“創成期から現在まで両日別のセットでデス・エンジェルの歴史を包括する”
9月にZepp DiverCityで開催される『THE BAY STRIKES BACK』を記念し、今回はマーク・オセグエダ(vo)が来日セットリストや近況、スラッシュ・メタルとの出会いから本質までを語る!
ー 『Bay Strikes Back』ツアーはすでにアメリカやヨーロッパで数度開催されていますが、そもそもこの企画は誰が思い付いたものですか。
マーク:面白いことに、何年か前からいつかこういうことをやろうという話はしていたんだ。最終的に、それぞれのマネジメントが話し合ったんだと思う。みんな仲の良い友人だから。ブッキング・エージェントで話し合って日取りなどを決めて、最初のツアーが信じられないくらい素晴らしくて。ファンからのリアクションも良いし、バンド同士ずっと知り合いでとてもうまくやれるので、このツアーでできるだけたくさんのところに行こうということになったのさ。
ー テスタメント、エクソダスという長年の盟友とのツアーは、やはり特別なものですか。
マーク:もちろん最高だよ。みんな10代の頃から知っているし、俺たちはちょっと若いけれど、ほんの少々だからね(笑)。始めた頃、みんなまだ若くて、長い間友人で、お互いをリスペクトしていて、お互いが大好き。これまでバラバラにツアーをしてきて、今回初めて一緒にツアーをして、素晴らしかったよ。仲間意識、バックステージ、オフの日も一緒にいて、とてもスペシャルだった。最初のツアーは最高だった。それ以来いつも一緒に素晴らしい時間を過ごして、友情はさらに深まったよ。
ー あなたのスラッシュ・メタルとの出会いはどのようなものでしたか。
マーク:子供の頃からハードロックやヘヴィメタルが好きで、ヘヴィメタルと言ってもKISSからAC/DC、ブラック・サバスから始まってアイアン・メイデン、ジューダス・プリーストへ行って、もちろんモーターヘッドも。俺たちはサンフランシスコに住んでいたから、メタリカというバンドの噂を聴き続けていた。それでデモを聴いて、「ワオ!」って。デモにもかかわらず、信じられない素晴らしさだったよ。それから、もうなくなってしまったKeystone Berkeleyというクラブに、彼らのライヴを見に行ってね。デス・エンジェルのメンバーと彼らを初めて見たのは、アーマード・セイントとのライヴだった。会場に入って、初めてピットというものを見て、ステージからは信じられないようなエネルギーが出ていた。あんなものは見たことも感じたこともなかった。観客はそのエネルギーをステージに返していたよ。一発でハマったな。多くのバンドが同じだったと思う。すでにデス・エンジェルをやっていたけれど、まだNWOBHMスタイルで、多くのバンド同様初めてメタリカを見て、次のリハーサルでは昔の曲をスピードアップしたり、メタリカ風の新曲を書いたりしたものさ。短い話を長く言うと、「信じられないものだった」ということ(笑)。
ー 「スラッシュ・メタル」という言葉を初めて聞いた時のことは覚えていますか。
マーク:それは難しいな。当時ムーブメントはまったく新しいものだったからね。みんなスピード・メタルとかスラッシュ・メタルとか言っていて、呼び方は固まっていなかったんだ。スピード・メタルとスラッシュ・メタルという言い方がメインの2つだったと思う。そしてスラッシュという言葉が定着したんだよ。どこだったかは覚えていないけれど、1984年くらいにその言葉を聞いたのだと思う。”trash”と似ているから最初は少々変な気がしたけれど、観客は”thrashing all around”していて、これはメタリカが『Kill ‘Em All』の歌詞で使っているよね。”Thrashing all around, Acting like a maniac, Whiplash!”って。そうやって固まっていったのさ。トレンドだと思った人もいるけれど、ほぼ40年経った今も、新しいファン、新しいバンドが生まれているからね。これはただのトレンドではなく、ムーブメントであり、いわゆるライフスタイルたりうるという証明だよ。
