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フェルナンダ・リラ
(Crypta)
独占インタビュー

とてもダークなアルバムだけれど
私の意図は私が経験したとても悪い出来事を
何か美しいもの
あるいは現在ももがいている
誰かへのサポートに変えることよ

                                   

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文:川嶋未来 写真:Estevam Romera

現在ヨーロッパを中心に絶大な人気を誇るオール・フィメール・デス・メタル・バンド、Cryptaが、ニュー・アルバムをリリース!ということで、ベース・ヴォーカル担当のフェルナンダに話を聞いてみた。

 

 

 

ー ニュー・アルバム『Shades of Sorrow』がリリースになります。前作のデビュー・アルバムと比べ、どのような点が進化、変化していると言えるでしょう。

 

フェエルナンダ:全体的な変化としては、今回アルバムは、色々な点において、もっとずっと成熟したものになっていると思う。誤解はして欲しくないのだけれど、『Echoes of the Soul』はとても良いデビュー・アルバムだった。だけど、当時私たちはいまだCryptaの本質とは何なのか、Cryptaのサウンドとはどのようにあるべきかを探り、理解しようとしていた。『Shades of Sorrow』はデビュー作に対するフィードバックを踏まえ、バンドとしてのエッセンスを捉え、メロディックなパートともっとアグレッシヴなパートなどを混ぜ合わせるという要素はそのままで、そこから実験していったの。だから、基本的にCryptaとしてのすべてのエッセンスを進歩させたアルバムになっていると思う。自分たちのサウンドはわかっていたから、成熟した作品にできたと思うの。それからもう一つ、これはバンドとしての自然の進歩なのだけれど、ミュージシャンとしては常に色々なところで限界を推し進め、新しいことを学んでファンに見せようとするもの。私たちも全員、このミュージシャンとしての自然でオーガニックな成長をしていて、それがアルバムにも現れていると思うわ。技術面の成熟として。あと、今回初めてギターのタイナと一緒に曲を書いたの。『Echoes of the Soul』では、彼女は曲作りはしなかったのだけれど、今回は一緒に曲を書いたわ。二人の共同作業はとてもうまくいって、パーフェクトなミックスになった。前作ではエピックだったメロディも、今回もっとずっとダークなものになったわ。今回のアルバムはもっとダークで、とてもエモーショナルな作品。私もタイナもダークで不気味なメロディが大好きで、二人ともとても感受性が高いの。それを音楽に反映させたのよ。より成熟した、より暗い、よりエモーショナルな、そして技術的にもより成熟した作品と言えるわね。

 

ー ギターのソニアが脱退しています。何が起こったのでしょう。

 

フェルネンダ:スーパー・フレンドリーな脱退よ。今でも友達だし、私たちのスペインでのコンサートも見に来る予定。だけど、一緒にバンドをやるのは難しくなっていた。彼女はもっと、自分がリードできるバンドをやりたがっていて。彼女はすでにコブラ・スペルをやっていて、そこではそういう立場だったから。Cryptaはとても民主主義的なバンドなの。彼女には彼女自身のプロジェクトが必要だったのよ。自分ですべてをコントロールできるバンドが。それはまったく問題のないこと。お互いが好きだし、Cryptaの中でも何とかそうしようとしたけれど、不可能だった。それで一緒にやるのが難しくなっていったから、脱退がみんなにとって一番の決断だったと思う。彼女はコブラ・スペルでとてもハッピーにやっていて、私たちも彼女がハッピーでハッピーよ。私たちもCryptaとしてうまくやっているし。必要な変化だったのよ。私たち全員にとって。今も仲良くて話もするし、ショウにも来るし。とてもクールよ。

 

ー 新ギタリストのジェシカはどのようにして見つけたのでしょう。彼女を選んだ理由は何だったのですか。

 

