WARD LIVE MEDIA PORTAL

ダニー・ホワイト(モードレッド )
独占インタビュー

俺たちのルーツはいつでもスラッシュにあるけど
いつも違うことを試しているのさ
それがうまく行く時もあるし、そうでない時もある
だけど実験するのが好きなんだ

                                   

ご購入はこちら

文:川嶋未来

DJがいるスラッシュ・メタル・バンドとして80年代大きな話題になったモードレッドが27年ぶりにニュー・アルバムをリリース!ということでギタリストのダニー・ホワイトに話を聞いてみた。

 

 

― そもそもヘヴィメタルを聴くようになったきっかけは何だったのですか。

 

ダニー:俺はもともとニューヨークで育って、音楽が周りにあったからね。最初はエディ・ヴァン・ヘイレンやジミ・ヘンドリクスなんかだった。個人的にはヘヴィメタルはジミ・ヘンドリクスから始まったと思ってる。「Purple Haze」とかね。それからレッド・ツェッペリン、ジミー・ペイジなんかも好きだった。両親が離婚していたから、時々サンフランシスコにいる父親を訪ねていたのだけど、彼がブラック・サバスのファーストや、レッド・ツェッペリンなんかを持っていたんだ。まだ10歳か11歳の頃の話さ。それからキッスが好きになって、キッスを見た。レッド・ツェッペリンも見たよ。Tシャツが有名なやつ。翼の生えた人間の柄の、あの時のコンサートさ。オークランドで見た。こういうヘヴィメタルの始まりみたいなところから聴き始めたんだよ。84年に高校を卒業した後、ロサンゼルスで音楽学校に行ったのだけど、その時に高校の友達から電話がかかってきて「メタリカという新しいバンドが凄いから聴いてみろ」と言われてね。NWOBHMなんかも聴いていたから、そうやってよりヘヴィなバンドを聴くようになっていったんだ。サンフランシスコでは新しいシーンが爆発していた。エクソダスやテスタメント、デス・エンジェルなんかがいて、もちろん俺たちもね。

 

― ロスで音楽学校に行って、またサンフランシスコに戻ったのですね。

 

ダニー:そうだよ。サンフランシスコの高校に行って、それから1年間ロサンゼルスのMITに行って、またベイエリアに戻ったんだ。それでバンドを始めた。

 

― 当時のサンフランシスコの雰囲気はいかがでしたか。何か新しいものが起こっているという興奮はあったでしょうか。

 

ダニー:とてもエキサイティングだったよ。ちょうどすべてが起こっている時期だったから、新しいもの、自分たちのものが起こっている感じがした。シアトルのグランジや、60年代のサマー・オブ・ラブみたいに、自分たちを代表する時代、音楽という感じだったな。

 

― あなたはモードレッドがファースト・デモを発表した後にバンドに加入したのですよね。どのような経緯だったのですか。

 

ダニー:ロサンゼルスから戻ってきて、友人のスヴェンがMercenaryというバンドを始めたので、俺も入ったんだ。ドラムにスレイド・アンダーソン、ベースにブルックス・ホーランドを加えてスラッシュ・バンドを始めた。楽しかったよ。だけどコンサートはやらなかった。練習ばかりやって、デモを作って。最近亡くなった祖父がお金を出してくれてね、それでPAシステム買って、残りのお金でデモを作った。デモを作った後、スヴェンがモードレッドに入りたがっていたんだ。その時は俺もそれを知らなかったんだけど、彼はMercenaryのデモを使って、モードレッドに入ろうとしていたんだ。だけどうまく行かず、結局俺がモードレッドのギタリストに収まったという少々興味深い顛末になったんだよ。最初俺はフルのメンバーではなく、ただのヘルプだったんだ。

 

― 当時のモードレッドはどんなバンドから影響を受けていたのでしょう。

 

ダニー:間違いなくエクソダス、ゲイリー・ホルト。メタリカ、ジェイムズ・ヘットフィールドのプレイからの影響は個人的に大きな影響を受けた。地元のラーズ・ロキットというバンドからも影響を受けた。Phil Kettner、Aaron Jellumはどちらも素晴らしいギタリストだったよ。同時にイングヴェイ・マルムスティーンからも影響を受けていたな。彼の技術は素晴らしかったからね。色々なバンドを聴いて、色々な影響を受けていたよ。ハワイからラウドネスに至るまで。もちろんアイアン・メイデンやジューダス・プリースト、スコーピオンズも好きだったし、テクニカルなギタリストにも傾倒していた。マイケル・シェンカーやウリ・ロートも好きだし、エイドリアン・スミスも大好きだった。たくさんのギタリストから影響を受けたよ。ジェフ・ワトソンがナイト・レンジャーの前にレンジャーというバンドをやっていてね、レスポールを弾いていて、本当に素晴らしいテクニックを持っていた。すべてのものをスポンジのように吸収していたんだ。

 

