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ジェイク・E(サイラ)
独占インタビュー

「こういう音にしよう
こういうバンドみたいにしよう」
みたいな話し合いは、まったくしなかったよ
座って、曲を書いたら自然にサイラができたんだ

                                   

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文:川嶋未来 / Photo by KJ Melgoza , Linda_Florin

絶賛来日中スウェーデンの大人気メタル・バンド、サイラ。ヴォーカリストであるジェイク・Eのインタビューをお届けしよう。

 

 

ー そもそもサイラというバンドは誰の発案で始まったものなのでしょう。

 

ジェイク:ご存知の通り、俺はもともとアマランスでキャリアをスタートした。だけど、数年間活動して、いくつかのワールドツアーをやって、いつもバンド内で争いがあることにウンザリしてしまってね。メンバーそれぞれが違った意思を持っていて。俺は楽しいから音楽をやりたいと感じていた。音楽には愛とリスペクトがあふれているべきだと思ったから、アマランスを辞めたんだ。どれだけ稼げるかとか、どれだけビッグなショウをやれるかは関係なかった。自分のやりたいことをやりたかったのさ。元イン・フレイムスのイェスパーとは長年の友達でね。彼と話をしてみると、彼はソロ・プロジェクトをやるつもりだと言う。俺も「それはいいね、俺も自分で何かやろうと思っているんだ」と伝えて、俺が彼のプロジェクトで歌って、彼が俺のプロジェクトでギターを弾くという話になったんだ。それで俺のスタジオで、最初の曲「Letter to Myself」が出来上がると、お互い顔を見合わせて「これはバンドとしてやってはどうだろう?」ということになって。それで一緒にバンドを結成したんだよ。となると、他の楽器を弾くメンバーも必要になる。だけど、楽器がどれほどうまいかということは問題ではなかった。それよりも、ツアーバスで3ヶ月一緒に過ごすなんていうことになる訳だからね。うまくやれる相手ということでメンバーを選んだのさ。ただバンドを作ったのではなく、第2のファミリーを作っていた訳だから。そこが一番重要だったよ。

 

ー どういう音楽性にしようみたいな計画はあったのですか。

 

ジェイク:いや、俺たちはスウェーデンというメロディックな国の出身だからね。スウェーデンはメロディの国。イェスパーはギター・メロディのマスターだし、俺もアマランスという、ヴォーカルにたくさんのフックがあるバンドの出身。俺は曲を書く時に、一度聴いただけで覚えてもらえるようなフックラインを持たせるようにしたいんだ。一度聴いただけでメロディが頭に残るもの。それが常に俺が曲を書く時のレシピ。それ以外は、どういう方向性に進むかはわからなかった。俺とイェスパーはどちらもリンキン・パークの大ファンなのだけど、サイラではそういう要素にさらなるレイヤーを足したいと思った。キーボードやリズミカルなパターンとか。さらに一般的なメタルよりも、もっとモダンなものにしたいというのもあった。テレビやラジオでもかかるようなもの。より広い層にリーチするものさ。だけど、「こういう音にしよう。こういうバンドみたいにしよう」みたいな話し合いは、まったくしなかったよ。座って、曲を書いたら自然にサイラができたんだ。とても素早かったよ。

 

ー スウェーデンがメロディの国だというのはとても興味深い発言です。確かにメロディック・デス・メタルもスウェーデンが発祥だと言えるでしょう。しかし、これは一体どこに起因しているのだと思いますか。スウェーデンの伝統音楽と関係があるのでしょうか。

 

ジェイク:そこにはさまざまな異なった理由があると思う。スウェーデンというのはとても歴史の長い国で、1500年くらい前からすでに地図に登場しているんだ。だから、音楽の伝統もとても長い。ヴァイキングの時代からずっとね。それから言語。スウェーデン語というのはとてもメロディックな言語なんだ。だから、俺たちがメロディに惹かれるというのは、当然のことだと思う。一方で、スウェーデンに成功したバンドがたくさんいるという話になると、アバやロクセットが大きく関係している。みんな彼らを聴いて育つから。さらに、スウェーデンでは音楽教育が無料なんだ。子供の頃、楽器を習いたければ、申請さえすれば、15年間無料で授業が受けられる。音楽や文化に対する政府の補助もあるしね。これもとても重要なことさ。

 

ー サイラというバンド名にしたのは何故ですか。どのような意味があるのでしょう。

 

