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クリス・レイニー
(アット・ザ・ムーヴィーズ)
独占インタビュー

このバンドは何でも好きなことをやれるんだ
アット・ザ・ムーヴィーズに関しては
何か期待されることもないし
俺たちが次に何をやるのかは誰もわからない
ページは真っ白なんだよ(笑)

                                   

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文:川嶋未来

プリティ・メイズのクリス・レイニーの発案で結成されたアット・ザ・ムーヴィーズは、その名が示す通り、映画に使われた楽曲をハード・ロック・アレンジでプレイするバンド。参加メンバーは、アラン・ソーレンセン、モルテン・サンダガーらの元プリティ・メイズ勢、ビョーン”スピード”ストリッド(ソイルワーク、ザ・ナイト・フライト・オーケストラ)、ポンタス・ノルグレン(ハンマーフォール)、ポンタス・エグベリ(キング・ダイアモンド)らと、あまりに豪華。90年代の映画をテーマとしたセカンド・アルバム『ザ・サウンドトラック・オブ・ユア・ライフ – Vol.2』がリリースになるということで、クリスに話を聞いてみた。

 

 

 

ー アット・ザ・ムーヴィーズというバンドを始めたそもそものきっかけは何だったのですか。

 

クリス:最初のロックダウンが始まった直後、妻と一緒に家にいたんだ。妻は調子が悪くてね。それで2人でソファに座って映画を見ていた。ヒュー・グラントやドリュー・バリモアなどが出ている『ラブソングができるまで』というやつ。その映画の中で、過去のものになってしまったバンドが、「Pop! Goes My Heart」という曲を演奏していたのだけど、これが大好きになってしまってね(笑)。「これは最高にダサい!こういうのをやりたい!」って(笑)。それでスタジオに行って、この曲のロック・ヴァージョンを作って、アラン・ソーレンセンとビョーン・ストリッドに送ったんだ。すると彼らも「何かこういうことをやろう」って。それが始まりだったんだ。

 

ー メンバーはどのようにして選んだのでしょう。

 

クリス:メンバー選びはわりと簡単だったよ。アランとはもともと何か一緒にやろうという話になっていたから、彼に友達にあたってみると言って、まずプリティ・メイズの元キーボーディスト、モルテン・サンダガーに電話をかけた。俺が彼の後釜としてバンドに入った訳だからね、俺たちが友達であることを不思議がる人もいるけれど、友達なんだ(笑)。ギターはポンタス・ノルグレンに頼んだ。彼のことは17歳の頃から知っているからね。そしてポンタス・エグベリ。実は俺とポンタスとポンタスは、05年頃Zan Clanというバンドをやっていたんだ。シンガーはすぐにビョーンに頼むことにした(笑)。映画音楽をやるとなれば、適任のシンガーだからね。そしてリネア(ヴィクストロム・エッグ)。俺は彼女が赤ちゃんの頃、おむつを換えたことがあるよ。彼女のことはずっと知っているんだ。父親のトーマス・ヴィクストロムとは十代の頃からの友達なのさ。という訳で、みんな友達だから簡単に決まったよ。ただ面白いことに、メンバー全員で会ったことは一度もない。

 

ー 『Vol.1』にはゲストとしてロニー・アトキンスやブルース・キューリック、ヤコブ・ハンセンらが参加しました。

 

クリス:最初に参加が決まったのはロニー・アトキンスだった。彼とは親友で、毎日会話をするからね。彼はとてもこのプロジェクトに興味を持っていて、「次はどの曲をやるんだ?」なんていう感じで。それで『マッドマックス/サンダードーム』をやると言ったら、「それは俺がやるしかない!」って(笑)。「俺たちはバンドとしてやっているから」って伝えたんだけど、「手術してからまだ一曲も歌っていないんだ。試させてくれ」と言われてね。それで歌ってもらったら、以前よりもさらにうまく歌っていたから、涙が出たよ。ブルース・キューリックも「それは素晴らしいプロジェクトだね!」みたいな感じで、「参加するかい?ただしギャラもない。ただ楽しむだけで良いのなら」と言うと、「構わないよ。ファイルを送ってくれ」って。ヤコブも同じ。とにかく楽しんで作ったんだ。

