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ニック・メリソーゴス
(Suicidal Angels)
独占インタビュー

俺たちはこれまでも
アルバム毎に進歩しようとしてきた
毎回ファンたちに
新たな地平を開くように

                                   

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文:川嶋未来

ギリシャを代表するスラッシュ・メタル・バンド、Suicidal Angelsが、ニュー・アルバムをリリース!リーダーのニック(Vo, G)に色々と話を聞いてみた。

 

 

ー まず、バンド結成の経緯を教えてください。

 

ニック:このバンドは、俺がまだ高校生の頃に始めたんだ。15歳の頃、スラッシュ・メタルと出会って、クソ興奮してね。その前にヘヴィメタルは聴き始めていた。で、弾き方も知らないのにギターを買ったんだ(笑)。あまりに興奮が大きくて、好きなバンドのカバーをやり始めて、そのうち自分たちの曲も書いてと、典型的な学校のバンドという感じだったよ。

 

ー どのようなバンドからのインスピレーションが大きかったですか。カバーはどのようなものをやっていのたでしょう。

 

ニック:簡単なSlayerやSodomの曲とか。さっきも言ったように、ギターの弾き方もよくわからなかったから、どうやって弾くのか、探りながらやっていたよ。他にはKreatorとか、80年代のアメリカ、ヨーロッパのスラッシュ・シーンからの影響は大きかった。ステージに上がるのもとても興奮したな。学校でもコンサートをやったよ。バンドにとって、03年にドラムのオルフェアスと出会ったのは大きかった。深い絆を感じたよ。何しろその後20年間一緒にバンドを続けるのだから。

 

ー なぜスラッシュ・メタルにハマったのですか。デスやブラックではなく。

 

ニック:最初はMaidenやMetallicaみたいなクラシックなメタルを聴いていたのだけれど、ある時友達がSlayerの『Show No Mercy』を貸してくれてね。それで「何なんだこれは!」って。6ヶ月間俺のCDプレイヤーに入りっぱなしだった。それで様々なスラッシュ・バンドの様々なアルバムを集め始めた。「こいつは凄い!」ってね。もちろんオールドスクールなデス・メタルも好きで、Suicidal Angelsのアルバムを聴いてもらえれば、その影響も感じられると思う。Morbid AngelのファーストやDeicideなども大好きだし。ObituaryやCannibal Corpse、Bolt Throwerみたいなグレートなバンドたち。そういうものがすべて俺の頭の中でミックスされて、アルバムを重ねるうちに、俺たち自身のサウンドができあがっていったんだ。バンドとしてユニークなものを作れるようになるには、少々時間がかかったけれどね。

 

ー バンド名はどうやって決めたのでしょう。

 

ニック:良い質問だね。よく聞かれるのだけれど、答えは至ってシンプル。ある時、学校のパーティでベロベロに酔っ払ってね。翌朝目が覚めて、「俺はどこにいるんだ?」なんて思いながら、携帯や鍵なんかを探してポケットを探っていたら、俺の字で”Suicidal Angels”と書いてある紙が出てきたんだ。ベロベロに酔っ払って、いつのまにか紙にイカしたバンド名を書きつけていたんだろうな(笑)。

 

ー つまり、どうやって思いついたのかよくわからないと(笑)。

 

ニック:そうなんだよ(笑)。正直細かいことはわからないんだ(笑)。

 

ー ニュー・アルバム『Profane Prayer』がリリースになります。過去の作品と比べて、どのようなアルバムになっていると言えるでしょう。

 

ニック:そうだな、良い質問だね。俺たちはこれまでも、アルバム毎に進歩しようとしてきた。毎回ファンたちに、新たな地平を開くように。今回は、もちろん速い曲も入っているけれど、よりスローなもの、よりダークなものもあって、アルバムの長さも増している。違ったものを作りたかったんだよ。もちろんスラッシュじゃないものではないよ。音楽に、より多くの要素を取り入れてたかったんだ。うまくやれたと思うよ。アルバムを聴いた人は、最初から最後まで気に入ってくれているようだし。9曲収録されていて、9つともキャラクターが違っている。歌詞的にも、さらに深い人生の哲学的なものになっている。ニーチェとか、古いギリシャ哲学なんかが好きなんだよ。『Bloodbath』や『Dead Again』みたいなものをまた作ることは簡単だけれどそれはやりたくない。違った道を試したいのさ。違ったヴォーカル・ライン、違ったトピックをね。

 

 

 

ー 前作から5年弱と、バンド史上最大の間隔があいていますね。

 

