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ヴァツワフ “ヴォッグ” キルティカ
(ディキャピテイテッド)
独占インタビュー

ディキャピテイテッドは
毎年新しいファンが増えているし
そういうファンたちに
バンドの初期のヒストリー、バンドのルーツ
最初のラインナップを伝えるのは良いことだと思うんだ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Robert Zembrzycki

ヴェイダーと共にポーランドを代表するデス・メタル・バンド、ディキャピテイテッド。初期のデモを集めたコピレーション・アルバム『ザ・ファースト・ダムド』をリリースするということで、ギタリストのヴァツワフ “ヴォッグ” キルティカに話を聞いてみた。

 

 

ー コロナの状況はいかがですか。

 

ヴォッグ:俺の知る限り、感染者数は減っているよ。最悪の時は去って、良い方向に向かっている。多くの人がワクチン接種を受けているし、トンネルに光が差し込んでいる感じだよ。酷い状況ではない。日に日に改善していると言えるよ。日本はどんな感じ?

 

― 日本はむしろ感染者数が増えていますよ。ワクチン接種もさっぱり進んでいないですし。

 

ヴォッグ:ポーランドはつい1ヶ月前までは最悪の状況だったのだけど、一気に良くなってきている感じだから、おそらくワクチンの効果なんじゃないかな。日本でワクチン接種が進んでいないのは不思議だね。そういうことに関してポーランドよりも行動の早い国だと思っていたのだけど。

 

― このタイミングでデモを集めたコンピレーションをリリースしようと思ったのはなぜですか。

 

ヴォッグ:このデモのコンピレーションは20年くらい前にMetal Mind Productionsというポーランドのレコード会社からリリースされていてね。基本的にポーランドでしか手に入らなかったんだ。それにもう大分前の話で、このコンピレーションの権利がバンドに戻って来たから、ここ数年どこからか再発をしようと考えていた。それで世界がこんな状況だから、ライヴもやれないし、時間がたくさんあって新しいレイアウトを考えたりすることもできたので、やるなら今だと思ったのさ。おそらくディキャピテイテッドのファンでもこれらのデモテープを聴いたことがある人は多くないだろうし、これらのテープは初期の俺たちを代表する作品で、まるで俺たちのDNAみたいなもの。今回もミックスやマスタリングのやり直しなどはしなかった。ミスを直したり、音質を改善したりせず、当時のままでリリースしたかったんだ。23-4年前のままでね。ディキャピテイテッドは毎年新しいファンが増えているし、そういうファンたちは『アンチカルト』や『ブラッド・マントラ』以降の俺たちしか知らなかったりもする。そういうファンたちに、バンドの初期のヒストリー、バンドのルーツ、最初のラインナップを伝えるのは良いことだと思うんだ。

 

ー バンドの初期をあまり晒したがらないバンドもいますよね。

 

ヴォッグ:その通りだね。もちろん初期の姿を晒すかどうかというのは一つの決断ではあるし、何かをリリースするということは、それなりのクオリティに達している必要があるというのは確かさ。だけど、俺は昔の作品がミスだらけだとか、今やっていることの方がプロフェッショナルだしプロダクションも優れているということはあるにしても、昔のデモを聴いてもらうことに恥ずかしさは無い。何よりも、今聴き直して見ても、クオリティはかなり高いものだと思うよ。特にセカンド・デモ『ジ・アイ・オブ・ホルス』の演奏なんかはハイレベルなものだと思うよ。演奏の面でも音楽の面でもね。ずっとこれらのデモを聴いていなかったけれど、今回聴き直してみて、なかなかの出来だと思った。こんなに良い出来だとは思ってなかったから、びっくりしたよ。だからこれをリリースするべきだと思ったし、「これが俺たちのファーストステップなんだ」という意味であれば特にね。とても誇りに思っているし、これをニュークリア・ブラストとのような大きなレーベルから、カセットやLPとしてもリリースできてとてもハッピーだよ。

 

― もともとはクラシックの勉強をされていたのですか。

 

ヴォッグ:そうだよ。最初のラインナップは全員同じミュージックスクールに行っていてね。そこでみんなに会って友達になって、バンドを始めたんだ。そこで色々な楽器を練習して、音楽の勉強をしていたから、みんな若かったけれど、楽器の演奏の仕方を知っていたんだ。

