WARD LIVE MEDIA PORTAL

ザ・パイレイト
(Curse of Cain)
独占インタビュー

レーベルはSci-Fiメタルと言っているけれど
俺たちとしてはムービー・メタルだと思っている
映画みたいな音楽を目指しているからね

                                   

ご購入はこちら

文:川嶋未来 写真:George Grigoriadis

まるで『スターウォーズ』や『アヴェンジャーズ』のような、壮大なSFファンタジーの世界観をメタルに持ち込もうとしているスウェーデンのカース・オブ・ケイン。ついにアルバム・デビューを果たすということで、ベース・ヴォーカル担当のパイレイトに話を聞いてみた。

 

 

ー まず、バンドの成り立ちについて教えてください。

 

パイレイト:実は凄く自然に出来上がったという感じなんだ。このバンドの構想自体は20年くらいあってね。俺たちは全員業界に長く関わってきているから。友達同士が集まって、自分たち自身の何か新しいものを始めようと。こういうことをやるにはとても時間がかかる。音楽、ヴィジュアル、マスクに至るまで。それで、みんなでただコーヒーを飲んでいる代わりに、何かクリエイティヴなことをやろうという話になったんだ。プロで、かつ時間に余裕があるメンバーが集まって、カース・オブ・ケインを始めたんだよ。

 

ー つまり、バンドを始めるためにメンバー探しみたいなことは必要なかったということですね。

 

パイレイト:まったく必要なかった。友達と家族の集まりだからね。俺たちは全員このプロジェクトに最適な、つまり得意なことをやるポジションにいる。このバンドは全員がキャラクターになっていて、その中の人たちが、それぞれバンドに貢献しているんだよ。とても楽しいね。まるでロールプレイング・ゲームに参加するみたいに、それぞれが別のキャラクターになってバンドをやっているのさ。本人としてステージにあがって音楽をプレイするのではなく、ロールプレイング・ゲームをするみたいに、参加して楽しんでいるんだ。カース・オブ・ケインを聴いてくれる人たちも、同じように楽しんでくれるといいな。

 

ー レーベルの資料では、あなたたちのスタイルは「Sci-Fiメタル」と書かれていましたが。

 

パイレイト:確かにレーベルはSci-Fiメタルと言っているけれど、俺たちとしてはムービー・メタルだと思っている。映画みたいな音楽を目指しているからね。すべての曲が、自分たちで考えたストーリーを中心に展開していく。ケインが主役の未来のお話さ。だから、Sci-Fiというのは音楽スタイルというよりも、ストーリーについての表現だね。音楽は、サウンドトラックのように、このストーリーにフィットしたものでなくてはならない。

 

ー 具体的にはどのようなアーティスト、音楽から影響を受けているのでしょう。

 

パイレイト:これは難しい質問だな。俺たちはみんな色々な音楽を聴くからね。俺たちにとって一番大切なのは音楽や曲自体であって、自分たちを一つのジャンルに閉じ込めたくはない。もちろんやっているのはメタルだけれどね。俺たちはあらゆるスタイルのメタルが好きで、パワー・メタルをやろうとか、デス・メタルをやろうとか、制限はしたくないんだ。ホラー映画からのインスピレーションも大きい。ホラーのサウンドトラック。それを俺たちの大好きなメロディと混ぜるんだ。サウンドにはあまり現れていないかもしれないけれど、パワー・メタルも大好きだから。パワー・メタルのメロディやヴォーカル・ラインからのインスピレーションは大きいよ。あとは80年代のサウンドトラック。こういったものを、7弦ギターなどを使ってモダンなサウンドにしているのさ。未来的なストーリーに合うようにね。本当にダークなホラー映画みたいにするんだ。

 

ー 具体的にはどのあたりのホラー映画がお好きなのですか。

 

パイレイト:こういう話になると、俺たちは真のオタクだからな(笑)。『2000AD』みたいなコミックも好きだし、古いロールプレイング・ゲームからもインスピレーションを受けている。だけど、ホラー映画ということになると、『エイリアン』、『プレデター』あたりは素晴らしいね。もっとSFっぽいのだと、『デューン』とか、『ブレードランナー』とか。『トータル・リコール』とか、ああいう未来を舞台にした映画が大好きなんだ。80年代の映画は、ストーリーが優れているよね。『スターウォーズ』の世界観も素晴らしいし。だけど、俺たちはもっとスプラッターっぽいのやブルータルなのが好きなんだ。『スターシップ・トゥルーパーズ』とかは宇宙映画でありながら、見てみるとたくさんスプラッターのシーンがある。とてもインスピレーションを得られるよ。とてもダークでゴア(笑)。ホラーだと『ヘルレイザー』みたいなクラシック。フレディ・クルーガーとか、クラシックなキャラクターも、俺たちにとって重要。こういうキャラクターは、人の記憶に残る上で大切なんだよ。アイアン・メイデンのエディやハロウィンのカボチャも同じだよ。

