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片方マネージャー×ANTHEM 柴田直人

「ナイト・ゲーム2020誕生秘話を語る Vol.2」

                                   

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文:藤井徹貫

連載2回目。ANTHEMのリーダー柴田直人。35年の長きにわたり、マネージャーとして西城秀樹を支えた片方秀幸。二人の知られざる結びつきは約30年。その長い時間がHIDEKI SAIJO with ANTHEM feat. Graham Bonnet「ナイト・ゲーム2020(Night Games)」として結実。前回は、柴田の西城秀樹との思い出が中心だったが、今回は、新作の誕生秘話やレコーディング裏話なども話題に上る。亡き西城秀樹と重鎮グラハム・ボネットの共演を支えた柴田と片方だから知る、奇跡の真相が明かされる。

 

奇跡のトライアングル誕生

 

片方:1981年、グラハムがソロに転向してリリースしたシングル曲が「Night Games」でしたよね。それを聴いたヒデキさんがカバーしようと判断したそうです。で、当時、ヒデキさんの洋楽カバーの日本語詞を手がけることが多かった山本伊織さんに訳詞を、大御所の前田憲男さんに原曲より軽快なアレンジを依頼して…。

 

柴田:先ほどの片方さんのお話だと、ヒデキさんはブラスロックがお好きだったみたいなので、83年の「ナイト・ゲーム」のブラスが入ったアレンジも、ヒデキさんとしては問題なかったでしょうね(笑)。

 

片方:そう思います(笑)。ただ、ハードロックのカバーは、ステージではお馴染みでしたけど、シングルとして発表したのは、初めてだったと思いますから。かなりの英断だったのは確かです。

 

柴田:その「ナイト・ゲーム」をまさか自分が演奏することになるなんて…。

 

片方:僕もこんなにとんとん拍子に進むとは…。きっかけは去年(2019年)の5月でしたよね、アルカトラスの東京公演の楽屋。

 

柴田:突然の再会でしたね。

 

片方:僕は僕で、グラハムの楽屋を訪ねていて。コンサート関係者から「彼はHIDEKI SAIJOのマネージャーだよ」と紹介してもらいました。そのとき、具体的なアイデアはなかったけど、「西城は亡くなりましたが、是非、何かコラボをさせていただけたら光栄です」とお話しさせていただきました。

 

柴田:たまたま僕もそのライブに行っていて、バックステージでグラハムに挨拶したんです。

 

片方:ヒデキさんはもういないけど、そこで西城秀樹・ANTHEM・グラハム・ボネットの奇跡的なトライアングルが生まれたんですよね。奇跡は、狙って起こせるものじゃないから…。ヒデキさんに呼ばれたのかもしれません。

 

柴田:そうかもしれません。

 

片方:そのときは挨拶だけでしたけど、去年の9月でしたか、ネットニュースか何かで、グラハムが脊椎手術をすると知って。手術が成功するといいなと、5月に会ったときのことを何気なく思い出したりしました。で、年が明けてからかな、どうやら手術も成功し、体調も順調に回復しているから、来日するって噂が耳に入ってきて。そこで思い出したというか、格好良く言えば、ひらめきました。あ、そうだった、ヒデキさんが「ナイト・ゲーム」を新しく歌った、未発表テイクがあった!って。

 

柴田:これは本邦初公開ですか?

 

片方:はい。門外不出でした(笑)。2000年代中盤に録ってあったヴォーカルです。

 

柴田:で、僕に連絡がきたわけですね(笑)。

 

片方:「ANTHEMとして参加してもらえますか?」って。

 

柴田:もう即答でしたね、「是非」と。

 

片方:だけど、僕はグラハムの連絡先を知らない(笑)。

 

柴田:だから、僕のネットワークでグラハムにオファーしたら、快諾してくれて。ちなみにヒデキさんとグラハムの面識は?

