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セバスティアン・ラムステット
(ネクロフォビック)
独占インタビュー

今回のアルバムはもっと暗くて少々プログレッシヴ
エピックで深いものになっている
『Mark of the Necrogram』より
何回も聴いてみる必要があると思う

                                   

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文:川嶋未来 Photo by :Jens Rydén

スウェーデンのブラッケンド・デス・メタル・バンド、ネクロフォビックが、ニュー・アルバム『ドーン・オブ・ザ・ダムド』をリリース。サウンドの要、ギタリストのセバスティアン・ラムステット復帰2作目となる本作は、どのような内容なのか。1万字に迫るセバスティアンのロング・インタビューをお届けする。

 

 

ー ニュー・アルバム、『ドーン・オブ・ザ・ダムド』がリリースになります。前作と比べた場合、どんな作品だと言えますか。

 

セバスティアン:今回のアルバムは、もっと暗くて、少々プログレッシヴ。エピックで、深いものになっている。『Mark of the Necrogram』より、何回も聴いてみる必要があると思う。『Mark of the Necrogram』は、一発で気に入ることができるような作品で、最初のビートからリスナーの注意を引くものだったけれど、今回はリスナーにもう少々のチャレンジを強いるものにしたんだ。

 

― 全体が3つのチャプターに分割されていますが、やはりこれはコンセプト・アルバムということなのでしょうか。

 

セバスティアン:間違いなくコンセプト・アルバムだよ。キング・ダイアモンドみたいにストーリーのあるものではないけどね。つまり、映画みたいにフィクションのストーリーがあるわけではない。メディテーションを通じての黄泉の世界、闇の深淵への旅、そこへ行って帰ってくることがテーマさ。それから、これらの歌詞は俺の人生における変化についてでもある。5−6年前、鬱状態になってね。それを抜け出すために、色々と変わる必要があったんだ。人生の明るい部分を見つけようと普通の生活をする代わりに、俺は潜在意識、精神のダークサイドへと入り込んで、悪魔と対面しようとしたんだ。ただ悪魔を無視するのではなく。このアルバムを作ることになった時に、コンセプト・アルバムにしようと思って、それでこのテーマが良いと思ったんだ。不死鳥のような内容で。だけど、セバスティアンの日常、みたいなものにはしたくなかった。そこで、俺が経験しなくてはいけなかった人生における変化と、過去に経験した幽体離脱、明晰夢やメディテーション、儀式とか、以前俺たちは様々なダーク・マジックを実践していたからね。そういう幻覚のような経験も、人生において大きな変化をもたらしたから、これらを混ぜ合わせて歌詞を書いたんだ。幽体離脱をして黄泉の国へと行くプロセス、そして俺が実際に人生で経験した変化。

 

― なるほど。歌詞を読み、テーマは「死」なのかと思ったのですが、そうではないのですね。

 

セバスティアン:うーん、知っていることを殺す、橋を燃やす、というか人間の肉体の死ということではないけれど、人々が認識している生の死ということさ。ただ、色々と解釈ができるような書き方をしたからね。リスナーが歌詞に共感できるということはとても重要だから、あまりに直接的で詳細な書き方はしていない。もし君がそういう風に感じたのなら、それは素晴らしいことだよ。それが俺の意図とは違ったとしても、それはそれで構わない。

 

― おなじみのネクロロードによるアートワークにつてはいかがですか。これはアルバムのテーマと繋がりがあるのでしょうか。

 

セバスティアン:つながりはあるけれど、それほどクリアにはなっていない。このアートワークは、97年の『Darkside』、青の中に赤いトンネルが見えているもの、それから『Mark of the Necrogram』では、その赤いトンネルの中の門の向こうを描いてくれと、アーティストに頼んだんだ。今回は、『Mark of the Necrogram』で描かれたカテドラルの中を描いてもらった。この3枚でトリロジーになっているんだよ。カテドラルの中の崩壊したホールから、煙と光が出ているけれど、これは黄泉の国への旅を象徴している。これは精神的な旅、精神的な儀式で、闇に飛び込んでしまえば、もはやカテドラルは関係がなく、自分自身の中で行方不明になるということ。この説明でわかるかな。というわけで、カバーを見ただけでは、コンセプトとのつながりはわからないと思う。説明が必要なんだ。

