WARD LIVE MEDIA PORTAL

OPETHミカエル・オーカーフェルト
独占来日インタビュー!

稀代の音楽マニア/レコード・コレクターとして知られるミカエル・オーカーフェルトを独占直撃来日取材!彼が所有する最もレアなレコードとは!?

                                   

ご購入はこちら

文:インタビュー 川嶋未来 写真:Aki Fujita Taguchi

スウェーデンを代表するプログレッシヴ・メタル・バンド、オーペスが来日。ニュー・アルバム『イン・カウダ・ヴェネノム』も好評な彼ら。リーダーであり、熱心なレコード・コレクターとしても知られるミカエル・オーカーフェルトに話を聞いた。

 

 

 

ー ニュー・アルバム『イン・カウダ・ヴェネノム』がリリースになりましたが、評判はいかがですか。

 

ミカエル:圧倒されるくらい良いと思うよ。実際そんなに見てはいないんだけどね。俺はSNSもやっていないし。だけど、送られてきたレビューはどれもとても良いと。それに、これはまだ公になってないのかな、まだ言ってはいけないかもしれないけど、スウェーデン・ロック・マガジンではアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれたんだ。まあ、俺は以前この雑誌に寄稿していたからさ、不正みたいなものだけど(笑)。イギリスのプログ・マガジンでもアルバム・オブ・ザ・イヤーになったんだ。だから、よくわからないけど、多分みんな気に入ってくれてるんじゃないかな。このツアーでも、新作から3曲プレイしているけど、反応も良い。スウェーデン語で歌っているから、イライラする人もいるかもしれないけどね(笑)。

 

― そもそもレビューは気になりますか。

 

ミカエル:これだけ長いことをやっているからね、レビューが悪いからって落ち込んだりなんていうことはないよ。せいぜい気にするのは30秒程度。それで忘れてしまうよ。俺は基本的に悪いレビューの方を探すんだ。なぜだか、その方が面白いからね(笑)。だけど、悪いレビューを建設的にとらえようという意味ではまったくない。「このレビューの指摘は鋭いから、次の作品では直そう」みたいなことは一切ない。ただ面白いから見るだけさ。曲を書くにあたって、外部からの影響を受けることはないんだ。

 

― 新作はデス・メタル要素はなく、非常にプログレッシヴであるという印象を受けました。このアルバムを作るにあたって、どのような音楽性を想定していたのでしょう。

 

ミカエル:レコード・コレクションを通じて、色々と奇妙な音楽や美しい音楽に出会っているからね。エクストリーム・メタルやヘヴィメタルだけを聴いていたのでは出会えないような音楽さ。俺はあらゆるタイプの音楽が好きなんだ。毎日ピザばかりを食べ続けるわけにはいかないからね。ときどきスパゲッティも食べる必要がある。何か新しい影響になりうるものを探しているのさ。レコード・コレクションは趣味でもあるけどね。俺はその国特有のサウンドに興味がある。だから、日本では基本的に日本の作品しか買わないんだ。チェコではチェコの音楽を買う。それぞれの国では、よくわからないけど、どんな音楽であろうと民族音楽からの影響があるものさ。サウンドや選ばれる音、スケールがそれぞれ違う。とにかく、いろいろな音楽を聴いているよ。主にロック、ときどきジャズ、それからポップス、もちろんヘヴィメタルやプログレも。このアルバムを作ったときは、エピックなロックやポップスをよく聴いていた。クイーンやケイト・ブッシュ。ケイト・ブッシュはエピックではないけど、彼女は天才だよ。彼女の曲のいくつかは、聴いていると涙が出る。以前は全然聴いていなかったんだけどね。ファースト・アルバム『Kicking Inside』を聴いて、「オーマイゴッド、どうしてこれを30年前に聴かなかったんだろう」って。こういうタイプの音楽からの影響さ。オーケストラが入った音楽も。今回ストリングスをたくさん使いたかった。オーケストラの入ったポップス。フィラモア・リンカーンというアーティストがいて、1970年だったかな、アルバムを出してそれで消えてしまったのだけど、たくさんのストリングスが入ったポップスなんだ。あとはジャズも。ガールフレンドがジャズが大好きでさ。ジョン・コルトレーンとか。彼女は(チャールズ)ミンガスも好きだけど、俺にとってはクレイジーすぎるな。

 

― つまりオーペスの方向性はあなたが聴くものによって都度変わるということですか。

 