 

ー 「アット・ザ・ムーヴィーズ」(=映画館にて)というのは非常にダイレクトな名前ですが、どのようにして決めたのでしょう。

 

クリス:これもとても陳腐な名前だよね(笑)。最初の曲の告知用ポスターを作っていて、レイアウトはすでにできあがっていたんだ。映画のポスターみたいな感じでね。だけどバンド名が決まっていなかった。それで一番に思いついた名前が「アット・ザ・ムーヴィーズ」で、グーグル検索をしてみたら、何百万もヒットするから、これは良い名前だぞって(笑)。簡単に決まったよ(笑)。

 

ー カバーする曲はどのように決めたのですか。

 

クリス:1つガイドラインがあったんだ。ロック・ソングはやらないということ。バカみたいだからね。「デンジャー・ゾーン」や「アイ・オブ・ザ・タイガー」みたいな曲は、原曲がそのままで素晴らしいから。ああいうのをカヴァーするのは絶対無し(笑)。「『ネヴァー・エンディング・ストーリー』をやろうと思うんだけど。」「え、何だって?」みたいな方がよっぽど面白いから(笑)。ポップスをカヴァーして、フルートやサックスが入っていれば、それをギターで演奏する。だけど、キーもテンポもアレンジメントも変えない。それが俺たちにとってのガイドラインのようなものだったんだ。「もっとメタルっぽくやるのかと思った」と言われることもあるけれど、ドコタンドコタンってメタルっぽくやるのなんて簡単だからね。俺たちは原曲のアレンジメントそのままにやったのさ。

 

ー なるほど、「デンジャー・ゾーン」や「アイ・オブ・ザ・タイガー」は80年代のクラシックにもかかわらず、なぜ取り上げていないのか不思議に思っていたのですが、理由がわかりました。

 

クリス:わかってくれたかい(笑)。ありがとう(笑)。

 

 

ー ロックダウン下でのアレンジメントやレコーディングはどのようなプロセスだったのでしょう。

 

クリス:もともとは1曲だけやって、とても楽しかったから続けていることにしたんだ。結局『Vol.1』で、11曲を11週間かけてやることになった。もうメチャクチャだったよ(笑)。まず、金曜日に俺がデモを作る。そして他のメンバーが、そのアイデアについてイエスかノーを言う。それからドラムマシンを除いてアランに送ると、彼がドラムを録音する。その後ベースを除いてエグベリに送る、なんていう感じのプロセスだった。締め切りは水曜日で、全員がそれまでにファイルを送ってくる必要があった。というのも、エグベリかソーレンセンが、それからビデオを作るから。そしてそれを木曜日の6時に発表して、ワイングラスを手に「ハッピー・リリース・デイ!乾杯!」ってね。そして俺はすぐに「よし次のアイデアを思いついたぞ」って、金曜日にデモを作ってと、また同じプロセスが始まる(笑)。狂ったように働き続けたよ。だけど、とにかく楽しかった。

 

ー 曲はすべてあなたが選んだのですか。

 

クリス:他のメンバーもアイデアを出してくれたよ。「ア・ヴュー・トゥー・ア・キル」はアランのアイデアだし。そうそう、俺が金曜日にデモを作って、色々とやった挙句、火曜日にアランに「これはうまく行かないよ」と言われたのが最悪のシナリオだった。1日で新しい曲を作らなくちゃいけなかったからね(笑)。

 

ー それはどの曲ですか。

 

クリス:「When the Going Gets Tough, the Tough Gets Going」だよ。他にも何曲かあったけど、これが一番記憶に残っている。この曲は楽しみにしていたんだけどね。マット・ラングの曲だから(笑)。だけど、この曲はストレートとシャッフルの中間のようなスウィングがあって、うまくやるにはみんなで同時にプレイする必要があったんだ。

 

ー 一番大変だった場面を聞こうと思っていたのですが、それが一番でしょうか。

 

