ネオクラシカルなテクニカル・ギターソロをフィーチャした劇速スラッシュとでも言うべき独特のスタイルで話題のExmortusが、ニュークリア・ブラストと契約をし、ニュー・アルバムをリリース!ということで、リーダーのコナン(Vo,G)に色々と話を聞いてみた。
ー あなたは33歳とまだお若いですが、エクストリーム・メタルにハマったきっかけは何だったのでしょう。
コナン:両親が80年代に育ったから、CDやLPをたくさん持っていて、それを家でかけていたんだ。それで俺も80年代のロックやプロト・メタルを聴くようになってね。だけど、本物のスラッシュ・メタルとなると、中学、いや高校になるまで聴いていなかったな。当時ちょうどニュー・ウェイヴ・オブ・スラッシュ・メタルのムーブメントがあって、他のキッズもそういうのを聴いていたから。それでスラッシュも聴き始めたのだけど、やっぱり主な理由は親父だよ。親父のアイアン・メイデンやジューダス・プリーストのレコードがきっかけさ。
ー バンドはどのように始めたのですか。
コナン:俺といとこのマリオで始めた。マリオはドラムを叩いていてね。まだ12歳くらいの子供で、それ以来メンバーチェンジはあったけれど、一度も解散はしていないんだ。中学の頃に始めて、友達が入っては去ってを繰り返して。真剣にやり始めたのは、高校の終わり頃かな。2008年頃。つまり答えは2つで、最初はめちゃくちゃにやっていて、その後2008年から真剣にやり始めたのさ(笑)。もともとは俺といとこがメインのメンバーで、2人がバンドのビジョンを持っていたんだ。
ー 初期の頃はどんな音楽をやっていたのでしょう。
コナン:良い質問だね。俺たちの音楽性はかなり変わったというか、ずいぶんと進化してきた。初期の頃は、何と言うのかな、エクストリーム・ブラッケンド・デスといったスタイルだった。少なくともそういうものをやろうとしていた(笑)。メロディック・デス・メタルというか。コープスペイントをしてショウをやることもあったよ。すぐにやめたけど(笑)。その後トラディショナルなヘヴィメタルの影響を取り入れていって、今はもはや何と言っていいのか、ネオクラシカル・ブラッケンド・デス・スラッシュかな(笑)。ともかくいくつかの違ったサウンドを持ったバンドになったのさ。俺たちのやっているのはヘヴィメタルだと言いたいところなのだけど、そう言うとNWOBHMや80年代のトラディショナルなスタイルだと誤解されうるからね。ネオクラシカル・メロディック・デス・スラッシュあたりが一番近い表現かな(笑)。
ー 具体的にはどのようなバンドから影響を受けていると言えますか。
コナン:バンドに関わった全員について集合的に言うと、まあ初期は違うにしても、真剣にやるようになってからは、誰もがさっき挙げたような、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト・オジー・オズボーン、ブラック・サバス、スコーピオンズ、ヴァン・ヘイレンなんかが好きだった。70年代終わりから80年代のバンドが好きなんだよ。ツアーに出ると、いつもこういうのを爆音でかけている(笑)。こういうアーティストを聴いたり、ライヴのビデオを見たりすると、とてもインスピレーションを受ける。滲み出るあのエネルギー、情熱。あれを再現したいんだよ。もちろんモダンなエッジを加えてね。それからディープ・パープルも。リッチー・ブラックモア。ジョン・ロードからの影響も大きい。確かにロックではるけれど、彼のキーボードにはクラシカルなパートもあるだろう?