ニック:確かに以前は約2年おきにアルバムをリリースしてきた。19年に『Years of Aggression』をリリースして、ツアーのスケジュールを組んだ。オーストラリアみたいに、過去に行ったこともない国も含むワールドツアーだったんだ。だけど、ツアーの最初、ヨーロッパ・パートをやったところでパンデミックが起こってね。そこから2年半、すべてがロックダウンということになった。この2年半の個人的心理インパクトは大きかったよ。突然仕事がなくなってしまったのだから。すべてのツアーがキャンセルになって。日本の状況はわからないけれど、ギリシャのロックダウンは厳しいものだったんだ。やっとロックダウンが解除になって、いくつかのフェスや小さなツアーをやって。この時点ですでにかなりの時間が経過していた。ここから新曲を書いて、レーベルも変えて。さらにたくさんのバンドがレコーディングを始めたから、レコーディングやミックスのスケジューリングも大変だった。ウクライナの戦争で、紙やレコード、CDの原料不足もあって、かつてはリリース4ヶ月前にマスターを提出すれば良かったのだけれど、今では1年前に用意しなくてはいけないんだ。俺たちのニュー・アルバムも、1年半前にはできあがっていたのだけれどね。ツアー・エージェントも変えたし、本当にたくさんの変化があったのさ。ノンビリしていたわけじゃないよ。このアルバムのために、様々な困難を乗り越えなくてはならなかったんだ。すべてのものが、かつてよりも時間がかかるようになっているんだよ。レーベルやエージェントも、みんなかつてのように活動するために、努力しているから。

 

ー 今言われた通り、本作から古巣のニュークリア・ブラストに復帰となります。

 

ニック:とてもハッピーだよ。みんな知っている人たちだから、やりやすいし。もちろんいなくなってしまった人たちもいるけれど、多くの担当は同じで、すでにコネクションが出来上がっているからね。俺たちにまた興味があると言われて、とても嬉しかったよ。

 

ー 歌詞は哲学がテーマとのことです。インフォ・シートにはプラトン、ソクラテス、ニーチェなどの名前が挙げられていました。素人考えですが、ニーチェの主張はブラトン、ソクラテスあたりとはかなりの隔たりもあると思うのですが、どのような内容の歌詞になっているのでしょう。

 

ニック:ニーチェをはじめ、後世の哲学者たちの主張のベースには、プラトンやソクラテスのような、古いギリシャ哲学があるのさ。もちろんみな違った時代に生きた訳だから、その時代や社会に影響されつつ、哲学を発展させていったんだ。それらは鎖のようにつながっていて、言葉の裏にある共通点を見出さなくてはならない。それぞれの哲学者が異なった意見を述べているように見えるけれど、行間を読めば、共通の基盤を見つけられる。だから、俺は哲学全体が大好きなんだよ。時にとても混乱させられるけれどね(笑)。「これは何を言っているんだ?」みたいに思うこともある。哲学を勉強することで、個人的にも大きなインパクトを受けているよ。物の見方とかね。哲学書を読むことは、歌詞のインスピレーションだけでなく、自分自身にとってもプラスになることさ。

 

ー それらを通じて、歌詞には何らかのメッセージを込めていますか。

 

ニック:いや、それはない。歌詞、特にこういうタイプのものの解釈は、リスナーに委ねられるべきだと思っているから。俺が書いているのはポエムだとは言わないけれど、ポエムは読む人によって違ったインパクトを与えるものだろう?

 

 

ー タイトルの『Profane Prayer』(=冒涜的祈祷者)というタイトルには、どのような意味があるのでしょう。

 

ニック:神などを信じている人たちは、やたらと祈るだろう?だけど、結局は何も改善しはしない。お金持ちになりたいなんて祈るけれど、より成長するために、一体何をしているんだ?結局祈っている人は、何かを変えようと真剣にやっている訳ではない。周りを変えるのではなく、自分自身を変えなくてはいけないということ。真の祈祷者であれば、状況を改善できているはずだということだよ。

 

ー アートワークはお馴染みエド・レプカの手によるものです。

 

ニック:彼にアートワークを頼む時は、たいていアルバム・タイトルだけを伝えるだけど、どういうものを作りたいかという詳細は言わないようにしている。もちろんいくつかのアイデアは伝えるけれどね。そしてファースト・スケッチを受け取ると、俺たちもブレインストーミングをして、アイデアを出して、それからエドが本番の絵に取り掛かるという感じさ。つまり、彼と俺たちのアイデアをミックスしたものが、アートワークになるんだよ。俺たちが「こういうものを描いてくれ」というのでもなければ、彼が「こういうのを描くよ」と言う訳でもない。もちろん議論になることもあるけれどね(笑)。とても印象的なアートワークになっていると思うよ。

 

 

ー Rotting Christのサキス、NightfallのEfthimis らがゲスト参加しています。これら先輩バンドたちとの関係は、どのようなものですか。

 