ー ファンクとスラッシュを混ぜようというアイデアはどうやって出てきたのですか。

 

ダニー:あれはスコット(Vo)のアイデアだよ。Alex(Gerould、ギター)が弁護士になるためにバンドを抜けて、ジム・タファーが入ってファースト・アルバムをレコーディングしたんだけど、結局俺が98%のギターを弾かなくてはいけなかった。ジムは個人的、技術的な問題を抱えていたからね。それからジェームズ・サンギネッティが入ると、スコットがちょっと違ったことをやろうというアイデアを持つようになったんだ。それで何曲か(DJ)ポーズに参加してもらった。彼とは仲が良かったし、他のバンドとはちょっと違ったことをやろうと思ってね。彼が参加していたMCM and the Monsterというバンドを見に行ったりしていたから。それでファースト・アルバムで何曲か試して、とてもうまくいったから、正式に加入してもらったんだよ。

 

― 当時スラッシュ・メタルをプレイしているという意識はありましたか。

 

ダニー:間違いなくスラッシュをプレイしていると思っていたよ。確かにDJを入れたり、他と違うことをやっていたけれど、スラッシュがベースだと思っていた。スラッシュのサウンドだった。

 

― 95年に解散します。原因は何だったのですか。

 

ダニー:そうだな、バンドとしてビッグになっていって、ある程度の位置にまで行けて、ヨーロッパにも何度もツアーに行った。俺たちはみんな違う人間で、もちろんみんなヘヴィ・ミュージックに対する愛は持っていたけれど、方向性について意見が合わなくなっていったんだ。まだみんな若かったし、お互いの人間性がぶつかるようになって、それにどう対処すべきかがわからなかったのだと思う。それが解散の一番の理由さ。

 

― その後01年に再結成します。きっかけは何だったのでしょう。

 

ダニー:あの時は俺は参加していないから他のメンバーに聞いてくれ(笑)。あの時俺はクリーヴランドにいて、参加要請はあったのだけど、オーディオエンジニアとして働いていて、その道でやっていこうとしていたから、断ったんだ。

 

― その後何度か活動休止、再結成を繰り返しますが、ニュー・アルバムをリリースするのにこれほどの時間がかかったのはなぜですか。

 

ダニー:みんな生活や仕事、家庭があって忙しいからね。アルバムを作るに至るまでには時間が必要だったんだよ。シンプルなことさ。

 

― 過去の3枚のアルバムと比べた場合、ニュー・アルバム『ザ・ダーク・パレード』はどんな作品だと言えますか。

 

ダニー:過去に作ったすべてのものからの自然な進歩、派生物だと思う。多くの曲は俺がニューヨークにいる間に書かれて、他のメンバーはみんなカリフォルニアに住んでいたから、いくつかの曲はとても俺らしいサウンドになっていると思う。個人的には「マリグナンシー」がお気に入り。この曲はバンドのメンバー全員が協力して出来上がっているんだ。ジェームズもたくさんリフを書いたし、ドラムのジェフもたくさん書いた。ポーズも素晴らしいソロを披露しているよ。この曲のテーマは非常に難しいもので、癌についてなんだ。誰でも癌を患った知人や身内がいるものだろう。バンドのメンバーにも、癌という問題が非常に身近なものもいる。癌で近しい人を亡くしたりね。誰でも、どこに住んでいようと、癌という問題から逃れることはできない。それでスコットにこの問題について書くべきだと言われて、わずか20分くらいで一気に書き上げたんだ。

 

 

 

― 今でもスラッシュ・メタルをプレイしているという意識はありますか。

 

ダニー:スラッシュの要素は間違いなくあるよ。でもモードレッドだと言うのが一番じゃないかな。色々違ったことを試しているしね。俺たちのルーツはいつでもスラッシュにあるけど、いつも違うことを試しているのさ。それがうまく行く時もあるし、そうでない時もある。だけど実験するのが好きなんだ。失敗することもあるけれど、それが俺たちを他のバンドと区別しているものだからね。

 

ー タイトルトラックではホーンが大々的にフィーチャされています。過去にもサックスを使っていたことがありますが、こういう要素はどういったところからのインスピレーションなのでしょう。

 

ダニー:あの曲は、ダンスホールで使われるリズムに基づいているんだ。ブラジルっぽいビートで、ドゥンドゥパドゥッパッみたいな感じ。基本的にこのリズムを使って曲を仕上げた。俺はニューオーリンズの文化が大好きだから、それをこのリズムと混ぜ合わせたんだよ。ニューオーリンズという街はとても豊かな歴史を持っていて、素晴らしいところだからぜひ行くべきだよ。開拓時代の西部地方みたいな感じのあるところさ。見た感じはヨーロッパっぽいフレーバーもある。『ザ・ダーク・パレード』はコンセプト・アルバムという訳ではないけれど、今この国で起きていることが共通のテーマとして、それにもピッタリだと思ったんだ。曲と曲の間にはサウンドスケープみたいのが入っている。

