カリフォルニアのベテラン・カルト・ヘヴィメタル・バンド、Ruthlessがファイアーフラッシュ・レコードと契約し、ニュー・アルバムをリリース!と言うことで、バンドの顔であるサミー・デジョン(Vo)に話を聞いてみた。
ー 1982年のバンド結成の経緯を教えてください。
サミー:最初俺とオリジナル・ギタリストのケニー・マクギー、オリジナル・ベーシストのジャック・ブラックでバンドをやろうということになってね。ドラマーともう1人ギタリストが必要だったから、地元の雑誌『Recycler』に広告を出したんだ。当時はみなそうやってメンバーを集めていたのさ。そしたらトッド・ビリングズというドラマーから電話があって、「広告を見た。ギタリストも知り合いにいるから連れて行くよ」と。それで会って演奏してみたら、とても良かったんだ。
ー 当時はどのような音楽性を志していたのですか。どのようなバンドからインスピレーションを受けていたのでしょう。
サミー:Black SabbathやJudas Priest。俺はMotörheadも大好きだった。これらのバンドのミックスだよ。ヘヴィなバンドたち。Iron Maidenも好きだったし、俺はUriah Heapも好きだった。Deep Purpleとかも。
ー 当時はスラッシュ・メタル前夜で、さらにヘアメタルなども人気がありましたが、なぜトラディショナルなメタルの方に惹かれたのですか。
サミ:俺やもう1人のギタリスト、ローレンはヘヴィで速い音楽に惹かれていたけれど、他のメンバーたちはもっとトラディショナルなものをやりたがっていてね。グループとして活動をしていたし、俺やローレンだけでなく、ケニーも曲を書いていたから。
ー バンド名をRuthlessとしたのは何故ですか。
サミー:興味深い話さ(笑)。多くのバンドはみんなで集まって話し合って決めるだろう?俺たちの場合、もともとローレンとトッドがRuthlessというバンドをやっていて、どうもローレンが”Ruthless”と書いてあるネオンサインを見て決めたらしいんだ。俺も最初はその名前は気に入らなくて、他のメンバーも気に入っていなかった。それでみんなで自分の考えたバンド名を5つずつ紙に書いて、それをベースボールキャップに入れて無作為に選ぶというのをやった。それを繰り返して絞っていくうちに、結局Ruthlessということになったんだよ(笑)。今となってはメタルのバンドとして素晴らしい名前だと思うよ。
ー 今の目で振り返って、デビュー作の『Metal Without Mercy』(85年)をどう見ますか。
サミー:今でも大好きだよ。小さなレーベルがレコード限定であれを再発する予定で、どんなクオリティになるか、とても楽しみにしているよ。今でも大好きな作品で、もう2曲追加したかったのだけれど、所属していたレーベルがとても小さくてね。仕方なく5曲入りのEPとしてリリースしたんだ。
ー デビュー・フル・アルバムの『Discipline of Steel』(86年)についてはいかがですか。
サミー:トッドとローレンがバンドを抜けてしまい、新しくギターとドラムを探さなくてはならなかった。あのアルバムでは、あまり俺は歌詞を書かなかったんだ。4曲だけ書いて、あとは他のメンバーからの貢献が欲しかったから。あのアルバムも俺は大好きで、今もクラシックとしてみんなに愛されている作品だと思うんだ。
ー 個人的には『Metal Without Mercy』の方がお好きですか。
サミー:俺としては『Metal Without Mercy』の方が好き。あれの方がヘヴィだからね。でもファンたちは、『Discipline of Steel』が好みのようだけれど(笑)。よく『Discipline of Steel』は再発されないのかと聞かれるのだけど、無理なんだ。失敗したよ。レーベルが権利の半分を持っていて、大金を支払わない限り、その権利を諦めようとしない。再録という形ではリリースできるけれど、そのままでは再発できないんだ。
ー 1988年に一度解散した理由は何だったのですか。
サミー:1988年当時、何と言うのかな、メンバー全員が違う方向に向かい始めていたんだよ。ケニーとジャックは、いわゆるヘアメタルをやりたがっていて(笑)、一方の俺はもっとスラッシュっぽいことがやりたかった。だから、Ruthlessをやめたあと、スラッシュ・メタル・バンドを始めたのさ。音楽性の相違というやつだよ。俺は『Discipline of Steel』の後に半年間バンドを抜けていた時期があって、先にやめたローレンとJack Deathというスラッシュ・メタル・バンドをやっていたこともある。その後Ruthlessから戻って来ないかという連絡があって、そこからまた数年続けたのさ。
ー 2008年の再結成のきっかけは何だったのでしょう。