ー エクストリーム・メタルに関してはいかがでしょう。
コナン:俺はもともとロックが好きだったから、なかなかエクストリームなものは聴けなかった。最初に気に入ったのは、確かイモータルだったと思う。というのも、アバスが古い音楽を好きなのは明らかだからね。彼のリフにも現れているだろう?最初に気に入ったのは、『At the Heart of Winter』で、あれにもクラシックなメタルのリフが入っていた。少々エクストリームなサウンドになってはいるけれど。それからディセクション。あのメロディックなプレイには、ダークだけれど、80年代のメタルの名残りがある。ベヒーモスにはデス・メタルに引き込まれたよ。エクストリーム・メタルを聴くようになったのは、この3バンドのおかげかな。
ー バンド名をExmortusとしたのは何故ですか。これはどのような意味なのでしょう。
コナン:良い質問だね。これはめちゃくちゃなラテン語なんだ(笑)。完全に間違っている。実際は「Exmorte」でなくちゃいけない。今の時代、誰も気にしないだろうけど(笑)。これは、『死霊のはらわた2』からとったんだ。オープニングで、「Necronomicon Ex-Mortis」と書かれた本が出てくる。俺とマリオはずっとホラー映画が好きで、バンド名として、これがふさわしいと思ったんだ。だけど、他に2つも「Exmortis」というバンドがいることがわかったので、「Exmortus」に変えたんだよ(笑)。
ー ニュー・アルバム『Necrophony』がリリースになりますが、これは過去の作品とくらべてどのような内容になっていると言えるでしょう。
コナン:Prosthetic Records時代の作品の批評では、いつも同じようなサウンドだと言われてきた。いつも同じようなアイデアで、確かにそれは俺もわかる。実際にそういうことをやろうとしてきたからね。それを人々が気に入ってくれるにしても、そうでないにしても、言いたいことはわかるよ。今回は、聴いてもらえればすぐにわかるように、サウンドの別の面を押し進めることにした。以前のような剣、魔法、壮大な戦闘、ファンタジーみたいな、俺たちが知られて来たものとは反対のもの。つまり変化があったということ。と言っても大袈裟な変化ではなく、メタリカの80年代から90年代への変化みたいな感じ(笑)。今回新たにニュークリア・ブラストとも契約をしたし。ニュークリア・ブラストには、俺たちのお気に入りのエクストリーム・メタル・バンドがたくさんいるからね。彼らの一員になれるように頑張ったんだよ(笑)。歌詞についてもそう。今回はもっと内省的で、ヒロイックなものではない。俺たち誰もが実生活で経験するようなこと。今回のアルバムには、確実によりダークなトーンがあって、パンデミック期を反映していると言える。俺たちの心の中の暗い部分を強調した作品だよ。
ー 前作から5年と、バンド史上最長のギャップとなっていますが。
コナン:もともとは20年に新しいアルバムを作ってリリースする予定だったのだけどね。コロナの最初の波がやって来て。正直「もう終わりだ。コロナが収まっても、ライフスタイルが変わってしまい、今までみたいに活動することはできないな」なんていう感じで、気持ちが沈んでしまった。キャリアの終わりだと思って、とてもネガティヴなマインドセットになってしまった。そのうちに西海岸を何ヵ所か回る小さなツアーのオファーがあって、とりあえずそれをやってみようと。それで元気を取り戻して、とりあえずアルバムを仕上げて、レコーディングを済ませて、生活が普通に戻った時に備えようという気持ちになったんだ。そうやって復活した訳だけれど、時間はかかってしまったね(笑)。でも、それも良かったかもしれない。そのおかげで音楽性が少々変わった訳だから。俺たちにも変化が必要だったんだ。ファンにとっての、そして俺たち自身にとっての新鮮な空気がね。
ー 今作から新ドラマーのエイドリアンが、まあ加入したのは5年前ですが、彼がアルバムで叩くのは今回が初ですよね。
コナン:そうなんだよ。彼は『The Sound of Steel』のレコーディング直後に加入したから、今回が初の参加アルバムということになるのだけど、すでに5年もバンドにいる訳だからね(笑)。彼は素晴らしいドラマーで、何と言うか、とてもバランスに優れいてる。とてもクリエイティヴで、さまざまなアイデアを持っているから助かるよ。俺は自分自身をバンドのメイン・コンポーザーだと考えているのだけれど、「俺に従えないから出て行け」なんていうタイプではない。今回はバンド全体がさらに貢献してくれた。以前は俺といとこのマリオがほぼすべての曲を書いていたのだけれど、今はみんなが助けてくれる。おかげでもっとバンドらしく感じられるよ。1人よりも4人で作った方が、ずっとカラフルでバランスがとれたものになるから。