ジェイク:これに意味があるのかはわからない。俺の娘はCyrenという名で、これは月という意味なんだ。それからペルシャ語ではCyraが月だという意味だと知った。さらに、俺がずっと大好きな曲の一つが、ヨーロッパの「Girl from Lebanon」でね。これらの繋がりについて考えていて、”Cyra”というバンド名が良いと思って、そこに”h”を足したんだ。5文字の方が見栄えが良かったから。なので現実には何も意味のない言葉なのだけど、俺にとっては子供たちの1人の名前から来ているんだ。

 

ー 先ほどリンキン・パークの名が挙がりましたが、サイラは他にはどんなバンドから影響を受けていると言えますか。

 

ジェイク:ニュー・アルバムを作っている現在について言えば、Falling In Reverseをたくさん聴いている。バンドにとって全般的なインスピレーションだとは言わないけれど、彼らのやっていることは、究極的に新鮮なメタルへのアプローチだよ。あとI Prevailもよく聴いている。彼らは現在もの凄い人気なんだ。彼らについては誇りに思うことがあって、何年か前にアマランスでアメリカ・ツアーをやった時、サポート・バンドをいくつかの中から選んだんだ。その時俺は、当時まったく無名だったI Prevailというバンドに一目惚れしてね。彼らはまだYouTubeでヴィデオを発表した程度で、アマランスとツアーをしている最中に、それが何百万回も再生されるようになったのさ。今やビルボードで1位を獲得するバンドだよ。だから、俺が発掘したバンドという感じがしてさ(笑)。もちろん実際に発掘した訳ではなく、彼らの音楽ビジネスの世界でチャンスを与えた人物の1人なのだけど。I Prevailは素晴らしいよ。サイラとの関連で言うと、リンキン・パークはずっと好き。Sixx:A.M.も、特にファースト・アルバムへの大きなインスピレーションだった。ただ全般的には、俺はあまり音楽を聴くタイプではないんだ。子供の頃はCDを何千枚も持っていて、レコード・コレクターでもあった。だけど、プロのミュージシャンになって、さらに他のバンドのために曲を書いたりもするようになると、まあこれはどんな職業でも同じだろうけれど、例えばジャーナリストであれば、一日中記事を書いて、それから家に帰ってやることは、記事を書くことではないだろう?他のことをやるはず。俺も同じさ。俺も普段はホッケーを見たり、子供たちと遊んだり。頭をクリアにするためにね。だから、俺は現在は音楽の消費者とは言えないのだけれど、とても気に入ったバンドを見つけると、例えばさっき挙げたFalling In Reverseみたいに、聴きまくることはある。

 

ー そもそもヘヴィメタルにハマったきっかけは何だったのですか。

 

ジェイク:とても長い話になるけれど、面白いことに、子供の頃俺はおばあちゃんの家で育ったんだ。俺が生まれた時、母親はまだとても若くて、自分の家を持っていなかったんだ。母親の兄弟たちは、俺よりも10歳ほど年上でね。俺が4-5歳の頃、彼らはちょうどティーンエイジャーで、ヘヴィメタルの大ファンだったんだ。彼らはいつもヘヴィメタルをかけていて、彼らのおかげでハロウィンやジューダス・プリースト、アイアン・メイデンを好きになった。つまり、俺はまだオムツをしている頃からヘヴィメタル・ファンだったんだよ(笑)。

 

ー サイラのファースト・アルバムはスパインファームからのリリースでした。彼らと契約した経緯はどのようなものだったのですか。

 

ジェイク:スパインファーム/ユニバーサルとの契約は、俺たちにとっては当然の選択だった。彼らはアマランスのために、世界中で素晴らしい仕事をしてくれたからね。それでアマランスを抜けた後に、ユニバーサルにサイラをプレゼンテーションしたら、とても気に入ってくれて。それですぐに契約をしたんだ。ユニバーサルを去ったのは、彼らの社内での組織改変のせいだから、まったく悪感情はないよ。そうするしかなかったんだ。ご存知のように、現在はニュークリア・ブラストに所属していて、彼らも素晴らしいレーベルさ。ニュークリア・ブラストからアルバムを出すというのは、子供の頃からの夢だったんだ。

 

ー ファースト・アルバムとセカンド・アルバムの音楽性の違いについてはどう考えますか。セカンドの方がヘヴィだという意見も多いですが。

 