 

 

ー デストラクションのシュミーアがヴォーカルでゲスト参加しています。どのような経緯で参加が決まったのでしょう。

 

セバスティアン:(笑)。これは面白い話で、センチュリー・メディアが、曲がすべて出来上がった後に、もう1曲書いてくれと言ってきたんだ。俺はその気になれなかった。アルバムはこれで完成だと思っていたからね。ところが、契約だからダメだと。それでとてもムカついていたこともあって、クリエイターの『Pleasure to Kill』とか、デストラクションの『Infernal Overkill』なんかを聴いていたんだ。ドイツの80年代のアグレッシヴなスラッシュのアルバムをね。それで、あの曲をドイツのスラッシュへの敬意として書いたんだよ。2時間くらいであっという間に仕上げて、それで寝て朝起きて聞き返してみたら、「これはこれで悪くない。だけど、もしシュミーアが歌ってくれたらもっと素晴らしいだろう」と思った。そうすれば、本当に80年代のジャーマン・スラッシュへのトリビュートになるからね。それで、俺たちのマネージャーがシュミーアを知っていたので、デモを送ったら、即この曲を気に入ってくれたみたいで。たった2週間くらいでヴォーカル・トラックを送ってくれたんだ。家で出来上がりを聴いてみると、本当に圧倒された。子供の頃のヒーローが、俺の書いた曲を歌ってくれたんだからね。キャリアの中でも最高のフィーリングだったよ。

 

ー リフ自体もデストラクションっぽいと思いました。

 

セバスティアン:その通りさ。だけど、最初からデストラクションっぽいものを書こうとしたわけじゃないよ。ただムカついていたからさ(笑)。「ネクロフォビックの曲なんて書いてやらないぞ。代わりにスラッシュを」って。結果として、ネクロフォビックっぽくもあり、デストラクションっぽくもある曲に仕上がったと思う。とても満足しているよ。もともとはボーナス・トラックの予定だったのだけど、とても出来が良かったから、アルバムの本編に組み込んだんだ。

 

― この曲の歌詞もコンセプトの一部ということなのですね。

 

セバスティアン:そうだよ。アルバムはもともと『ザ・リターン・オブ・ア・ロング・ロスト・ソウル』で終わりの予定だった。それで、話のエンディングがどうなるかは明かさず、リスナーに委ねるものになるはずだった。闇から、あの世から帰還することができるのか、旅は成功するのかをはっきりさせずにね。「デヴィルズ・スポーン・アタック」は、80年代っぽくとても直接的で、若さに満ちた、何というかな、ヴェノムみたいなサタニストっぽい内容になっている。故意にね。それが曲に合っているから。一方で、ここで闇に飛び込んだ主人公が、そこから戻ってこられたのかの答えにもなっている。ここでは、主人公が地獄の軍団を引き連れて戻ってきて、この世への復讐を果たしている。確かにあまりシリアスな歌詞ではないけれど、同時にとてもクールなエンディングになっていると思うんだ。まだ歌詞がそれほどディープでなかった時代からのインスピレーションを取り入れて、シュミーアに歌ってもらって。俺たちの子供の頃のヒーロに参加してもらったわけだからね。

 

― 本作からニュー・ベーシスト、アランが参加しています。彼はバンドに何か新しい要素をもたらしたでしょうか。

 

セバスティアン:彼のベース・スタイルはアレックスとはまったく違うものさ。非常にメロディックなアプローチをしていて、まるでリードギターをベースで弾いているような感じなんだ。とても多くのメロディラインを弾くし、とても複雑なこともやる。アレックスも才能のあるベース・プレイヤーだけれど、彼は普通のベース・ノートをプレイして、ドラムとドライヴするタイプだった。アランはメロディに関して違ったセンスを持っていて、プレイヤーとしての才能もある。とてもクリーンでクリアにプレイするし、あらゆる種類のハーモニクスも出せる。彼のおかげで曲に新しいレイヤーが加わったと言える。過去にはやろうと思ってもできなかったことができたよ。

 

― 前作、本作はヴォーカルがアンダースです。あなたがバンドを脱退する以前のヴォーカリストはトビアスだったので、アンダースと一緒にやるのは前作が初めてだったんですよね。

 

