八面六臂の活躍を見せるロニー・ロメロが、今度はヴァンデンバーグ35年ぶりのアルバムのヴォーカリストに抜擢された。古巣であるローズ・オブ・ブラックへの復帰も報じられたロニーに、色々と話を聞いてみた。
— そもそもヴァンデンバーグに参加することになった経緯はどのようなものだったのでしょう。
ロニー:エイドリアンとは4年くらい前に知り合ったんだ。16年のレインボーのライヴのすぐあと。彼はYouTubeでこのショウを見て、俺にメッセージを送って来たんだよ。「君は素晴らしいシンガーだね。グッドラック」って。そこからやりとりをするようになって、俺も「もちろんあなたのことは良く知っています。あなたがギターを弾いているホワイトスネイクのアルバムも大好きですし」と伝えたんだ。それで1年くらい前かな、エイドリアンから一緒にアルバムを作らないかという話が来て、去年の9月、10月あたりに一緒に曲作りをしたのさ。
— 直メールが来たのですね。
ロニー:そう、Facebook上で友達になっていたからね。マネージャー同士でメールのやりとりをするみたいな、プロフェッショナルなやりとりではまったくなかった。
— エイドリアンに誘われた時は、どんな気分でしたか。『スターカーズ・イン・トーキョー』が、あなたがシンガーになったきっかけの1つですよね。
ロニー:とても興奮したよ。この5年間で、想像もしなかったようなことが色々と起こったからね(笑)。リッチー・ブラックモア本人から誘われてレインボーに加入したり、子供の頃から聴いていたミュージシャンと一緒に仕事をするようになった。リッチー、マイケル・シェンカー、エイドリアン。『スターカーズ・イン・トーキョー』は大好きな作品さ。あれが初めて聴いたホワイトスネイクの作品だったからね。エレクトリック・ギターのバージョンの方を後から聴いたから、とても変な感じがした。アコースティック・バージョンに慣れてしまっていたから。あれに入っていた「Here I Go Again」は、俺が初めて歌ったロック・ソングだったんだ。それでエイドリアンのことは知っていたから、一緒にやろうということになったときは、スーパー・エキサイティングだったね。
— 歌メロはあなたが書いたのですか。それともエイドリアンでしょうか。
ロニー:基本的にはエイドリアンがすべて書いた。俺はいつもそうするんだよ。リッチーもマイケルも、そしてエイドリアンも、俺よりずっと経験が豊富だからね(笑)。彼ら特有の曲の書き方というものもあるし。ヴァンデンバーグの曲を聴けば、リスナーはこれがヴァンデンバーグの作品だとわかるよね?俺はそういうやり方で構わないんだ。だけど、もちろん俺もインプットはした。例えばある言葉を変えた方が、歌いやすかったりもするし。ハーモニーに合わせてメロディを変えることもある。エイドリアンがまずすべての曲と歌詞を書いてきて、スタジオで一緒にもっと俺が歌いやすいように直したんだ。そこは共同作業だよ。
— あなたのレンジや歌える最高音を伝えたりしたのですか。
ロニー:したよ。
— エイドリアンから歌い方の指示などはあったのですか。
ロニー:曲を書いたのはエイドリアンだから、「この曲はこういうことを考えながら書いた」とか、「あのシンガーを念頭に置いて書いた」というようなことは教えてくれたけど、俺には自由に歌わせてくれた。結局歌うのは俺だからね。LAでエイドリアンとプロデューサーのボブ・マレットと3人で、「俺はこうやって歌うよ。このフレーズは変える。ここの言葉は変えたい」なんていう感じだったけど、基本的には3人で作業した感じさ。
— アルバムを作る上で、一番大変だったところはどこでしょう。
ロニー:俺にとっては難しいところはなかったよ(笑)。俺はスタジオでは時間をかけるタイプなんだ。何週間も前から曲を聴いて、歌詞を学んで意味を掴んで。その方が良いパフォーマンスができるからね。だけど、今回は準備をする時間があまり無くて、エイドリアンがマドリードに3−4日間来て曲を書き、それからすぐにロスに行ってレコーディングをした。レコーディングには5日間かかったけど、毎日お昼から、そうだな、5時くらいまでだったからね。1日4−5時間くらい。つまりトータルでも1日以下、20時間くらいで録り終えたということさ(笑)。興味深かったのは、俺たちはお互いにどんなアルバムを録りたいかわかっていたということ。すべてがクリアでスムーズに進んだよ。すべてがスーパーイージーだった。強いて言えば、メイン・シングルになる予定の「Let It Rain」が、他の曲よりは多少難しかったかな。あれはセンチメンタルな曲で、ストレートにスクリームするロックンロールじゃないからね。そういう意味では一番難しかったと言えるけど、でもそんなに難しかったわけではないな(笑)。
— アルバムの出来には完全に満足していますか。
