エンジニア・プロデューサーとしても八面六臂の活躍を見せるピーター・テクレン。インダストリアル・メタル・バンド、ペインやラムシュタインのティル・リンデマンとのプロジェクトでも大活躍。そんなピーター率いるヒポクリシーが、8年ぶりのニュー・アルバム『ワーシップ』をリリースするということで、色々と話を聞いてみた。
ー ニュー・アルバム『ワーシップ』がリリースになります。前作から8年と、バンド史上最長の時間がかかっていますね。
ピーター:そうなんだよ。確かに長いブレイクになってしまったのだけど、2019年までずっとツアーもしていたしね。ペインのアルバムを作ったり、リンデマンのアルバムを作ったり、さらにこれら3バンドのツアーもあって。ヒポクリシーのアルバムは少々待たなくてはならなかったんだ。忙しくてあっという間に8年経ってしまったのさ(笑)。
ー 過去の作品と比べてどのような点が進歩していると言えますか。
ピーター:間違いなくプロダクションがずっと改良されている。それに曲も良くなっているし、歌詞もより興味深いものになっているよ。ヒポクリシーとして新しいスタイルを発明しようみたいなつもりはまったくなくて、ただ単にもっと良い曲を、良い歌詞を書いて、さらにビッグなプロダクションにしたかっただけなんだ。
ー 歌詞のテーマはどのようなものなのでしょうか。
ピーター:特にテーマなどは無くて、俺が世界をどう見ているかについて書いている。金を横領している政府のような欲深い奴らについてもあるし、タイトル曲はカバーに描かれている通り、宇宙人が地球に俺たちを回収しに戻って来ること(笑)。俺たちが犯してきた数々の悪事について審判を下すためにね。俺の個人的な考え方、地球での生活や地球外についてとか。あのアートワークのアイデアはずっと持っていて、それをスケッチにして、まあ酷い出来だったけれど(笑)、その俺のヴィジョンをアートワークにできるアーティストに送ったんだ。6万年以上前に俺たちはこの地球に種としてまかれた。マヤの文明はどんどんと発達していったけれど、ある時突然消えてしまった。何の痕跡も無くね。とても奇妙なことさ。石器時代から考えると、ここ150年ー200年の文明の進歩の速さはただ事ではないよね。これはDNAの書き換えと関係があるに違いない。それが発動するまでに、たくさんの世代が必要だったけれど。俺たちを作った奴らは、俺たちに過度に賢くなって欲しくはないんだ。あまりに文明が発達すると、人類は宇宙に進出することになる。彼らはそれを望んでいないんだよ。人類はあまりに自己破壊的だからね。これが俺の持っているセオリーの一つさ。
ー いわゆる古代宇宙飛行士説のようなものでしょうか。シュメール文明などに見られる、宇宙人が地球に飛来してきて、という。
ピーター:そうそう、そんな感じ。俺はこのセオリーをずっと持っていて、というのも世界中にピラミッドがあるだろ。水中にも。あれはエネルギーの補給場所なんだと思っている。何故かはわからないけれど、ずっとそう思っているんだ。ピラミッドがああいう形をしているのは、あれがある種にエネルギー・フィールドだからなんじゃないかな。
ー 「ケミカル・ホア」などは、コロナのワクチンについてのように読めるのですが。
ピーター:いや、あれはコロナ前に書かれたものだから、そうじゃない。俺たちは一生薬を飲み続けるということ。気分が高揚するから薬を飲む。落ち込んでいるから薬を飲む。製薬業界はとにかく俺たちに薬を飲ませようとする。それで儲かる訳だからね。俺たちの感覚は麻痺してしまっているんだ。誰もそれに異を唱えようとはしない。みんな薬でハイになったり、気分を落ち着けたりしているから。本当に必要なのかもわからない薬でね。ただもっと薬が必要というだけ。この曲は、製薬業界というのは巨大でメチャクチャなものだということさ。
ー 「ブラザーフード・オブ・サーペント」では、「人口を減らせ、200万人に注射しろ」という歌詞が出て来ます。
ピーター:これはコロナの話に近いものだよ。奴らは世界の人口を減らしたがっているんだ。80億人から5億人にね。ただ、これもコロナの前に書いたもの。人口を減らそうとしていることについては、以前から歌っているよ。これも俺が長い間考えているセオリーの一つさ。
ー 「バグ・イン・ザ・ネット」は、ヒル夫妻がUFOに遭遇した事件についてですよね。