セバスティアン:実を言うと、俺も最初は心配していたんだ。俺はトビアスとずっと一緒にやっていたからね。彼とはどういう方向性をやれば良いかもはっきりわかっていて、とてもうまくやっていたから。アンダースとはどうなるかわからなかったのだけど、『Mark of the Necrogram』のデモを作ったときに、あのアルバムではアンダースと俺がヴォーカルをやったのだけど、彼にはこういう風にやってくれと言う必要すらなかったんだ。何も言わなくても、俺が思っていた通りに歌ってくれたから。彼と一緒にやるのはとても簡単で、とてもハッピーだったよ。彼はプロフェッショナルなミュージシャンで、ギターも弾くから、曲のアレンジメント、リフ、そこにどうヴォーカルを乗せれば良いかもきちんと理解している。それに、彼はヴォーカリストとしてもとても成長したからね。彼が初めて歌ったアルバム『The Nocturnal Silence』だったけれど、あれはもっとデス・メタルなアルバムだった。俺たちは今でもデス・メタル・バンドではあるけれど、ブラック・メタル的要素も多い。当時はピュア・デス・メタル・バンドだったからね。デス・メタルのグロウルは、月並みだとは言わないけれど、あまり多彩ではなくて、一面的というか、低くてブルータルなものだろ。今回のアルバムでは、もっと色々なヴォーカルが必要で、彼も4−5種類の違った声を使った。ストーリーを伝えなくてはいけないからね。1種類の歌い方では、これができない。ブラック・メタルのヴォーカルには、ニュアンスが必要なんだよ。ただブルータルなだけでなく、フィーリングがいるんだ。アンダースも努力が必要だっただろうけれど、彼が今持っている力を全部発揮したと思うよ。

 

― 今回もアンリーシュトのフレデリック・フォルカーレがエンジニアを務めています。彼のどのようなところが素晴らしいのでしょう。

 

セバスティアン:彼とは2006年から一緒にやっていて、彼はネクロフォビックのメンバーだったこともあるからね。どうすれば最高のサウンドを得られるかを知っているし、俺たちの限界、俺たちに何ができるかも知っている。だから、どれがベスト・テイクなのか、もっと良いテイクが録れるかがわかるんだ。彼は非常に重要な人物であり、同時に今でも重要なバンド・メンバーであり、プロデューサーでもある。彼無しでネクロフォビックのアルバムは作りたくないよ。俺たちは『Hrimthursum』で自分たちのサウンドを見つけたと思うんだ。ファースト・アルバム以降、どういう方向性に行くべきか迷っていた部分があった。『The Third Antichrist』、『Bloodhymns』あたりでね。だけど、『Hrimthursum』で、自分たちのプレイしたいブラッケンド・デス・メタルのレシピを見つけたのさ。フレデリックは、このサウンドの重要な役割を果たしているんだよ。彼は多くを語る人間ではないけれど、いつ何を言うべきなのか、完璧に把握しているのさ。

 

 

 

― あなたは11年にネクロフォビックを辞め、16年に復帰しています。辞めた理由、そしてまた復帰しようと思ったきっかけは何だったのですか。

 

セバスティアン:11年当時、俺はバンドをもっと先に進めたいと思ったんだ。俺は毎日起きると「ギターでどんな新しいことが学べるだろう?演奏力をどう上げられるだろう?どんな新しいゴールがあるだろう?」と自問自答していた。だけど、当時バンドのメンバー全員がハードワークに賛成ではないと感じたのさ。あの頃出した2枚のアルバムはわりと好調で、俺はこのまま頑張り続ける必要があると思っていた。イージーなアルバムを作って行くのではダメだと。俺は『Mark of the Necrogram』を書き始めていて、これはバンドにとって大きなチャレンジとなるアルバムだった。それで、他のメンバーにプレッシャーをかけたんだよ。「もっと練習しなくちゃだめだ。もっとリハーサルをやらないと。パーティなんて止めて、シラフできちんとやろう」って。ところが、反応は良くなかった。そこまではやりたくないと。俺は『Hrimthursum Part 3』なんてやりたくなかったし、何か違うことをやるべきだと思っていたから、このバンドから離れる必要があると思ったんだ。同じことを繰り返したくはなかったからね。結局彼らは俺抜きでバンドを継続していたけれど、あまりうまく行っていないことに気づいたんだ。俺の書いた曲抜きで、俺がいた頃のバンドのフィーリング無しではね。俺とヨハンのギター無しでは、もはや同じバンドではないということに気づいたのさ。それに、俺とヨハンも、ネクロフォビックが恋しくなりつつあった。俺の人生にとって、ネクロフォビックは大きなウェイトを占めていたからね。曲も誰よりも多く俺が書いていて。それでヨアキムとメールのやりとりをしているうちに、また一緒にやろうかというような話が出てきた。今がそのタイミングだと思ったから、イエスと言ったんだ。それで、11年に着手していた『Mark of the Necrogram』の続きを書き始めたんだよ。それが俺からの要求だった。戻るなら、きちんとハードワークをこなしてくれと。

