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トニー・フォレスタ
(ミュニシパル・ウェイスト)
独占インタビュー

クロスオーヴァーが復活しているのは素晴らしいことさ
最近はハードコアよりのエッジに
重点があるように思えるけど、構わないよ
若くて良いバンドもたくさん出てきているし

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Corey Davenport

80年代クロスオーヴァーを21世紀に甦らせるミュニシパル・ウェイストが、5年ぶりのニュー・アルバムをリリース。ということで、ヴォーカリストのトニー・フォレスタに話を聞いてみた。

 

 

ー 前作から5年と、わりと期間が空いています。キャリアの初めの頃は、もっとサイクルが早かったと思うのですが、時間がかかった理由は何なのでしょう。やはりコロナでしょうか。

 

トニー:まあ、そうだね。元々のプランでは、テスタメントとのツアーの前にレコーディングをするはずだったんだ。ところがパンデミックのせいで、突如ツアーが中止になってしまった。まあパンデミックも遅れた理由の一部ではある。ほとんどの曲はできていたけれど、3年間のブランクで出していたら、これほど良いアルバムにはならなかったと思う。だからもう2年かける必要があったんだ。急いでテスタメントとの長いツアーの前に作ってしまうのではなく、さらに2年間かけて曲を練ることができたよ。あのツアーは、わずか数週間前にキャンセルになったんだ。まだみんな、もしかしたらツアーはあるかもなんて思っている頃さ。なので、本当は3年のブランクで出そうとは思っていたのさ。それに『The Last Rager』EP(19年)も出したからね。

 

ー 今回のアルバムで最も進歩した点は何だと思いますか。

 

トニー:プロダクションがずっとヘヴィなサウンドになっていると思う。アルバムごとにだんだんとプロダクションが改善していってるよ。今回アーサー(リズク)と一緒にやって、彼は俺たちが求めているサウンドを理解してくれた。メタルとパンクのエッジがあるサウンド。探していた音が見つかったよ。アーサーと俺、バンドのメンバーもとても波長が合ってね。個人的にだけでなく、クリエイティヴなレヴェルでも。

 

ー 今アーサーの名が出ましたが、今回彼を起用した理由は何だったのですか。

 

トニー:実は以前も彼と仕事をしたことがあるんだ。確かフィラデルフィアのライヴで、サウンド・エンジニアをやってもらった。ずっと友人だしね。俺たちはパワー・トリップとも仲が良いし、アーサーはクリエイターのニュー・アルバムも手がけた。俺にとって一番の決め手は、彼がやったセイクレッド・ライクのアルバム(『Awakening』)が大好きだということ。本当に素晴らしかったよ。もともとセイクレッド・ライクの大ファンなのだけど、あのアルバムは特に良かった。それで、彼のスラッシュ・メタルのミックスの仕方がとても気に入ってね。彼はハードコアからストレートなヘヴィメタルまで手がけることができる。俺たちはメタルとパンクの中間みたいなものだからね。彼はその両方の経験がある訳だから、俺たちにとってはパーフェクトな相手だったんだよ。

 

ー タイトルの『エレクトリファイド・ブレイン』にはどのような意味が込められているのですか。タイトルトラックには「デスリッパー・パート3」という副題がついています。デスリッパーとは何者なのでしょう。

 

トニー:これは俺とライアンで書いているストーリーに基づいたもの。もうすぐ新しいPVがリリースされて、それを見ればストーリーをもっとよく理解できると思うよ。『Hazardous Mutation』からゆっくりと続いているお話さ。

 

 

 

ー アルバムのアートワークは、やはりタイトルを描写しているものだと思いますが、アーティストにはどのような指示を出したのでしょう。

 

トニー:タイトルが『エレクトリファイド・ブレイン』になることは決まっていたからね。それとどんな感じが欲しいかを伝えた。スコーピオンズやアイアン・メイデンへのオマージュが少々ある上で、自分たちのスタイルというか。ライアンが「閃いた」という感じで興奮して電話をしてきて、「アートワーク用にすげえ考えがある」って。だから、あれはライアンのアイデアに基づくものなんだ。ギターが脳みそにぶっ刺さってみたいな感じで思いついたんじゃないかな。ゴアっぽいエッジも欲しかったし。みんなそのアイデアを気に入ったよ。

