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ヨハン(セレスト)
独占インタビュー

今回はリード・ギターにメロディを担当させる
というやり方にした
だから、ギターの轟音の中から
容易にメロディを捉えることができると思うよ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Jonathan Bouilllaux

フランスの轟音バンド、セレストが5年ぶりのニュー・アルバム『アサシーヌ』をリリース。ということで、ベース・ヴォーカル担当のヨハンに話を聞いてみた。

 

 

ー ニュー・アルバム『アサシーヌ』が発売になります。過去のアルバムと比べて、どのような点が異なっていると言えるでしょう。

 

ヨハン:今回はいつもと曲作りのやり方が違った。コロナのせいでね。ステイホームということで、集まることができなかったので、やり方を変えるしかなかったんだ。最初はこれは問題だと思ったのだけど、蓋をあけてみたら自分たちのアイデアに集中することができて、むしろやりやすかったよ。前みたいにみんなで集まってやっていたら出てこなかったようなアイデアも出てきてね。出来上がったアルバムは過去の作品よりもずっと多様性に富んでいて、まあこれはここ何作でやろうとしていたことではあったのだけど、今回は新たなゴールに到達できたと思う。新たに多くの影響を取り入れて、メロディックでさらにヘヴィで、幅広い種類の曲が収録されているよ。

 

ー 確かに今回非常にメロディックな作品だと感じましたが、そういう方向性にしようと思ったきっかけは何だったのでしょう。

 

ヨハン:実はアルバムを作り始めた時は、可能な限りダークでヴァイオレントなものにしようと思っていたんだ。だけど、ある地点に達した時に、「他にもっとどんなことができるだろう?」と考え始めて、みんなでアイデアを出し合って、もっとメロディという面を追求してみようということになった。すでにここ何作かでメロディを取り入れてはいたけれど、それを理解しない人たちもいたから、彼らに理解してもらうにはどうすれば良いのかを話し合ったんだ。そこで今回はリード・ギターにメロディを担当させるというやり方にした。だから、ギターの轟音の中から容易にメロディを捉えることができると思うよ。

 

 

 

ー 前作から5年と長いブランクが空いていますが、これはコロナのせいだったのでしょうか。

 

ヨハン:いや、コロナとは関係なく、何と言ったらいいかな、俺たちは音楽について色々学んでいて、とにかくもっと良い作品を作りたくてね。色々なアイデアを持ち込む中で、自分たちはさらに悲観的、批判的になっていったんだ。曲ができても、なかなか「よしこれだ」とはならなくて、それでいつもよりもずっと時間がかかってしまった。もちろんコロナのせいもあって、レコーディングも実際は6ヶ月くらい前には始めようと思っていたよ。そのせいで、4年のブランクで出せるはずが5年になってしまった。

 

ー 歌詞はフランス語ですよね。

 

ヨハン:そうだよ。

 

ー 歌詞が掲載されていませんが、これは何か理由があるのでしょうか。

 

ヨハン:いや、実はLPバージョンには歌詞が載っている。ただ単語の間にスペースを入れていないから、非常に読みにくいはず(笑)。そうすれば、人々はより集中して歌詞を読むだろうという狙いはある。(訳註:このプランは変更になり、ブックレットに掲載されているURLにアクセスすると、歌詞が読める仕組みになっている。)フランス語がわからないと理解できないだろうけれど、これはある種の詩だから、英語に訳してしまうと失われてしまう細部があるからね。

 

ー そもそもフランス語で歌っているのは何故なのですか。

 

ヨハン:まず、聞いておわかりの通り、俺は英語があんまり得意じゃないということがある(笑)。英語で歌詞を書くとなると、表現したいことの多くができなくなってしまうんだ。つまり、フランス語で書く方が簡単だということ。それからフランス語で歌うことに抵抗を覚える人も多いのだけれど、俺にはそれがない。フランス語で歌うことがとても自然だから、他の言語で歌おうとは思わないんだよ。それに、メタルではおそらく99%の作品が英語で歌われているから、フランス語で歌えばエキゾティックな響きを与えることもできるだろう。

 

ー アルバムのテーマ、コンセプトは何なのでしょう。

 

ヨハン:これまで女性や男性と女性のやりとりについて、多く書いてきた。両者の対立とか、暴力、レイプのような害のある関係といったダークな内容をね。メタル・シーンではあまり取り上げられることのないトピックだけれど、俺は興味があって、それに音楽とともに俺たちのトレードマークのようなものになっているからね。

 

ー アートワークについても教えてください。タイトルと関連があるのでしょうか。

 

ヨハン:もちろん。俺はずっと写真に興味はあったのだけど、あまり楽しむことはできなかった。08年に初めてのアルバムを作ることになった時、他のバンドの作品とは違ったものにしたくて、だけれど俺たちの好みに合うものは何だろうと考えて、白黒写真はどうだろうということになった。俺は女性の造形が好きだし、俺たちの音楽は超ダークで超ヴァイオレントだけれど、メタルにありがちな血塗れの女性みたいなことはやりたくなかった。もっと洗練されてオリジナリティのあることをやりたかったのさ。それで最初のアルバム『Nihiliste(s)』から、アルバムのコンセプトを一番よく表す写真をメインに使うようにしている。だけど、フランス人でないと、一体その写真が何についてなのかを理解するのは難しいと思うよ。

 

 

ー Heaven In Her ArmsのKatsuta氏がゲスト参加しています。

 