 

― つまり、現状には満足しているということですね。

 

セバスティアン:しているよ。だけど、明日には新しいゴールが欲しくなるからね。どうなるかわからないけど(笑)。俺はいつでも鞭を手にしているんだよ(笑)。

 

― 先ほど「ブラッケンド・デス・メタル」という表現が出ましたが、ネクロフォビックがプレイしているのはデス・メタルだという意識ですか。それともブラック・メタルなのでしょうか。

 

セバスティアン:こういうことさ。俺が書いているのはブラック・メタル。これは間違いない。デス・メタルは書いていない。だけど、バンドとしてこれをプレイすると、非常にデス・メタル的になる(笑)。俺たちはバンドとしてずっとやってきて、ノルウェーやスウェーデン、あるいはイギリスのシーンのコピーをやろうと思ったことは一度もない。俺たちがやっているのは、俺の書いたブラック・メタルの曲を、デス・メタルのミュージシャンがプレイしているということなんだ。

 

― 影響を受けたバンドはどのあたりですか。

 

セバスティアン:俺個人としては、音楽的に影響を受けたのはアイアン・メイデン、ジューダス・プリーストとかで、実はエクストリーム・メタルからはそれほど影響は受けていないんだ。エクストリーム・メタルももちろん好きだけど、インスピレーションはあまり感じない。ポゼストやデスなんかは好きだけど、基本的にはヘヴィメタルを聴いているよ。イメージ的には、実はLAのシーンから大きな影響を受けている。ショック・ロックのバンドたち。ステージ衣装とか、コープスペイントとかも含め、ブラック・メタル・シーンよりも、W.A.S.P.やアリス・クーパーから影響を受けているのさ。ギター・ソロに関しては、ドッケンやラット、ヴァン・ヘイレンみたいなヘアメタル・バンドからの影響が大きい。彼らは本当のギター・マジシャンだからね。ブラック・メタルからギター・ソロのインスピレーションを受けるというのはないよね。テクニカル・デス・メタルには速弾きギタリストも多いけれど、メロディということになると、俺はいつもソロには強力なメロディを入れるようにしているから、80年代のヒーローたち、特にLAのアーティストに依るところが大きい。

 

― では、お気に入りのギタリストは誰でしょう。

 

セバスティアン:間違いなくジェイク・E・リー。その次が僅差でウリ・ジョン・ロート。ジェイクがオジー・オズボーンの2枚のアルバムでやったことはパーフェクトだよ。

 

 

― ヘヴィな音楽と出会いはどのようなものだったのですか。

 

セバスティアン:82年か83年くらいだったかな、アイアン・メイデンのアルバム・カバーを見てね。最初はちょっと怖かったのだけど、興味を惹かれてもっと知りたくなった。それからアクセプトの「Fast as a Shark」を聴いて、一発でハマった。それ以降も、アルバムの速い曲、ヘヴィな曲を気に入っていたので、80年代のソフトなバンドには興味がなくてね。それで速いバンドを探していったんだ。スレイヤーなどが出てくると、そういう音楽にハマったのさ。85−86年頃はスラッシュ・メタルが大好きだった。

 

― その後スウェーデンではデス・メタルが大きなブームになります。

 

