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ニコライ・ブッセ・ブラドト(メル)
独占インタビュー

自分の過去を取り出し
一望して、先に進んでいく
そういう感じで『ジオラマ』
というタイトルにしたのさ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Cornelius Qvist, Sebastian Apel

シューゲイズ・メタルの新星、デンマーク出身のメルがセカンド・アルバム『ジオラマ』をリリース。バンドの創始者でありギタリストのニコライ・ブッセ・ブラドトに話を聞いてみた。

 

 

ー まずバンド名の正しい読み方を教えてもらえますか。

 

ニコライ:デンマーク語での発音だと、メル。

 

ー どのような意味なのですか。

 

ニコライ:蛾だよ。

 

ー その名前を選んだ理由は何だったのでしょう。

 

ニコライ:まずデンマーク語の名前にしたかった。それからシンプルなものが良かった。それに蛾というものは、美しいと同時に鬱陶しいよね。だから俺たちのサウンドにマッチするとも思ったのさ(笑)。

 

ー ニュー・アルバム『ジオラマ』がリリースになります。デビュー作と比べて、どのような点が進歩していると思いますか。

 

ニコライ:曲作りは間違いなく進歩していると思う。それからギターワークも。ギターはコントロールされたものではなく、もっと表情豊かなものにしたかったんだ。それから、キムのクリーン・シンギングも、前回のアルバムよりもたくさん使われているよ。こういうことが今回のアルバムで試してみたかったことさ。

 

ー アルバムのテーマはどのようなものですか。歌詞は非常に抽象的で、読んでみたのですがなかなか理解しづらかったのですが。

 

ニコライ:そうだと思う(笑)。歌詞はキムがすべて書いたのだけれど、世界の中で自分の居場所を見つけることとか、結局いずれは誰もが消え去るということとか。内面における自分のバックグラウンド、自分自身の歴史を探り、過去に起こった問題を乗り越えて、より良い自分になるみたいなことが、今回のアルバムでのテーマになっている。

 

ー では『ジオラマ』というタイトルにしたのは何故でしょう。

 

ニコライ:「ジオラマ」のコンセプトは素晴らしいものだろう?小さな風景を一望できるんだ。それは、例えば自分自身の過去とのメタファーになる。自分の過去を取り出し、一望して、先に進んでいく。そういう感じで『ジオラマ』というタイトルにしたのさ。

 

ー 歌詞はデンマーク語と英語が半々ですが、これは何故ですか。

 

ニコライ:デビュー作『Jord』でも、キムが歌詞をすべて書いていたのだけど、その時はほとんどが英語だった。一部はデンマーク語で書かれていて、それはおそらくデンマークでは、メタル・バンドの多く、特にブラック・メタル・バンドはデンマーク語で歌っているからね。今回はより多くの曲をデンマーク語で歌ってみるのも面白いと思ったんだ。英語で歌詞を書くと、母国語よりも距離を感じるよね?そいういこともあって、キムにとってより表現力が豊かになるのだと思う。母国語で歌う方が、感情を込められると思うんだ。

 

 

 

ー アルバム・ジャケットも非常に抽象的ですが。

 

ニコライ:その通り(笑)。

 

ー あれは何を表現しているのでしょう。

 

ニコライ:Jon Gotlevというアーティストの手によるもので、前作も彼が描いたんだ。ミニマリズム的というか、非常に抽象的でとても気に入ったので、今回も彼にお願いをした。これはあくまで俺の個人的な解釈だけれど、描かれている線は過去とつながっていて、さっきも言ったように過去を取り出して自分自身ややって来る未来を改善するという意味だと思っている。

 

ー アーティストには特に指示をせず、好きなように描いてもらったのですか。

 

ニコライ:実はそれほど多くの指示は与えなかった。歌詞を渡して音楽は聴いてもらってけれどね。それからフィードバックをもらって。彼のアートワークはとても気に入っているよ。

 

 

ー 今回ニュークリア・ブラストからのデビューということになりますが、どのような経緯で彼らと契約をしたのでしょう。

 

ニコライ:以前はHoly Roar Recordsと契約をしていたのだけど、廃業してしまったんだよ。そんな中、ニュークリア・ブラストから連絡があってね。交渉をしてサインをした。彼らと契約できて良かったよ。とても音楽に情熱的な人たちだからね。ただの大きなレーベルというだけでなく、音楽ファンでもあるんだ。

 

ー メルの音楽を言葉で説明するとどうなりますか。

 