ジェイク:そうだね、新しいバンドをやる場合、キャリアが5年であれ25年であれ、最初はそのバンドのやり方というものを見つける必要があると思う。人生と同じで、生まれてから歩き方を学び、数の数え方を学んでいく。バンドを結成する場合も、それに似ていると思うんだ。まるで暗闇を方向もわからずに歩いているようなもので、何しろバンドを始めた時は、ファンなんていないのだから。家で曲を書いて、その時点ではファンが気に入ってくれるかどうかもわからない。ファースト・アルバムを出して、すぐにツアーをやった。サバトンとアメリカ・ツアーもやったし、ヨーロッパのフェスティヴァルにもたくさん出た。とても早いペースだったよ。だからすぐに、ファースト・アルバムのどの曲がライヴ向きで、どの曲がそうでないかがわかった。と言うのも、いくつかの曲は、自宅でソファに座って、ウィスキーを飲みながらヘッドフォンで、じっくりと歌詞を堪能しながら聴く方が適していたからね。音楽の風景に身を浸しながら。だから、セカンド・アルバム用の曲作りの際、こうやってライヴをやり続けていくならば、ライヴ向けの曲が必要だと感じたんだ。それで、少なくとも5-6曲はよりヘヴィで、ダイレクトなアプローチな曲にした。ライヴでファンたちが大合唱できるような曲。これが、セカンド・アルバムの方が少々ヘヴィになった理由だと思う。今、サード・アルバムを仕上げようと、とても頑張っているんだ。俺は自画自賛をするタイプではないけれど、今回の作品に関しては、チーム全体をとても誇りに思っているよ。これは俺が関与した中で、一番のアルバム、一番の曲たちさ。ステロイド入りのサイラ3.0。ファンのリアクションが楽しみだね。

 

 

 

ー ニュー・アルバムの方向性はどのようなものなのでしょう。

 

ジェイク:サイラとして、決してまったく新しいものではない。ファンがサイラに望むものだよ。メロディックで、聴いていると笑顔になる音楽。聴いていると、じっとしていられなくなり、一緒に歌いたくなる。停止ボタンを押しても、その曲が頭に残っている。フックのあるコーラス、そしてハッピーなアティテュード。そして、必ずまた聴きたくなる。それがこのアルバムの持っているヴァイブ。一方で、今現在の音楽の光景へと踏み込んでいくパートもある。プロダクションに関しては、完全にモダンなもので、例えばさっき挙げたFalling In Reverseみたいな感じ。いわゆる自然な成長というやつさ。

 

ー どの程度まで完成しているのでしょう。

 

ジェイク:ほとんど出来上がっているよ。今スウェディッシュ・ハウス・マフィアと7週間のツアーに出ていて、今もオスロのホテルにいるのだけど、今日がツアーの最終日なんだ。ツアー中も時々戻って、俺がいない間に完成した曲にヴォーカルを録音したのだけど、あと1曲やればアルバムは完成という状況。次のシングルは1月に発表できると思う。

 

ー アルバムのリリースはいつ頃を予定しているのですか。

 

ジェイク:23年の第一四半期には出ると思う。実は、日本のいくつかのショウでは、このアルバムを全曲演奏する予定なんだ。日本のファンたちのために特別にね。つまり、日本のファンたちはリリースの1ヶ月前に、アルバム全曲聴けるのさ。

 

ー 自分がシンガーになるべく生まれたと自覚したのはいつですか。

 

ジェイク:実は偶然の産物なんだ。さっきずっとメタルを聴いていたと言ったけれど、実は俺はスポーツ・オタクでもあって、ホッケーをやっていたんだよ。ホッケーはかなりうまくて、ところがお尻を怪我して細菌感染を起こしてしまった。それでプロとしてのレベルでのホッケーを続けられなくなってね。それで自分を見つめ直し、もしプロのホッケー選手になれないのなら、他に普通の仕事ではないどんなことやれるだろうと考えて(笑)。それで「そうだ、ロックスターになれるかも。面白そうだし」って(笑)。スポーツの世界で1日7-8時間も練習するような世界にいたからね。そういうメンタリティが出来上がっていたから、バンドを始めて、惨憺たる有様で、だけど1時間のバンド練習が終わったあと、俺は6時間居残りをした。とにかく練習をして、歌を歌うとはどういうことなのかを追求したんだ。数年かかったけれど、やがてだんだんとわかってきた。歌を歌うということは、常に声を進化させるということ。年をとってくると、声の質も変わってくるから、10年前と同じように歌おうと思ったら、それを実現するための方法を見つける練習が必要になる。10年前だったら、ビールを15杯飲んで1時間だけ寝て、3時間ファルセットで歌い続けられた。ところが今では十分水分をとって、7時には寝て、12時間の睡眠をとって、1日誰ともしゃべらないなんていう準備が必要になる。10年前と同じように歌うためにはね(笑)。