セバスティアン:俺はシーンの一部だったし、人生を変えるものだったよ。ナイリストやセリオン、グレイヴなんかのデモを聴いてね、信じられなかったよ。それまでのものとはまったく違ったから。実を言うと、一部の例外を除いて、俺はデス・メタルのアルバムは好きじゃないんだ。個人的には、デス・メタルというのは洗練されていない、音質の悪いデモのサウンドが一番で、あれがブルータルでイーヴルだったんだ。みんなレコーディングの仕方を学んで、すべての楽器がきちんと聞こえるようになり、正しいチューニングをして完璧な演奏をするようになると、ラフなフィーリングが失われてしまったと思う。90年以降はデス・メタルを聴くことはなかったよ。

 

ー ノルウェーのブラック・メタルについてはどう感じていましたか。

 

セバスティアン:非常に重要なシーンだけれども、当時多くのバンドが転向したよね。ダークスローンもデス・メタル・バンドからブラック・メタル・バンドになったし。正直あまりクールなことだとは思わなかった。裏側が透けて見えたというか、みんなが突然サタニストになって、俺たちは実際笑っていたよ。だけど、セカンド・ウェイヴのブラック・メタルが持っていた音楽やフィーリングは、素晴らしかったと思う。そのイメージが疑わしいものだったにせよね。だって、彼らはついこの間まで、明るいハッピーなデス・メタル・ガイだったのに、突然イーヴルだとか言われてもね、信用しようがない。だけど、音楽自体は素晴らしかった。彼らはデス・メタルの持つブルータリティにメロディや雰囲気を持ち込んで、セカンド・ウェイヴのブラック・メタルを作ったわけだけど、本当に素晴らしいものだった。メイヘムやエンペラーのアルバムは、デス・メタルよりもはるかに優れていると思ったよ。ブラック・メタルを発見したあとは、デス・メタルに興味が無くなってしまった。

 

― 当時、スウェーデンとノルウェーのシーンの対立が取り沙汰されていましたよね。

 

セバスティアン:あったね。俺は当時デス・メタル・バンドをやっていたから、実際ノルウェーや、ノルウェーに滞在していた女の子から手紙をもらったものだよ。「お前らはライフ・メタルだ」とかって。パブで女の子たちと楽しく飲んで、ところがその女の子たちがノルウェーに遊びに行って、1週間後には髪を黒く染めて魔女みたいな格好をして戻ってきて。おいおい、先週パブでエントゥームドの話をしたばかりなのに、今はメイヘムだけかよって(笑)。少々しょうもなかったけれど、興味深かったのは、あれらのバンドがヴェノムやスレイヤー、バソリーみたいなバンドの歌詞を本気で捉えていたということ。音楽業界では、こういうのはヒップホップくらいだっただろ?ギャングスター・ラップをやっているやつらは本当にギャングで、実際に殺人を犯したりとか。メタルの歴史においては、ごく一部のバンドは歌詞を実践していたかもしれないけれどね。例えば、80年代のヴェノムのインタビューを読めば、彼らがすべてイメージでやっていたことは明らか。俺たちは、実は良い奴らだけど、アルバムを売るためにサタンについて歌っているんだっていう感じで。メイヘムは正反対だった。ユーロニモスがインタビューで「俺たちは本気だ。そして、ヴェノムも本気だったと信じることにした」と言っていたようにね。俺は、サタニックな歌詞を歌いながらも、実は自分たちは悪い人間じゃないというバンドの方を信用する。誰もクロノスやクオーソンが、本当にイーヴルだったとは思わないだろう。まあ、実際彼らはそんなに良い人たちじゃなかったかもしれないけど(笑)。ところが、最近のバンドは自分たちは完全にイーヴルだと言うことが多い。いやいや、本当は良い奴だろ、昨日の晩飯はパンケーキだったんじゃないか、なんて思ってしまうよ(笑)。みんなイーヴルで微笑みもしない、みたいなイメージは、もはやノルウェーやスウェーデンにも存在していないけれど、今でも南米あたりでは重要みたいだね。「俺は笑わないし、感情もない」と。だけど、俺はそういうのではない方が好きだね。

 

ー バソリーについてはいかがでしょう。あなたにとって大きな存在でしたか。

 

