ベルギーが誇るスピード・メタル・マスター、イーヴル・インヴェイダーズがサード・アルバム『シャタリング・リフレクション』をリリース!ということで、ギター・ヴォーカル担当のジョーに話を聞いてみた。
ー コロナの状況はいかがですか。
ジョー:クソみたいな状況だったよ(笑)。去年はロックダウンもあったけれど、今は大分普通になってきている。おそらく夏のフェスもあるんじゃないかな。
ー バンド内で感染したメンバーはいますか。
ジョー:実はマックスは陽性判定をされたのだけど、別に症状は出なかったんだ。
ー それは良かったですね。ではインタビューを始めましょう。ニュー・アルバム『シャタリング・リフレクション』がリリースになります。前作から5年と、今まで一番長い時間をかけています。
ジョー:セカンド・アルバムをレコーディングした後、ツアーをしまくっていたからね。それに俺たちは、仕事もしているから、なかなか曲作りをする時間を見つけられなかったのさ(笑)。ライヴをやらない時に家でデモを作っているのだけど、パンデミックが始まった時に、「これで曲作りに専念できるぞ」ということになったんだ。それで、それまでに録り溜めてあったデモを全部聞き直してね。全部で20曲くらいあったかな。そこからベストなものを取り出して、曲にしていったんだ。
ー 個人的に今回のアルバムは非常にヘヴィメタル寄りだと感じたのですが、特に前作と比べてどのようなアルバムになっていると言えるでしょう。
ジョー:以前よりもメロディックでキャッチーになっていると思う。曲のクオリティも上がっているし。もちろん演奏しているのは俺たちだし、今でもイーヴル・インヴェイダーズらしいサウンドだけれども、曲作りに関しては間違いなく新たなレヴェルに達していると言える。それから俺のヴォーカル・パフォーマンスもね。随分と時間をかけたから。レコードを聴いてもらえればわかると思う。曲作り、サウンド・プロダクション、その他すべてのものがレヴェル・アップしている。ファーストからセカンドへもステップ・アップしたけれど、今回も同じくらいのステップ・アップがあるよ。
ー 以前ヴォーカルのレッスンを受けているというお話でしたが、今でもレッスンは続けているのですか。
ジョー:以前ほど頻繁にはやっていないんだ。と言うのも、自分のやりたいことはたいていやれるレヴェルに達したから。間違いなくレッスンを受けたかいはあったよ。
ー パンデミック中のレコーディングはいかがでしたか。やりやすい、やりにくい等ありましたでしょうか。
ジョー:レコーディングのプロセス自体は、大きな違いはなかった。いつも家でギターを録音して、ドラムとミックスをスタジオでやるだけだから。ヴォーカルも家で録るし。スタジオだと時間の制限があるからね。なるべく家でやるようにしているんだ。
ー 今回よりメロディックな方向性をとるにあたって、何か新しい影響というのはあったのでしょうか。
ジョー:そうだな、『Feed Me Violence』の頃から、ヘヴィメタルの影響をより受けるようになってきている。まあ、特に新しい影響というのはなくて、ただミュージシャン、ソングライターとして成長しているだけだと思うよ。
ー では、もっとヘヴィメタルっぽくしようとか、メロディックにしようというのは意図した結果だったのでしょうか。
ジョー:いや、自然とそうなっただけ。というのも過去には頭の中に良いヴォーカル・メロディが浮かんでも、それを歌いこなすスキルがなかったりもした。今回はパンデミックで時間もあったし、とにかく曲作りに時間をかけて、ベストなものを作ろうという感じだった。ヴォーカルもメロディも、思ったように歌えるまで練習する時間をとることができたしね。レコードを聴いてもらえればわかるよ(笑)。
ー なるほど。あなたのヴォーカル・スキルが上がったことで、音楽性にも変化が起こったと言えますね。
ジョー:より良いメロディを歌えるようになったことで、ヘヴィメタルからの影響が顕著になったということはあるだろうね。バッキングがスラッシュ・メタルでも、俺がメロディックに歌えば、よりヘヴィメタルのヴァイブが出るだろうから。
ー あなたの言うヘヴィメタルというのは、どのあたりのバンドのことでしょう。
ジョー:俺個人的にはサヴァタージ、マーシフル・フェイト、クリムゾン・グローリーとか。もちろんジューダス・プリーストやアイアン・メイデンも。
ー 今回はフレッシュゴッド・アポカリプスのフランチェスコ・パオリとフランチェスコ・フェリーニがプロデュースを担当しています。
ジョー:実は俺たちのマネージャーが彼らに連絡をとったんだ。「彼らに電話してみてはどうだい。力になってくれるかもしれないよ」って。電話をしてみたら、すぐにこれだと思った。実は、正直最初は懐疑的だったんだ。俺はフレッシュゴッド・アポカリプスのようなテクニカルな音楽が好きではないから。だけど、彼らは俺たちが求めているサウンドや曲の書き方を完璧に理解してくれた。それで実際に会うのではなく、Skypeで話をして。とても良かったよ。デモを送って、彼らが調整や提案をしてくれた。
ー 調整や提案というのは具体的にはどういうことですか。
ジョー:アレンジのクールなアイデアを提案してくれたし、リフをスピードアップしたり、スローダウンしたり。クリックに合わせてデモを作ると、なかなかライヴのヴァイブが出なかったりもする。家でレコーディングすると難しいんだ。ところが彼はクリックのスピードをだんだんと下げて行ったり、そういうことがとてもうまいんだよ。
ー 外部のプロデューサーを立てたのは今回が初めてですよね。自分の考えを曲げなくてはいけないみたいな難しさはありませんでしたか。