ニック:彼らはみな友人だよ。長い間ね。Rotting Christとは、2010年に俺たちの初めてのツアーをやった。EfthimisはNightfallのヴォーカリストで、彼とは共通の友人を介して知り合って以降、一緒に飲みに行ったり食事をしたりしているよ。あと、元SepticfleshのFotis Benardoも参加している。実は彼のスタジオでレコーディングをしていて、ちょうどサキスもいたんだ。確かソロ・アルバムの録音をしていたんだと思う。「ヴォーカルで参加してもらえますか?」と聞いたら、「ぜひ」って。そこにEfthimisがコーヒーを飲みに現れて、みたいな感じで、決して計画してゲスト参加をしてもらった訳ではないんだ。たまたまその日、みんながスタジオにいてという感じさ。

 

ー 前作に引き続き、今回もイェンス・ボグレンがミックスを担当しています。

 

ニック:前作でも彼は素晴らしい仕事をしてくれたよ。俺たちが欲しいスピリット、フィーリングを再現してくれた。個人的に、勝っているチームを変える必要はないと思っているから、今回もやってくれないかとお願いしたら、「もちろん」と。彼にファイルを送って、実際スウェーデンにも数日行って、アルバムを仕上げた。彼にはマジックがあるね。本当に素晴らしい仕事さ。

 

 

 

ー ギリシャのスラッシュ・メタル・シーンはいかがですか。

 

ニック:まず、ギリシャのメタル・シーン全般について話そう。非常にたくさんのバンドがいる。一つ一つ名前は挙げないけれどね。ヘヴィメタル、スラッシュ、デス、あらゆるシーンにたくさんのバンドがいる。俺の見た感じでは、ここ10年で、より多くのバンドが海外へと出て行けるようになっているようだ。ヨーロッパをツアーしたり、大小のフェスに出たり。とても嬉しいことだね。ぜひ多くのバンドに頑張ってもらいたいと思う。ギリシャのスラッシュ・メタル・シーンはとてもアクティヴだよ。俺たちよりも10年くらい若いバンドもたくさんいて、頑張っているよ。彼らが成功をするかはわからないけれど、多くのバンドが現れてきている。遅かれ早かれ、ギリシャの新たなスラッシュ・メタル・バンドの名を耳にすることになると思うよ。少なくとも、そう期待している。

 

ー 具体的にオススメのバンドはありますか。

 

ニック:YouTubeやSpotifyにアクセスすれば、たくさんのバンドを見つけることができるからね。ギリシャのスラッシュ・メタルもたくさん見つけることができるだろう。とりあえず色々と聴いてみることをオススメするよ。俺のお気に入りが君のお気に入りとは限らないから。バンド名が気に入った、曲名が気に入った。何でも構わないから、とりあえず聴いてみることさ。好みは人それぞれだから。俺はいつもこう答えるようにしているんだ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ニック:マジか。たったの3枚?そうだな、まずSlayerから行こう。やっぱり『Show No Mercy』だね。あれでスラッシュ・メタルにハマった訳だから。それから、これはスタジオ・アルバムではないけれど、Iron Maidenの『Live After Death』。初めて聴いたメタルのアルバムなんだ。友人がカセットに録音してくれて、それがきっかけでメタルを好きになった。もちろんKreatorの『Pleasure to Kill』やExodusの『Bonded by Blood』、Morbid Angelの『Altars of Madness』、Sepulturaの『Beneath the Remains』とか、さらにAC/DCやMetallica、Iron Maiden、Judas Priestまで含めると、キリがない。Pink Floydの『The Wall』も好き。俺は色々なスタイルの音楽を聴くからね。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ニック:15年に一度日本に行って、素晴らしいショウをやることができた。その後もまた日本へ行こうと頑張っているのだけれど、残念ながら実現していないんだ。今回のアルバムが出たら、ぜひまた日本に行きたいね。それも一度のショウではなく、ちょっとしたツアーにして、日本、そして日本の人々をより深く知りたいな。

 

文 川嶋未来

 


 

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2024年3月1日

Suicidal Angels

『Profane Prayer』

CD

【CD収録曲】

  1. ホエン・ザ・ライオンズ・ダイ
  2. クリプツ・オブ・マッドネス
  3. ピュリファイド・バイ・ファイア
  4. デスストーカー
  5. プロフェイン・プレイヤー
  6. ザ・リターン・オブ・ザ・リーパー
  7. ガード・オブ・ジ・インセイン
  8. ヴァーチューズ・オブ・デストラクション
  9. ザ・ファイア・パズ・オブ・フェイト

 

【メンバー】
ニック・メリソーゴス (ヴォーカル/ギター)
ガス・ドラックス (ギター)
アンジェロス・レリカキス (ベース)
オルフェアス・ツォルツォプロス (ドラムス)