 

ー では、お好きなパワー・メタル・バンドとなると、どのあたりでしょう。

 

パイレイト:やっぱりハロウィンだね。いつも聴いているよ。それにパワー・メタルをやっている友人も多い。サバトンとか。彼らは素晴らしい友人であり、素晴らしいバンドさ。素晴らしいパワー・メタル・バンドはたくさんいる。まあ、でもハロウィンが常に一番のインスピレーションかな。

 

ー とすると、カース・オブ・ケインの音楽は、パワー・メタルと映画のサウンドトラックをミックスしたスタイルという風に説明できるということでしょうか。

 

パイレイト:そうだね、そこに少々デス・メタルのブルータルなタッチを加えたもの。俺たちはブルータルでハードな音楽も好きなんだ。スウェーデンのアット・ザ・ゲイツとか。あと、極端にダウンチューンしたメシュガーみたいなバンドからもインスピレーションを受けるよ。

 

 

 

ー バンド名を「カイン(ケイン)の呪い」としたのは何故ですか。当然聖書からとられたものですよね。

 

パイレイト:そう。とてもイカした名前だし、ここからちょっとしたひねりを加えたストーリーを作り上げられるから。ケインを俺たちが作り上げているストーリーの主役にしてね。『ヴァンパイア・ザ・マスカレード』というRPGでは、ケインは世界初のヴァンパイアだということになっている。ブラム・ストーカーより前の、サタンよりも邪悪なキャラクター。これは、ホラーSFストーリーの中で、とてもイカしたテーマになりうるだろ。

 

ー デビュー・アルバムはコンセプト・アルバムになっていますが、具体的なストーリーを教えてもらえますか。

 

パイレイト:これは歴史上初めて殺人を犯したケインについてのお話。実は人類はこの世界に最初に存在したものではなく、最後に残るものではなく、人類以前に何か違うものが存在していた。その違うものが、アダムとイヴに、2人以上子供を作ってはいけないと命じた。そうでないと地球は人類に占領されてしまうからね。だけど、彼らはそれを聞かず、ケインとアベルをもうけた。”The Enlightened”と呼ばれるその別の存在は、彼らを罰するために、”Wreck”という寄生虫を作り出し、アベルに寄生させた。その寄生虫が世界中に広まってしまうのを防ぐために、ケインは自分の弟を殺さなくてはならなかったんだ。そして大戦後、未来のディストピアの世界で、ケインはすべてのWreckを倒すために奮闘するのさ。簡単に言えばね。話そうと思えば10分間でも喋りつづけられるよ(笑)。

 

ー このストーリーはセカンド・アルバム以降も続いていくということでしょうか。

 

パイレイト:そう。今後もこれらのキャラクターは登場していく。ファースト・アルバムは、カース・オブ・ケインに関するプレゼンテーションのようなもので、彼の長い人生がどのようなものだったかについて。次のアルバムでは、バンドのキャラクターについて。バンドのキャラクターは、彼のクルーなんだ。次は俺たちに焦点を当てる予定さ。このストーリーに基づいたショートムービーも作るつもりだよ。

 

ー ヴィジュアル・コンセプトについても教えてもらえますか。

 

パイレイト:ヴィジュアル・コンセプトは、映画内に登場するキャラクター。『スターウォーズ』や『2000AD』みたいな壮大な世界だよ。俺たちはその世界に住むキャラクターで、それぞれ異なったミッションを持っている。『スターウォーズ』もたくさんのシリーズがあって、様々なことがあの世界の中で起こっているだろう?中の人間については重要じゃない。音楽とストーリーが大切なんだ。だから、みんなマスクをかぶっている。このキャラクターは俺たち自身よりも長く生きるのさ。ファンもこの世界で自分自身のキャラクターを作り出すことができる。コスプレみたいに開かれた世界なんだよ。大人であっても、俺たちの世界に入って楽しむことができる。パンデミックの時に、このグレーの世界以外に楽しめる世界が必要だということがはっきりしたからね。みんな音楽や映画が好きだろう?だからのこの2つの要素を混ぜ合わせたらどうだろうと思ったのさ。

 

 

ー それぞれパイレイト、タイムキーバー、ソウルキーバー、レインボー、メカニックというキャラクターになっていますが、それがそのまま登場人物ということなのですね。

 