ヨハン:彼は2曲に参加してくれているよ。俺は彼ら、特にカツタのギターのファンでね。彼は俺の知る限り最高のギタリストさ。彼らとは2011年の津波の直後に一緒にツアーをして、とても仲良くなった。俺は日本のバンドが好きなんだよ。エンヴィーやモノとか。アプローチの仕方がヨーロッパのバンドや、もちろんアメリカのバンドとも違うから。俺の担当はベースとヴォーカルだけれど、ギターのパートも書くんだ。ロックダウンの最中も、家でたくさん曲を書いていてね。曲に何かスパイスが欲しいと思って、バンドの外部の人間とのコラボレーションは、時に新しいものをもたらしてくれる。それでカツタのことを思い出して、コンタクトしたのさ。彼にデモを送ってね。彼が曲に付け加えてくれたものは、本当に素晴らしかったよ。

 

ー 自分たちの音楽を無理やりにでもカテゴライズするとなるとどうなりますか。

 

ヨハン:セレストはあくまでセレストだからね。みんな色々と頑張って表現しようとしているけれど。ブラック・メタル、ドゥーム、スラッジ、ハードコア、スクリーモ。これらのものをすべて混ぜ合わせたのかというと、そういう訳でもない。このリフはスラッジー、このリフはドゥーミー、このリフはハードコア、みたいに言うことはできないから。俺たちは自分たちのスタイルを持ったバンドになりたいんだ。もちろん影響を受けているバンドはいるけれど、それらをすべて挙げることはできない。メンバー全員違ったバックグラウンドを持っているし、みんなそれぞれ違うものを聴いているからね。メタルやハードコアはもちろん、ポップスやヒップホップも聴く。2秒ほど聴いて、ヴォーカルすら聴かずに「これはセレストだ」ってわかってもらえるような音楽を作りたいと思っているんだ。

 

ー 「あらゆるバンドからの影響を拒否する」という発言を読んだことがありますが、これはどのような意図なのでしょう。

 

ヨハン:何か曲を聴いて、「よしこういうのをやろう」とは思わないということだよ。俺たちはただ自分たちのやりたいことをやるだけ。そしてその結果がどうなるのかを見てみるのさ。「このリフはかっこいいから、こういうリフをやろう」とはならないという意味さ。

 

ー あなたの個人的なバックグラウンドを教えてください。どのような経緯でヘヴィな音楽を聴くようになったのでしょう。

 

ヨハン:全部話すと長い話になるけれど、最初はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンを好きになって、10年ほど彼らしか聴いていなかった。当時はまだインターネットもなかったから、新たなアーティストを見つけるのも簡単ではなかったからね。それからニュー・メタルが好きになった。コーン、デフトーンズ、リンプ・ビスキッツとか。同時にDIYのスクリーモやハードコアも聴くようになった。パンクっぽいやつも。地元でそういったライヴが数多く行われていたからね。実はいわゆるメタルらしいものには興味がないんだ。正直、メタリカやスレイヤーに興味を持ったことはない。ニュー・メタルから、ダイレクトにもっとヴァイオレントでアンダーグラウンドなものを聴くようになったんだ。ただブラック・メタルにしても、最近のものしか好きではなくて、古いものはまったく知らない。メイヘムすら聴いたことがないよ。

 

ー セレストというバンド名にしたのは何故ですか。

 

ヨハン:これもアートワークと同じで、俺たちの音楽スタイルからは誰も予測しないような、新しい名前が欲しかった。それが第一で、それからフランスらしい名前にしたかった。「Celeste」という単語は英語にも存在するけれど、フランス語でもあるからね。覚えやすさという点からも、すぐにこれだと思ったよ。

 

ー お気に入りのヴォーカリストを教えてください。

 

ヨハン:デフトーンズのチノ・モレノ。彼は歌唱力という意味ではベストのシンガーではないかもしれないけれど、クレイジーなメロディをたくさん曲に持ち込んでいる。まだ完成していないヴォーカルが入っていない曲をネット上で聴いたことがあるのだけど、俺はデフトーンズの大ファンにもかかわらず、あんまり良くないと思ったんだ。つまり、チノがバンドにヴァイブを与えているということさ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ヨハン:マジか。そうだな、まずニューロシスの『Times of Grace』。素晴らしい作品さ。このバンドは聞いたことがないだろうけれど、スペインのLisabö。彼らの作品はすべて好きなのだけど、多分誰も知らないんじゃないかな(笑)。それからスイスのShora。俺に影響を与えたという意味では、このバンドが一番大きいかもしれない。日本のメルツバウともスプリットを出しているよ。このスプリットに入っているShoraの曲は本当に素晴らしいんだ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ヨハン:俺たちは日本や日本人が大好きなんだ。日本に行くといつも歓迎してくれて、手厚く面倒を見てくれるし、とても楽しいよ。日本のオーディエンスや一緒にプレイしたバンドたちも大好きさ。君たちを喜ばせようと思って言っているんじゃないよ。また本当に早く日本に行きたいね。前回のツアーもとても楽しかった。日本や日本の人々と、とても良い関係を築けていると思うよ。

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2022年1月28日発売

セレスト

『アサシーヌ』

CD

【CD収録曲】

  1. デ・トラン・デ・ク
  2. デュ・テズ・ユ・ブル・ペルル
  3. ノンシャラン・ド・ボーテ
  4. ドラゲ・トゥ・ト・フォン
  5. (A)
  6. イル・ア・タント・レヴェ・デル
  7. エル・セ・レペテ・フロワドマン
  8. ル・クール・ノワール・シャルボン

 

【メンバー】
ヨハン(ヴォーカル、ベース、シンセサイザー)
ギヨーム(ギター)
セバスチャン(ギター)
ロイヤー(ドラムス)