 

ー アートワークはJames Bousemaという人物が手がけています。初めて聞く名前なのですが、どのようなアーティストなのでしょう。

 

トニー:彼は間違いなくヘッドバンガーさ。実を言うと、ニュークリア・ブラストが紹介してくれたんだ。「君たちの大ファンのアーティストがいるから絵を見てくれ」って。とても絵の幅が広くてね。俺はCGっぽいのは好きじゃなくて、本物の絵みたいなのが欲しいからね。誰に描いてもらうかについては、わりとうるさいんだ。素晴らしいアーティストは多いけれど、俺たちは変わり者だから(笑)。話してみると、とてもやりやすいアーティストだった。俺たちの欲しいもの、コンセプトをすぐに理解してくれて。それに速いんだよ、メールの返事や作業が。俺たちと同じようにレコードに対してエネルギーやポジティヴさ、興奮を持っていてくれたからね。とてもクールだよ。まるでバンドのメンバーかのようだった。

 

 

ー 歌詞は非常にわかりやすいものから、まったく何について歌っているのかわからないものもあります。例えば「プッティング・オン・エラーズ」とは何なのでしょう。

 

トニー:歌詞を読み直しておけば良かったな。あれはバーニーがゲスト参加している曲。人々が自分にこう振舞って欲しいと期待しているのに対し、「これが俺さ、好きなようにやらせてもらう!」という内容。”putting on airs”という表現との言葉遊びさ。これは「気取る」というような意味なんだけど、それを「間違いを重ねる」という意味になる”putting on errors”としているんだ。人間は間違いをするもの。完璧に振る舞おうとするなということさ。

 

ー 「ザ・バイト」はゾンビですか?

 

トニー:ある意味ね。普通歌詞を書く場合、見た映画や本を元にするだろ?でもこの曲は、映画のわずか10秒間のシーンを描いているんだ(笑)。『ブレインデッド』の草刈り機のシーンだよ。草刈り機を始動して、ゾンビに突進して血や内臓が飛び出して、滑って転んでっていうやつ。『ブレインデッド』は見た?

 

ー 見ました。

 

トニー:ならわかるだろう。あのシーンに特化した歌詞なんだ(笑)。大好きなんだよ、あれ。この今日は、ジ・アキューズドのブレインがゲスト参加している。

 

ー ジ・アキューズドは最高のクロスオーヴァー・バンドの一つですよね。

 

トニー:本当にそう思うよ。先週末彼らと一緒にプレイしたんだ。

 

ー 彼らは今2つに分かれていますよね。

 

トニー:そう。一緒にやったのはジ・アキューズドA.D.の方。トミーは1人で新しいメンバーを集めてジ・アキューズドをやっているけれど、あまり面白くない。ブレインは他のメンバーを引き連れてジ・アキューズドA.D.をやってるんだ。こっちの方が本物のジ・アキューズドっぽいよ。

 

ー あのバンドはヴォーカルが鍵ですからね。

 

トニー:まったくその通りだよ。

 

ー 「テン・セント・ビア・ナイト」は野球についてですか。

 

トニー:あれはオハイオで実際に起こった事件に基づいている。メジャーリーグの野球の話なのだけど、お客さんを呼ぼうとして10セントのビールを販売したんだよ。そしたら観客が泥酔して、裸になったり喧嘩が始まったり、大騒動になってしまった(笑)。最終的に、どちらのチームも泥酔した観客から必死に逃げなくてはいけないハメになってしまったんだ。2つのチームで対戦していたのに、力を合わせて命からがら逃げだしたのさ(笑)。まじでイカれてるよ(笑)。10セントのビールのせいで。10セントなんてほとんどただだからね。

 

ー 「トップレスの女性がマウンドに走っていった」という歌詞は、そういうことなのですね。

 

トニー:そう(笑)。

 

ー 「サーモニュークリア・プロテクション」も中身が非常にわかりにくいですが。

 

トニー:あの曲の内容は秘密。

 

ー では「ボート・ジェイル」は?

