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ロブ・フリン
(マシーン・ヘッド)
独占インタビュー

このアルバムに関して言うならば
「Electric Happy Hour」と
「Acoustic Happy Hour」からの影響は大きいと思う
もうすでに130回の
ライヴ・ストリーミングをやっているんだ

                                   

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文:川嶋未来

ロブ・フリン率いるマシーン・ヘッドが4年ぶりのニュー・アルバム『オブ・キングダム・アンド・クラウン』をリリース!ということで、ロブに色々と話を聞いてみた。

 

 

 

ー ニュー・アルバムの音楽性についてどのように描写しますか。個人的には、バック・トゥ・ルーツとは言いませんが、長い曲で始まるなど、特に前作『カタルシス』と比べた場合、非常にマシーン・ヘッドらしい作風に戻ったと感じたのですが。

 

ロブ:そうだな、今でも前進を続けているという感じかな。君の言ったように、とてもマシーン・ヘッドらしいアルバムだと思っているよ。その理由はいくつかあって、その一つが『Burn My Eyes』の25周年ツアーをやったこと。クリスやローガンとまた一緒にやれたことも良かった。それで、あのアルバムを書いた時の精神状態を感じたというのがある。歌詞はまた別だけどね。当時の生活は本当にクレイジーだったから。当時のマインドセットでは、音楽はとても忙しく、速くてスラッシーで、ドラムも忙しいから、歌詞はとてもシンプルにしていたんだ。とても理解しやすいもので、言葉を詰め込んだりしなかった。そんなことを思い出したのが、このアルバムの音楽性に影響を与えたと思う。今回も、とてもシンプルなヴォーカル・ライン、シンプルなフックになっているよ。それに加え、今回はアルバムにコンセプトがある。過去の9枚では、俺がどう世界を見ているか、俺にどのようなことが起こっているかを書いていたけれど、今回は2人のキャラクターを中心に話が進んでいく。1人目はAresというキャラクターで、彼は愛するAmethystを失い、彼女の死への復讐のために大殺戮に走る。もう1人はEros。彼は母親をオーヴァードーズで亡くす。彼は鬱の中で、カリスマ的リーダーのせいで過激化し、自身で殺戮を行うようになる。Amethystを殺したのも彼。だから今回は、俺の視点ではなく、まったく対極にいる2人の視点で歌詞を書いたということ。それぞれの人物になりきってね。クリエイティヴな観点から見ても、とても素晴らしいことだった。非常に興味深くて、ストーリーラインもクレイジーなものになったよ。こういう歌詞の書き方が、アルバムのダイナミクスを変えたとも思う。

 

ー このコンセプトは『進撃の巨人』からインスパイアされたそうですが。

 

ロブ:『進撃の巨人』について歌っている訳ではないことは、明確にしておきたい。最初にこのコンセプトに手をつけていた時は、典型的な、善と悪がいて、善が勝つみたいな話だったんだ。だけど、ピンと来なかった。歌詞としては悪くなかったけれど、何も感じられなかったんだ。俺は子供の頃完全な『スターウォーズ』オタクでね。アクション・フィギュアなんかも全部集めて。それから『ウルトラマン』や『ゴジラ』のような、70年代の日本の特撮にハマった。その後アニメにハマってね。『マクロス』、『ロボテック』、『宇宙戦艦ヤマト』、『AKIRA』とか、コンヴェンションに行くくらいハマっていたんだ。その後メタル・オタクになってしまうのだけど(笑)。今ではブートレッグやデモ、輸入盤を集めているよ。そうしているうちに、アニメへの興味を失ったとは言わないけれど、あまり注意を払わなくなっていった。うちの息子たちが10代になって、彼らがアニメ好きになってね。パンデミックの時に、彼らの部屋で彼らがパソコンで見ているのを見て、「おい、こいつはシックだな!一緒に見よう。これは凄い」なんて感じで、みんなでアニメの色んなシリーズを見て。『進撃の巨人』は、とても暴力的でサイケデリックで奇妙で、凄く良かった。あの作品では善と悪があるのではなく、どちらのサイドも自分たちが正しいことをやっていると信じながら、どちらも邪悪な行為を行なっている。それで、俺のストーリーも似たような感じにできるなと思って。『進撃の巨人』は素晴らしいアニメ・シリーズだよ。