フェルナンダ:彼女はインターネット上でとても有名だったのよ。Instagramのフィードにもしょっちゅう出てきて、それで彼女のメタリカやアイアン・メイデンのカバーを見て知っていたの。ソニアが脱退を決めた時、バンドとして初のブラジル・ツアーが近づいていて、誰かヘルプが必要だったのだけれど、ジェシカしかいないと思って。ソニアはとても良いギター・プレイヤーだったから、彼女が書いたリフを弾ける技術を持った人物が必要だったのだけれど、ジェシカならプレイできるだろうと。彼女は最初ライヴのヘルプという形でラテン・アメリカ、ヨーロッパの2つのツアーに参加した。それからオフィシャルなメンバーを決めなくちゃということになったのだけれど、誰かを入れてみて、すぐにはうまくやれるかどうかわからない。見極めに時間が必要なのよ。私たちとしては、誰か別の人物を探すつもりはまったくなくて、ただジェシカが私たちの申し出にイエスと言ってくれることを期待していたという感じ。彼女が大好きなのよ。彼女は、ただとてもテクニカルで才能のあるミュージシャンで素晴らしいギタリストだというだけではなく、とても良い人なのよ。ツアー中もとてもやりやすいし、とても積極的。私たちはとてもハードワークをするバンドなのだけれど、それについて来られる人物でないといけない。彼女はヘルプの時ですら、色々とアイデアを出して私たちを助けてくれたわ。だから、彼女を選んだのは当然だった。彼女が私たちのオファーを受けてくれて、本当にハッピーよ。とても良いチームなの。

 

 

ー タイトルの『Shades of Sorrow(=悲しみの色合い)』には、どのような意味が込められているのでしょう。歌詞をすべて読みましたが、確かにとてもエモーショナルで、あなたが感受性が高いというのがよくわかる内容でした。

 

フェルナンダ:これは確かにとてもヘヴィな内容のアルバム。もともとはコンセプト・アルバムにするつもりだったのだけれど、私たちはとても几帳面で、時間が足りなかったから、そうはできず、だけどセミ・コンセプト・アルバムという感じ。ストーリーやアルバムを通じた展開はあるわ。全体的なテーマが、すべての曲に行き渡っている。このアルバムは、苦痛を通じた度を語るもの。感情のさまざまな色合い、辛い時に経験する感情。トラウマ、回復、不安、恐怖、孤独、怒り。さまざまなものを歌った曲が入っている。たくさんの悲しみや苦痛の色合いよ。私たちは普段苦痛というのは一種類だと思っているけれど、実際に経験してみると、それにはたくさんの色合いがあることがわかる。それがアルバムのテーマ。『Shades of Sorrow』というタイトルは、アルバムの全体のコンセプトを表すものよ。このアルバムを聴けば、違った色合いの悲しみを色々と経験することになるわ。これはとても激しいエモーショナルな作品になっている。というのも、これは歌詞的に、とてもパーソナルなものなの。ほぼ自伝的なもので、歌詞のフレーズの多くは私の日記から取られているのよ。辛い時期に書き溜めていた日記をすべて読み返したわ。当時のフィーリングからインスピレーションを受けたくて。だから、歌詞の多くは、私の日記を英語にしたものなの。

 

ー 個人的には女性のミュージシャンのみが作りうるアルバムだと感じたのですが

 

フェルナンダ:うーん、私たちは誰でもこういった感情にアクセスしうると思うわ。女性がこういう感情により簡単にアクセスできるというのは確かだとは思う。基本的に女性の方が感情的であるから。一方で、社会には「男性は強くなくてはいけない」みたいなドグマもあるでしょ?なので、あなたのいうことは正しいと思う一方、このアルバムはそういう感情を感じている人たちすべてに対して、サポート、抱擁を与えているものになっている。私も経験した苦痛で、今このアルバムを聴いている人が同じ経験をしているなら、それは女性でも男性でも関係がなく、私がサポートする。あなたは一人じゃないということ。女性がこういう感情にアクセスしやすく、こういうことを表現しやすいというのは確かだと思うけれど、男性であってもこういう感情は持つはずよ。

 