ミカエル:いつもそうさ。バンドのメイン・ソングライターは俺だしね。他のメンバーもレコード・コレクションはしているけど、俺ほどじゃない。俺が音楽を書く以上、俺が買う作品からの影響を避けることはできないからね。いつも「俺は自分のレコード・コレクションの作品だ」と言っているんだ。

 

 

― 先ほど国ごとに音楽的な特徴があるということを言われていました。今回スウェーデン語で歌っていますが、音楽的にもよりスウェーデンっぽいということでしょうか。

 

ミカエル:言語からの影響というのは不可避さ。スウェーデンにも当然スウェーデンのサウンドというものがある。スウェーデンにも民族音楽があるからね。それはロックであれ、ジャズであれ、それからポップスにすら受け継がれている。例えばABBAなんかにも、その影響を感じることができるよ。もちろん俺たちの場合も、19歳のときに作ったファースト・アルバムからその影響は聴けるはず。当時民族音楽に傾倒していたし。ニュー・アルバムが、他の作品よりもとくにスウェーデンっぽいかというと、そういうことはないな。歌詞以外はね。

 

― 今回スウェーデン語で歌った理由は何なのですか。

 

ミカエル:実はよくわからないんだ。

 

― スウェーデン語で曲を書くのと英語で書くのは違いますか。メロディやリズムの面で。

 

ミカエル:とくにメロディが違うとは思わなかったけど、歌詞の中身は違ったね。最初のインタビューをやるまで気づかなかったのだけど、歌詞の内容が現代的なんだ。「歌詞が現代的、ときに政治的ですが」と言われてね。英語で歌詞を書くときは、俺は英語を使う方が好きなんだ。とても美しい言語だよね。英語で歌詞を書くときは、知らない変な単語を選んで辞書で調べて、基本的に美しいと思う言葉で書くのさ。ところが、スウェーデン語にはそんな美しい単語が存在しない。スウェーデン語のサウンドは美しいとは思わない。だから、今回はもっとダイレクトで、美しい言葉の背後に隠されたものがない内容になった。それでモダンなものになったんだと思う。

 

― 英語は美しいですか?

 

ミカエル:そう思うよ。

 

― サウンドが?

 

ミカエル:サウンドもだし、見た目も美しい。「Black Sabbath」なんて美しいだろう?

 

― (笑)。私はスウェーデン語にはなじみがないのですが、どのような言語なのでしょう。例えば、英語はリズミックですよね。

 

ミカエル:スウェーデン語で喋っていると、まるで歌っているようだと言われるね。フィンランド語なんかと比べると、フィンランドも同じ北欧に属する国だけど、フィンランド語はもっと無調っぽい。歌っているようだと言われるけど、俺にはわからない。

 

― ノルウェー語も歌っているように聞こえるのですが、やはりスウェーデン語も近いでしょうか。

 

ミカエル:近いね。スウェーデン語とノルウェー語はお互いに理解できるんだ。もちろん方言によるけど。例えばベルゲンの言葉はわかりにくい。地方によっては聞いてもまったくわからないノルウェー語もあるし、ほとんどスウェーデン語の地域もある。

 

 

― ヴィンテージの楽器がお好きですが、なぜなのでしょう。現代の最新テクノロジーと比べた場合、どのようなところに魅かれるのですか。

 

ミカエル:正直なところ、ヴィンテージ楽器は好きだけど、ツアーでは使わない。俺はメロトロンを所有しているけど、本物のメロトロンとテープフレームを持ってここ日本まで来るというのはさすがにね。本物のメロトロンを使うバンドとツアーをしたこともあるけどね。ビッグ・エルフは知ってる?

 

― ええ、彼らは本物を使うのがトレードマークみたいなバンドですよね。

 

ミカエル:そうだね。もちろん本物を使えれば良いのだけど、これだけの数のショウをやるとなるとさすがに厳しい。お金もかかりすぎる。だからステージで使っているギターも、ヴィンテージのものはない。個人的に古いストラトキャスターを良い値段で見つけられれば買うけれど。あと、古いやり方での演奏やレコーディングというのは気に入ってる。よりインチキが少ないだろ?俺たちもProToolsは使うけど、あくまでテープと同様の使い方さ。ミスをしたら最初からやり直す。

 

― メロトロン以外にも、何かヴィンテージ・キーボードを所有していますか。

 

ミカエル:レコードではB3もたくさん使ったし、レズリースピーカーも。俺はプログレっぽいヴィンテージの音が好きだからね。Moogも使ったし、ワーリッツァーやフェンダー・ローズも。普通のアップライトのピアノも。

 

― 全部持っているのですか?