ー ベイエリアにスラッシュ・メタルのバンドが多く現れた理由は何だと思いますか。Ruthie’s Innのようなクラブ、メタリカ、ハードコア・パンクなど、いくつかの要因が考えられますが。
マーク:80年代初期ということで言うと、当時のサンフランシスコ、ベイエリアはとてもブルーカラーの街だったんだ。今はハイテクの街だけれどね。それでティーンエイジャーたちは、リアルな音楽を支持していたんだ。自分たちと似たような見た目、服装のバンドがステージに上がって。当時支配的だった音楽は、カリフォルニア南部、LAのヘアロック、グラムロックみたいもので、ハリウッドというとお金、映画みたいな感じだけど、サンフランシスコはそうじゃなかった。もっとブルーカラーで、音楽もそれを反映していたのさ。メタリカのようなバンドはLAからやって来て、10代のファンたちに温かく迎えられた。彼らにとっては招待状みたいなもので、ファンは彼らのためにいるようなものだった。より受け入れられたから、彼らはサンフランシスコに引っ越して来たんだ。その頃にはエクソダスももっとヘヴィなサウンドになっていて、そこから花開いていったのさ。カリフォルニア南部から初めてスレイヤーがやって来た時も、サンフランシスコで大きな反応があって、そういうものすべての組み合わせだと思う。ブルーカラーの両親を持つティーンエイジャーたちが、リアルなもの、触れられるものを支持したんだ。LAのロックは、何と言うのかな、表層的に思えたのさ。
“たくさんの素晴らしいこと、素晴らしいショウを経験した。幸運にもケリー・キングがいるメガデスや、いまだメイクをしているスレイヤーを見ることもできた”
ー 当時のシーンの雰囲気がいかがでしたか。新しいこと、創造的なことが起こっているという感じでしたか。
マーク: もちろんさ。雰囲気は間違いなく素晴らしいもので、一生に一度限りのものだったよ。正しい場所、正しい時。何か特別なものの一部だとわかっていた。Ruthie’s Inn、Stone、Mabuhay Gardens、Rock on Broadwayのようなクラブでショウがあって、俺たち、レガシー、それからフォービドゥン、ヴァイオレンスみたいなバンドが出て来て、どんどんと花開いていった。当時テスタメントはまだレガシーといって、これらのバンド、そうポゼストも、みんな一緒にプレイして、それぞれがユニークなサウンドを持っていて、だけれどどれもがスラッシュのサウンドだった。これらのバンドは同じエリア出身だから、友好的な競争でお互いが腕を磨いてね。おかげでどのバンドも成長が早かった。素晴らしかったのは、みんなお互いに協力的だったこと。ライヴをやると、レガシー、ヴァイオレンス、ポゼスト、エクソダスのメンバーが勢揃いする。メタリカもツアーに出ていない時は、クラブショウを見に来ていたよ。みんなお互いに協力的だったから、間違いなくこのムーブメントの一部なんだと感じたし、特別な時代だったな。今でも当時はどうだったのか聞かれるのだからね。俺にとっては間違いなく人生の中で最高の時間の一つさ。ミュージシャンとして、人間として、今日の自分を作ってくれたのだから。たくさんの素晴らしいこと、素晴らしいショウを経験した。幸運にもケリー・キングがいるメガデスや、いまだメイクをしているスレイヤーを見ることもできた。メガデスとプレイすることもできたし、スレイヤーやメタリカともプレイした。エクソダス、ポゼスト。あれらのクラブでみんなと一緒にやったよ。15歳の若者にとって、ステージでヘッドバンギングをしながら袖に目をやると、クリフ・バートンがヘッドバンギングをしているという経験は、何ものにも代え難い、決して忘れられないものさ。
ー 素晴らしいお話ですね。
マーク:その通りさ。
ー ニュー・アルバムの制作にはとりかかっていますか。
