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マックス・カヴァレラ
(ソウルフライ)
独占インタビュー

『トーテム』は、聴いていて楽しめる
アルバムのエネルギーを感じられる
作品にしたかったんだ
ライヴでプレイしても楽しい曲ばかりだよ
コントロールできないエネルギーがあるからね

                                   

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文:川嶋未来

マックス・カヴァレラ率いるソウルフライが、ニュー・アルバム『トーテム』をリリース。ということで、そのマックスに色々と話を聞いてみた。

 

ー ニュー・アルバム『トーテム』がリリースになります。過去の作品と比べて、どのような点が進歩していると思いますか。

 

マックス:そうだな、全体的にある種の自由があると言うのかな。このアルバムは、とにかく楽しく作ったと言うか。自分でも、ヘッドバンギングしながら聴いていて楽しいアルバムだよ。とてもエネルギーを感じるし。完成までに時間がかかったんだ。まずザイオンと2人で2年くらい作業してね。『Ritual』の出来にも満足しているけれど、もっと深い曲作りをしたかった。ケイヴマン(=プリミティヴ)だけど、同時に複雑でもあるものを作りたかったんだ。スタジオでの作業もとても楽しかった。特にアーサーとの作業がね。たいていは、曲を書き始めて1分くらい経つと、「次はどうしよう?」、「こういうリフがある」、「いいね、それじゃ次は?」みたいな感じでやっていった。80年代終わりから90年代にかけてのクールなレコードは、『トーテム』みたいなオールドスクールなフィーリングがあった。エントゥームドの『Left Hand Path』みたいなレコードからインスパイアされたように思う。スピリット的な意味でね。そしてそこにソウルフライのヴァイブを加えたんだ。ソウルフライには常にグルーヴがあったし。ヴォーカルにもオールドスクールなフィーリングがあると思う。逆回転をかけたりとか、最近はあまり誰もやらないこともやってみたよ。90年代にやっていたことを、再びやってみたんだ。

 

ー エントゥームドの名が出ましたが、オールドスクールのインスピレーションというと、他にどんなバンドが挙げられますか。

 

マックス:やっぱりセルティック・フロスト(注:マックスは「セルティック」と発音)だね。この間メリーランド・デスフェストでトム(G・ウォリアー)とも話した。ヘルハマーからのインスピレーションも大きい。特に『Bestial Devastation』や『Morbid Visions』の頃はね。ブラック・メタルのケイヴマン・リフを学ぶのに、ヘルハマーは最適だったよ。もちろんカーカスやエントゥームド、オビチュアリー、モービッド・エンジェル。こういうバンドは本当にクラシックで素晴らしいよ。もちろん新しいバンドも好きだよ。200 Stab Woundsとかね。『トーテム』にはエントゥームドっぽいフィーリングがあると思うんだ(笑)。どういうフィーリングなのかは説明できないけど、そういうヴァイブがある。

 

ー 9分半を超えるクロージング・トラックの「スピリット・アニマル」は、先ほど言われていたケイヴマンと複雑さという好例だと思うのですが、この曲について教えてもらえますか。

 

マックス:音楽心理学についての番組を見ていたんだ。音楽で人々をトランス状態や憑依状態にするという内容で、さまざまな部族でこういうことがやられていた。マントラや儀式とか。それによると、これには6分以上必要だと。それで、長い曲をやることに興味を惹かれたんだ。普段俺は長い曲は書かないんだけどね。最初はインストにするつもりで書いていたのだけど、ヴォーカルがあった方がクールだと思って。ソルフライ・ミーツ・ニューロシスみたいなヴァイブだろ(笑)。8分か9分か、この曲が何分だったか覚えていないけれど、曲で人々を憑依状態、トランス状態にするというアイデアに惹かれてね。アルバムのエンディングにぴったりの曲だよ。2分のイントロがあって、曲に入り、イカしたソロがあって、それから(ホーンズマン)コヨーテの声が入ったビッグなアウトロ。ここはメロディックなソウルフライ流のワールド・ミュージックさ。俺にとってこの曲は、ソウルフライのスピリットを表していると言える。俺たちが決して失うことのなかった、アドヴェンチャーの精神。今回のアルバムを『Dark Ages』と比べる人も多いけれど、クールなことだと思う。あのアルバムも、似たようなシチュエーションで作られたんだ。あれを作っている最中にダイムバッグ・ダレルが殺されるという事件が起こったのだけど、今回は制作中に、エントゥームドのL.G.ペトロフが亡くなった。とても心を揺さぶられてね。「スコアリング・ザ・ヴァイル」は、「ファック・キャンサー」という内容さ。素晴らしい人々を何人も俺たちから奪いやがって。『Dark Ages』とはいくつか類似点があるけれど、『トーテム』は、さっきも言ったように、聴いていて楽しめる、アルバムのエネルギーを感じられる作品にしたかったんだ。ライヴでプレイしても楽しい曲ばかりだよ。コントロールできないエネルギーがあるからね。とにかくそれを発散するしかないような(笑)。このアルバムのツアーは楽しいものになりそうだ。