 

ミカエル:いや、俺はキーボードは弾けないんだ。持ってるのはメロトロンだけ。『Heritage』用に買ったんだよ。だけど壊れてしまってね。だから今回はアネクドテンから借りたんだ。俺たちのキーボーディストはL400、L800かな?B3と同等のオルガンを持ってる。(注:Ex−800か?)あとクラヴィネットも。クラヴィネットはまだアルバムで使ったことがないんだ。将来的には使ってみるかも(笑)。

 

― そもそもの音楽との出会いはどのようなものだったのでしょう。

 

ミカエル:多分子供向けのテレビ番組だったと思う。70年代スウェーデンで人気だった子供向け番組。当時テレビ番組の音楽のレコードが出ていてね。テレビ番組やアニメの音楽が入ってるやつ。それが最初の出会いだったと思う。俺は1974年生まれなのだけど、これはABBAがユーロヴィジョンのソングコンテストで優勝した年なんだ。ABBAの曲はずっとラジオでかかっていたよ。うちはいつもラジオをかけていたからね。スウェーデンではヘヴィメタルもとても人気があったから、小さいころから馴染みがあった。アイアン・メイデンやサバス、パープルのようなバンド。最初に買ったアルバムは、『The Number of the Beast』だった。リリースされたときに買った。当時8歳だったから、82年かな。その次がキッスの『Lick it Up』

 

― 8歳でアイアン・メイデンを買うというのは凄いですよね。何がきっかけだったのですか。

 

ミカエル:見た目がカッコよかったのさ。それに、あの頃みんなヘヴィメタルが好きだったからね。兄貴たちからの影響で。兄貴たちと言ったのは、女の子はみんなシンセ・ミュージックが大好きだったから。完全に分かれていて、当時女の子でヘヴィメタルを聴いている子は多くなかった。年上の男の子たちはみんなヘヴィメタルが好きで、俺にレコードを貸してくれた。彼らが俺の音楽のメンターだったんだ。オーペスの初代のドラマーのお兄さんが、俺にジューダス・プリーストのレコードを一式くれたことを覚えているよ。5−6枚、『Sin after Sin』、『Stained Class』とか。俺にとっては宝物のようなものだった。だけど、メタルだけを聴いていたわけじゃないよ。まだ子供だったから、メタルだけ聴こうとは思わなかった。メタルはクールだと思ったけど、ABBAやビートルズの曲なんかも聴いていた。今みたいな感じさ。10代になってからは、デス・メタルしか聴かない時期もあったけれど。そして、今は子供時代に戻った感じさ(笑)。

 

― エクストリーム・メタルとの出会いはどんな感じだったのでしょう。

 

ミカエル:これは君と同じだと思うよ。もっとヘヴィなもの、もっと速いものを探していった結果さ。顕著なバンドが同時期に出てきたよね。メタリカとかヴェノムとか。ヴェノムはクソだと思ったけど。楽器をまともにプレイできなかったからね。俺はスコーピオンズのファンだったから、演奏がうまくなくてはダメだったんだ。メタリカはもちろん大好きだったし、オーヴァーキル、あとはメガデスやアンスラックスとか。そこからもっとマイナーなバンド、例えばヴォイヴォドなどを聴くようになっていったんだ。クリエイターとか。そこまで来てしまえば、ポゼストの『Seven Churches』はすぐそこだ。スウェーデンにはバソリーもいたしね。その後のスウェデッシュ・デス・メタル・シーンは、俺にとって完璧なタイミングだった。スウェーデンはもちろん、アメリカやイギリスのシーンにもハマったよ。ナパーム・デスとかね。それで自分のバンドを始めたんだよ。

 

― バソリーはスウェーデンではどのような存在だったのでしょう。多くの人に知られていたのですか。

 

ミカエル:もちろん俺たちみたいな奴らにはよく知られていた。小さなグループの中では、彼は神、というかサタンのような存在だったよ。だけど、とても有名だったわけではない。そうだな、例えばアイアン・メイデンあたりまでしか聴いていないファンだと、彼のことは知らなかっただろうね。メタル・シーンの中では隠れた存在だったんだ。俺がクオーソンを知ったのは、80年代の中盤から後半にかけてだったと思う。確か3rdアルバムが出たころ。

 

― 『Under the Sign of the Black Mark』?