 

ー お気に入りのヴォーカリストは誰ですか。

 

ジェイク:たくさんいるよ。さまざまなジャンルにね。パワー・メタルの歌い方で惹きつけられたのは、ハロウィンのマイケル・キスク。それから、もちろんジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード。あとになってから、アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンも好きになった。その後にジェフ・テイトも好きになった。このあたりは似たタイプのヴォーカリストだけれど、もっと年をとってから、Sixx:A.M.のジェイムズ・マイケルを好きになった。素晴らしいシンガーだよ。あとはハンマーフォールのヨアキム・カンス。彼は俺のキャリアの中で、多くの手助けをしてくれた人物でもある。若い頃に色々と面倒を見てくれて、彼がいなければ、今の俺はいないよ。正しい人物を紹介してくれて、正しい方向に俺を導いてくれた。それからロイ・カーン。実は俺はキャメロットに2年間いたんだ。バッキングのヴォーカリストとしてね。毎晩自分のアイドルと一緒に歌えるなんて、とても名誉なことだったよ。素晴らしいヴォーカリストはたくさんいるけれど、今挙げた人たちは、俺にとってのインスピレーションさ。それから、もちろん(リンキン・パークの)チェスターも、俺にインスピレーションを与えてくれる。歌い方ということではなく、俺たちは歌い方が違うからね。だけど、彼の歌詞の書き方にはとても惹きつけられるんだ。大きな影響を受けているよ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ジェイク:『Keeper of the Seven Keys Part I』、『Keeper of the Seven Keys Part II』、『Operation: Mindcrime』。

 

ー 即答ですね。この質問は難しいという人も少なくないのですが。

 

ジェイク:超簡単な質問だよ(笑)。いつも答えている内容だし。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ジェイク:まず、また日本に行けるということで、最高にエキサイトしているよ。それから、Burrn!で俺をベスト・ソングライターに投票してくれた人たちにありがとうと言いたい。ベスト・デビュー・アルバムにも選ばれたのかな。ご存知の通り、俺は何度も日本に行っていて、ファンとの交流もとても楽しんでいる。音楽をプレイするにあたって、お気に入りの場所さ。とにかくみんなにサポートしてくれてありがとうと言いたい。サイラのショウは2度延期されたけれど、ついにサイラとして日本のファンの前に立てるのは、とても楽しみ。さっきも言った通り、まだリリースされていないニュー・アルバムも演奏する。日本のファンが最初に聴くのさ。誰よりも先にね。ぜひチケットを買って欲しい。音楽業界では現在本当に多くのバンドがツアーをしていて、たくさんのバンドが日本にやって来ることは知っている。すべてのショウに行くのは難しいだろうけれど、もしまだどのアーティストを見にいくか決めていないのならば、ぜひサイラを見に来ることを考えて欲しい。素晴らしいショウをやるし、俺たちもベストを尽くすと約束するよ。

 

文:川嶋未来

 


 

【公演日程】
■Rumble in Japan Tour 2023

1月19日(木) / 20日(金) duo MUSIC EXCHANGE[東京]

1月21日(土) HUCK FINN[名古屋]

1月22日(日) amHALL[大阪]

 

■No Halos in Hell 2023

1月24日(火) 心斎橋 VARON[大阪]

1月25日(水) HUCK FINN[名古屋]

1月26日(木) / 27日(金) SPACE ODD[東京]

1月28日(土) KOENJI HIGH[東京]

 


 

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2019年11月22日発売

サイラ

『ノー・ヘイローズ・イン・ヘル』

CD+ボーナスCD

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【CD収録曲】

  1. アウト・オブ・マイ・ライフ
  2. ノー・ヘイローズ・イン・ヘル
  3. バトル・フロム・ウィズイン
  4. アイ・アム・ザ・ワン
  5. バイ・バイ・フォーエヴァー
  6. ドリームズ・ゴーン・ロング
  7. ロスト・イン・タイム
  8. キングス・トゥナイト
  9. アイ・ハド・ユア・バック
  10. ブラッド・ブラザーズ
  11. ヒット・ミー
  12. マン・オブ・エターナル・レイン

 

【メンバー】
ジェイク・E (ヴォーカル/キーボード)
イェスパー・ストロムブラード (ギター)
オウゲ・ヴァロヴィルタ (ギター)
アレックス・ランデンバーグ (ドラムス)