 

ー アルバムのタイトル『オブ・キングダム・アンド・クラウン』にはどのような意味が込められているのでしょう。タイトル・トラックはありませんよね。

 

ロブ:俺たちのアルバムの半分くらいはタイトル・トラックが入っていない。『Burn My Eyes』や『The Blackening』なんかもタイトル・トラックはないよね。何だろう、何となくアートワークを見たり、ストーリーを読み直していると、何度もこのタイトルが思い浮かんだんだ。レコードの内容を要約している感じがして。

 

ー ディキャピテイテッドのヴォッグがギタリストとして加入しています。どのような経緯があったのでしょう。

 

ロブ:ヴォッグは信じられないようなギタリストだよ。本当に凄いギタリストさ。彼は『Burn My Eyes』のツアーでもギターを弾いたのだけど、その後パンデミックになってしまった。ヴォッグと知り合ったのは、11年か12年くらい前だったかな。ディキャピテイテッドがサマー・スローター・ツアーでベイエリアにやって来て、俺も見に行ったのだけど、素晴らしいショウだった。それで一緒にビールを飲んで、楽しかった。それで、友達とは言わないけれど、時々メールのやりとりをするようになってね。マシーン・ヘッドがポーランドでプレイする時は、いつも彼が見に来てくれた。ギタリストのオーディションをやっていたのだけど、なかなか良い人材が見つからなくて、そんな時に彼からインスタにDMが来たんだよ。ちょうど『Burn My Eyes』のツアーをアナウンスをした頃で、彼は「オーマイゴッド、あのアルバムは大好きだからぜひこのツアーは見たい」と。それで数日間インスタでやりとりをしていて、ギタリストの話になって、それで彼が「自分なんてどうか?」って。てっきりディキャピテイテッドで忙しいのかと思っていたのだけど。それでオーディションの担当者に連絡をして、俺たちはいつもまず演奏しているところをヴィデオに録って送ってもらうんだ。そしたら彼は「Imperium」を弾いているところを送って来てさ(笑)。これがまた異常なほどに凄かったんだ。「ホーリー・シット!俺より上手いじゃないか!」って。すでにツアーの日程は近かったのだけど、彼は自分のバンドもやっているし、ツアーの経験も豊富だったからね。彼とならうまくやれるだろうと思ったんだ。正しい選択だったよ。ツアーが始まる1週間前に加わって、曲を覚えてもらって。「2 dudes jamming in the hotel」という動画も上げたけど、レコードやクリックもなしで、2人でプレイしたのだけど、もう10年も一緒にやって来たかのように感じた。まったくクレイジーだよ。ヴォグが加わった経緯はこんな感じ。

 

ー 彼は今回曲も書いたのですか。

 

ロブ:書いたよ。「アンハロウド」や「ブラッドショット」なんかに貢献してくれた。このアルバムの曲を形にするのに、大きな役割を果たしてくれたよ。

 

ー さらに今回はニュー・ドラマー、マットが加わっています。

 

ロブ:彼はずっと俺たちのドラム・テックをやっていたんだ。ドラマーとしても素晴らしいし、ツアーで1年半くらい一緒に暮らしていたようなものだからね(笑)。とても落ち着いたやつさ。すべてのバンドにとってパンデミックは大問題だった。特に俺たちの場合、他のメンバーはカリフォルニア在住じゃないからね。アルバムのほとんどは、俺とエンジニアのザック、それからジャレッドの3人で書いた。アイデアができると、さっとドラムをプログラムして、そうやって曲ができていった。

 

 

ー エンジニアのザックとずっと組んでいますが、彼の仕事のどのようなところが素晴らしいのでしょう。

 