 

ー クラシックからの影響はディキャピテイテッドの音楽に表れているでしょうか。

 

ヴォッグ:間違いないよ。初期にやっていたテクニカルなリフは、メタルからの影響ではなく、クラシックから影響を受けたものだったと思う。クラシックの練習をしていて、それらのいくつかはとてもテクニカルでね。俺にとってはとても自然なことで、ピアノやアコーディオンなんかを演奏して、それをギターに応用したりもしていたんだ。だから、デス・メタルの世界では新しいものだったかもしれないね。今はすっかりシンプルなリフばかりプレイしているけれど(笑)。当時は随分とレベルの高いクレイジーなこともやっていたよ。クラシックから影響を受けていたのは間違いない。

 

― そもそもディキャピテイテッド(斬首された)というバンド名はどのようにして決めたのですか。

 

ヴォッグ:これは俺が考えたのではなく、初代のヴォーカリスト、サウロンが持って来た名前なんだ。俺はあまりバンド名というのは気にしていなくて、ギターを弾くことばかり考えていたのだけど、おそらく彼はヴェイダーからインスパイアされたのだと思う。ヴェイダーのファーストデモ、いやファーストアルバムだったかな、どちらかに「Decapitated Saints」という曲があったから。(注:89年の『Necrolust』デモ及び92年のデビュー・アルバム『The Ultimate Incantation』に収録)それがインスピレーションになったんだと思う。それにもちろんとてもデス・メタルらしい名前だからね(笑)。今俺がバンドを始めるとしたら、この名前にするかはわからないけれど、当時はもっとリラックスしていて、おそらくサウロンは最もエクストリームな単語を探していたんだろうね。

 

ー エクストリーム・メタルにハマったきっかけは何だったのですか。

 

ヴォッグ:8歳ほど年上の従兄弟がいて、彼が数年間メタルにハマっていてテープやLPを集めていたんだ。ヨーロッパやアメリカのバンドのコレクションをたくさん持っていてね。アンスラックス、メタリカ、セパルトゥラとかスラッシュがたくさんあって、他にもディスハーモニック・オーケストラ、ぺスティレンス、ゴアフェストみたいなヨーロッパのデス・メタルもあった。オビチュアリーやデスとか、フロリダのバンドもあった。彼がコレクションを見せてくれてね。俺には弟が2人いて、従兄弟の家に行ってよく過ごしたものだよ。従兄弟のテープを聴いたり、バンドのことを色々教えてくれて。彼の部屋にはたくさんバンドがポスターが貼ってあって、とても興味深かった。どうしてこのバンドはこんな格好をしているんだろうとか。タイムマシンがあったら、あの時代に戻りたいよ。そういう訳で、きっかけは従兄弟さ。それでこういう音楽を聴くようになったんだ。それから学校でも同じような音楽を聴く友達ができてね。俺の街にはわりと大きなメタルのコミュニティもあったし。わりと大きなシーンがあったんだ。90年代はメタルにとって、とても良い時代だったんだ。

 

― 当時のポーランドでは、エクストリーム・メタルの情報を得るのは難しかったですか。

 

ヴォッグ:ものによったな。俺がこういう音楽を聴き始めた頃、ポーランドには世界中のメタルのあらゆる作品をリリースするレーベルがあって、お店に行けば色々なテープを買うことができた。だけど何と言うか、半分海賊盤みたいな作品でね。共産主義から民主主義に変わった時に、レコードのリリースに関する法律がきちんと整備されていなくて、グレーゾーンみたいになっていたんだ。それで海賊盤のようなテープを出しているレーベルがたくさんあって、それらを入手するのは簡単だった。一方で、俺たちがデモテープを作った頃、アンダーグラウンドのシーンもあって、日本ではどうだったわからないけれど、手紙でテープを送ってということもやっていたんだ。

 

― 日本も同じでしたよ。

 