 

ー 「ロット・イン・ペイン」には強烈にモービッド・エンジェルのフィーリングを感じたのですが。

 

マックス:もちろん、そういったバンドからの影響に溢れているからね。アルバム全体を通じて、さまざまなバンドからの影響があるよ。あの曲のエンディングは、フィア・ファクトリーっぽいし。曲を通じて自分がインスピレーションを受けたものを見せるというのは、メタルにとって大切なことだと思うんだ。俺の書いた曲も、多くの人にインスピレーションを与えているだろうし、俺も色々なアーティストからインスピレーションを受けている。これは音楽、メタルにとって大事なこと。ゴジラが「Amazon」という曲をやった時、彼らは『Roots』からインスピレーションを受けたと言っていた。とてもクールなことさ。200 Stab Woundsからは『Arise』や『Beneath the Remains』、あるいはカンニバル・コープスからの影響を感じられるし。彼らが大好きだよ。もちろん自分たちのオリジナリティというものは必要だけれど、時に好きなものへのリスペクトを表明するのは、とても楽しいよ。俺にとって、モービッド・エンジェルはそういうバンドの中の一つ。大ファンで、『Morbid Visions』の裏ジャケではTシャツも着ている。今でも大ファンだし、こういう影響はアルバム中に表れていると思うな。

 

 

 

ー アルバムのテーマは自然とのことですが、「フィルス・アポン・フィルス」などはまた違った内容ですよね。

 

マックス:確かにアルバムの多くの部分は自然からインスピレーションを受けている。自然、森、トーテム、トライバリズムとか。だけど、アルバムを興味深いものにするために、他のトピックも扱っているよ。「スカウリング・ザ・ヴァイル」は、さっきも言った通り、癌について。「ザ・ ダメージ・ダン」は自分たちの惑星を破壊すること。熱帯雨林を焼いたり、氷山が溶けたりとか。「フィルス・アポン・フィルス」は、世界、特にここアメリカで起こっていることについて。社会の汚い部分が表面化してきて、みんなの目に見えるようになってきたということ。「アンセスターズ」は、俺たちがやっていることは、ある意味先祖から大きな影響を受けているということ。音楽をプレイすると、先祖の霊達が飛び回っているという南米に伝わる考え方が大好きなんだ。ある文化では、太鼓を作るために犠牲になった動物の霊が、そのサウンドに表れると考えられている。こういう考え方に興味を惹かれてね。まあ、全体的には自然やスピリットに関する俺の見解だよ。『トーテム』を導いた力は自然さ。「スーパースティション」が最初に書いた曲で、これはここフェニックスにあるスーパースティション山にインスパイアされたんだ。とてもミステリアスな山でね。色々不思議なことが起こっているんだ。人々が死んだり、金が隠されているとか。これまで場所にインスパイアされて曲を書いたことはなかったのだけど、とても興味を惹かれてね。とにかく楽しいレコードだよ。作っていてとても楽しかった。そうじゃなかったら、作る意味がないからな(笑)。自分の作ったものを楽しんで聴けないのなら、やらない方がいいよ。キャリアを積み重ねている訳だし、楽しいことしかやりたくない。ネガティヴなものに割く時間はないよ。このアルバムは、生きていることを実感させてくれる。生きている中で感じてきた苦痛はすべて、『トーテム』のようなアルバムを作る糧になるんだ。生き残ったものの証言のような作品さ(笑)。自分の人生の様々なフェーズを生き残ってきて、今でも音楽に対する情熱にあふれている。今でもメタルに情熱を感じられるというのは、自分にとって素晴らしいことさ。

 

ー カヴァー・アートワークについて教えてください。James Bousemaという新人のアーティストが手がけています。

 

マックス:俺はいつも新しいアーティストを探しているんだ。前2作はエリラン・カントールに依頼して、彼はとても素晴らしいアーティストなのだけど、今回はちょっと違った、もっと無名の人物に頼みたいと思ってね。ジェイムズがテストとして見せてくれたアートワークが素晴らしくて、それで森の上空に雷と、森の中に動物を加えてもらったんだ。俺も気づかなかったんだけど、友人に「このカヴァーは君の人生の違ったステージを表してるね」なんて言われて。ブラック・メタルのマックス、デス/スラッシュのマックス、トライバルのマックス(笑)。違った俺がトーテムの上に描かれていると。俺にとってトーテムというのは、とてもミステリアスで、例えば北米の部族は、トーテムポールを自分たちを導いてくれる力としている。これってとてもメタルっぽいだろう?メタルもライヴではバックドロップを飾るから(笑)。あれは俺たちメタル・バンドにとってのトーテムだよ。だから俺も『トーテム』というアルバムを作ったのさ。このアートワークをとても気に入っている。ここでもやはりオールドスクールっぽいと言うか、特にLPの頃、じっくりとジャケットを眺めたものだろう?アートワークと自分のつながりを感じて、それぞれがそのアートワークを解釈するんだ。