クリス:(笑)。そうかも。まあ実際一番苦労したのは、曲を手放すこと。意味わかるかな?アルバム2枚、22曲を1年で仕上げた訳だからね。この期間、俺はさらに2枚別のアルバムをプロデュースしたし、子供たちの面倒もみなくてはいけなかったし(笑)。だから、一番大変だったのは、素早く仕上がりに満足しなくてはいけなかったところさ。「よし、これで十分だ、これで良い」ってね。ミックスにこだわりすぎたりせずに。そういう意味で、とても正直な仕上がりになっていると思う。アランは自分のリハーサル・ルームでドラムを録音したから、ドラム・サウンドにマジックをかけようとした。リネアは俺のマイクを借りて録音したのだけど、よく聴いてみると、彼女の赤ちゃんが叫んでいるのがわかるはずだよ(笑)。もうメチャクチャさ(笑)。だけど、それを何とか仕上げたんだよ。

 

ー これまでに80年代、90年代の映画と取り上げてきましたが、次はどうなるのでしょう。

 

クリス:今色々と話し合っているよ。ディズニーをやるかもしれないし(笑)、ロマンティックな曲特集をやるかもしれない。このバンドは何でも好きなことをやれるんだ。メタル・バンドをやっていると、ファンが期待するものがあるだろう?だけど、アット・ザ・ムーヴィーズに関しては、何か期待されることもないし、俺たちが次に何をやるのかは誰もわからない。ページは真っ白なんだよ(笑)。実はすでに2曲手をつけているから、ある程度の手がかりはあるんだ。今はまだ言えないけれどね。

 

ー バンドとして今後も続けていくことは確実なのですね。

 

クリス:間違いないよ。一番の夢は、このバンドでライヴをやることさ。フェスティヴァルに出たいんだ。というのも、フェスティヴァル出演が一番実現性が高いから。キング・ダイアモンド、ハンマーフォール、ソイルワーク、プリティ・メイズのメンバーが集まっているから、ツアーをやるというのはなかなか難しいだろう。フェスティヴァル出演なら可能だろうし、アット・ザ・ムーヴィーズ・フィーチャリング誰々みたいなこともできる。他のバンドからシンガーを迎えたりしてね。この6人だけに限定するのではなく、もちろんこれはバンドだし、次のアルバムも6人で作るけれど、ライヴに関しては、1-2人の出入りはあり得る。

 

ー もうすでにフェスティヴァル出演の交渉をしているのでしょうか。

 

クリス:しているよ。大きなメタルのフェスに出て、ヴェノムの後に「ネヴァー・エンディング・ストーリー」をプレイしたら最高だろ(爆笑)。

 

ー ヴェノムの後は最高ですね(笑)。

 

クリス:そう、だけどファンは受け入れてくれると思うよ。

 

ー 『Vol.3』はいつ頃聴けるでしょう。

 

クリス:そうだな、夏までには作りたいけれど、どうなるかはわからないな。

 

ー あなたはやはり映画の大ファンなのでしょうか。

 

クリス:大好きだよ。それに妻がスウェーデンのS.F.スタジオという映画スタジオで働いているというのもある。スウェーデン国内で、映画の売買をする会社で20年間働いているから、新作の映画が来ると、彼女はチケットを手に入れることができるんだ。プレミアとかのね。俺も映画は好きだけど、彼女の方が映画好きだね。

 

ー お気に入りの映画を3本教えてください。どのようなジャンルがお好きなのでしょう。

 

クリス:ガッカリさせてあげよう(笑)。

 

ー どういうことでしょう(笑)。

 

クリス:俺はロマンティック・コメディのファンなんだ。エキサイティングで、少々スリリングな映画も好きだけど、ハッピー・エンディングでないとダメ(笑)。だからホラー映画は嫌いだし、見られない。俺が好きなのは『E.T.』とか、『ロッキー』のシリーズ。『ビバリーヒルズ・コップ』は何百万回も見たよ。こういう映画を見るとハッピーになれるからね。俺の仕事はとにかく忙しくて大変だから、笑いが必要なのさ。ホラー映画だと、ソファの後ろに隠れたくなるよ(笑)。スリラーものはイケることもあるけれど、どれだけワインを飲んでいるか次第さ。『ノッティングヒルの恋人』や『プリティ・ウーマン』とかが好きなのさ。陳腐な映画が好きなんだよ(笑)。

 

ー やはり80年代がベストですか。

 