ロブ:彼は天才だよ。ギタリストとしても凄い。毎週金曜日に「Electric Happy Hour」というライヴ・ストリーミングをやっていて、カヴァーも含め色々な曲をプレイしているのだけど、彼がやって来て「Holy Wars」をプレイしたんだ。メガデスの。彼はマーティ・フリードマンのソロとかも全部こなしてさ(笑)。凄いんだよ。ベースやドラムもプレイできるし。俺はとてもいい加減なタイプなのだけど、彼は本当に几帳面だし(笑)。とても細かいところにまで気を配って、そういう意味で俺たちは良いコンビなんだ。いい加減なタイプ同士だったら、とんでもないだろ(笑)。

 

ー アートワークはセプティックフレッシュのセス・シロ・アントンが手がけています。彼を起用した理由は何ですか。

 

ロブ:セスは素晴らしいよ。信じられないほど才能がある。以前にもセプティックフレッシュは何度も聴いたことがあったのだけど、彼が様々なアートワークも手がけているとは知らなかったんだ。彼が手がけたアートワークも見ていたのだけど、それがセプティックフレッシュのメンバーの手によるものだと気づいていなかったのさ。マーチャンダイズを作ってくれている奴が、セスのインスタグラムのページを教えてくれてね。アートワークがなかなかうまく進んでいなかったから。それでセスにコンタクトしたんだよ。「俺たちのことを知っているかわからないけれど、できれば一緒に仕事をしたい」って。そしてらすぐに「オーマイガッド、大ファンなんです」って返事が来てさ。それでコンセプトを伝えて。本当に素晴らしい時代を超越したクラシックな作品に仕上げてくれたよ。

 

ー 具体的にあのアートワークは何を表しているのでしょう。

 

ロブ:彼にはコンセプトを伝えてね。2人のキャラクターのこと。俺は今回の作品は非常に映画的だと思っている。聴くものを完全に現実から引き離したいんだ。物凄く刺激的というか。そういうことも伝えて、それであのアートワークを仕上げてくれたんだ。

 

ー なるほど、アートワークに出てくるキャラクターが2人の主人公に相当するということでしょうか。

 

ロブ:それは見た人がそれぞれ好きなように解釈してもらって構わないよ(笑)。

 

 

ー 現在でも曲を書く際に、外部からのインスピレーションというのは必要ですか。

 

ロブ:うーん、俺は最近の曲も色々と聴くからね。ヒップホップ、ポップス、メタル、パンクとか何でも。だけど、このアルバムに関して言うならば、「Electric Happy Hour」と「Acoustic Happy Hour」からの影響は大きいと思う。もうすでに130回のライヴ・ストリーミングをやっているんだ。自分のスタジオから。カメラも5台あって、クルーも3人いる。特にセットリストは決めず、思いつきで色々とやる。ジェイムズ・ブラウンとかもね。毎週3-4曲新しい曲を覚えて、過去4週間でやった曲は繰り返さない。とても大変だけれど、クリエイティヴィティという点で、とても打ち込める。これはパンデミックが始まった時から始めたのだけど、本来ならそこから1年間ツアーの日程が決まっていて、とにかく音楽をプレイしたくてね。ロックダウンが始まると、このビルに立ち入れるのが俺だけということになって。ビルのオーナーが、「君は入ってもいいけど、他の人はダメだ」って。それで俺1人でやって来て、「Acoustic Happy Hour」というのを始めた。ビールを飲みながら、アコースティックの曲をプレイする(笑)。出来は素晴らしいものではなかったけれど、楽しくかったし、ロックダウンで他にできることもなかったからね。それで、新しい曲も覚えて。5-6週目かな、とても良い出来の時があってね。俺はクリーン・シンギングではなく、ブルータル・シンギングで知られているだろ。なのに、90分間クリーン・シンギングのショウをやる訳だよ。ある時、思うように歌えた時があってね。もちろんマシーン・ヘッドにもメロディックに歌う部分はあるけれど、そんなにたくさんじゃない。ところが翌週、今度はさっぱり思うように歌えない。それで、ヴォイス・トレーナーのメリッサ・クロスに電話したんだ。10年くらいヴォイス・トレーニングを受けているのだけど、あくまでヘヴィ・ヴォイスのためにね。それで今回は、クリーン・ヴォイスを改善したいと相談したんだ。マシーン・ヘッドのニュー・アルバムを素晴らしいものにするためではなく、「Acoustic Happy Hour」で恥をかきたくなかったから(笑)。おかげで歌もだいぶ良くなった。今ではジャレッドも一緒に「Acoustic Happy Hour」をやっているよ。マシーン・ヘッドの曲を再解釈したり、フリートウッド・マックやボブ・マーリー、システム・オブ・ア・ダウンの曲なんかもやったりしている。やっていくうちに、お互いの心を読めるようになってきてね。「彼はこのハーモニーに行くぞ」みたいな感じで。そんなことをやりながら、アルバムも作っていたから。「あのフリートウッド・マックのアイデアを試してみようか?」なんてことになったり。そういう小さなことが雪だるま式に膨らんで行って、ジャレッドは素晴らしいシンガーだし、俺たち2人の声が合わさると魔法みたいになって。今回これをもっと前面に出そうとしてみたんだ。

