自殺予告、ライヴ会場での爆弾炸裂!世界最凶デス・メタル・バンド、Deicideがニュー・アルバムをリリース!と言うことで、フロントマンのグレン・ベントンに話を聞いてみた。
ー 前作から6年経っています。これはバンド史上最長のギャップですが。
グレン:まずコロナですべての予定が狂った。それからセンチュリー・メディアとの契約が終わったということもあった。レーベルを探さなくてはならかったので、急がず、『Legion』の30周年ツアーをやりながら新曲を書いたりで、時間がかかったのさ。
ー 過去の作品と比べ、新作はどのような点が異なっている、あるいは進化しているでしょう。
グレン:サウンドだな。オールドスクールなアプローチをとって、サンプリングやProTools、プラグインの使用を控えて、よりライヴっぽいサウンドにしたんだ。
ー 今回から新ギタリストとしてテイラー・ノードバーグが加入しています。彼を選んだ理由は何ですか。
グレン:彼は俺の友人であるジェレミー・クリングの友達なんだ。ジェレミーとは家が近くてね。彼らはThe AbsenceやInhuman Conditionを一緒にやっているのさ。実際ジェレミーがテイラーを推薦したんだ。ギタリストがいないのなら、テイラーを入れてはどうかってな。「ジェレミーが構わないのなら、俺にとってはそれが最高なんだが」と思って。テイラーもジェレミーも素晴らしい奴で、今はスタジオでもライヴでもすげえサウンドになってるよ。曲作りのチームとしても、ツアーのチームとしても最高。とても楽しんでるよ。
ー テイラーは新しいものをバンドにもたらしたということですね。
グレン:そう、彼はDeicideのマインドセットでの演奏、曲作りもうまい。ギタリストとして最高にプロフェッショナルな人物。俺たちにはそういう人物が必要だったんだ。魂で演奏をする人間。教則本で演奏するのではなくね。
ー アートワークについて、AI使用がインターネット上で論争になっていますが、何か言いたいことはありますか。
グレン:言いたいこと?素晴らしいよ(笑)。ホンモノのバカでもなきゃ、あのカッコ良さがわかるだろ?
ー 実際にAIは使用したのですか。
グレン:たくさんの写真を使って、何と言うか、PCを使ってアートワークを作ったのはこれが3作目で、俺は毎回違うことがやりたいんだ。人々を、そう、動揺させるようなものが作りたいのさ。故意にやってるんだよ。人々を怒らせるために。AIとPhotoshopを使って、顔を俺みたいに見えるようにして(笑)。だけど、きちんとアーティストによって作られたように見えるだろ?俺が適当に家でiPadで作ったみたいじゃなく。信頼できる有名なアーティストが作ったという出来さ。思った通りの仕上がりになったよ。バックドロップの見栄えも良かったから、コーヒーカップや歯ブラシにするのも楽しみだな。
ー 今回はジョッシュ・ウィルバーをプロデューサーに迎えています。彼を選んだ理由は何ですか。
グレン:あんまり言いたくはないのだけど、レコード会社がウィルバーとよく仕事をしていてね。彼らの推薦だった。それでジョッシュにテストミックスをやってもらって、まあライヴ・サウンド、圧縮されていないサウンドを失いたくなかったから、そういうことをジョッシュとメールでやりとりして、そしたら思った通りのサウンドにしてくれたから。
ー そもそもエクストリーム・メタルにハマったきっかけは何だったのですか。
グレン:うーん、そうだな、もともとはBlack SabbathやMotörhead、Dioあたりから始まった。子供の頃はRushなんかも聴いていたよ。何よりまず俺はミュージシャンだからな。
ー その後スラッシュ・メタルにハマった訳ですか。
グレン:タンパのシーンがブレイクし始めた時、当時は西海岸と東海岸のシーンがあって、西海岸はスラッシュ寄りだった。東海岸はもっとダークなメタルと言うのかな。まあ、でも俺にとってはどうでも良かったけれど。
ー あなたがCarnageもしくはAmonに加入した時、すでにデス・メタルをやっているという意識はあったのですか。
グレン:いいか、当時俺が雑誌に広告を出していて、それで奴らが電話をかけてきたんだ。誰かが誰かのバンドに加入したということじゃない。Amonという名前も、俺がもともと考えていたものさ。奴らはCarnageという名前にしていたけれど、だんだんと俺の方向性を取るようになっていったのさ。
