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オロフ・ヴィクストランド
(エンフォーサー)
独占インタビュー

前回の『Live by Fire』は
もう8年も前に録音されたもので、すでに古いものだし
もっとアップデートされた俺たちのライヴのサウンド
ヴィジュアルを見せたかったんだよ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Cintia Regueiro

スウェーデンが誇るメタル・マニア、オロフ・ヴィクストランド率いるエンフォーサーがライヴ・アルバムをリリース。しかもDVD付きがリリースされるのは日本のみ!ということで、オロフに色々と話を聞いてみた。

 

 

ー ライヴ・アルバム『ライヴ・バイ・ファイアII』がリリースになります。これは、コロナでツアーができないということで制作されたものなのでしょうか。

 

オロフ:いや、そうじゃない。これは1年半も前の2019年の8月にレコーディングされたものなんだ。だから、コロナの以前から計画されていたものさ。それに今回はライヴ・アルバムではなく、もともとライヴ・ヴィデオを制作することが主眼だった。ヴィデオがリリースされるのは日本だけということになったけれど。

 

ー 以前にもライヴ・アルバム『ライヴ・バイ・ファイア』をリリースしていますが、今回の作品とはどんなところが異なっていると言えるでしょう。

 

オロフ:今回はヘッドライナーのショウで75分くらいある。フルショウのフルヴィデオさ。前回のライヴ・アルバムは30分くらいしかなかった。今現在のエンフォーサーがどういうバンドなのかを見せる作品になっている。前回の『Live by Fire』は、もう8年も前に録音されたもので、すでに古いものだし。もっとアップデートされた俺たちのライヴのサウンド、ヴィジュアルを見せたかったんだよ。

 

 

 

ー メキシコでのレコーディングですよね。メキシコでのライヴを作品にしようと決めたのはなぜですか。

 

オロフ:ショウ自体が良かったから。ステージもライトも良くて、何よりヘッドライナーだった。お客さんも多かったし。メキシコのファンは、とても熱狂的なんだよ。だから、この時のショウの様子をリリースするのは良いアイデアだと思ったんだ。

 

― どのくらいのお客さんがいたのでしょう。

 

オロフ:どうだろう、1000人くらいかな。これは俺たちがヘッドライナーのショウにしては、とても多い数字なんだ。

 

ー メキシコのお客さんは、やはりヨーロッパとは違いますか。

 

オロフ:ヨーロッパのファンよりもメタルに入れ込んでいて、それにとても熱狂的なんだ。ヨーロッパのバンドにとって、ラテンアメリカでプレイするというのはとてもスペシャルなことなんだ。

 

ー バンド史上最高のショウだったということですね。

 

オロフ:イエス。間違いなく俺たちのベスト・ライヴの1つだったと言えるよ。

 

ー アートワークはどのように決めたのでしょう。

 

オロフ:あれは実は、俺がインターネットで見つけた写真なんだ。アルバム用に撮影した写真ではなく、本当のライヴ写真なんだよ。撮影した人に連絡して、ライヴ・アルバムのカバーに使っても良いかと尋ねたら、OKとのことだったので。彼はもちろんアルバムのカバーになるなんて考えもせず撮影していたのだけど(笑)。

 

 

― 70年代、80年代のライヴ・アルバムっぽい雰囲気があると思いました。

 

オロフ:俺もそう思ったんだ。

 

― 日本語で「エンフォーサー」と記されていますが。

 

オロフ:あれは日本のファンへのジェスチャーだよ。

 

ー スタジオワークとライヴ、どちらがお好きですか。

 

オロフ:まったく異なる2つのものだね。スタジオではもっとクリエイティヴなことができる。レコーディングだけでなく、曲を書いたりもするしね。ライヴでは、すでに知っている曲、何百回も演奏した曲をプレイするわけだけど、スタジオでは曲を初めて演奏したりするよね。曲のこともまだよく知らず、演奏しながら曲を仕上げていくこともある。だけど曲を完全に覚えてしまえば、色々な解釈もできるようになる。だから、ライヴでプレイする方が好きなんだ。曲をよく知っていれば、ナチュラルに演奏することができるから。

 

― かつては多くのライヴの名盤が生まれましたが、最近はそれが生まれづらい状況になっているという声もあります。あなたのお考えを教えてください。

 