ピーター:その通り!あれは有名になったUFOによるアブダクションの最初のケースの一つだよね。あれが有名になった理由の一つは、夫がアフリカ系の黒人で、奥さんが白人だったからというのもあるんだ。60年代当時はまだまだ人種についての問題は悪夢のようなものだったから。バーニーはインタビューの中で、「まるで網の中の虫のようだった」と答えているんだ。逃げることもできず、何が起こっているかもわからなかったのさ。このケースはとても興味深くて、これ以前にはUFOにさらわれたなんて言う人はほとんどいなかった。軍事基地ではそういう話もあっただろうけれど、それはまた別の話。とても興味深くて調べているととても面白いケースなんだよ。96年に「Roswell 47」という曲を書いて、当時はロズウェルのことなんて誰も知らなかったけれど、今では有名だよね。ただの俺の考え方、イマジネーションで、そこに俺なりのひねりを加えているのさ。
ー UFOや宇宙人について、あなたの個人的見解はどんなものですか。アメリカ政府は近々宇宙人に関する情報を発表するんじゃないかなどと言われていますが。UFOや宇宙人は存在すると思いますか。
ピーター:俺の個人的な考えは、世界のいかなる政府も、そうするしかないという状況にならない限り、一切の情報は明かさないと思う。今ではUFOはUAPと呼ばれているけれど、彼らはずっとUFOの存在を否定してきたから、名前を変えたのさ。「そうだね、何かは存在するよ。だけどそれはUFOじゃない」って言うために。同じものの呼称を変えただけなのに(笑)。長い月日の間に、いろんなものがやって来て去っていったことは間違いないと思うよ。それに宇宙には、間違いなく至るところに生命が存在していると思う。ただ、問題は移動手段なのさ。でも長い時間をかければ、他の次元を通ってとかで行けるのかもしれない。
ー そもそもヘヴィな音楽にハマったきっかけは何だったのでしょう。
ピーター:うーん、70年代、子供の頃から歪んだギターを使った音楽を色々と聴いていたよ。スウィート、スレイド、キッス、レッド・ツェッペリン。俺はビートルズとか、60年代や50年代の音楽も聴いて育った。エディ・コクランやエルヴィス・プレスリーとか。俺にとってはすべてがロックンロールなんだ。ただ時代によって呼び方が変わるだけで。俺にとってはデス・メタルもロックンロールなのさ。
ー では、スラッシュやデス・メタルのようなエクストリームなものにハマったきっかけは何だったのですか。
ピーター:81年にヴェノムの『Welcome to Hell』が出て、「何なんだこれは!」って思った。パンキッシュでデンジャラスでクレイジーで。それ以降80年代は、どんどん音楽が過激化していった。ヘルハマーにポゼスト。それで俺もどんどん過激なものを聴くようになっていって、メタリカやスレイヤーが出て来て。当時13-14歳くらいで、それでこういう音楽をやりたいと思ってね。
ー 80年代アメリカに住んでいたそうですが。
ピーター:当時つきあっていたガールフレンドが、アメリカでの仕事をオファーされてね。ベビーシッターのような仕事。それでどういう訳か、俺も一緒に行くようにと説得されて(笑)。それで俺も行って、最初の頃はその家族のために食品の買い出しや草刈り、洗車とか、できることを色々とやっていたのだけど、いい加減ウンザリしてね。俺自身の道を歩き始めた。彼女は結局9ヶ月で帰ってしまったのだけど、俺は3年間アメリカにいたよ。とても楽しかったし、素晴らしい時間を過ごせた。俺もまだ18歳で、違う国を見るのも興味深かった。当時ちょうどアメリカではデス・メタルも盛り上がっていたし。まあ世界的にだけれど。フロリダのデス・メタルとか、色々コンサートも見に行った。後にアルバムを出すことになるバンドのデモ時代でね。ドラマチックに変化が起こっている時代だったのさ。だから、スウェーデンに帰ってきた時に、自分が何をやりたいのか明確にわかっていたよ。
ー ヒポクリシーを始めた頃は、具体的にどんなバンドからの影響が大きかったのですか。
ピーター:モービッド・エンジェルのファースト・アルバム。ディーサイドのファースト・アルバム。エントゥームドのファースト・アルバム。このあたりから、ヒポクリシーのソングライターとして、大きな影響を受けた。最初の何枚かのアルバムでは特にね。