ー 『Necrophony』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょう。
コナン:何だったかな(笑)。このタイトルを思いついた時のことを思い出そうとしているのだけど(笑)。ずいぶん前に思いついたのだけど、使っていなかったんだ。『Slave to the Sword』の直後に、と言うか、俺たちは今後リリースするアルバムのタイトルを書き溜めているんだよ。マリオは色々なタイトルを思いついてね。このタイトルは以前からあったのだけど、それにふさわしいサウンドが見つけられていなかった。だけど、今回初めてダークで、シンフォニックなエッジを持った恐ろしいサウンドになったからね。これこそがピッタリのタイトルだと思ったんだ。これこそ「死者のシンフォニー」だって。みんなの頭の中に死というものがある時期に書かれたものだから。完璧なタイミングだったんだ。
ー アートワークも明らかにタイトルを絵にしたものですが、アーティストには何か具体的な指示を出したのですか。
コナン:あまり何も言わなかったなあ。『Necrophony』というタイトルを伝えて、好きにやってくれと(笑)。面白いことに、彼は4人のゾンビ・ミュージシャンを描いていて、これがバンドを反映しているようでさ。指揮者は俺、チェリストはベーシスト、ヴァイオリニストはもう1人のギタリスト、オルガンはパーカッシヴな楽器だからドラマー。特に何も伝えなかったのに、とてもポイントを突いたアートワークにしてくれたんだ。
ー 歌詞の内容はどのようなものでしょうか。コンセプト・アルバムではないのですよね。
コナン:ストーリーがあるようなコンセプト・アルバムではないけれど、死というコンセプトがあって、それをさまざまな角度から提示している。不死身といったものも含めてね。ネガティブなものからポジティヴな、まあポジティヴとは言えないけれど。例えば「Children of the Night」は、古いドラキュラ映画からインスパイアされたもの。この曲では、不死の存在へと変容し、最初は恐れていたものの、最終的にはそれを楽しむ様子が描かれている。「Oath Breaker」はJ.R.R.トールキンの『王の帰還』にインスパイアされた。ここに出てくる不死身の軍団自身は、死を望んでいるんだ。このように、異なった哲学に触れているよ。違った見方、違ったシチュエーション。だけれど、死が包括的テーマになっている。死者のシンフォニーさ。
ー 今回もプロデュース、エンジニアリングをザック・オーレンが手がけています。
コナン:彼のことは、もう1人のバンドメンバーだと思っているよ。音楽の好みも同じだから、俺たちが求めるものがわかっているんだ。ソロを考えるためにギターを弾いていると、「今のはいいんじゃないか?もう一回弾いてみて」みたいな感じで、手助けをしてくれる。俺たちの音楽性を変えるようなことはしないけれど、正しいテイクを選んだり、「それをもう一回やってみて」、「こうやってみたら?」みたいに、俺たちから何を引き出せるかわかっているんだよ。彼とは長いつきあいで、彼といるととてもくつろげる。素晴らしい耳を持っている偉大なエンジニアだよ。
ー ギタリストのチェイスはWarbringerのメンバーですし、あなたは彼らのライヴのヘルプもやっています。両者は非常に近い関係にあるようですね。
コナン:そう、彼らとは長い間親しくしているよ。俺がライヴの手伝いをするずっと前から、一緒にライヴをしたりツアーをしたり。家族みたいなものさ。
ー オールタイムのお気に入りのアルバムを3枚教えてください。
コナン:オー、ワオ!良い質問だな。オールタイムか。まず間違いなく、まあこれはついこの間も聴いたのだけど、『The Dark Side of the Moon』は入れなくちゃいけない。普遍的で時代を超越したアルバムさ。アルバムの冒頭から最後まで、聴いたものを変えてしまう。何度聴き返しても素晴らしいよ。あと2枚か。どうしよう。大きな影響を受けたという意味では、『Blizzard of Ozz』かな。子供の頃に聴いて、完全に人生を変えられた。特にランディがやっていたクラシックの要素がね。3枚目はやっぱり『Powerslave』かな。あれは素晴らしいアルバムだよ。ライヴではプレイされないディープな曲も含めてすべて好き。他にも素晴らしいアルバムはたくさんあるけれど、とりあえずこの3枚かな。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
コナン:日本にはまだ行ったことがないのだけれど、ぜひ行ってみたいな。特にバンドでね。俺たちの音楽を聴きたいと思う人がいるところには、ぜひとも行きたいんだ。来年にでも、ぜひ君たちの美しい国に行って、みんなとロックしたいな。
文 川嶋未来