クリス:カモン、もちろんさ!『トップガン』もあるだろ(笑)。80年代の映画にはすべてが詰まってる。少々悲しくて、少々ハッピーで、アクションも少々。そしてエンディングではすべてが解決する。それに音楽も最高だしね。

 

ー 私も80年代に育ったので、凄くわかります。

 

クリス:そう、こういう映画は俺のDNAに刻まれているんだよ。

 

ー 80年代の映画とそれ以降に作られたものにはどのような違いがあるのでしょう。

 

クリス:俺の考えでは、例えば『トップガン』のサウンドトラックは素晴らしいよね。それ以外の映画でも、『コブラ』のサウンドトラックや、「Mighty Wings」のような曲とか、色々素晴らしいものがあった。最後は『プリティ・ウーマン』だったように思うんだ。それ以降素晴らしいサウンドトラックはしばらく出てこなくて、それから『パルプ・フィクション』など、また素晴らしいものが出てきたけれど、これらの曲は50年代のものか、グランジばかりだっただろう?以降、いわゆるサウンドトラックのコンピレーション・アルバムはリリースされなくなってしまった。90年代の映画でも好きなものはあるけれど、どれも80年代の曲が使われているものばかりさ(笑)。『Vol.2』は90年代と謳っているけれど、60%は80年代の曲なんだ(笑)。あくまで90年代の映画であって、90年代の曲とは言っていないからね。違いはそういうことだと思う。60年代にサウンドトラックというものが出てきたけれど、90年代以降それが消滅してしまったんだ。

 

 

 

ー ではお気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

クリス:映画とは関係なく?

 

ー はい。

 

クリス:となると、まずはKISSの『Unmasked』。あと、ジェリーフィッシュというバンドが大好きなんだ。ああいうポップ寄りの音楽が大好きでね。それからショットガン・メサイアも好き。スウェーデンのバンドだよ。こういう音楽も俺のDNAに刻まれている。さらに挙げるとすれば、W.A.S.P.のファースト、プリティ・メイズの『Sin-Decade』や『Jump the Gun』、ラットの『Out of the Cellar』とか。たくさんあるよ。俺は80年代好きだからさ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

クリス:日本には2度行ったけれど、どちらも人生最高の旅だったよ。アット・ザ・ムーヴィーズでもぜひまた日本に行きたいな。あの素晴らしい日本のレコード・ショップにもまた行きたいからね(笑)。そして超素晴らしいご飯を食べて、みんなに会いたい。ぜひアルバムを聴いてみて欲しいな。

 

文 川嶋未来

 

 


 

 

 

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2022年2月4日発売

アット・ザ・ムーヴィーズ

『ザ・サウンドトラック・オブ・ユア・ライフ Vol.2』

CD+DVD

CD

 

【CD収録曲】

  1. ウェイティング・フォー・ア・スター・トゥ・フォール
  2. キング・オブ・ウィッシュフル・シンキング
  3. ザ・ワン・アンド・オンリー
  4. ホエン・ユー・セイ・ナッシング・アット・オール
  5. 愛に抱かれた夜
  6. (ユー・ドライヴ・ミー)クレイジー
  7. ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース
  8. クラッシュ
  9. アイヴ・ビーン・シンキング・アバウト・ユー
  10. ヴィーナス
  11. アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ

DVD収録予定曲

  1. 「ウェイティング・フォー・ア・スター・トゥ・フォール」MV
  2. 「キング・オブ・ウィッシュフル・シンキング」MV
  3. 「ザ・ワン・アンド・オンリー」MV
  4. 「ホエン・ユー・セイ・ナッシング・アット・オール」MV
  5. 「愛に抱かれた夜」MV
  6. 「(ユー・ドライヴ・ミー)クレイジー」MV
  7. 「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」MV
  8. 「クラッシュ」MV
  9. 「アイヴ・ビーン・シンキング・アバウト・ユー」MV
  10. 「ヴィーナス」MV
  11. 「アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ」MV

 

【メンバー】
ビョーン・ストリッド (ヴォーカル)
リネア・ヴィクストロム・エッグ(ヴォーカル)
クリス・レイニー(ギター)
モルテン・サンダゲル(キーボード)
アラン・ソーレンセン(ドラムス)
ポンタス・エグバーグ(ベース)