ヴォッグ:そうやって情報交換してね。あとは白黒のZineと呼ばれる雑誌もあって。俺がメタルヘッドになったのは90年代だったからね、80年代よりもずっと情報は得やすくなっていたよ。俺より年上の人たちは、わざわざ他の国まで行かなくてはいけなくて、国境を超えるのも容易ではなかったし。当時は誰かがレコードを入手してきて、それをカセットにダビングして、それをまた誰かがダビングして、みたいな感じだったのさ。俺も欲しいアルバムをすべて入手するだけのお金が無かったから、カセットのダビングはやっていたけれどね。あの頃に比べたら今は簡単だよ。SpotifyやApple Musicで好きな作品を何でも聴けてしまうのだから。

 

― 80年代のポーランドにはKATやDragon、Turboなどのバンドがいたと思いますが、彼らはの国内での人気はどんなものだったのですか。

 

ヴォッグ:とても人気があったよ。KATは今でも人気がある。ライヴもやっているし。Turboもまだ現役だよ。Dragonはおそらくもう解散しちゃったんじゃないかな。彼らも昔とても人気があった。80年代の終わりくらいね。KATはニュー・アルバムも出しているし、シンガーの健康に問題があるみたいだけれど、それでも活動している。KATは俺にとってNo.1のバンドだよ。影響も受けたし、リスペクトしている。俺にとってとても大きな意味を持つバンドさ。彼らの音楽は本当に素晴らしいし、ポーランド後の歌詞も良い。彼らの歌詞からも影響を受けているよ。自分の在り方とか、考え方とかね。インタビューでこういうバンドの名前が挙がるのは大切なことさ。

 

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ヴォッグ:難しいな。当時の自分ならモービッド・エンジェルの『Domination』、セパルトゥラの『Arise』を挙げるかな。それからやっぱりKATの『Bastard』。

 

― 今後の予定を教えてください。現在は何をしているのでしょう。

 

ヴォッグ:今はニュー・アルバムを作っている。あと2週間くらいで出来上がる予定さ。毎日スタジオに入ってレコーディングしていて、もうすぐミックスに出す。『ザ・ファースト・ダムド』も出るところだし、色々とプランはあるんだ。今はまだ言えないけれど、サプライズもあるよ。あとはやっぱり早くライヴをやりたいね。

 

ー ニュー・アルバムのリリースはいつ頃になりますか。

 

ヴォッグ:おそらく今年の終わりか来年の初めだと思う。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ヴォッグ:19年に3回のショウを日本でやって、とても素晴らしかった。メッセージというか、ぜひまた日本に行ってライヴをやりたいな。とにかくまた日本に行きたいよ。まだ2回しか行ったことがないからね。一度も行ったことがない人もいる中で、2回も行けたことはラッキーだけれど。日本が大好きなんだ。早くまた日本でプレイしたいよ。俺たちのファーストステップである『ザ・ファースト・ダムド』を気に入ってもらえるといいな。ニュー・アルバムも作っているけれど、ポジティヴなサプライズになると思うよ。

 

― サプライズとは、どんな感じなのでしょう。

 

ヴォッグ:もっとエクトリームでデス・メタルな作品になるよ。もっとエモーショナルと言えるかな。

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年6月4日発売

ディキャピテイテッド

『ザ・ファースト・ダムド』

CD

【CD収録曲】

  1. イントロ(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  2. ジ・アイ・オブ・ホルス(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  3. ブレッスド(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  4. ザ・ファースト・ダムド(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  5. ナイン・ステップス(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  6. ダンス・マカブル(『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  7. マンダトリー・スーサイド [スレイヤー カヴァー](『ジ・アイ・オブ・ホルス』デモ)
  8. イントロ(『セメテラル・ガーデンズ』デモ)
  9. デスティニー(『セメテラル・ガーデンズ』デモ)
  10. ウェイ・トゥ・サルヴェーション(『セメテラル・ガーデンズ』デモ)
  11. エレシュキガル(『セメテラル・ガーデンズ』デモ)
  12. セメテラル・ガーデンズ(『セメテラル・ガーデンズ』デモ)

 

【メンバー】
ヴァツワフ “ヴォッグ” キルティカ(ギター)
ヴォイチェフ”サウロン”ヴァソヴィチ(ヴォーカル)
ヴィトルド”ヴィテック”キルティカ(ドラムス)
マルチン”マーティン”リギエル(ベース)