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パワーウルフ
(ファルク・マリア・シュレーゲル)
独占インタビュー

俺たちはパワーウルフであり
そのトレードマークを証明するだけで十分なのさ
それがこのアルバムで聴けるものだよ

                                   

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文:川嶋未来 Photo Credit:Matteo Vdiva Fabbiani for VD Pictures

ドイツのパワー・メタル・バンド、パワーウルフ。おどろおどろしいルックスとは裏腹のパワー・メタル・サウンドで、大きな人気を博している彼らが8枚目のアルバム『コール・オブ・ザ・ワイルド』をリリース。ということで、オルガニストのファルク・マリア・シュレーゲルに話を聞いてみた。

 

マリア:調子はどう?

 

ー 今朝2回目のワクチンだったんですよ。今のところ特に異常はないのですが。

 

マリア:そうなんだ!俺は2週間前に2回目を打ったよ。

 

ー 副反応はありましたか?

 

マリア:打った日は問題なかった(笑)。二日目は、まあ少々頭痛がした程度。大丈夫だよ。

 

ー ニュー・アルバムがリリースになりますが、何かコンセプトのようなものはありますか。

 

マリア:新作は『コール・オブ・ザ・ワイルド』というタイトルで、8枚目のアルバムになる。コンセプトは無いけれど、例えば「ビースト・オブ・ジェヴォダン」はフランスの悪魔の伝説で、18世紀に何百人も殺したのだけど、何が起こったのか誰にもわからなかった。古いトピックと宗教的なトピックのコンビネーションで、「グラウベンスクラフト」は神の罰、「ブラッド・フォー・ブラッド」はアイルランド、「ヴァルコラーク」はルーマニアの伝説について。宗教的な内容を扱っているものもあるけれど、信仰ではなく歴史的な記述だよ。

 

 

 

ー レコーディングはスムーズに行きましたか。それとも何か難しいことはあったでしょうか。

 

マリア:正直すべてがわりとスムーズだった。一番大変だったのは移動さ。もともとはスウェーデンでレコーディングをする予定だったのだけどキャンセルして、楽器はオランダでヨースト・ファン・デン・ブロークと録った。普段は移動が一番簡単なパートなんだけどね。ドイツでいろいろと規制がかかって、そこに行くにも検査をしないといけないとか。まあ結局は何とかなったけれど。コーラスをみんな別々の部屋で歌わなくちゃいけないという問題はあったけれど、締め切りは守れたからね。良かったよ。

 

ー 過去の作品と比べた場合、どんな点が進化している、あるいは異なっていると言えるでしょう。

 

マリア:難しい質問だな。俺たちはいつも一緒に歌える、頭に残る良い曲、良いアルバムを作ろうとしているからね。『コール・オブ・ザ・ワイルド』でもそれは達成できたと思う。前作はバンド史上最も成功したアルバムで、それ以前のアルバムとは違ったものだった。『コール・オブ・ザ・ワイルド』は、さらに大きな進歩をしているよ。「アライヴ・オア・アンデッド」はバラードだし、「ブラッド・フォー・ブラッド」ではケルトの楽器を使った。これは前作の「インセンス・アンド・アイアン」でもやってけれど。チャーチオルガンやクワイヤといったパワーウルフのトレードマークに、少々新たな挑戦を加えた。細かいところ、まあパワーウルフというバンドとして進歩させたけれど、スタイルを変えたくはなかったからね。俺たちはパワーウルフであり、そのトレードマークを証明するだけで十分なのさ。それがこのアルバムで聴けるものだよ。

 

ー パワーウルフの音楽をどう説明しますか。例えば、もし無理矢理カテゴライズするとしたら、どうなるでしょう。

 

マリア:俺はシンプルにヘヴィメタルだと思う。パワー・メタルだと言う人も多いけれどね。確かに色々なもののミックスで、「ファスター・ザン・ザ・フレイム」はパワー・メタルっぽいし、例えば今回のアルバムのタイトル・トラックなどは、トラディショナルなアイアン・メイデンのような曲。一方「ダンシング・ウィズ・ザ・デット」は、ダンスやポップのエレメントもあって少々ロックっぽい。なので結局はヘヴィメタルと呼ぶのが一番なのだけど、音楽を描写するのは難しいね。だけど、俺たちの音楽を聴いてもらえれば、すぐにわかると思う。俺たちは自分たちのやりたいことがはっきりとわかっているから。チャーチ・オルガンを使ったり、ユニークなものだと思う。過去の何年間で達成できたことについては、とてもハッピーさ。