セバスティアン:振り返ってみると、大きかったと思う。80年代当時、サード・アルバム、『Under the Sign of the Black Mark』の曲がラジオでかかっていて、それで初めてバソリーを聴いた。素晴らしいとは思ったけれど、カルトだとは思わなかった。ストレートに言えば、ショボい音質のアルバムだったし、メタリカみたいなサウンドではなかったよね。演奏もうまくはなかった。子供でも、ギターの演奏が拙いことはわかったよ。だから、当時の感想としては、スウェーデンの良い音楽をプレイするバンドではあるけれど、アメリカのバンドほどプロフェッショナルではないという印象だったんだ。やがて、カルトな人気が出てくるようになった。おそらくヴァイキングのアルバムを作るようになって、シーンから姿を消したあたりから。当時バソリーはたくさんアルバムを売っていたわけではない。ただエクストリーム・ミュージックをやろうとしているスウェーデンのバンドだっただけで。アルバムとしてはとてもスペシャルだと思ったし、「Enter the Eternal Fire」みたいな曲もあって、彼らはメタリカみたいな速い曲もやりつつ、ブラック・サバスのイーヴルなフィーリングもあって、このコンビネーションは新しいものだと思ったよ。

 

ー バソリーがラジオでかかっていたのですか?

 

セバスティアン:そう、土曜日に『Rock Box』という番組があったんだ。1時間の番組で、俺たちの世代にとっては、これが新しい音楽を知る唯一の手段だったと言える。インターネットもなかったし、口コミしかなかったからね。この番組はほとんどヘヴィメタルやハードロックしかプレイせず、毎回2−3曲エクストリーム・メタルもかけていたんだ。俺はこれでバソリーやポゼスト、ソドムなんかを初めて聴いた。俺や友達は、いつもこの番組をカセットに録って聴いていたよ。今でもそのテープはここにある。この番組がきっかけで好きになったバンドも多いし、俺がバソリーとラットやモトリー・クルーを同列に好きなのも、この番組のおかげ。この番組ではこれらが一緒にプレイされていたし、当時俺はアルバムを買うお金も無かったから、録音したカセットを繰り返し繰り返し聴いていたんだ。モトリー・クルーの「Girls, Girls, Girls」がかかったかと思うと、バソリーの「Enter the Eternal Fire」がかかって、次はラットの「Round and Round」、そしてソドムの「Sepulchral Voice」なんていう具合で。完全なミックスで、今でも俺にとってはこれらはすべてヘヴィメタルでしかない。これは本物、こっちは偽物なんていう区別は俺にはないんだ。この番組でしか聴けない、俺にとってパーフェクトな音楽でしかなかった。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

セバスティアン:うーん、とりあえずアイアン・メイデンは抜きにしよう。そうでないと、アイアン・メイデンの最初の3枚ということになってしまうから(笑)。まず、メタル・チャーチのファースト。ジューダス・プリーストの『Defenders of the Faith』。それからアクセプトの『Breaker』。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

セバスティアン:ニュー・アルバムを気に入ってもらえることを、本当に本当に期待している。これは何度か聴いてみることが意図されているアルバムなんだ。これを聴いて瞑想状態に入れるよう試してみてほしい。そして、ぜひ日本に行ってプレイをしたいね。

 

 

文 川嶋未来

 

 

 

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2020年11月13日発売

ネクロフォビック

『ドーン・オブ・ザ・ダムド』

CD

【CD収録曲】

  1. アフェリオン
  2. ダークネス・ビー・マイ・ガイド
  3. ミラー・ブラック
  4. タルタリアン・ウィンズ
  5. ジ・インフェルナル・デプス・オブ・エターニティ
  6. ドーン・オブ・ザ・ダムド
  7. ザ・シャドウズ
  8. アズ・ザ・ファイア・バーンズ
  9. ザ・リターン・オブ・ア・ロング・ロスト・ソウル
  10. ブレイキング・ポイント
  11. アウェイクニング… (ライヴ・イン・ストックホルム2020) [ボーナストラック]
  12. ダークサイド(ライヴ・イン・ストックホルム2020) [ボーナストラック]
  13. ツァー・ボンバ(ライヴ・イン・ストックホルム2020) [ボーナストラック]
  14. レヴェレイション666(ライヴ・イン・ストックホルム2020) [ボーナストラック]

 

【メンバー】
アンデシュ・ストロキルク(ヴォーカル)
セバスティアン・ラムステッド(ギター)
ヨハン・バーゲバック(ギター)
アラン・ルンドホルム(ベース)
ヨアキム・ステーナー(ドラムス)