ロニー:もちろんさ。レコーディングはイージーで、どのテイクを採用するかも簡単に決まったし。プロデューサーとも、今のテイクは良くなかったから録り直しをするかどうかみたいなディスカッションもなかった。本当にスムーズだったよ。まさにエイドリアンの書いた曲用の歌い方ができたと思う。こういう特別なスタイルのロックを歌うチャンスは、今まで無かったからね。そういう意味でも、とてもエキサイティングだったよ。俺が過去にやった作品よりもブルージーだろ。ヘヴィメタルでもパワー・メタルでもなく、初期の、最初の2枚の頃のホワイトスネイクのようなスタイル。俺はあの時期が大好きだし。アルバムの出来にも、自分の歌にもとても満足しているよ。
— あなたはエイドリアンのファンだった訳ですが、実際に一緒にアルバムを作ってみて、印象は変わりましたか。
ロニー:良い方に変わったよ。彼はとても気さくでリラックスしていて、ユーモアのセンスも近い。だから、いつも冗談を言い合っていた。スタジオでもとてもやりやすかったよ。これも、レコーディングがイージーだった理由の一つさ。とてもヴァイブが良かったからね。
— ヴァンデンバーグとしての今後の予定はどうなっていますか。本来はライヴをやる予定もあったと思うのですが。
ロニー:この4月、5月にショウが計画されていたんだけどね。コロナのせいでできなくなってしまった。いずれにせよアルバムはリリースされたので、状況が許せば、10月、11月にまずヨーロッパでショウをやって、それからもちろん日本にも行きたいし、アメリカや南米にも行きたい。俺たちは正式なバンドだと考えているから、可能な限りたくさんのショウをやりたいと思っている。
— マイケル・シェンカー・フェストにもゲスト参加をしましたが、こちらはどのような経緯だったのでしょう。
ロニー:マイケルのプロデューサー、マイケル・ヴォスとつながりがあってね。2年前にマイケル・ヴォスが彼のバンド、マッド・マックスでコアレオーニのサポートをやってくれたんだ。それで何度か一緒にショウをやって、それから彼のアルバムにもゲスト参加をした。マイケル・シェンカーは、おそらくその曲を聴いたみたいなんだ。それで、「このヴォーカリストは誰?」ということになったらしい。マイケル・シェンカーのアルバムで、ゲスト・ヴォーカルが必要だとなったときに、俺のことを考えてくれたのさ。ヴォスから連絡が来てね。マイケルのアルバムで歌うことに興味があるかって。マイケルとのツアーも3月、4月に予定されていて、日本にも行くはずだったのだけど。ヨーロッパの日程は12月に延期になったから、その時は俺も参加する予定さ。ぜひマイケルと日本にも行きたいね。
— さらに最近ローズ・オブ・ブラックへの復帰が報じられました。なぜ古巣への復帰を決意したのでしょう。
ロニー:コロナでこんな状況だからね(笑)。退屈してたから(笑)。
— そうなんですか?
ロニー:嘘だよ(笑)。1年以上前にバンドは辞めたけど、トニー(ヘルナンド)とはずっと連絡をとっていたんだ。俺は6ヶ月前にマドリードからルーマニアに引っ越したのだけど、トニーとコロナの状況の話などをしていて、その中で彼らがヴォーカリストとうまくいっていないということを知った。その後、フロンティアーズ・レコードのオーナーが俺に連絡をしてきて、「聞いてくれ、君が必要なんだ。助けてくれ」って(笑)。ローズ・オブ・ブラックのニュー・アルバムを、俺のヴォーカルで出したいと。それでトニーと色々話し合った。あっという間に話は決まったよ。レーベルと話したのが1ヶ月前。その2週間後にはアルバムのレコーディングをしていたんだから(笑)。
— そもそもバンドを辞めた理由は何だったのですか。
ロニー:そうだな、運営の問題と言うべきかな。もっとシリアスにバンドをやろうとしていて、実際ヨーロッパや日本などで、多少の成功はしていたと思うんだ。ところが、マネージャーやブッキング・エージェントとの問題が起こるようになった。当時俺は他のプロジェクトが忙しくなっていて、キャリアを考えた場合、そちらの方を優先せざるを得なかったんだ。それでスケジュールの問題が起こってね。俺が他のプロジェクトの予定があるときに、マネージャーやブッキング・エージェントが、ローズ・オブ・ブラックのライヴを入れたり。めちゃくちゃだった。それで辞めることにしたんだ。その方が、バンドのためにもなると思ったんだよ。コアレオーニも同じ状況だったし。
— 現在ヴァンデンバーグもある訳ですが、またスケジュールの衝突などは起こる心配はないのでしょうか。
ロニー:今は状況が違うんだ。すべてのプロジェクトが、きちんと計画されている。他人ではなくて、俺のジェネラル・マネージャーがすべてを管理してくれているんだ。フィアンセなのだけど。ビジネスはすべて彼女を通しているので、プロジェクト同士の問題は起こらない。俺のやりたいことはすべてきちんとやれる。マイケル・シェンカーやヴァンデンバーグのショウがなければ、ローズ・オブ・ブラックのツアーもやれる。俺の許可なく、勝手にツアーを入れられてしまうなんていうことはもう起こらないよ。
