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『メイク・ア・ウィッシュ』
発売記念 連載第一弾!
ポール・ショーティノ 独占インタビュー(前編)

出し惜しみしないエンタテインメントという点では、
非常に“ラスヴェガスらしい”アルバム

                                   

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LAメタルを代表するロック・シンガー、ポール・ショーティノが“ショーティノ”名義の最新リーダー・アルバム『メイク・ア・ウィッシュ』を2020年4月24日に発表する。

1980年代にラフ・カット〜クワイエット・ライオットで活躍、近年ではラスヴェガスでライヴ・ショー“レイディング・ザ・ロック・ヴォールト”のリード・シンガーの一角を占めるなど、常にハード・ロック/ヘヴィ・メタル界の第一線で活躍している。今作はギタリスト/プロデューサーの若井望(ディスティニア)をプロデューサー/ギタリストに迎えて制作され、さらに故ヴィニー・ポール(元パンテラ)、ピーター・バルテス(元アクセプト)、ダグ・アルドリッチ(元ディオ〜ホワイトスネイク)、カルロス・カヴァーゾ(元クワイエット・ライオット)らをゲストに迎えた豪華なオールスター・アルバムとなっている。もちろんアルバムの“主役”はポールのハードでソウルフル、そして常にエモーショナルなヴォーカルだ。

ラスヴェガスの自邸で過ごすポールをキャッチ、『メイク・ア・ウィッシュ』について話してもらった。

 

  • —— ラスヴェガスはどんな状況ですか?あなたはどのようにして日々を過ごしていますか?

 

今、ラスヴェガスはゴーストタウンだ。誰も街を歩いていないし、友人と会うことも出来ない。ここに長く住んでいるけど、初めての経験だよ。まるで『トワイライト・ゾーン』の世界にいるみたいだ。ただ、俺自身の生活はそれほど大きく変わっていない。毎日2マイル半ほど犬と散歩をして、曲を書いたりビデオを作ったり…でも周りに仕事を失った人は大勢いる。少しでも彼らの力になりたいと考えているよ。実はしばらく前、俺と嫁さんは高熱を出して寝込んだんだ。COVID-19が世界的な問題になる少し前のことだったけど、あらゆる症状が合致していた。今では治ったけど、大変だったよ。俺が出演しているライヴ・ショー“レイディング・ザ・ロック・ヴォールト”の出演ミュージシャン達にも、熱を出した人が何人もいた。世界は今、不安と恐怖に満ちている。ひとつ言えるのは、これまで人類は地球を酷使し過ぎていた。今回の騒動で地球が少し休む時間が出来たということかな。これを機会に、俺たちは地球をいたわることを重視するべきだろう。地球に感謝、宇宙に感謝だ。俺は人類の前進を信じているし、きっと治療法が見つかると信じている。必ず克服することが出来るよ。それまでは自宅で、ポジティヴなエネルギーを持ちながら 日常生活を送るつもりだ。世界中の感染している人々が早く元気になることを祈っているよ。

 

  • —— そんな暗い時代を明るく照らしてくれるのが、ショーティノのニュー・アルバム『メイク・ア・ウィッシュ』ですね。

 

うん、『メイク・ア・ウィッシュ』は全編にわたってポジティヴなエネルギーを込めたアルバムだ。ラヴとピース、そしてハピネスが込められている。数々の素晴らしい仲間たちとこのアルバムを作ることが出来て、俺は本当に恵まれていたと思う。その中でもギタリストのノゾム・ワカイ(若井望)と共作を出来たことは、俺にとって誇りに出来る瞬間だったし、彼と作ったこのアルバムは長いキャリアにおいても最も輝かしい作品のひとつだよ。

 

 

  • —— 若井望との作業はどんなものでしたか?

 

ノゾムはスーパー・プロフェッショナルでスーパー・クール・ガイだ。彼とは日本でライヴ共演して知り合った(2016年・2017年)けど、ラスヴェガスでこのアルバムを一緒に作ったんだ。彼は幾つも最高のアイディアを持っていたし、俺が出したアイディアも彼のおかげでさらに良いものになった。

 

  • —— 『メイク・ア・ウィッシュ』の音楽性を“ラスヴェガス・ハード・ロック”と表現していますが、 “ラスヴェガスらしさ”をについて教えてください。

 