 

ー 今アイアン・メイデンの名が出ましたたが、他はどんなバンドからインスピレーションを受けていますか。

 

マリア:俺個人としては、例えばサヴァタージだね。ピアノが入っていたり、ヴォーカル・ラインも本当に素晴らしい。バンドの他のメンバーは、ジューダス・プリーストの大ファン。あとはゲイリー・ムーアとかブラック・サバスとか。アプローチは違うけれど、このあたりが影響を受けているアーティストだね。自分たちでは新しいサウンドを作り出そうとしているけれど、こういうアーティストから影響は受けているんだ。曲を聴けば、もしかしたらそれがわかるかもしれない。

 

ー あなたの音楽的バックグラウンドを教えてください。初めて弾いた鍵盤楽器は何だったのでしょう。

 

マリア:オルガンだよ。俺はドイツの小さな村で育ったんだ。子供の頃初めて教会に行って、オルガンの演奏が始まると怖いと思ったよ(笑)。楽器自体は見えないのに、恐ろしい音だけが聴こえてくる。やがて自分でもオルガンを演奏するようになって、同時にアイアン・メイデンの『Piece of Mind』も聴くようになったんだ。そのうちヘヴィメタル・バンドにはキーボード・プレイヤーがあまりいないことに気づいて、参ったよ。自分でもバンドをやりたいと思っていたからさ。当時は、キーボードを使うことが許されていなかったとまでは言わないけれど、キーボードを使うバンドは少なかったんだ。幸運なことに、あるいは運命かもしれないけど、パワーウルフの連中と知り合ってね。最初はハモンド・オルガンの音を入れていた。『Lupus Dei』を作った時に、チャーチ・オルガンを使うというアイデアを思いついてね。教会で聴いたオルガンのサウンドを、自分たちの音楽に取り込もうと思ったんだ。ヘヴィメタルはただ聴くだけのものではなく、もっとリッチなものだということにも気づいたので、このドイツのカソリック教会の要素を、メタルとはリッチなものだというメッセージのために使ったのさ。だけど、俺が子供の時に感じたみたいに、怖いものとして使っている訳ではないよ。俺たちのショウに来ているお客さんを見てもらえればわかるけれど、彼らは超ハッピーでエネルギッシュなんだ。満員の会場を見ると、巡礼に来ているかのようさ。そういう雰囲気やエネルギーを感じることができる。パワーウルフのコスモスさ。色々なことをうまく要約して言えた気がするな(笑)。

 

ー つまりパイプオルガンが初めて演奏した楽器だったのですか?

 

マリア:そう、質問の答えに戻るとそういうことなんだ(笑)。その後、家にある鍵盤が2段でベースペダルを足で踏むオルガンをやるようになった。今はあんな楽器をやっている人は誰もいないよね。俺もその後キーボードを弾くようになったけれど、ピアノはやったことがないんだ。アプローチは違うけれど、バンドを何年もやっているから、ピアノを弾くことにも慣れてきているよ。正式な教育を受けたピアノ・プレイヤーではないけれどね。

 

ー アイアン・メイデンを初めて聴いた時はどう感じましたか。

 

マリア:ちょっと怖かった。LPを買って、何しろあのアートワークだから。曲を聞くと、パワーを与えられたよ。最高だった。1990年に初めてアイアン・メイデンを見た。アンスラックスがサポートで。他の人にもヘヴィメタルを聴かせたくてね。学校の音楽の先生に「クラスでアイアン・メイデンの曲について話せませんか」なんて言って。「2 Minutes to Midnight」の歌詞をみんなに訳して聞かせたり。先生は「おいおい、こんなのは音楽じゃないよ」なんて言っていたけれど、「お願いします」って(笑)。結局クラスのみんなで聴いて、彼らは俺の言うことに納得した訳ではなかったけれど、「2 Minutes to Midnight」という地球上で最高の曲の1つをみんなに聴かせられただけで、俺はハッピーだったよ(笑)。音楽の先生には、「アイアン・メイデンやヘヴィメタルは危険な音楽だ」なんて警告されてさ。それで逆に「イエス!俺は危険なものが好きなんだ!」なんて思って(笑)。それが90年代の話で、05年にパワーウルフを結成したんだ。これが俺の個人的なヘヴィメタルの歴史だよ。

 

ー 『Piece of Mind』はジャケットを見て買ったのですか。

 