 

ミカエル:そう。リアルタイムで初めて買ったのは、『Blood Fire Death』だね。俺は一度だけ、クオーソン本人を見たことがあるよ。バスに乗ってるとき。「あれはクオーソンだ!」と気づいたんだけど、話しかける勇気はなかった。写真で見たままでさ、ストックホルムのサッカーチーム、AIKの帽子をかぶっていた。ギブソンのギターを持って長髪で、ボンバージャケットを着ていた。間違いなくクオーソンだったよ。つまり、俺はクオーソンと会ったことはないけど、見たことはあるということさ。

 

 

― あなたはレコード・コレクターとしてよく知られていますが、所有している中で一番レアなレコードは何でしょう。

 

ミカエル:うーん、おそらくはリーフハウンドのアルバムだね。数年前にオランダで買ったんだ。まあ音楽的には素晴らしいというわけではないけどね。エクストリームなサウンドの、C級のレッド・ツェッペリンという感じで。だけど、欲しかったんだよ。シンガーのピーター・フレンチに会ったときに、余ってるレコードはないかと聴いたんだけど、「ないよ。自分の分しかないから譲れない」って。値段が高くてなかなか買えなくてね。ある時オランダのレコードフェアで、めちゃくちゃに酔っ払ってるノルウェー人がこのアルバムを売ってたんだ。それでうまいことやって、良い値段で譲ってもらったのさ。これはレアだよ。パッと思いつくのはこれだね。ウィル・マローンは知ってる?70年代にブラック・サバスのストリングス・アレンジメントをやった人さ。俺たちの『Sorceress』のストリングス・アレンジメントもやってもらったんだ。連絡をとって。彼は1970年に美しいソフトなアルバムを出していてね。

 

― では、レアだけで音楽的に素晴らしい、ぜひ聴いておくべきアルバムを教えてください。

 

ミカエル:さっきも言ったフィラモア・リンカーンだね。『The North Wind Blew South』というアルバム。全曲素晴らしいというわけではないのだけど。いくつかの曲はふざけたポップだけど、他の何曲かは今まで聴いた中で最高のものだ。アメリカでしかリリースされなかった、素晴らしいアルバムさ。日本盤CDは紙ジャケで出ているよ。それから、ハワイのジーズ・トレイルズ。すごく奇妙な女性ヴォーカルのフォークなんだ。魔法をかけられたみたいな感じで。それからリンダ・パーハクスは知ってる?これもアメリカの女性ヴォーカリストで、ジョニ・ミッチェルみたいだけど、もっとずっとサイケデリックなんだ。1970年にアルバムを1枚だけ出して、歯科衛生士になった。ロスのライヴには何度も招待しているんだ。彼女は最近また活動を始めてね。最初のアルバム『Parallelograms』がオススメだよ。ジョニ・ミッチェルが好きで、もっとダークでクレイジーなものが聴きたければ、これだね。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ミカエル:日によって変わるよ。

 

― メタル限定だとどうでしょう。

 

ミカエル:メタルか。『Sabbath Bloody Sabbath』。あとは、そうだな、ディープ・パープルの『Fireball』。ジューダス・プリーストの『Sad Wings of Destiny』。

 

― では、最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ミカエル:ハロー、愛する日本のファンたち。今俺たちは東京にいて、今晩ライヴをやるよ。もし君がこの会場にいたなら、俺たちの素晴らしいショウを体験したはずだ。もし来られなかったのなら、次回ぜひ見に来てくれ。長年のサポート、日本での素晴らしいホスピタリティ、とても感謝しているよ。

 

 

文 インタビュー 川嶋未来

写真 Aki Fujita Taguchi

 


 

最新スタジオ・アルバム

オーペス『イン・カウダ・ヴェネノム』帯付き直輸入2枚組LPレコード(スウェーデン語ヴァージョン)

WRDZZ-923 / 4,950円(税抜 4,500 円)

 

 

【2枚組LPレコード収録曲】

[SIDE A]

Livets Trädgård

Svekets Prins

Hjärtat Vet Vad Handen Gör

 

[SIDE B]

De Närmast Sörjande

Minnets Yta

 

[SIDE C]

Charlatan

Ingen Sanning Är Allas

Banemannen

 

[SIDE D]

Kontinuerlig Drift

Allting Tar Slut

 

【メンバー】

ミカエル・オーカーフェルト (ヴォーカル/ギター)

フレドリック・オーケソン (ギター)

マーティン・メンデス (ベース)

マーティン・アクセンロット (ドラムス)

ヨアキム・スヴァルベリ (キーボード)

 

『イン・カウダ・ヴェネノム』LPレコード商品ページはこちら

 

その他 オーペス商品はこちら