『メイク・ア・ウィッシュ』には最高のプレイヤーが何人も参加している。ラスヴェガスに住んでいる友人もたくさんいるし、アメリカの他の都市、それから日本に住んでいるミュージシャンもいるけど、全員がスターだ。星が散りばめられているのがラスヴェガス的だよな(笑)。ラスヴェガスにはロック・ミュージシャンだけでなく、あらゆるジャンルのアーティストが集まってくる。エアロスミスやレディー・ガガもレジデンシー・ショーをやっているし、ここを本拠地とするフットボールのチームもある。ある意味ロサンゼルスと共通しているんだ。アルバムのレコーディングは愛の産物だった。“レイディング・ザ・ロック・ヴォールト”でプレイしているフィル・スーザンやジェイ・シェレーン、ダグ・アルドリッチ、ローワン・ロバートソン、それからアクセプトのピーター・バルテス、ホワイトスネイクのマルコ・メンドーサ…出し惜しみしないエンタテインメントという点では、『メイク・ア・ウィッシュ』は非常に“ラスヴェガスらしい”アルバムだよ。ノゾムに「ピーター・バルテスに参加してもらったらどう?」と言われて、すごく驚いたんだ。ラフ・カットがファースト・アルバムを出した後にツアーしたときの対バンがクロークス、アクセプトで、アクセプトのベーシストがピーターだったからね。彼とは古い友達だよ。

 

  • —— あなたはラスヴェガスに住んでどれぐらいになるのですか?

 

これで15年目だよ。俺はオハイオ州ライマで生まれ育ったんだ。ペルーの首都のLimaはリマと読むけど、オハイオ州の方はライマと読むんだよ。ロサンゼルスのような大都会ではないけど、あまり騒がしくなくて良いところだよ。十代の頃にロックを志して、カリフォルニアのあちこちに住むようになった。サンディエゴでラフ・カットをやったり、ロサンゼルスでクワイエット・ライオットやバッド・ボーイズ、それからドイツに2年ぐらい住んで、フランク・ファリアンのスタジオで『イッツ・アバウト・タイム』(1997)というアルバムを作ったこともある。その後、カリフォルニア州チャッツワースに引っ越して、それでラスヴェガスに落ち着いたわけだ。うちの嫁がラスヴェガス出身なんだよ。祖父が建築家で、ギャングのバグジー・シーゲルの依頼で“フラミンゴ・ホテル”の設計に関わったんだ。彼女の家族は1945年からラスヴェガスに住んできた。だからこの町が変わっていくのを見てきたんだよ。彼女の祖母が美しい一軒家を遺してくれたから、その家に住んでいる。この町は暮らしやすいし、友達もたくさんいるから、しばらくよそに引っ越すつもりはないよ。B.B.キングもご近所さんだったんだ。

 

  • —— ハード・ロック/ヘヴィ・メタルとラスヴェガスのビッグなエンタテインメントのクロスオーヴァーは、アルバム1曲目「センド・イン・ザ・クラウンズ」に集約されていますが、フランク・シナトラなどで知られるこの曲をレコーディングすることにした経緯を教えて下さい。

 

その話をするには、まずヴィニー・ポールとの関係を話さなければならない。ヴィニーと初めて会ったのは1980年代、俺がまだラフ・カットでやっていた頃だった。ニューオリンズでショーをやったとき、パンテラが町の広場でプレイしていたんだ。そのとき「ヘイ、元気?」と挨拶したのを覚えている。でもヴィニーと友人として付き合うようになったのは15年前ぐらい、俺がラスヴェガスに引っ越してからだ。ヴィニーは毎週末、自宅の庭でバーベキューをやって、誰もが手みやげを持って遊びに来ていた。スタンダップ・コメディアンのキャロット・トップは“ルクソール・ホテル”で長年コメディ・ショーをやっていたけどバーベキューの常連で、俺とも親しい友人になったんだ。ヴィニーと俺で彼の“ルクソール・ホテル”でのショーを見に行ったりしたよ。バックステージで雑談するうちに「センド・イン・ザ・クラウンズ」をやらないか?って話が持ち上がったんだ。

 

  • —— 当初はどんなアレンジにしようと考えていたのですか?

 

そのときイメージしていたのはジュディ・コリンズのヴァージョンだったけど、それをヘヴィなスタイルでやったらクールだということになった。実際にアレンジするにあたって意識したのはシナトラのヴァージョンだったな。近所の友達を集めてやってみようという話になって、ヴィニーと俺、それからギタリストのアイラ・ブラック、ベーシストのタイラー・バージェスと一緒にレコーディングした。曲の途中にキャロット・トップのジョークを挟んだりして、“3リング・メタル・サーカス”という名義で発表したけど、1回限りのプロジェクトだった。あまり話題にもならなかったし、みんなそれぞれ忙しかったり、することがあったからね。でも、すごく良いカヴァーだと思ったし、常に頭の片隅にあったんだ。いつかもう一度、きちんとした形でレコーディングしたいと考えていた。ノゾムが俺の前に現れたとき、彼が“欠けていたパズルのピース”を埋める存在だと確信したんだ。

 

 

  • —— 「センド・イン・ザ・クラウンズ」のニュー・ヴァージョンではどんな新しい要素を取り入れましたか?