サミー:Oliver Weinsheimer、『Keep It True』のプロモーターさ。Myspaceって覚えてる?あれにメールが来たんだ。「あなたはRuthlessのサミーですか?」って。「そうだ」と答えると、「再結成してフェスティバルに出演することは可能か」と。それがきっかけだった。ギタリストが見つからなくて、結局Dark Angelのジム・ダーキンが弾いてくれた。彼は素晴らしい友人だったよ。安らかに眠ってくれ、ジム。彼はフェスティバルでギターを弾いてくれて、その後3年間バンドのメンバーだったんだ。
ー まもなくニュー・アルバム『The Fallen』がリリースになります。どのような作品だと言えますか。
サミー:そうだな、俺にとってはソングライティングがアップデートされた作品だよ。もちろんRuthlessのフィーリングはそのままでね。俺たちがリリースした作品には、必ずRuthlessのフィーリングがあるけれど、今回の作品については、もっとモダンなRuthlessと言えばいいかな。グレン、サンディ、どちらとも一緒に曲を書いた。彼らはどちらも素晴らしいプレイヤーであり、ソングライターでもある。何より素晴らしいのは、今回の作品には1曲も悪い曲が入っていない点。たいてはアルバムに1-2曲、気に入らないのがあるものだけれど、今回はすべての曲を気に入っているよ。
ー 80年代のRuthlessにはなかったインスピレーションもありますか。
サミー:あると思う。いくつかの曲にはスラッシュの傾向があるからね。これは80年代にはなかったもの。『Metal Without Mercy』はスラッシュ・メタルなんて言われることがよくあるけれど、あれはただただヘヴィな作品だよ。SabbathやAccept、Priestをミックスしただけ。最近の作品では、初期にやってみたかった他のことにも手を出すようになっているんだ。
ー タイトルの『The Fallen』というのは何を意味しているのでしょう。
サミー:今回のアルバムでは複数の曲が兵士についてのものになっている。つまり、『The Fallen』というのは”our fallen soldiers”、この国のために戦って死んだ兵士たちのことさ。歌詞では彼らにトリビュートをしたかったんだ。
ー アートワークは何を表現しているのですか。
サミー:俺たちはつねに死神をアートワークに使って来た。Iron Maidenも常にエディを使っていて、エディもアルバムごとに進化していったよね。俺たちの死神は、現在半サイボーグみたいなものに進化している。未来的なものだよ。
ー 先ほど兵士の話が出ましたが、他にはどのようなところから歌詞のインスピレーションを得ているのでしょう。
サミー:世界で起こっていること、歴史、俺は歴史が大好きなんだ。それからSF映画も大好き。ここ3枚のアルバムには、どれもSF映画が題材の曲がある。今回は「Dead Fall」。これはゾンビについてだよ(笑)。インスピレーション源は広いよ。政治にも興味があるし、今回の作品は、これまでで最も政治的な内容なんじゃないかな。
ー 「Dead Fall」というのはどのような意味なのですか。
サミー:あれは俺の造語(笑)。もともとは全然違うタイトルだったのだけれど、レコーディングで俺がふと「Dead Fall」と言ったら、他のメンバーが「それはイカしてるね」って(笑)。アルバムも最初は『Dead Fall』というタイトルになるはずだったんだ。歌詞の中にピッタリはまったというだけの言葉さ。ただ頭に浮かんだだけ。
ー お気に入りのヴォーカリストは誰ですか。ロールモデルとなるシンガーはいますか。
サミー:いるよ。イアン・ギランがオールタイムのお気に入り。彼がすべての始まりだった。「Child in Time」のあの高音を聴いて、「オーマイゴッド」って。これが俺のやりたいことだ、彼みたいになりたいって思ったんだ。ロニー・ディオも俺の影響源の1人。それからロブ・ハルフォード。この3人が俺のトップ3だね。
ー 今後の予定を教えてください。
サミー:アルバムが出たら、ヨーロッパ、アメリカをツアーする。残念ながらまだ日本には行ったことがないのだけれど、ぜひ行ってみたいね。もし呼んでくれるプロモーターがいたら。ぜひ知らせてくれ。その後はまた新しいアルバムを作るよ。
ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。
サミー:Judas Priestの『Stained Class』。Iron Maidenの『Killers』。それから、そうだな、Kreatorの『Flag of Hate』。
ー Kreatorは意外です。
サミー:そうだろ。Kreatorはオールタイムのお気に入りバンドなんだ。さっきも言った通り、スラッシュ・メタルが大好きだから。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
サミー:オーケー、俺が言いたいのは、ぜひ日本に行って、君たちのためにプレイをしたいということ。君たちは素晴らしいヘヴィメタル・ファンだからね。ぜひ近いうちに日本に行って、一緒にヘッドバンギングをしよう。
文 川嶋未来