 

ー なるほど。それで今回はクリーン・シンギング・パートがたくさんあるんですね。

 

ロブ:そうさ。

 

ー 最近よく聴いているアルバムを3枚教えてください。

 

ロブ:最近よく聴いている3枚か。かなり面白いものになるよ(笑)。カントリー・ヒップホップというのがあって、今アメリカではとても人気がある。モーガン・ウォレンというアーティストなのだけど、聴くのをやめられないんだ(笑)。すべての曲がウィスキー、女の子に逃げられた、女の子に出会った、みたいなのばかりでバカみたいなんだけど、最高なんだよ(笑)。「Sand in My Boots」という曲が素晴らしい。ちょっとイーグルスっぽくて、俺はイーグルスも大好きだから。あとは何を聴いてるだろう。アフター・ザ・ベリアルの新しいやつ。18年か19年に出たはずだから、新しくはないけれど、最新のアルバム。最近見つけたんだ。素晴らしいよ。あとは何だろう。ポリスを良く聴いているな。ファースト・アルバム。フランス語だからタイトルはよくわからないけど、「Can’t Stand Losing You」とかが入っているやつ。パンデミック中、妻がポリスを聴きまくっていてね。それで今俺もポリスを聴いているんだ。ヒット曲ではなく、ディープ・カッツを。

 

ー 『Outlandos D’Amour』ですね。

 

ロブ:そう、それ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ロブ:また日本に行くのが待ちきれないよ。今のところいつになるかはわからないけれど、必ず行く。日本のファンは、マシーン・ヘッドの3時間半のショウに耐えられるスタミナを持っているからね(笑)。餃子とラーメンもまた食べたい。餃子が大好きなんだよ。

 

 

文 川嶋未来

 

 


 

 

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2022年8月26日発売

マシーン・ヘッド

『オブ・キングダム・アンド・クラウン』

CD

【CD収録曲】

  1. スローター・ザ・マーター
  2. チョーク・オン・ザ・アッシェズ・オブ・ユア・ヘイト
  3. ビカム・ザ・ファイアーストーム
  4. オーヴァードーズ
  5. マイ・ハンズ・アー・エンプティー
  6. アンハロウド
  7. アシミレイト
  8. キル・ザイ・エネミーズ
  9. ノー・ゴッズ、ノー・マスターズ
  10. ブラッドショット
  11. ロッテン
  12. ターミナス
  13. アローズ・イン・ワーズ・フロム・ザ・スカイ
  14. エクステロセプション [ボーナストラック]
  15. アローズ・イン・ワーズ・フロム・ザ・スカイ(アコースティック) [ボーナストラック]

 

【メンバー】
ロブ・フリン(ヴォーカル/ギター)
ジャレッド・マクエイカーン(ベース/ヴォーカル)
ヴァツワフ “ヴォッグ” キルティカ(ギター)
マット・アルストン(ドラムス)