マーク:やっているよ。たくさんツアーをやっているから、まだ曲作りの初期段階だけれど。曲を編集しているところで、俺とロブで曲のデモを作っていて、ツアーから戻って9月まで少々時間があるから、数ヶ月間曲やリフを書ける。ロブが基本的な構成を作って送って来て、俺がメロディに合わせて歌詞を書く。まだ初期段階だけれど、進んでいるよ。
ー 9月の日本でのショウですが、どのようなセットリストになるのでしょう。2日間ありますが、セットを変えたりはしますか。
マーク:2日あるからセットは変えるよ。間違いなくデス・エンジェルの歴史を包括するものになる。当然初期の作品もやらなくちゃいけない。バンドの創成期の完全にスラッシュな時期さ。その後俺たちはとても進化してきたから、ファンにとってどちらの晩も、とてもバランスの良いセットになるよ。セットリストのことはとても真面目に捉えていて、いつもロブのアパートで時間をかけて相談して決めるんだ。どちらの晩も、間違いなくユニークなセットになる。
文:川嶋未来
【公演日程】
2023年9月24日(日) 開場 16:00 / 開演 17:00 東京:Zepp DiverCity Tokyo
ACTS:TESTAMENT / EXODUS / DEATH ANGEL
【CD収録曲】
- ロード・オブ・ヘイト (『キリング・シーズン』2008年)
- ホエア・ゼイ・レイ(『リレントレス・レトリビューション』2010年)
- ホワイ・ユー・ドゥ・ジス(『フローリック・スルー・ザ・パーク』1988年)
- フォーレン(『ザ・ドリーム・コールズ・フォー・ブラッド』2013年)
- アブセンス・オブ・ライト(『リレントレス・レトリビューション』2010年)
- ジ・オーガニゼーション(『アクトIII』1990年)
- エクセキューション/ドント・セイヴ・ミー(『ザ・ドリーム・コールズ・フォー・ブラッド』2013年)
- サキュバス(『ザ・ドリーム・コールズ・フォー・ブラッド』2013年)
- イット・キャント・ビー・ディス(『ジ・イーヴル・ディヴァイド』2016年)
- レット・ザ・ピーシズ・フォール(『ジ・イーヴル・ディヴァイド』2016年)
- フェイデッド・リメインズ(『アンダー・プレッシャー』EP 2020年)
- ヴォルカニック(『リレントレス・レトリビューション』2010年)
- フォーリング・オフ・ジ・エッジ・オブ・ザ・ワールド (ブラック・サバス・カヴァー)
- ギルティ・オブ・イノセンス(『フローリック・スルー・ザ・パーク』1988年)
- アライヴ・アンド・スクリーミング(『ヒューマニサイド』2019年)
【Blu-ray収録曲】
- オープニング
- バスタード・トラックス・コメンタリー
- ホエア・ゼイ・レイ・コメンタリー
- ホワイ・ユー・ドゥ・ジス・コメンタリー
- ロード・オブ・ヘイト・コメンタリー
- ロード・オブ・ヘイト
- ホエア・ゼイ・レイ
- ホワイ・ユー・ドゥ・ジス
- アブセンス・オブ・ライト・コメンタリー
- ジ・オーガニゼーション・コメンタリー
- フォーレン・コメンタリー
- フォーレン
- アブセンス・オブ・ライト
- ジ・オーガニゼーション
- サキュバス・コメンタリー
- エクセキューション/ドント・セイヴ・ミー・コメンタリー
- エクセキューション/ドント・セイヴ・ミー
- サキュバス
- レット・ザ・ピーシズ・フォール・コメンタリー
- イット・キャント・ビー・ディス・コメンタリー
- イット・キャント・ビー・ディス
- レット・ザ・ピーシズ・フォール
- フェイデッド・リメインズ・コメンタリー
- フェイデッド・リメインズ
- ヴォルカニック・コメンタリー
- ヴォルカニック
- アライヴ・アンド・スクリーミング・コメンタリー
- ギルティ・オブ・イノセンス・コメンタリー
- ギルティ・オブ・イノセンス
- アライヴ・アンド・スクリーミング