ー つまりこれはとてもダークなアルバムである一方、非常にポジティヴな面も持っているということですね。

 

フェルナンダ:その通りよ。アルバムの終盤に向かって、もっとポジティヴな曲が出てくる。例えば「Lift the Blindfold」は、目隠しをとり、現実を認識するという内容で、「Lord of Ruins」は、人生における混乱を観察し、その中を生き延びることについて。混乱はあり続けるけれど、それを克服し、それと共に生きること。これらはつらい時期を克服して生きていくことについてよ。だから、最後にはピアノのアウトロが入っていて、これはもっと明るいものになっているの。アルバム最初の「The Aftermath」や「Dark Clouds」はとてもダークで始まって、最後はやる気の出る終わり方になっている。確かにこれはとてもダークなアルバムだけれど、私の意図は、私が経験したとても悪い出来事を、何か美しいもの、例えばアート、あるいは現在ももがいている誰かへのサポートに変えることよ。アルバムには、そういうとても重要なバランスがあるの。ダークな内容を語っているからダークな作品であるけれど、啓蒙のツールたりえるという点で、明るい作品でもあるわ。

 

 

 

ー アートワークは何を表現しているのですか。

 

フェルナンダ:アートワークのアイデアは、私とドラマーのルアナ二人のアイデアのミックス。私はタロットをやるのだけれど、このアルバムのコンセプトを考えて、歌詞を書いている時に、「ソードの8」のカードが何度も頭に浮かんだの。アートワークは、美的理由でソードは7本しかないのだけれど(笑)、基本的にあれは「ソードの8」を描いたもの。このカードは、苦痛、苦痛や恐怖のサイクル、自分自身の恐怖に囚われることを表している。同時にそれは、その状況から新しいシチュエーションへと抜け出せるのは自分自身だけということも表しているわ。ソードはさまざまな悲しみや苦痛の色合いを表していて、座っている人物は影の自分、恐れている自分、自分の中にいる悪霊。この人物は、上にソード、下にはローソクという危機的な状況に囚われていて、決してガッチリと縛られている訳ではない。だから、この人物がロープをはずし、この危機的状況から抜け出すことはできる訳で、それがこのアルバムのアイデア。「Lord of Ruins」のビデオは、このアートワークと密接に繋がった内容になっているわ。このアートワークのライヴ・アクションで、自分の中に潜む悪霊とソードで戦って、最後にはこの人物が自分自身となる。つまり、自分自身のベスト・バージョンへと成長するために、内なる悪霊と戦うということ。自分自身を囚われている恐怖から解放するということ。

 

 

ー 今回は、アーサー・リスクではなく、ラファエル・ロペスというブラジル人プロデューサー、エンジニアを迎えていますね。

 

フェルナンダ:プロデューサーという観点からいうと、今回はブラジル出身の人物である必要があったの。ブラジルでレコーディングする予定で、海外から誰かを呼ぶ予算はなかったから。ラファエルとは過去にいくつかのプロジェクトで仕事をしたことがあって、彼はブラジルで最高のプロデューサーなのよ。とても辛抱強くて落ち着いていて、バンドのやりたいことを理解してくれる。とても素晴らしい仕事をしてくれたわ。ミックスについては、何か違うことを試したかった。『Echoes of the Soul』とは違ったサウンドになることはわかっていたから、違ったエンジニアとやりたかったの。『Echoes of the Soul』が本来こういうサウンドであるべきだったというサウンドにしたかったというか、だけどアーサー・リスクに問題があったということではないわ。個人的にはアーサーのことが大好き。実はこのインタビューの前に、彼と会って話をしたのよ。今回はただ、何と言ったらいいのかしら、技術面でのチョイスというか、アーサーは素晴らしいけれど、ただ『Echoes of the Soul』とは違うサウンドにしたかったということ。

 

ー アメリカでライヴ中、竜巻に襲われたというニュースが報じられていましたが。

 

