばかり挙げてるけど(笑)、やっぱりホワイトチャペルのフィル・ボーズマン。彼の声はとてもパワフルだし、ライヴで見ても、レコードとほとんど同じ声を出しているんだ。俺はそのことをとても高く評価している。というのもレコーディングでは、いくらでも声を重ねてパワフルにすることができるからね。ステージを見ると、レコードとは全然違うというケースもよくある。ディリンジャー・エスケイプ・プランのグレッグ・プシアートも大好き。ゴジラのジョセフ・デュプランティエもいいね。モダン・エイジ・スレイヴァリーのジョバンニもいい。これもイタリアのバンドだけど、ヒデアス・ディヴィニティのエンリコ・ロレンツォ。それからもちろんジョージ・フィッシャー(笑)。彼は神のような存在だよ。

 

 

― 今後の予定を教えてください。ライヴやツアーもやって行くのでしょうか。

 

ルカ:もちろんさ。ツアーが可能になったら、ぜひ俺たちの音楽をステージで披露したいよ。新しいレコードのアイデアも考え始めている。アルバムは3枚契約だからね。まだ曲作りの初期の段階だけれど。

 

― 次もコンセプト・アルバムですか。

 

ルカ:もちろんだよ。次回はすべてのストーリーを時系列にしようと思っている。コンセプトは常にバンド名と関係あるものになるよ。まだ内容の詳細は決めていないけどね。

 

ー ストーリーのインスピレーションはどのようなところから得るのですか。

 

ルカ:だいたい映画と本だね。今回はZecharia Sitchin, Mauro Biglino、Pietro Buffaといった人たちの本から大きな影響を受けたよ。次回は人生の経験に基づいたものにしたい。違ったアプローチにしたいんだ。本ではなく、自分自身の経験を元にね。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ルカ:個人的には、まずピンク・フロイドの『Darkside of the Moon』。それからメタリカの『Master of Puppets』。12-3歳の頃に、これを聴いてエクストリーム・メタルの世界にハマったんだ。あと1枚。ディリンジャー・エスケイプ・プランの『Miss Machine』。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ルカ:メッセージか。ぜひ日本をツアーして、俺たちの音楽を届けたい。日本という国が大好きだから、ぜひ行ってプレイしたいよ。日本のファンが俺たちの音楽を気に入ってくれるといいな。

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年8月27日発売

サン・オブ・ザ・サンズ

『ティート』

CD

【CD収録曲】

  1. アイ・デミウルゴス パート1
  2. アイ・デミウルゴス パート2
  3. ザ・ゴールデン・ケイジ
  4. ティート
  5. オブソレセンス・コラプテッド
  6. トゥ・ディケイ・トゥ・リヴァイヴ
  7. フレッシュ・ステイト・ドライヴ
  8. ハッキング・ザ・ステライル・システム
  9. オブ・ハイブリダイゼーション・アンド・ディクライン
  10. アイ・エンペラー・オブ・ナッシングネス

 

【メンバー】
ルカ・デイヴ・スカルラッティ(ヴォーカル)
マルコ・リゲッティ(ギター)
ルドヴィコ・チオッフィ(ギター)

 

【ゲスト・ミュージシャン】
シモーネ・ムラローニ(ベース)[DGM]

フランチェスコ・パオリ(ドラムス)[フレッシュゴッド・アポカリプス]