 

ノゾムが天高く舞い上がるギターを弾いているし、マルコ・メンドーサによる新しいベース・トラックも素晴らしい。ノゾムがラスヴェガスに来たとき、聴かせてみたんだ。彼も気に入ってくれたし、再レコーディングすることにした。ヴィニーは亡くなってしまったけど、彼の遺族は彼のドラム・トラックを使うことを許可してくれた。みんなヴィニーと俺が親友だと知っていたからね。正しい形でのトリビュートになると信じてくれたんだ。

 

  • —— 「センド・イン・ザ・クラウンズ」のミュージック・ビデオにはあなたと若井さんに加えて、ヴィニーが写真で参加、そしてキャロット・トップが出演していますね。

 

実は「センド・イン・ザ・クラウンズ」をプレイしているヴィニーの動画がどこかにある筈だけど、見つからなかったんだ。それでミュージック・ビデオではスチル写真を使っているんだよ。この曲はヴィニーへのトリビュートでもあるんだ。キャロット・トップはこの曲をレコーディングするきっかけとなった人だし、最高の友人でありパフォーマーだから、出演してもらわない手はなかった。俺たちのヴァージョンがヘヴィ・メタルだとは思わない。ステージ・プレイみたいで、ガッツとアティテュードがあって…みんなすごく気に入っているし、当初「センド・イン・ザ・クラウンズ」をアルバム・タイトルにするつもりだったんだ。でも『メイク・ア・ウィッシュ』の方がタイトルに相応しいと感じた。希望と幸福に満ちたタイトルだからね。

 

 

  • —— 「メイク・ア・ウィッシュ」はアルバムからの第2弾リーダー・トラックとしてミュージック・ビデオが作られたそうですが、どんな内容になりますか?(注:第2弾は「ライジング・サン」となり、「メイク・ア・ウィッシュ」は第3弾となった)

 

「メイク・ア・ウィッシュ」のビデオにはラスヴェガスでマジック・ショーをやっているマレイ・ソーチャックが出演している。彼はTV番組『アメリカズ・ゴット・タレント』にも出たことがある、素晴らしい才能を持ったマジシャンなんだ。キャロット・トップもマレイも、最高のパフォーマーでエンタテイナー、そして俺の親友だ。日本のファンもきっと気に入ってくれると信じているよ。このバンドでツアー出来るようになったら、シアトリカルなショーをやりたいんだ。「センド・イン・ザ・クラウンズ」で道化師、「アイズ・オブ・ザ・ウィザード」で魔術師が出てきたりね。「アイズ・オブ・ザ・ウィザード」はロニー・ジェイムズ・ディオへのトリビュート・ソングなんだ。

 

  • —— 「センド・イン・ザ・クラウンズ」は昨年(2019年)、映画『ジョーカー』でシナトラ・ヴァージョンが使われて再び脚光を浴びましたが、新たにレコーディングしたのはその影響もありましたか?

 

いや、全然。俺たちの方が10年以上早いからな(笑)!もし『メイク・ア・ウィッシュ』プロジェクトが始まるのがもう少し早かったら、俺たちのヴァージョンを使って欲しかった。きっと『ジョーカー』にピッタリだったと思うよ。「センド・イン・ザ・クラウンズ」「メイク・ア・ウィッシュ」のビデオはHBOのドキュメンタリー番組などで有名なゲイリー・オロナが監督しているんだ。彼の奥さんで女優のタビサ・スティーヴンスもビデオに出演しているよ。彼もラスヴェガスの住人だし、グッド・フレンドなんだ。

 

  • —— カーマイン&ヴィニー・アピスの兄弟プロジェクト、アピスの「モンスターズ・アンド・ヒーローズ」(2017)ではあなたがヴォーカルを取っていますが、ミュージック・ビデオにはキャロット・トップが出演していますね?

 

そうそう、みんな友達なんだよ。みんな才能あふれるミュージシャンやパフォーマーだけど、それ以前にファミリーだ。アピス兄弟とキャロット・トップを引き合わせたのは俺なんだ。俺とキャロット・トップがビデオで初共演したのはキング・コブラの「ハヴ・ア・グッド・タイム」(2013)だった。俺がヴォーカルを取って、ビデオにはヴィニー・ポールとキャロット・トップが出演しているよ。元はといえば「モンスターズ・アンド・ヒーローズ」はキング・コブラのアルバムに入れるつもりだったんだ。ヴィニーは「モンスターズ・アンド・ヒーローズ」のビデオにも出ているよ。

 

  • ——  あなたが最後にヴィニーと会ったのは、いつのことでしたか?