ジョー:むしろ外部の人に意見をしてもらえるというのは良かったよ。自分の曲を客観的に聴くのは難しいからね。「この曲はこうでないと」と思い込んでしまって、他の可能性を見逃してしまうかもしれない。マックスと俺で、「いやここは2回繰り返すべきだ」「いや、一回の方がいい」なんていう話し合いになることもあるけれど、外部に意見してくれる人がいれば、こうこうこういう訳で、こっちの意見に賛成だなんて言ってもらえるし。
ー 『シャタリング・リフレクション』というタイトルは、何を表現しているのでしょう。
ジョー:実はアートワークの方が先にあったんだ。それでタイトルはどうしようかと考えていて、アートワークを見て「シャタリング・リフレクション(=鏡に映った像を粉々にする)」というのを思いついた。一方で、”reflection”という単語には、「思考」という意味もあるから、このタイトルは「内なるトラウマ」という風に解釈することもできる。自分のパーソナリティというものを粉々に壊してしまう記憶というような意味。そういうダブル・ミーニングさ。
ー 通常はタイトルがあって、そこからアートワークを考えますよね。このアートワークはどのように思いついたのですか。
ジョー:ロゴが鏡を突き破っているアートワークのアイデアは、ずっと前から持っていたんだ。クールなイメージだろ?俺たちはそういうアイデアを色々思いつくんだ。それに割れた鏡というのは不幸の前兆ともされるし。そのアイデアと、拷問器具がある工場のイメージを合体させたんだ。工場のイメージというのは、ヴィデオ・クリップでも使用した。
ー 歌詞のテーマはどのようなものですか。個人的な体験に基づいたものが多いように思えますが。
ジョー:そうだね、個人的な体験にインスパイアされることは多い。例えば一曲目の「ヒッシング・イン・クレッシェンド」は、眠れなくて気が狂いそうになった時に書いたんだ。ベッドで何度も寝返りを打って、良い体勢を見つけようとして。みんなそういうことってあるよね(笑)。さらに耳鳴りにも襲われていた。蛇がシュウシュウ言うような音で、それがどんどん大きくなってきて、頭がおかしくなりそうだった。それで起き上がって、思ったことを書きつけたんだ。シーツの上で寝返りを打っているのが、蛇に首を締められているような感じで、耳鳴りは蛇がシュウシュウ言っている音。それで不眠を蛇に首を絞められること、蛇の毒、シュウシュウ言う声に例えたんだ。
ー フラストレーションを感じさせる内容も多いですよね。
ジョー:フラストレーションは多いよ(笑)。だけど、例えば「フォーガットン・メモリーズ」は、もともと祖母が痴呆症を患ったことに基づいているんだ。だけど、それをもっと各自が好きに解釈できるような歌詞にした。読んだ人にとっては、まったく別な内容になりうるようなものにね。歌詞を書く時は、あまりにパーソナルなものになりすぎないようにしているけれど、アイデア自体はとてもパーソナルなものに基づいているんだ。
ー 「ザ・サークル」はどのような内容なのでしょう。
ジョー:あれもいくつかの内容があるけれど、一つはカルトのリーダーについて。とてもカリスマ性があって、人を惹きつける力があるけれど、それを自分の利益のために使おうとする。チャールズ・マンソンが人々に犯罪を犯させたみたいにね。もっと微妙な内容、つまりカリスマ性のある人間がバーに入って行って、自分の犠牲者を選び出すみたいな意味でもある。いずれにせよパワープレイや欲望についてさ。
ー 最近はどんな音楽を聴いていますか。やはりヘヴィメタルが多いですか。
ジョー:そうだね。いつも聴いているのは、モーターヘッド、AC/DC、マーシフル・フェイト・サヴァタージ、クリムゾン・グローリー。あとエクソダスもお気に入りの一つ。あとUnto Othersがお気に入り。このバンドは知ってる?元々はIdle Handsというバンド名だったのだけど。
ー Idle Hands時代にアメリカでライヴを見たことがあります。キング・ダイアモンドのオープニングで。
ジョー:それはいいね。裁判になって、今はUnto Othersというバンド名になっているんだよ。
ー 今後の予定を教えてください。ツアー、フェスティヴァルなど予定されていますか。
ジョー:すべてコロナ次第だね。夏のフェスティヴァルの予定もいくつかあるし、デンマーク、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、スペインでプレイする予定さ。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
ジョー:すでにイーヴル・インヴェイダーズを知っているみんな、ニュー・アルバムをチェックしてくれ。また日本に行きたいよ。日本に行くといつも最高に楽しいからね。早く状況が普通に戻るといいな。そうなったらまた日本に行くよ。俺たちのことをまだ知らない人たち、それから前作が気に入らなかった人たちも、新しいアルバムをチェックしてみてくれ。もしかしたら今回は気に入るかもしれないからね(笑)。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- ヒッシング・イン・クレッシェンド
- ダイ・フォー・ミー
- イン・ディーペスト・ブラック
- スレッジハンマー・ジャスティス
- フォーガットン・メモリーズ
- レルム・オブ・シャドウズ
- エターナル・ダークネス
- マイ・ワールド
- イーオン
- ザ・サークル
【メンバー】
ジョー(ヴォーカル/ギター)
マックス・メイヘム(ギター)
ユーリ・ファン・デ・スコット(ベース)
センヌ・ヤコブス(ドラムス)