— コロナについてお聞きします。現在のルーマニアの状況はいかがでしょう。(注:インタビューは5月22日)
ロニー:ルーマニアは対応が早かったからね。他のヨーロッパの国々と比べると、感染者の数はすごく少ないんだ。1000人もいないんじゃないかな。完全に自由というわけではないけれど、外出もできるし、スポーツなんかもできる。普通の生活に近づいているよ。数週間のうちには空港も再開するようだし。
— コンサートはいつから復活すると思いますか。
ロニー:なるべく早く再開してほしいよ(笑)。知ってると思うけど、ミュージシャンの収入の8割はコンサートだからね。7月にギリシャでのショウが予定されている。ヴァンデンバーグのツアーは10月か11月。状況が元に戻ればね。もちろん完全に以前のようにはならないだろうけど。でも年末までには何とか。
— コロナの収束後、音楽業界は変わっているでしょうか。
ロニー:もちろん。すでに変わっているよ(笑)。それはミュージシャンだけの話ではない。ミュージシャンは音楽業界の一部でしかないからね。ライヴをやるために、多くの人が働いている。テクニシャン、会場の人々、プロモーター、ブッキング・エージェント、飲み物の販売をしている人たちもね。本当にたくさんの人が関わっている。やはり最初はみんな、ライヴに行くのに恐怖を感じるだろうから、チケットセールスも思ったほどにならないだろう。元のようになるには、1年くらいかかるんじゃないかな。来年の夏くらいには、ある程度普通になっているだろうけど。
— 他のプロジェクト、バンドでニュー・アルバムなどの予定があれば、教えてください。
ロニー:俺は自分がやっていることすべてにスーパーハッピーだよ。今やっているバンドだけで十分さ。だけどシンガーとしてはどうかな。シンガーには様々なことをやりたいというモチベーションがあるからね(笑)。俺は様々なバンドで、色々と違った音楽をやれるということをとても気に入っている。ヘヴィメタルをやり、ハードロックをやり、マイケル・シェンカーとクラシック・ロックをやり、レインボーではさらにクラシックなロックをやる。来年またレインボーのショウをやれるといいな。マイケル・シェンカーともまた何かやりたいし、彼の次のアルバムにも参加したい。今一番優先度が高いのはヴァンデンバーグだけれど。来週ヨーロッパでアルバムが出るし。日本はもう出たんだっけ?
— 今日出ました。
ロニー:ヴァンデンバーグで可能な限りたくさんの国に行きたいね。それからローズ・オブ・ブラックの新譜も出るし、彼らとも日本に行きたい。日本にローズ・オブ・ブラックのファンがいることはよくわかっているから。あと、もしかしたらソロ・レコードも作るかもしれない。一応今考えていて、他のプロジェクトとはまったく違ったものにしたいと思っているんだ。ジャーニーみたいな、もっとメロディックな作品になるかもしれない。
— お気に入りのアルバムを3枚教えてください。
ロニー:それは難しいな(笑)。子供の頃からロックを聴いているからね。無理やりにでも挙げるとすると、俺にとって最も重要なアルバムは、ずっとファンだったレインボーの『Rising』。この作品は、普通のロックではなくヘヴィメタルという世界を俺に教えてくれた。それ以前のロックの歴史にはなかった新しい要素が詰まっているからね。ロニー・ジェイムズ・ディオの歌い方にも圧倒された。それから、ホワイトスネイクも挙げないと。やっぱり87年のアルバムかな。あとは、ジャーニーの『Frontiers』。多くの人は俺のことをロニー・ジェイムズ・ディオなどのアグレッシヴなシンガーと比べるけど、メロディックな歌い方という意味では、スティーヴ・ペリーからの影響が一番大きい。間違いなく彼は、俺にとってのトップ3シンガーの1人さ。あのアルバムも本当に素晴らしい。
— お気に入りのシンガー、残りの2人は誰なのでしょう。
ロニー:フレディ・マーキュリーとデヴィッド・カヴァーデイルさ。
— では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ロニー:まずはどうもありがとうと言いたい。こんな大変な状況の中でも、日本のファンがヴァンデンバーグのリリースをサポートしてくれていることは感じている。日本のみんなの無事を祈っているよ。ルーマニアよりは状況が良くないようだし。なるべく早くまた日本に行きたいよ。
- シャドウズ・オブ・ザ・ナイト
- フレイト・トレイン
- ヘル・アンド・ハイ・ウォーター
- レット・イット・レイン
- ライド・ライク・ザ・ウィンド
- シャウト
- シットストーム
- ライト・アップ・ザ・スカイ
- バーニング・ハート2020
- スカイフォール
【メンバー】
エイドリアン・ ヴァンデンバーグ (ギター)
ロニー・ロメロ (ヴォーカル)
ランディ・ファン・デル・エルセン (ベース)
コーエン・ヘルフスト (ドラムス)
【ゲスト・ミュージシャン】
ルディ・サーゾ (ベース)
ブライアン・ティッシー (ドラムス)