 

片方:2度ほど、直接会っています。1回目は、ヒデキさんが司会をしていたテレビ番組『モーニングサラダ』にグラハムがゲスト出演してくれて。アルカトラスでのコンサートで来日していたときです。もう1回は、FM誌で対談しました。

 

柴田:きっとグラハムもそれを覚えていたし、ヒデキさんの「ナイト・ゲーム」のことも記憶にあったから、快諾してくれたんでしょうね。

 

Produced by HIDEKI SAIJO

 

片方:柴田さんはグラハムとは20年来のお付き合いですが、実際はどういう人柄ですか?

 

柴田:片方さんが触れた、あのままですよ。基本的には周囲にストレスを与えたり、プレッシャーをかけたりする人ではありません。ただし、スタジオに入って、マイクの前に立つと、空気が変わります。一気にもの凄いエネルギーを放出する。今回の「ナイト・ゲーム2020」のコーラス録りでもまさにそうでしたよね。

 

片方:そうでした。ANTHEMの演奏やアレンジも、グラハムの入魂を引き出した大きな要素だったと思います。しかも、柴田さんとグラハムは旧知の仲なので、柴田さんの存在が安心材料にもなっただろうし。初対面の座組だと、歌になかなか集中できないこともあるだろうけど…。

 

柴田:僕にとっては、ヘッドホンから聴こえてくるヒデキさんのヴォーカルにあわせて演奏できるなんて、本当に奇跡的な体験でした。演奏は、バンドで一緒にスタジオに入って、せーのドン!でやる、いわゆる一発録り。

 

片方:スタジオ・ライブですよね。

 

柴田:はい。それにコーラスなど最小限に重ねて。もちろんもっと複雑なアレンジもやろうと思えばできましたけど、ヒデキさんのヴォーカルを活かす最善策を考えたら、今回のようなレコーディングだと思いました。テンポもキーもヒデキさんのヴォーカルに合わせ、ヒデキさんの歌を聴きながらプレイしたわけですが、僕のヘッドホーンの中は、ヒデキさんの声がかなり大きくなっていましたよ(笑)。

 

片方:そうだったんですか?

 

柴田:野球部の練習が終わって、家に帰り、風呂に入ってから、「チャンスは一度」を歌っていた、中学生の僕に教えてやりたかったです(笑)。君、やがて西城秀樹さんの歌に合わせてレコーディングで演奏することになるよって。本当に楽しい時間でした。六本木でユーライア・ヒープの話をさせてもらったこと、新宿厚生年金会館でのライブのこと、いろいろな思い出が甦りました。もしもヒデキさんがスタジオにいらしたら、「柴田君、ベース、もう1回弾いてくれないかな?」と言われるかなぁとか(笑)。

 

片方:ベースには、特にシビアでしたから(笑)。

 

柴田:グラハムとANTHEMの関係にしても、2000年にANTHEMの曲を英語詞で彼に歌ってもらったアルバム『HEAVY METAL ANTHEM』がなければ、今のANTHEMはなかったし。昔ANTHEMが事務所を立ち上げなければ、片方さんと知り合うこともなったし。もしも片方さんがいなければ、ヒデキさんとのつながりもなった。いろいろな縁がつながった結果ですね、今回の「ナイト・ゲーム2020」は。

 

片方:やはり奇跡です。今回の「ナイト・ゲーム2020」のプロデューサー名は、僭越ですが、僕の名前がクレジットされていますが、本当なら、この縁をつなげてくれた人の名前でも良かったと思っています。Produced by HIDEKI SAIJO.きっとニヤニヤ笑いながら、空の上で聴いてくれていると思います。

 

 

文 藤井徹貫

 

 

 

2020年6月1日発売

HIDEKI SAIJO with ANTHEM feat. Graham Bonnet

『ナイト・ゲーム2020』

 

【収録曲】

  1. ナイト・ゲーム2020 (Night Games) HIDEKI&GRAHAM BONNET Version
  2. ナイト・ゲーム2020 (Night Games) HIDEKI SOLO Version

 

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