オロフ:うーん、何と言ったら良いかな。俺は80年代のライヴ・アルバムって、実はあまり好きじゃないんだ。俺はライヴ・パフォーマンスを重視するから、マルチカメラで録った素晴らしい映像と、素晴らしい音質があった方が良い。俺たちもそういうものを提供したいと思っている。何というか、ライヴをすべて体験してもらいたいんだよ。特にこのパンデミック下、ショウの最初から最後まで、すべて体験できるようなものをリリースしたかった。多くのバンドのライヴ・アルバム、特に80年代のものは、ただその時最新の曲をプレイしてレコーディングしただけのもの。80年代のライヴ・アルバムの中には、本当のライヴではないものもあるし。

 

― では、お気に入りのライヴ盤というのはありますか。

 

オロフ:どうだろう、若い頃もライヴ盤をあまり聴かなかったけれど、シン・リジーの『Live and Dangerous』は好き。俺にとってはライヴ盤というより、あれがシン・リジーのベスト・アルバムだよ。あの時代のシン・リジーのサウンドを、的確にとらえているからね。あれはずっと聴いているよ。ライヴ・バージョンの曲もとても素晴らしいし。

 

ー ライヴ・ストリーミングについてはどう思いますか。

 

オロフ:それを一番にやったバンドはクールだと思うけれどね。それを一兆番目にやることには、何の意味もない。俺たちはいつもトレンドに逆らってきたバンドで、いつも他のバンドと反対のことをやってきたからね。最初はクールだったけれど。それに、ストリーミングをやるならば、その価値がある何かスペシャルなことをやらなくては仕方がない。俺たちも色々考えてはいたのだけど、結局それで得られる収入よりもコストの方が大きくなってしまって。小さなステージにカメラを何台か入れて、というのでは意味がないから。やるならば何か特別なことをしたい。

 

ー ストリーミングをやるつもりはないということですね。

 

オロフ:ないね。でも、インスタグラムでは、リハーサルの様子をスマホで録画して流したりはしているよ。6000人も見てくれた人がいたこともあるし。そういうのは面白いね。ファンとリアルタイムでつながれて。だけどストリーミングはどうかな。

 

 

 

ー コロナ収束後、音楽業界はどうなっているでしょう。バンドにとってはより厳しい状況になるでしょうか。

 

オロフ:どうだろう、音楽業界というのは常に変わってきたし。例えば、人々はバンドに注意を払う時間がどんどん短くなってきている。フルアルバムを全部聴こうという人は、減ってきているよね。明らかにアルバムを出しても大した露出は得られず、ディジタル・シングル1曲だけ出すのも変わらないなんていう状況。特に今みたいにツアーに出て、アルバムをプロモートするという機会が無いとね。そういう風に音楽業界は変わってきた。

 

― 現在のメタル・シーンについてどう思いますか。良くなっているでしょうか、それとも悪くなっているのでしょうか。

 

オロフ:残念ながら、悪くなっている。色々な意味で。10年前と比べると、ヘヴィメタルのコミュニティはどんどんと小さくなっている。10年前は、もっと色々なことができた。前作の内容については、馬鹿げた批判を色々と受けたよ。みんなが期待するサウンドではなかったからね。2008年〜2010年の頃とは、シーンの状況が変わってきているのさ。当時は何かスペシャルなこともできた。ところが今は、ヘヴィメタルの模倣しか望まれない。クリエイティヴさは求められず、人々はただ月並みなものばかり聞きたがり、そういうものが成功する。他にも、アンダーグラウンドのメタルのファンの多くは、条件反射的にビッグネームの作品だけを買い、新しく出てきたバンドをサポートしようとしないというのもある。古いバンドしか聴かないというのは、とても非生産的だよ。ヘヴィメタルへの大きな関心も無く、メインストリームに興味がある人々は、他の音楽を聴いているし。成功しているバンドは、どれもヘヴィメタルじゃない。

 

― それはスウェーデンでの話ですか。

 

オロフ:いや、世界中の話さ。俺たちは55カ国でプレイしてきたからね。世界中のシーンのことを知っている。

 

ー ヘヴィメタルの未来は明るいものではない?