パイレイト:そう。モンスターを倒すというミッションを隠すために、バンドをやっているんだ。例えばパイレイト(海賊)は、船を操縦できる。俺たちは全員ケインのクルーで、ミッションを遂行するために、それぞれ役割がある。例えばソウルキーパーの手は、長く生きすぎているためにしばしば落ち込むケインを慰めることができるんだ。『アヴェンジャーズ』みたいなものだよ。それぞれが違った能力を持っていて、チームを組んでいる。ファースト・アルバムはただのイントロダクションで、ここからどんどんとストーリーが展開していく。俺たちについて来てくれる人たちは、この世界に没頭することができるだろう。

 

ー アートワークは何を表現しているのですか。描かれているのはケイン自身ですよね。

 

パイレイト:そう。サイドから出ている手は、寄生虫Wreckのもの。よく見ると、ケインの帽子に顔が描かれているのがわかるだろう?あれはスウェーデンの国王だったグスタフ3世なんだ。スウェーデンの歴史に詳しければ知っているだろうけれど、彼は仮面舞踏会中に暗殺されている。彼はとても演劇が好きで、演劇や劇場をスウェーデンに普及させたんだ。あの顔は、彼のデスマクスなのさ。

 

 

ー ケインがグスタフ3世の帽子をかぶっているのは何故ですか。

 

パイレイト:ケインはずっと生きてきて、音楽やアートが大好きだということを示している。それに俺たちがスウェーデンのバンドだということも示唆している。パッと見ただけでは、これが誰の顔かはわからないけれど、グスタフ3世のものだとわかれば、ちょっとしたギミックになるし。

 

ー サバトンのトミー・ヨハンセンがゲスト参加をしていますが、どのような経緯があったのですか。

 

パイレイト:彼は友達だからね。何年か前に一緒にカラオケに行って、「俺たちのアルバムに参加してくれないか?」って言ったら、「もちろん」みたいな感じで。友達だから自然とそうなったと言うか(笑)。スウェーデンでは多くの人たちが俺たちのやっていることをずっと見て来てくれて、やっとアルバムが出るので、彼らも喜んでくれているんじゃないかな。トミーもその中の1人さ。

 

ー ライヴのステージはどんな感じになるのでしょう。

 

パイレイト:そうだね、一度やったことがあるのだけど、その時はフルのプロダクションで、ステージにはモンスターもいた。ライヴをやる時は、ある程度の規模でないとダメなんだ。小さなステージではやりたいことが実現できないからね。カース・オブ・ケインのショウというのは、本当に楽しい体験ができる場でないとならないんだ。「何ていうものを見たんだ!」という気持ちになってもらわないと。とてもハッピーな気持ちになって、もっと俺たちのことを知りたいと思うものさ。このテーマをステージに持ち込むから、ライヴというより演劇みたいなものだよ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

パイレイト:(ハロウィンの)『Keeper of the Seven Keys』の2枚。あれは傑作だよ。インスピレーションも多く受けているし。パンテラからも何か選ばないとな。ヘヴィで素晴らしいバンドだよ。あとマシーン ・ヘッド。『Burn My Eyes』は名作。難しい質問だな。パラダイス・ロストも。カース・オブ・ケインを良く聴けば、デス・メタルからのインスピレーションも感じられるはず。

 

ー ではお気に入りのサントラ3枚となるとどうですか。

 

パイレイト:『エクソシスト』だね。それから『ヘルレイザー』。『エイリアン』や『プレデター』も。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

パイレイト:日本のヘヴィメタル・ファンのみんな。俺たちは日本からもたくさんインスピレーションを受けているよ。特にブルータルなものからね。俺たちの音楽も、君たちみたいにブルータルでナイスさ。

 

ー 日本のホラーやアニメなども好きなのですか。

 

パイレイト:大ファンだよ。日本の作品に限らず、ジャパニーズ・エディションは他の国ではブルータルすぎてカットされたシーンが含まれていたりするだろ。アニメでは、『ゴブリンスレイヤー』。あれは最高だよ。日本がなければカース・オブ・ケインは存在していないよ。俺たちの音楽が君たちに十分ブルータルだといいな。

 

文 川嶋未来

 


 

ご購入はこちら

2023年5月26日

Curse Of Cain

『Curse Of Cain』

CD

【CD収録曲】

  1. ザ・マーク
  2. アライヴ
  3. エンブレイス・ユア・ダークネス
  4. ブレイム
  5. ハート
  6. ネヴァー・シー・ザ・ライト・アゲイン
  7. ザ・グラウンド
  8. デッド・アンド・べリード
  9. ブラッド・ジ・エンド

 

【メンバー】
ザ・ソウルキーパー (ヴォーカル)
ザ・タイムキーパー (ギター)
ザ・パイレイト (ベース)
レインボー (ヴォーカル、パーカッション)
ザ・メカニック (ドラムス)