マリア:そうだね。あと全体的にあのアルバムの雰囲気が好きだった。あと、『Seventh Son of a Seventh Son』。あれも雰囲気がまったく違ったものだけれど。それから『Live After Death』を買って、全曲ブルース・ディッキンソンと一緒に歌えたよ。「Scream for me, Long Beach Arena」なんていうセリフまでね。おかげでそれ以来ずっとヘヴィメタル中毒さ。来年ブレーメンでアイアン・メイデンと一緒にプレイする予定なんだ。フェスティヴァルでは彼らと会ったことがあるのだけど、夢が叶った感じだよ。彼らに会えるなんて素晴らしいよ。彼らのせいで、今俺はこんなことをやっているんだからね(笑)。

 

ー キーボーディストとして、どのようなところからインスピレーションを受けるのでしょう。あなたも言っていたように、ヘヴィメタルのキーボーディストというのは決して多くありません。クラシックやジャズ、サウンドトラックといった、ヘヴィメタル以外からの影響はありますか。

 

マリア:正直まったく無い。俺が曲を書く時は、ヴォーカル・ラインから書くことが多いのだけれど、例えばジャズとかから影響を受けるということはまったく無くて、何と言うかな、もっと音楽も雰囲気というか、例えばカタトニアとか、ティアマット、ムーンスペルなんかはとても良いキーボードが入っているよね。これらのバンドは、典型的なレイヤー・サウンドとしてキーボードを使っているのではない。パワーウルフでは、やっぱりメロディを書くことが重要で、ヴォーカルがメロディを歌うのか、それともキーボードか、ギターなのか。それがパワーウルフのアプローチなんだ。

 

ー ゴシック・メタルがお好きなのですね。

 

マリア:そう、実はそうなんだよ(笑)。アイアン・メイデンのあとは、クリエイターとかスラッシュ・メタルにハマって、その後はティアマットやムーンスペルが好きになった。今でも好きだよ。オランダのザ・ギャザリングとか。こういう感じのバンドは、今も大好きなんだ。ヘヴィメタルの良いところは、あるバンドを好きになると、そのバンドをずっと好きでいられるというところさ。10枚目アルバムを出しても、まだ好きでいることができる。素晴らしいよね。パワーウルフについても同じように感じてる。もちろんファンは、俺たちのアルバムをすべて好きという訳ではないかもしれない。例えば『Preachers of the Night』は好きじゃないけれど、『The Sacrament of Sin』は好きというファンもいるだろう。だけど、それでもずっとファンでいてくれる。これがヘヴィメタル・シーンのユニークなところだと思うな。

 

ー お気に入りのキーボーディストはいますか。

 

マリア:誰かを挙げるとすれば、ジョン・ロードだね。彼はまるで朝飯前のようにキーボードを演奏してみせるだろ(笑)。彼のプレイを聴くのは大好きだね。残念ながらもうステージで見ることはできないけれど。素晴らしいキーボーディスト、オルガン・プレイヤーだね。

 

ー キーボードは何を使っているのですか。

 

マリア:ステージでは、Nord Stage 5D。ステージで本物のチャーチ・オルガンをプレイできないのは残念だよ(笑)。以前はMIDIキーボードでサンプルをプレイしたのだけれど、俺の印象としては、これはライヴ用に作られているものではなかったので、やりにくかった。俺たちのライヴはとてもパワフルだから、濡れたり倒れたりしても大丈夫なキーボードが必要なんだ。ステージではNord Stageを2台使っているよ。このキーボードは、とても良いオルガンの音が出せるんだ。本物のオルガンは、高い音から低い音まで全部出せるようになっていて、それをミックスして音を作るのだけど、このキーボードでもそれがきちんと出来る。これを使い続けることは間違いないよ(笑)。とても気に入っているんだ。赤いやつね。スタジオでは何曲か本物のチャーチ・オルガンを使っている。俺たちはエンターテインメントを大切にするバンドだから、ステージだけでなく、レコーディングでもね。俺たちのホームタウンの近く、フランスに小さな教会があって、もう何度もレコーディングしているから、「またお願いしたいんだけど」と電話すれば、「OK、いつでも来てくれ」なんていう感じなんだ(笑)。確かここ5枚のアルバムではすべて本物のチャーチ・オルガンを使ってる。俺はただプレイすればいいから簡単なのだけど、レコーディングする方はかなり大変みたいだよ。自然のリバーブがかかっていたりするからね。だけどチャーチ・オルガンは入れなくちゃ(笑)。とても大切なんだよ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