ー なるほど。当時はデス・メタルをやっていると思っていましたか。
グレン:当時はデス・メタルなんていうものはなかったよ。俺たちはただ西海岸の奴らの上を行ってやろうと思っていただけ。
ー 当時はどのようなバンドからインスピレーションを受けていたのでしょう。
グレン:当時好きだったヘヴィでエクストリームなものは、他の奴らと同じで、Possessedの『Seven Churches』とか。俺たちはみんなあれを聴いていたな。俺は他にも手に入りうる限りのマイナーなメタルのアルバムを色々聴いていたよ。
ー スラッシュ・メタルはイーヴルな音楽としてスタートしたにもかかわらず、『Master of Puppets』が成功すると、ほとんどすべてのスラッシュ・バンドが温室効果がどうのと社会的な歌詞を書き始めました。しかし、あなたはその時期も構わずサタニックなイメージを保ち続けた訳ですが。
グレン:(笑)。単純に俺は俺というだけのことさ。他の奴らの期待に応えようなんて思わないし、明日世界が滅びようとも関係ない。何の関心もないことについて、歌詞なんて書けないからな。俺はただ自分の内側から湧き出るものを表現するだけ。それが俺なのさ。それを変えようとしても、うまく行くはずがない。俺の内面には倒錯したものがある。それが俺のやり方なのさ。
ー 90年代初頭のノルウェーにおけるブラック・メタル・シーンについてはどう見ていましたか。何か面白いエピソードはありますか。
グレン:いや、ない。好きじゃなかった。当時俺たちは自分たちのやっていることをデス・メタルとは思っておらず、サタニック・メタル、ブラック・メタルと考えていたよ。俺たちはKISSみたいに衣装を着たりメイクをしたりはせず、もう少々自然なアプローチでやっていただけさ。
ー お気に入りのヴォーカリストはいますか。あるいはロールモデルとするヴォーカリストはいるのでしょうか。
グレン:俺にとってはジェイムズ・ディオ。子供の頃から大ファンだった。
ー オールタイムのメタルのアルバムを3枚教えてください。
グレン:俺のお気に入りのメタル・アルバム3枚か。参ったな、こいつは難しい。いずれにせよ、俺はMotörheadの大ファンだからな。Motörheadの作品はどれも重要。それから当然Dioの最初の数枚、それから最後のアルバムも。あとDeep Purpleも大好き。「Highway Star」とか。とにかく好きなものがたくさんあるから、トップ3と言われても難しいな。色々ありすぎる。人生を変えられたほどのものはないにしても、子供の頃によく聴いていて、「これを次のステップに持っていったら面白いだろうな」と思うことはよくあった。
ー Deicideはいまだ来日していないビッグ・バンドの一つです。これまで来日の交渉などはあったのでしょうか。
グレン:毎回、と言うかみんなこれを理解していないのだけれど、それには費用がかかるのさ(笑)。不思議なことに、いつもオファーはそこまで出向くに十分な内容ではないんだよ。誰かプロモーターが、そこまで出向くに十分なオファーをくれれば良いのだけどね。赤字にならないようなオファーを。これまで受けたオファーは、どれも飛行機代すらカバーできないようなものだったんだ。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
グレン:そうだな、もし今度オーストラリアに行くなら、その時に日本にも寄りたいな。うまくいくつかの国をまわって、みんなの労力に見合ったツアーを組めると良いのだけど。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- フロム・アンノウン・ハイツ・ユー・シャル・フォール
- ドゥームド・トゥ・ダイ
- セヴァー・ザ・タング
- フェイスレス
- ベリー・ザ・クロス…ウィズ・ユア・クライスト
- ウォーク・フロム・ゴッド
- リチュアル・ディファイド
- フェイリアーズ・オブ・ユア・ダイイング・ロード
- バニッシュド・バイ・シン
- ア・トリニティ・オブ・ナン
- アイ・アム・アイ…ア・カース・オブ・デス
- ザ・ライト・ディフィーティド
【メンバー】
グレン・ベントン (ベース/ヴォーカル)
スティーヴ・アシェイム (ドラムス)
ケヴィン・クイリオン (ギター)
テイラー・ノードバーグ (ギター)