ニコライ:たいていはシューゲイズ・メタルと言っている。俺たちの好きなジャンルを2つ合わせてね。シューゲイズのサウンドと、もっとヘヴィなものを混ぜ合わせているんだ。以前はもっとブラック・メタルの要素を使っていて、今でもブラストビートは使っているけど、最近はグルーヴもある。色々な要素を取り入れようとしているけれど、シューゲイズはずっと通底しているものだよ。雰囲気があって、ドリーミーで、メロディックなものを作ろうとしているのさ。

 

ー メルはメタル・バンドだと思いますか。

 

ニコライ:そうだね、そうなると思う。ストレートなシューゲイズの作品を作るつもりはない。色々なものを混ぜ合わせているから、ただのメタルという訳ではないけれどね。

 

ー 影響を受けたバンドやアーティストとなると、どのあたりなのでしょう。

 

ニコライ:『ジオラマ』を作っている時は、スマッシング・パンプキンズを多く聴いていた。それからもちろんマイ・ブラッディ・ヴァレンタインも。俺たちはデンマークのバンド、ミューの大ファンでもある。彼らのメロディへのアプローチやギター・サウンドが大好きなんだ。俺について言えば、これらのアーティストから常にインスピレーションを受けているよ。いつもミューの作品を聴いて、新しいアイデアを得るようにしているんだ。

 

ー ヘヴィメタルやブラック・メタルも聴きますか。

 

ニコライ:俺はシューゲイズ以外も聴くからね。例えばアルセストとか。アルセストはブラックゲイズと言われるジャンルのゲートウェイ・ドラッグさ(笑)。Lantlôsも大好き。彼らは素晴らしいバンドだよ。新しい作品も出たところ。ブラック・メタルだと、以前はメイヘムなんかを良く聴いたけれど、最近はそうでもないかな。デフヘヴンの『Sunbather』なんかは大好きだけれど。ブラック・メタルという点で言えば、俺たちは最近の新しいスタイルが好みだと言える。

 

ー あなたのバックグラウンドはメタルというよりシューゲイズなのですね。

 

ニコライ:そうだよ。

 

ー そもそも音楽にハマったきっかけは何だったのですか。

 

ニコライ:やっぱりそれもミューだよ。彼らを聴いて、ギターを始めようと思ったんだ。それでメルのドラマー、ケンとシューゲイズ・バンドを始めたんだよ。だけどうまく行かなくて、新しいバンドを作り直したんだ。それで彼がもっとヘヴィなアプローチをしようと。俺も最初は気乗りしなかったんだけど、そのうちハマっていった。メタルとシューゲイズのような他のジャンルを混ぜ合わせるのはとても興味深いよ。感情表現をさらに強調することができるからね。

 

ー お気に入りのギタリストは誰ですか。

 

ニコライ:良い質問だね。やっぱりミューのボウ・マドセンかな。彼は素晴らしいギタリストだよ。アルセストのネージュも大好き。彼も素晴らしいギタリストで、彼の作り出すコード進行はレベルが違うよ。それからスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガン。このあたりの人たちが、俺のヒーローだよ。彼らはいずれも素晴らしいソングライターでもある。

 

 

ー 今後の予定はどうなっていますか。パンデミックでなかなかツアーも難しいと思いますが。

 

ニコライ:デンマークでは規制もだいぶ解除されてきているので、秋にはライヴをやる予定になっている。それからヨーロッパのヘッドライナー・ツアーも予定しているよ。ただ世界がこんな状況だからね。どうなるかはわからないけれど。

 

ー ツアーはだいたいメタル・バンドとやるのですか。

 

ニコライ:たいていはメタル・バンドとツアーをしてきた。Rivers of Nihil、Black Crown Initiate、Orbit Cultureともツアーをしたし、Ghost Bathともツアーをしたことがある。彼らはみんな良い人たちで、とても楽しいツアーだったよ。また彼らとツアーをしたいね。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ニコライ:そうだな、やっぱりミューだね。『Frengers』。それからアルセストのセカンド・アルバム。(『Écailles de lune』)。あとはスマッシング・パンプキンズの『Siamese Dream』。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ニコライ:俺たちの音楽を聴いてくれてどうもありがとう。いつの日か日本でプレイしたいよ。ぜひ日本に行ってみたいんだ。

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年11月5日発売

メル

『ジオラマ』

CD

【CD収録曲】

  1. フラクトゥル
  2. フォトフォビック
  3. サーフ
  4. ヴェスティージュ
  5. リダクテッド
  6. イティネラーリ
  7. ヴェシンド
  8. ジオラマ

 

【メンバー】
キム・ソング・スターンコフ(ヴォーカル)
ニコライ・ブッセ・ブラドト(ギター)
フレデリク・リッパート(ギター)
ホルガー・フロスト(ベース)
ケン・ルンド・クレイズ(ドラムス)