 

 

ー オビチュアリーのジョン・ターディがゲスト参加しています。

 

マックス:彼とは長い友人だからね。『Beneath the Remains』を作っている時も助けてくれたし。ブラジルでヴォーカルのレコーディングを終わらせられず、フロリダまで行ったのだけど、その時にターディの家にも泊めてもらったんだ。一緒にバイクのレースを見に行ったりもしたな。酒を飲んで酔っ払ったりね。その後一緒にツアーもしたし。セパルトゥラ、オビチュアリー、Sadusで。『Beneath the Remains』や『Arise』を作っていた時、彼はいつも近くにいた。それに俺たちは、どちらもメタル・ムーヴメントを生き残ってきているからね。だから、彼と一緒に作品を作れて嬉しいよ。彼はあまりゲスト参加をしないようだし、ソウルフライの作品に参加することについて、興奮していたよ。ジョンのグロウルはとてもユニークで素晴らしいだろう?メタル界の、とてもオリジナルでユニークな声さ。いつかトム・G・ウォリアーにも参加してもらいたいと思っている。俺のバケットリストに入っているんだ。それはともかく、今回のアルバムはオールドスクールなフィーリングがあるから、ジョンが参加してくれたのはパーフェクトだった。とてもしっくり来たよ。彼も曲を気に入ってくれたようだし、素晴らしい仕事をしてくれた。

 

ー 『Bestial Devastation』や『Morbid Visions』についてお聞きしたいのですが、あそこまでスピードアップした理由は何だったのですか。当時間違いなく最速のレコードの一つでしたよね。

 

マックス:どうだろうなあ。物凄いエネルギーを感じていて、ライヴになるとさらに速くなっていたよ。『Beneath the Remains』と『Arise』の楽曲をプレイするツアーをちょうど終えたところだけど、イゴールはアルバムの3倍くらいの速度でプレイしてさ(笑)。アルバムを聴きながら練習してたんだけど、ステージになったら3倍の速さだからさ。こんなに速くプレイするなら練習なんて意味がなかったなんて思って(笑)。それはともかく、速い音楽に対するエネルギーがあったというか、速くプレイすると、とてもクールでパワフルだったんだ。とにかく発散して、テクニカルではなく、もっとケイヴマンに、もっとブルータルにやろうなんていう感じで。そういうのが好きだったんだ。『Bestial Devastation』や『Morbid Visions』はとてもピュアで、ケイヴマン・リフだけど、とても良いパワフルなリフだろう?音質はクソかもしれないけれど、曲は良いよ。

 

 

ー お気に入りのメタル・アルバムを3枚教えてください。

 

マックス:オールタイムの?

 

ー はい。

 

マックス:それは難しいな。まずはクラシック、(ブラック・サバスの)『Sabotage』。あれを世界初のプログレ・メタル・アルバムだと言う人もいるけど、大好きな作品。とてもディープで。それからセルティック・フロストの『Morbid Tales』。ハードコアのエネルギーとブラック・メタルの素晴らしさのコンビネーション。それから、うーん、たくさんあるけど、デスの『Scream Bloody Gore』かな。デス・メタルの出発点さ。(ポゼストの)『Seven Churches』でも良いけれど、『Scream Bloody Gore』かな。

 

ー 8月には来日も決まっています。日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

マックス:とてもエキサイトしているよ。素晴らしいセットリストを用意している。『トーテム』からの曲もプレイするし、ギタリストとしてディーノ・カザレス(フィア・ファクトリー)を連れて行く。彼は素晴らしいギタリストだよ。素晴らしいショウをやるよ。もちろん、ファンのお気に入りのクラシックもプレイする。新曲に加えて、「Primitive」、「Eye for an Eye」、「Jumpdafuckup」、「Prophecy」とかもやるよ。日本には、確か08年から行っていないからね。しばらくぶりだから、とてもエキサイトしている。出演するフェスティヴァルも素晴らしい。ドリーム・シアターやマストドン、コード・オレンジのような、クールなバンドも出る。待ち切れないよ。

 

 

文 川嶋未来

 

 


 

■ソウルフライ出演■
 DOWNLOAD JAPAN 2022
2022年8月14日(日) 幕張メッセ OPEN 9:30 / START 10:30

 


 

 

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2022年8月5日発売

ソウルフライ

『トーテム』

CD

【CD収録曲】

  1. スーパースティション
  2. スカウリング・ザ・ヴァイル
  3. フィルス・アポン・フィルス
  4. ロット・イン・ペイン
  5. ザ・ ダメージ・ダン
  6. トーテム
  7. アンセスターズ
  8. エクスタシー・オブ・ゴールド
  9. ソウルフライ・XII
  10. スピリット・アニマル

 

【メンバー】
マックス・カヴァレラ(ヴォーカル/ギター)
ザイオン・カヴァレラ(ドラムス)
マイク・レオン(ベース)