ー その後よりメロディックな方向に進みますが、これは何かきっかけがあったのでしょうか。
ピーター:うーん、それはわからないな。体の中のヴァイヴレーションやフィーリングと関係あるのだと思う。聴くトーンによって、体の反応は違うからね。俺の場合はメランコリックなメロディーを書くことが、自分の旅なんだと思う。それが一番快適に感じられるから。だから、それを続けているんだよ。
ー では現在のヒポクリシーはいかがでしょう。ヘヴィメタル以外からの影響もありますか。
ピーター:俺はヒポクリシーについてはヒポクリシーのままにしておきたいんだ。新しいことをやって、俺たちらしくないサウンドにしたくはない。自分たちのサウンドを見つけるのに、15年ー20年かかったからね。ヒポクリシーみたいなサウンドのバンドは多くない。それが良いにしても悪いにしても、そんなことは俺にはどうでもいいんだ。俺たちにはユニークなスタイルがある。30年かけて作ってきたサウンドさ。さっきも言ったように、俺のヴィジョンはもっと良い曲、もっと良いサウンド、もっと良い歌詞にすることさ。
ー 確かにあなたの書くメロディーやハーモニーは他のバンドとは違ったものですよね。
ピーター:音楽の捉え方というのは人によって違うものだから。俺はメロディを波やヴァイヴレーションとして見ているけれど、人それぞれメロディの捉え方というものがあって、それぞれのメロディの書き方があるのさ。有名なミュージシャンというのは、他の多くの人と近い感じ方をしているということ。それは感情で、サウンド、メロディ、リズムというのは、体の中にあるヴァイヴレーションなのさ。
ー つまり音楽理論などは使っていないということですか。
ピーター:使っていない。あれは俺のメロディだよ。レッスンを受けたこともないし、音楽理論は知らないけど、自分が何を好きなのかはわかっているし、俺が作ろうとしているのはそういうものさ。学校に通ってきちんとした教育を受けて、なぜそれがそういうサウンドになるのかを理解しているミュージシャンは多いけれど、俺はそういうものには興味がなくて、ただ自分の体の中にあるものを取り出したいだけなんだ。
ー 今でもヒポクリシーはデス・メタル・バンドだと思いますか。
ピーター:いや、最初の2枚のアルバムのあと、94年の『The Fourth Dimension』で、デス・メタル以上のものになったと思う。ドゥームやゴシックの要素もあるし、速いしブルータルだし、スラッシュやデスもある。俺にとっては、さまざまな要素を持った良い曲でしかない。
ー それでも無理矢理にカテゴライズするとどうでしょう。
ピーター:まあニューアルバムに関して言えば、ヘヴィメタルというよりはデス・メタルだろうね。自分たちのやっていることを描写するのは難しいよ。自分でも何をやっているのかよくわからないんだ。こういう曲やメロディを書きたいという欲求やフィーリングから作っているからね。説明するのは難しいんだ。
ー バンド名を「ヒポクリシー」(=偽善)としたのは何故なのですか。
ピーター:実は「ヒポクリシー」というバンド名を考えたのは、俺じゃないんだ。俺はSeditiousというバンド名でやっていて、アルバムの契約をとろうとすべての楽器を自分で演奏してデモを作っていたのだけど、自分のヴォーカルが最悪だと思ってね。それで知り合いがデス・メタル・バンドをやっている友達がいるということで、近所に住んでいる奴だったので、スタジオに来て歌ってもらったんだ。それが最初のシンガー、マッセ。とても良いヴォーカルで、それでデモが完成して、レーベルに送って。結局ディールを獲得したのだけど、マッセが「バンド名はSeditiousじゃなくてヒポクリシーの方がいいんじゃないか」って。俺もそう思ってね。だから、あれこれ考えてこの名前を選んだ訳ではなかったんだ。今ではグーグルで「ヒポクリシー」と検索してみると、凄まじい結果だよね(笑)。政治家がずらっと出て来て、今の世の中には本当に偽善が横行している。「ヒポクリシー」という単語は、今世界で一番検索されている単語の一つなんじゃないかな(笑)。残念なことだけど。
ー 今後の予定はどうなっていますか。コロナでなかなかツアーも難しいと思うのですが。