マリア:もちろんアイアン・メイデンの『Piece of Mind』。それからクリエイターの『Renewal』。クリエイターとしては異色の作品だけどね。最後は、やっぱりアイアン・メイデンの『Seventh Son of Seventh Son』。アイアン・メイデンが2枚になってしまって申し訳ない(笑)。

 

 

ー 今年の予定はどんな感じですか。そろそろヨーロッパではツアーやフェスティヴァルが復活しそうな感じですが。

 

マリア:普通に戻ってくれるといいのだけど。9月の半ばにBullhead City Festivalというのがあって、これはWackenみたいなもので、まあWackenではないのだけど、Wackenのプロモーターがやるフェスティヴァルなんだ。これでブラインド・ガーディアン、ナイトウィッシュと一緒にヘッドライナーをやる。とても大きな、素晴らしいショウになるんじゃないかな。ツアーは10月1日にシュトゥットガルトから再開する予定。本当にやれるよう祈っているよ。まあ俺は楽観的だけどね。2回ワクチンを受けている人も増えてきたし(笑)。もちろんパンデミック以前とは状況は変わるだろうけれど、ついにヨーロッパでツアーを再開できるチャンスさ。そして、ぜひ日本にも行きたいね。まだ行ったことがないから、今回こそ行きたいよ。

 

ー 日本に来るというプランはありましたよね。実現しなかったようですが。

 

マリア:そう、プランはあったんだよ。だけど、確か他の地域のツアーと重なってしまったんだ。本当に日本に行きたいよ!日本に行くと、ここで約束する。

 

ー 日本についてどんなことを知ってますか。

 

マリア:多くのことは知らないけれど、例えばアーチ・エネミーのメンバーから聞いた話とか、マイケルは日本に住んでいることもあるんだよね?あとはブラインド・ガーディアンのハンジィからも色々と聞いていて、ぜひ日本には行くべき、みんなフレンドリーで、音楽に献身的だと。日本のファンは、俺たちみたいなスタイルの音楽を気に入ってくれるんじゃないかと思うんだ。気に入ってもらえると嬉しいのだけど。ぜひ日本のファンの前で、俺たちの音楽を披露したいよ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

マリア:パワーウルフのマリアだ。俺たちのニュー・アルバム『コール・オブ・ザ・ワイルド』がリリースになったから、ぜひ聴いてくれ。ワイルドで、そしてパワーウルフと一緒にメタルでいてくれ!

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年7月16日発売

パワーウルフ

『コール・オブ・ザ・ワイルド』

CD

2CD

2CD+Tシャツ

【CD収録曲】
[CD1]

  1. ファスター・ザン・ザ・フレイム
  2. ビースト・オブ・ジェヴォーダン
  3. ダンシング・ウィズ・ザ・デッド
  4. ヴァルコラック
  5. アライヴ・オア・アンデッド
  6. ブラッド・フォア・ブラッド(ファオラド)
  7. グラウベンスクラフト
  8. コール・オブ・ザ・ワイルド
  9. サーモン・オブ・ソーズ
  10. アンドレス・トゥ・コンフェス
  11. リヴァレント・オブ・ラッツ
[CD2]
  1. ファスター・ザン・ザ・フレイム(オーケストラ・ヴァージョン)
  2. ビースト・オブ・ジェヴォーダン(オーケストラ・ヴァージョン)
  3. ダンシング・ウィズ・ザ・デッド(オーケストラ・ヴァージョン)
  4. ヴァルコラック(オーケストラ・ヴァージョン)
  5. アライヴ・オア・アンデッド(オーケストラ・ヴァージョン)
  6. ブラッド・フォア・ブラッド(ファオラド)(オーケストラ・ヴァージョン)
  7. グラウベンスクラフト(オーケストラ・ヴァージョン)
  8. コール・オブ・ザ・ワイルド(オーケストラ・ヴァージョン)
  9. サーモン・オブ・ソーズ(オーケストラ・ヴァージョン)
  10. アンドレス・トゥ・コンフェス(オーケストラ・ヴァージョン)
  11. リヴァレント・オブ・ラッツ(オーケストラ・ヴァージョン)

 

【メンバー】
アッティラ・ドーン(ヴォーカル)
マシュー・グレイウルフ(ギター)
チャールズ・グレイウルフ(ギター)
ファルク・マリア・シュレーゲル(オルガン)
ルール・ファン・ヘルデン(ドラムス)