 

彼が亡くなった日(2018年6月22日)の前の晩、“レイディング・ザ・ロック・ヴォールト”を見に来てくれたんだ。ブラックジャックのテーブルでしばらく飲んで話したよ。彼はファンと写真を撮ったりサインをしていた。そのとき彼は元気そうだった。ヴィニーはいつもポジティヴな生き方をしていた。でも翌日、彼は突然去ってしまったんだ。…ヴィニーと俺で共通していたのは、2人とも弟を失ったことだった。兄弟を失って胸に空いた穴は、何をしても埋められるものではない。お互いにそんな気持ちを理解し合っていたんだ。彼の弟ダイムバッグ(ダレル)と俺は親しくなる機会がなかった。でもヴィニーから彼についていろんな話を聞くことが出来たよ。俺はヴィニーが大好きだったし、ダイムバッグともきっと親友になれたと思う。2人ともいなくなって、本当に寂しいよ。

 

 

後編記事では『メイク・ア・ウィッシュ』についてさらに掘り下げるのに加えて、ロニー・ジェイムズ・ディオとの思い出、1980年代のアメリカ西海岸メタル・シーンにまつわる秘話を明かしてもらおう。

 


 

 

2020年4月24日 日本先行発売

ショーティノ

『メイク・ア・ウィッシュ』

直筆サインカード付CD+Tシャツ

CD

【CD収録曲】

  1. センド・イン・ザ・クラウンズ
    (feat. ヴィニー・ポール [元パンテラ] / マルコ・メンドーサ [DESTINIA/元ホワイトスネイク])
  2. シャウト・アンド・プライド
    (feat. ユーライア・ダフィー [元ホワイトスネイク] / 西田”DRAGON”竜一)
  3. ブラフ
    (feat. ピーター・バルテス [元アクセプト] / 西田”DRAGON”竜一)
  4. メイク・ア・ウィッシュ
    (feat. フィル・スーザン [元オジー・オズボーン] / ジェイ・シェレーン [イエス])
  5. ライズ・アップ・アンド・ビー・ストロング
    (feat. フィル・スーザン [元オジー・オズボーン] / カルロス・カヴァーゾ [元クワイエット・ライオット])
  6. アイズ・オブ・ザ・ウィザード
    (feat. フィル・スーザン [元オジー・オズボーン] / ローワン・ロバートソン [元ディオ])
  7. フィーリング・ラッキー・シー・ユー・イン・LV
    (feat. ピーター・バルテス [元アクセプト] / 西田”DRAGON”竜一)
  8. ノクターナル
    (パトリック・ヨハンソン [元イングヴェイ・マルムスティーン])
  9. ミッシング
    (feat. フィル・スーザン [元オジー・オズボーン] / ジェイ・シェレーン [イエス])
  10. ビート・オブ・マイ・ハート
    (feat. ダグ・アルドリッチ [元ホワイトスネイク] / アンディ・C [元ダーク・ムーア / METAL SOULS])
  11. ライジング・サン
    (feat. フィル・スーザン [元オジー・オズボーン] / ジェイ・シェレーン [イエス])

《日本盤限定ボーナストラック》

  1. エンプティ・プロミス
    (feat. シェーン・コーリー [ドゥイージル・ザッパ / ミートローフ])

 


 

【メンバー】
ポール・ショーティノ(ヴォーカル) [ラフカット/クワイエット・ライオット]

若井 望(ギター) [DESTINIA]

 

【ゲスト・ミュージシャン】

ヴィニー・ポール(ドラムス) [元パンテラ]

フィル・スーザン(ベース) [元オジー・オズボーン]

ピーター・バルテス(ベース) [元アクセプト]

カルロス・カヴァーゾ(ギター) [元クワイエット・ライオット]

ダグ・アルドリッチ(ギター) [元ホワイトスネイク]

マルコ・メンドーサ(ベース) [DESTINIA / 元ホワイトスネイク]

パトリック・ヨハンソン(ドラムス) [元イングヴェイ・マルムスティーン]

ジェイ・シェレーン(ドラムス) [イエス]

ローワン・ロバートソン(ギター) [元ディオ]

アンディ・C(ドラムス) [元ダーク・ムーア / METAL SOULS]

ユーライア・ダフィー(ベース) [元ホワイトスネイク]

シェーン・コーリー(ヴォーカル) [ドゥイージル・ザッパ / ミートローフ]

西田”DRAGON”竜一(ドラムス)