ピーター:実はこの10月、11月もツアーの予定だったのだけど、アナウンスもしなかった。無理なのがわかっていたから。来年はアメリカをツアーする予定だけど、こんな状態だからどうなるかわからない。秋にはヨーロッパもツアーしたいし、オーストラリア、ニュージーランド、日本にも行きたい。南米もね。他のプロジェクトに手をつける前に、世界を一回りはしたいね。
ー コロナ後のメタル・シーンはどうなっていると思いますか。
ピーター:それが音楽のスタイルと関係があるかはわからないけれど、例えばアメリカでは夏の終わりからツアーが再開され始めていて、それで感染が急増しているのかはわからないけれど、大統領がワクチンを推奨していて、スポーツや音楽の大人数が集まるイベントが解禁されたら、どうなるのかはわからないな。ヨーロッパはもっとゆっくりでもっと警戒しているようで、完全にすべてが解禁になるまでにどのくらいかかるのかはわからない。ここ数日オーストラリアの媒体ともインタビューをしているのだけど、オーストラリアの状況は本当におかしいよ。政府が人々を脅していて。まるで1942年のドイツに逆戻りしているかのようさ。恐ろしいことだけれど、こういうクソみたいな状況を切り抜けるには、ウィルスが自然に消滅してくれるか、それとも革命の時期なのか、俺にはわからない。
ー あなたはワクチンを打っていますか。それともワクチンには反対ですか。
ピーター:ワクチンには反対しないけれど、俺は打たないよ。少なくとも今はね。何が起こるのか、誰にもわかっていないのだから。とんでもない偽善だよ。通常ワクチンを開発するには、物凄い量のテストをしなくてはならないし、時間もかかるはず。だけど奴らは人の弱みにつけこんで、一儲けしようとしているのさ。今回のパンデミックでも、とんでもない金額を稼いでいるやつらがいるということが重要なんだ。でも今はインターネットがあるおかげで、人々は賢くなってきている。たくさんの情報が得られるからね。一方で、偽情報もたくさんあるから、賢くなって情報をフィルターし、何を信じ、何を信じないかを見極めなくてはいけない。奴らは人々を恐れさせ、奴らの望む通りに人を動かそうとする。「こうしないと死ぬぞ」なんて脅して。世界統一政府、ニュー・ワールド・オーダーというのは人々を恐れさせることで作られようとしているんだ。そうしておけば簡単にことが進むのだから。コロナがただの風邪なのに、人々を最大限恐れさせるためにメチャクチャにしているのか、それとも研究所で故意に作られ、アクシデントで流出してしまったのか、それとも世界の人口を減らすために使われたのかはわからないけれどね。
ー お気に入りのアルバム3枚を教えてください。
ピーター:うーん、難しいな。そうだな、キッスの『Destroyer』は大好き。アルバムのリリースから半年後に買ったのを覚えてる。近所の奴が持っていて、初めて聴いた時は「ワオ!」って思った。いや、違うな『Alive!』を75年に買ったんだ。それでその後『Destroyer』を買ったんだ。あとやっぱりビートルズは俺にとって重要。彼らは本当に才能があるよ。もちろん当時は競争も多くなかったから、好きに曲を書けたということはあるだろうけれど、彼らの想像力、それからジョージ・マーティンのスタジオ・ワーク、ヴィジョンをサウンドにする力は信じられないものさ。一番のお気に入りと言われると『Revolver』か『Magical Mystery Tour』あたりかな。でもすべてのアルバムが素晴らしいので選ぶのは難しいよ。『Sgt. Pepper’s』を選ぶ人は多いだろうけれど、あれよりももう少々良いアルバムはあると思う。あと一枚はどうしよう。困ったな(笑)。
ー エクストリーム・メタルに限定するとどうでしょう。
ピーター:エクストリーム・メタルとなると、やっぱりディーサイドのファーストだよ。あれに敵うものはない。アティチュードもあるし、テンポも凄い。本当に最高だよ。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ピーター:サポートしてくれてありがとう。新しいアルバムも楽しんでもらえるといいな。アルバムを聴いて、歌詞を読んでもらえれば、俺が世界をどう見ているかわかってもらえるかもしれない。俺に同意するかどうか見てみてくれ。ぜひまた日本に行きたいよ。あまり日本には行けていないのだけれど、今は日本とのつながりも強化されたから、もっと頻繁に行けると思う。
文 川嶋未来