 

オロフ:明るくないよ。ヘヴィメタル・シーンの未来は明るいものではないけれど、エンフォーサーは過去に十分大きなプラットフォームを築き上げてきたから、今後も継続していけると思う。だけど、今ヘヴィメタル・バンドを始めて、例えば俺たちが今日ファースト・アルバムをリリースしたとしたら、どうにもならないよ。もうそういうトレンドは去ってしまったから。

 

― 若いバンドにとっては厳しい状況ということですね。

 

オロフ:古いタイプのスタイルをプレイしている若いバンドにとっては非常に厳しい状況だよ。もはやトレンディではないから。

 

 

― 最近はどのような音楽を聴いているのでしょう。

 

オロフ:最近のSpotifyのプレイリストを見てみよう。ストレンジウェイズ、イングヴェイ・マルムスティーン、ガンズ・アンド・ローゼズ、エイリアン、ディオ、ジューダス・プリースト、スコーピオンズ、デフ・レパード、バンザイ、レインボー、ホワイトスネイク、ワスプ、クリス・ポーランド、エキサイター、ヴァン・ヘイレン、スレイヤー、Y&T、スコーピオンズ、ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン。こういうのを聴いて育ってきたからね。

 

― 最近のものよりも、やはり昔から聴いてきたものがメインですか。

 

オロフ:そうだね。俺は周期的にヘヴィメタルやハードロックのサブジャンルを聴いている。数年前はブラック・メタルを深掘りする時期があって、それからメロディック・ハードロックをしばらく聴いて、今は70年代のヘヴィメタルを主に聴いているよ。レインボーとか、リッチー・ブラックモア関連のもの。

 

― そもそもヘヴィメタルを聴き始めたきっかけは何だったのでしょう。

 

オロフ:俺が子供の頃は、ヘヴィメタルは至るところでかかっていたんだよ。まだメインストリームだったから。80年代の終わり。幼稚園や小学校ではメタリカのTシャツを着てるやつがいたり、ガンズ・アンド・ローゼズは凄い人気だった。92年に小学校に通い始めたのだけど、みんなメタリカやガンズ・アンド・ローゼズに夢中だった。

 

― そんなに小さいうちからヘヴィメタルを聴いていたのですね。

 

オロフ:そうだよ。MTVでヘヴィメタルもかかっていたからテレビでも見られたしね。メインストリームだったんだよ。もちろん6歳でいきなりアンダーグラウンドのメタルにハマることはないけれど、90年代初めは夜テレビをつければMTVをやっていて、こういうタイプの音楽がかかっていたのさ。

 

― では、アンダーグラウンドなメタルを聴き始めたきっかけは何だったのですか。

 

オロフ:同じバンドを何兆回も聴いていると、新しいものが聴きたくなってくるからね。常に新しいものを聴いてブッとびたいと思っていたよ。その気持ちは今も変わらなくて、あのヴァイブを与えてくれる新しい音楽を今も探している。子供の頃にヘヴィメタルに出会って、それはまるでドラッグだった。音楽に刺激を求めていたのさ(笑)。

 

ー アンダーグラウンドにハマるきっかけとなったバンドは誰ですか。

 

オロフ:アンダーグラウンドではないけれど、人生においてメタリカから一番影響を受けた。メタリカからはバンドとはどういうものなのか、どうやってギターを弾くのか、どうやって歌うのか、すべてを教えられた。それ以降、本当にたくさんのバンドから影響を受けたけれどね。

 

ー メタリカはどのアルバムがお好きですか。

 

オロフ:若い頃は、というか1996年に『Load』がリリースされるまでは、メタリカの出したアルバムはすべて甲乙つけがたいものだった。最初の5枚は、ソフトな方向性に行くことなく、すべての曲がすべて最高だった。だけど、96年に『Load』が出た時、発売日の当日に買ったのだけど、封を切って、髪の短いメンバー写真を見て、「誰だこいつらは??」って(笑)。何でこんなのをバックカバーにしたのかと。雑誌とかは読んでいなかったからね。予備知識もなくて。CDとテープしか買っていなかった。インターネットもなかったし。それでCDを買ってみたら、いきなりルックスが変わっていて。バカみたいな見た目になっちゃって。それでCDをかけてみたら、当時10歳だったのだけど、泣いちゃったよ(笑)。ずっと泣いてた(笑)。

 

― 今でも『Load』、『Reload』あたりはキツいでしょうか。

 