 

ー サーカスというメタファーを使っていますが、そのアルバムのテーマというのは具体的に何なのでしょう。

 

ダニー:うーん、あんまり多くの情報は与えたくなくて、自分たちで考えてほしいんだ。今アメリカで起きていること、とだけ言えば十分だと思う。俺たちが見て、経験していることを書いているんだ。アメリカの現在の情勢さ。

 

― 歌詞は読んだのですが、なかなか何についてなのかがわかりませんでした。消費主義への批判ではないのですか。

 

ダニー:いや、それは違う。映画を見ていない人に、ストーリーを伝えたくないのと同じさ(笑)。詩なんかもそうだろう。読んでも、一体何について書かれているのかはわからず、読んだ人がそれぞれ解釈をする。現時点では、アメリカの現在の情勢とだけ言えば十分だよ(笑)。

 

― (笑)。サーカスというのは、アメリカで起きている何かについてのメタファーなのですよね。

 

ダニー:そう、もちろんそうさ(笑)。

 

 

― 今回80年代、90年代のメンバー6人のうち5人が参加しています。これは非常に珍しいですよね。再結成したバンドの多くは、当時のメンバーは1人だけなんていうこともザラですが。

 

ダニー:そうだね、俺たちはラッキーだと思うよ。君の言うとおり、再結成したバンドの場合、一人でもオリジナル・メンバーがいればマシなんていう感じだからね(笑)。俺たちの場合、うまい具合にみんな生活の中でバンドをやれる環境にあって。俺も25年間カリフォルニアを離れていたんだ。俺がカリフォルニアを離れた一番の理由はバンドのことさ。バンドが解散して俺の生活は大きく変わり、夢が壊れてしまった感じだったから。その傷も癒えて、戻ってきたんだよ。ギタープレイヤーのダニーではなく、一人のダニーになるには時間が必要だった。みんな成長して大人になって、家庭を持って。

 

ー ドラムのギャノンが参加していないのはなぜですか。

 

ダニー:彼にも参加をお願いしたのだけど、彼はやらないという決断だった。今の生活を大事にしたいということで、俺たちもその決断を尊重したのさ。

 

― 新しいドラマーのジェフはどうやって見つけたのですか。

 

ダニー:ジェフはスコットの友人で、ベイエリアの音楽シーンに長く関わってきた人物。M.I.R.V.やFungo Mongoというバンドをやっていて、ポーズと同じシーンにいたんだよ。MCM and the Monsterとか、とてもエネルギッシュなファンクをやるバンドがいて、そのシーンの一員だったんだ。プライマスとかPsychefunkapusとか。それで俺たちもFungo MongoやM.I.R.V.なんかを見に行っていて、彼らも俺たちを見に来ていて、それでジャンルのミックスみたいなことが起こっていたんだ。モードレッドはまさにそうやって生まれたのさ。ジェフはどちらのジャンルもこなすことができるから、色々実験したり、ヘヴィなこともやれる。素晴らしいドラマーだよ。

 

 

― 今後の予定を教えてください。コロナが収まった後はツアーも考えていますか。

 

ダニー:日本に行きたいよ(笑)!ずっと日本に行きたいと思っていてね。できる限り多くのところに行きたい。ヨーロッパにもまた行きたいし、アメリカもツアーしたい。アルバムの評判次第だね。みんなが気に入ってくれれば、ツアーにも行ける。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ダニー:そうだな、うーん、UFOの『Strangers in the Night』。いっぱいあるけど、とりあえず思いついた3枚ね。AC/DCの『If You Want Blood, You’ve Got It』。あとはやっぱり『Ride the Lightning』だね。

 

― 最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。すでに先ほど言っていただいたような気もしますが。

 

ダニー:(笑)。俺たちの作品を聴いてくれてありがとう。日本の文化、人々が好きなんだ。そんなに遠くないうちに日本に行きたいよ。

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

ご購入はこちら

2021年7月23発売

モードレッド

『ザ・ダーク・パレード』

CD

【CD収録曲】

  1. デモニック #7
  2. マリグナンシー
  3. アイ・アム・チャーリー
  4. ドラギング・フォー・ボディーズ
  5. ザ・ダーク・パレード
  6. オール・アイズ・オン・ザ・プライズ
  7. デンテッド・ライヴズ
  8. スマッシュ・ゴーズ・ザ・ボトル
  9. ノット・フォー・ユー ※日本盤限定ボーナストラック
  10. ザ・ラヴ・オブ・マネー ※日本盤限定ボーナストラック

 

【メンバー】
スコット・ホルダービー(ヴォーカル)
ダニー・ホワイト(ギター)
ジェームズ・サンギネッティ(ギター)
アート・リボーン(ベース)
アーロン”DJ ポーズ”ヴォーン(ターンテーブル、キーボード)
ジェフ・ゴメス(ドラムス)