フェルナンダ:人生の中で最もトラウマになる経験だったわ。本当に私たちも死ぬと思った。竜巻が会場を直撃して、私たちの車も破壊されて。一名のファンが亡くなって、怪我をした人も多かった。誰にもあんな経験をして欲しくないわ。まさかショウで誰かが亡くなってしまうなんて、考えもしなかったこと。竜巻というのは本当に命を脅かすものよ。血塗れになったファンを見るのは、とてもつらい経験だった。会場に置いてあった楽器がどうなっているのかもわからず、新しい車を調達してツアーを続けられるのかもわからなかった。とてもストレスのある、トラウマになるような経験だったけれど、何とか生き延びたわ。人生で最悪の経験だったけれど、美しい部分もあった。あの経験のおかげで、自分のメタルに対する情熱を新たにできたの。どんなに酷いことが起こっても、メタルが支えてくれるということ。ファンたちが私たちのために6万ドルもの資金を調達してくれて、さらにあの事故で怪我をした人、その家族のためにさらに何万ドルも集めてくれた。グローバルなコミュニティ、家族としてのメタルへの信頼を新たにできたわ。恐ろしい経験ではあったけれどね。

 

ー 今着ているのはD.R.I.の『Thrash Zone』Tシャツですよね。

 

フェルナンダ:そうよ(笑)。

 

ー こういった古いバンドの情報は、どのようにして得ているのですか。

 

フェルナンダ:私のお父さんがメタルヘッドなの。だから、子供の頃からいつもメタルを聴いて育ったのよ。お父さんが色々と教えてくれて、彼はNWOBHMとか、80年代のバンドが大好きで。私のメタル・キャラクターというのは、お父さんによって作られたと言えるわ。その後メタルのグループに属するようになって、そこにはメタルの百科事典みたいな人たちがたくさんいて(笑)。それでオールドスクールなバンドを探しまくって、色々なバンドを見つけては、お互いに教えあっていたの。今でも色々と興味津々だけれど、以前は本当に凄くて、メタルのことしか考えていなかったわ(笑)。

 

ー では最後に日本のCryptaのファンへのメッセージをお願いします。

 

フェルナンダ:サポート、本当にどうもありがとう。あなたたちのおかげで、私たちは一番好きなことを続けることができている。自分たちのアートで、人々を笑顔にできる。あなたたちがいなかったら、Cryptaは存在できないわ。あなたたちこそが、私たちの燃料なのよ。自分たちのローカル・メタル・シーン、そしてアートというものをサポートし続けて。パンデミックという暗い時代を経験して、みんなアートの重要さに気づいたはず。アートというもの無しでは、あの暗い時代は切り抜けられなかった。アートが私たちの人生を救ってくれるのよ。だから、アート、アーティストをサポートし続けましょう。何かうまくいかないことがあっても、必ずアートというものがある。私たちのニュー・アルバムを気に入ってくれると嬉しい。このアルバムが、あなたたちを受け入れ、何らかの形でサポートし、インスパイアするものになることを望むわ。

 

文 川嶋未来

 


 

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2023年9月8日

Crypta

『Shades of Sorrow』

CD

【CD収録曲】

  1. ジ・アフターマス
  2. ダーク・クラウズ
  3. ポイゾナス・アパシー
  4. ジ・アウトサイダー
  5. ストロングホールド
  6. ジ・アザー・サイド・オブ・アンガー
  7. ザ・リンボ
  8. トライアル・オブ・トレイターズ
  9. ララバイ・フォー・ザ・フォーセイクン
  10. エイジェンツ・オブ・ケイオス
  11. リフト・ザ・ブラインドフォールド
  12. ロード・オブ・ルーインズ
  13. ザ・クロージャー
  14. オープン・ウーンズ《日本盤限定ボーナストラック》

 

【メンバー】
フェルナンダ・リラ (ヴォーカル、ベース)
ルアナ・ダメット (ドラムス)
タイナ・ベルガマシ (ギター)
ジェシカ・ディ・ファルチ (ギター)