オロフ:あのアルバムは酷いよ。なるべく客観的に聴いてみようと努力はしてきたのだけど、人にオススメできる曲が1つも無い。彼らが同じことをやり続けることに飽き飽きして、新しいサウンドを模索していたことは完全に理解できるよ。俺も今、エンフォーサーでまったく同じように感じているから。だけど、俺たちはああいうミスは犯したくないね(笑)。ファンにケツの穴をさらすような真似はしたくないよ(笑)。ファンに中指を突き立てるような行為さ。新しいサウンドが欲しくて、クリエイティヴなことをしようとしたというのは、ミュージシャンとして理解できるけれど、俺にとってはダメだった。あれが良いと思った人もいるだろうけれどね。今聴いてみても、まったく混乱しているというか、4人ミュージシャンが何をやりたいかをわからずにプレイしているように感じる。音楽的混乱。アイデンティティ、こういうことをやりたいみたいのが何も無くて。音楽的にそう聴こえるんだ。

 

― 前作では方向性に対し不満の声があったとのことですが、次のアルバムはどうなるでしょう。そういったファンの声は気になりますか。

 

オロフ:イエスでありノーでもある。もちろん自分たちのためにやりたいことをやるべきだということもあるけれど、あまりにそれまでやってきたことから離れすぎて、ファンを失うべきでもないと思う。新作では2歩進んで1歩下がる感じで、曲を聴けばすぐにエンフォーサーだとわかるリフなどが満載である一方、新しい要素も取り込みたい。クリエイティヴで新しいけれど、同時にエンフォーサーだとわかるやり方はあると思うんだ。

 

― 新作はすでに制作中なのでしょうか。

 

オロフ:まだ正式な発表はしていないけれど、6月に新しいシングルを出したいと思っている。

 

ー ではアルバムは年内に出る感じですか。

 

オロフ:一応アルバムを3つに分けてリリースしようかと思ってるんだ。12曲あるから、4曲ずつEPとして。それが全部集まるとアルバムになるような。まだ決定じゃないけどね。人々はアルバムを集中して聴かなくなっているから、曲を分けて時間をかけてリリースしようかと思ってるんだ。俺たちというよりマーケット次第だけどね。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

オロフ:早くまた日本に行きたいよ。日本ではいつも最高によくしてもらっているからね。俺たちにとってとても特別な場所さ。ファンがまだいてくれるのなら、必ずまた日本に行くよ。

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年4月28日発売

エンフォーサー

『ライヴ・バイ・ファイア II』

直筆サインカード付 日本盤限定Blu-ray

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発売中

直筆サインカード付CD

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【Blu-ray/DVD収録曲】

  1. ダイ・フォー・ザ・デヴィル
  2. サーチング・フォー・ユー
  3. アンダイイング・イーヴル
  4. フロム・ビヨンド
  5. ベルズ・オブ・ハデス / デス・ライズ・ディス・ナイト
  6. ゼニス・オブ・ザ・ブラック・サン
  7. リヴ・フォー・ザ・ナイト
  8. メスメライズド・バイ・ファイア
  9. ワン・サウザンド・イヤーズ・オブ・ダークネス
  10. ギターソロ / シティ・ライツ・ジャム
  11. スクリーム・オブ・ザ・サヴェージ
  12. ドラムソロ
  13. ラン・フォー・ユア・ライフ
  14. テイク・ミー・アウト・オブ・ディス・ナイトメア
  15. デストロイヤー
  16. ミッドナイト・ヴァイス

【CD収録曲】

  1. ダイ・フォー・ザ・デヴィル
  2. サーチング・フォー・ユー
  3. アンダイイング・イーヴル
  4. フロム・ビヨンド
  5. ベルズ・オブ・ハデス / デス・ライズ・ディス・ナイト
  6. ゼニス・オブ・ザ・ブラック・サン
  7. リヴ・フォー・ザ・ナイト
  8. メスメライズド・バイ・ファイア
  9. ワン・サウザンド・イヤーズ・オブ・ダークネス
  10. ギターソロ / シティ・ライツ・ジャム
  11. スクリーム・オブ・ザ・サヴェージ
  12. ドラムソロ
  13. ラン・フォー・ユア・ライフ
  14. テイク・ミー・アウト・オブ・ディス・ナイトメア
  15. デストロイヤー
  16. カタナ
  17. ミッドナイト・ヴァイス

 

【メンバー】
オロフ・ヴィクストランド(ヴォーカル/ギター)
ジョナサン・ノルドウォール(ギター)
トビアス・リンドクヴィスト(ベース)
ヨナス・ヴィクストランド(ドラムス)