 

トニー:あれはツアーの時の話(笑)。クルーズ船でプレイした時に、めちゃくちゃウザい失礼な奴がいてね。女性に汚い言葉を吐きかけたり。結局そいつはデカい男たちに連れて行かれてしまった。それで俺たちは「どこに連れて行かれたんだろう?」、「船にある監獄じゃないか?」なんて話して。ヴァケーションのつもりで船に乗ったのに、船の底にある檻にクルーズが終わるまで閉じ込められる。結構怖い考えだよね(笑)。傍若無人に振る舞っていたのに、大きな男にボート・ジェイルに連れて行かれる(笑)。

 

ー 「クランク・ザ・ヒート」は1行目だけスペイン語になっています。

 

トニー:あれは、俺たちがライヴをやる前に、俺たちの友人が叫ぶフレーズなんだ。”Bring them hell”みたいな意味。あの曲は夏に向けてテンションを上げようという内容。冬が終わって、早くまた外に出たいということ。今年は特に冬が長かったからね。今やってみんな気持ちよく外出できるようになった。

 

ー あなたの歌詞からはビリー・ミラノっぽいヴァイブを感じるのですが。

 

トニー:今回のアルバムで、故意に影響を受けたということはない。だけど、俺個人的には長年彼の作品を聴いているからね。とは言え、歌詞はあまり影響を受けていないかな。彼の書く歌詞は、何というか、変わっているだろ(笑)。彼の政治的見解には賛同できないけれど、音楽的、ヴォーカル的には、S.O.D.での歌い方は大好きだよ。なので可能性はあるけれど、俺はビリー・ミラノ以外にもジ・アキューズドのブレインやポイズン・アイデアのジェリー、D.R.I.のカートなんかを聴いて育ったからね。これらのバンドは俺たちより少々年上だから、大きな影響を受けているよ。

 

ー バンドとして影響を受けたアーティストとなると、どのあたりでしょう。

 

トニー:アルバムによって変わってくるけれど、ライアンはエンジェル・ウィッチやオンスロートみたいな古いヘヴィメタルが好きだし、もともとはギャング・グリーンや初期のC.O.C.、クリプティック・スローターなどから影響を受けていた。俺個人的にはビースティ・ボーイズが大好き。

 

ー ミュニシパル・ウェイストはもともとはハードコア・パンク・バンドとして結成され、その後メタル寄りになっていったという理解であっていますか。

 

トニー:俺たちはハードコア・シーン出身だからね。初期の頃はLifes HaltやWhat Happens Next?、R.A.M.B.O.やTragedyなんかと一緒にライヴをやっていた。DIYのハードコア・シーンに深く関わっていたんだ。そこから進化して、ツアーに出たり、もっと真面目にバンドをとらえるようになっていった。曲作りにも力を入れて、さらにメタルサイドにも興味を持つようになっていったんだ。もちろん今でもパンクのルーツはあるけれど、今はもっとスレイヤーみたいなエッジの効いた曲を書いているよ。音楽的にはね。

 

ー では現在のミュニシパル・ウェイストについてはいかがでしょう。今のスタイルはクロスオーヴァーだと思いますか。

 

トニー:間違いないよ。俺たちは常にクロスオーヴァー・バンドと呼ばれてきた。始めた頃からずっとね。最近はクロスオーヴァーという言葉も定着してきて、メタルのエッジを持ったハードコアはみんなクロスオーヴァーだと言われる。これはちょっと奇妙だと思うけどね。いずれにせよ、クロスオーヴァーが復活しているのは素晴らしいことさ。最近はハードコアよりのエッジに重点があるように思えるけど、構わないよ。人々がクロスオーヴァーに興奮してくれるのは素晴らしいことだし、若くて良いバンドもたくさん出てきているし。

 

ー そもそもバンド名を「ミュニシパル・ウェイスト」とした理由は何だったのですか。

 

トニー:ライアンがトラックを見かけたんだよ。『Hazardous Mutation』に描かれているみたいなトラックで、そのサイドに”Municipal Waste”って書いてあって、それで「これをバンド名にしよう!」って。つまり”City Trash”(都市ゴミ)という意味で、まさに俺たちのことだった。汚いパンク・キッズだったからね(笑)。実際最初のドラムキットでは、ゴミ捨て場から拾ってきた金属製のゴミ箱だったし。”City Trash”というのが、俺たちの出自を表していると思ったのさ。どんなバンドよりもピッタリの名前だと思うよ(笑)。

 

ー “Dirty Rotten Imbeciles”みたいなものですね。

 

トニー:その通りだよ(笑)。似たような感じでつけたんだ(笑)。

 

ー Iron Reaganの活動はいかがでしょう。

 

トニー:あまり活動していないんだ。実はフロリダに引っ越してね。フロリダで別のバンドもやっているんだ。という訳で、Iron Reaganは長い休みに入っている。さすがに離れたメンバーと2つのバンドとやるのはキツすぎる。ミュニシパル・ウェイストのメンバーとも、車で12時間の距離だから。そう計画していた訳ではないのだけど、引っ越して、コロナがあって、2つのバンドをやるのは不可能になってしまったんだ。それでミュニシパル・ウェイストに集中することにした。さっき言った別のバンドは、カンニバル・コープスのポール(マズルケビッチ)とWarthogのギタリストとやってる。音楽活動は色々やっているけれど、物理的に12時間離れているバンドを2つやつのは不可能さ。俺の知る限りIron Reaganは永久に休みだよ(笑)。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

トニー:君は必ずそれを聞くね!

 

ー 前回のインタビュー、覚えているんですね。

 

トニー:覚えてるよ(笑)。

 

ー この質問、気に入っていまして。

 

トニー:今だとジ・アキューズドの『The Return of… Martha Splatterhead』。ビースティ・ボーイズの『Check Your Head』。ザ・カルトの『Electric』。時によって変わるけどね。今はこんな感じ。

 

ー 今後の予定はどのような感じでしょう。

 

トニー:ちょうどツアーから戻ってきたところなんだ。それでジ・アキューズドともプレイした。ツアーの予定はたくさんあるよ。来週はニューヨークに行って、ミュージック・ヴィデオを撮影する。それからIntegrityとBewitcherとツアー。1週間ほどのツアーで、そのうち一回はエクソダスとも一緒。エクソダスとは仲が良いから楽しみ。それから帰ってきて、ヨーロッパ・ツアー。アンスラックスとね。2ヶ月くらいのツアーだから、年末まで忙しい。ずっとライヴがやれなかったからね。素晴らしいことだよ。みんなに会うのが楽しみさ。日本にも行かなくちゃね。早くまた行きたいよ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

トニー:サポートとリスペクトどうもありがとう。日本が恋しいよ。なるべく早く日本に行けるよう頑張るよ。あと、言い忘れたけど、システマティック・デスは好き?

 

ー 好きですよ。

 

トニー:システマティック・デスのメンバーが、俺の新しいバンドのレコードを日本でリリースすることになっているんだ。

 

ー バンド名は何と言うのですか。

 

トニー:Heaven’s Gateだよ。ファストなハードコアさ。とてもブルータルな。

 

 

文 川嶋未来

 

 


 

 

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2022年7月1日発売

ミュニシパル・ウェイスト

『エレクトリファイド・ブレイン』

CD

【CD収録曲】

  1. エレクトリファイド・ブレイン
  2. デモラライザー
  3. ラスト・クロール
  4. グレイヴ・ダイヴ
  5. ザ・バイト
  6. ハイ・スピード・スティール
  7. サーモニュークリア・プロテクション
  8. ブラッド・ヴェッセル – ボート・ジェイル
  9. クランク・ザ・ヒート
  10. レストレス・アンド・ウィキッド
  11. テン・セント・ビア・ナイト
  12. バレルド・レイジ
  13. プッティング・オン・エラーズ
  14. パラノーマル・ジャニター

 

【メンバー】
トニー・フォレスタ(ヴォーカル)
ライアン・ウェイスト(ギター/ヴォーカル)
ニック・プーロス(ギター)
ランド・フィル(ベース/ヴォーカル)
デイヴ・ウィッテ(ドラムス)