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アンダース・オデン
【カダヴァー(CADAVER)】
独占インタビュー

ファースト・アルバムの激しいアグレッションと
セカンド・アルバム
それから前作のテクニカルなスキルを持った
コンパクトでユニークな
そしてそれぞれの曲が違ったアルバムにしたかったんだ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Hannah Verbeuren

80年代から活動するノルウェーの伝説的デス・メタル・バンド、カダヴァーが復活、16年ぶりのアルバムをリリース!何とドラムは現メガデス、元ソイルワークのダーク・ヴェルビューレン!ということで、バンドのブレイン、アンダース・オデンに色々と話を聞いてみた。

 

 

ー ニュー・アルバム『エダー・アンド・バイル』がリリースになります。過去のアルバムと比べて、どんな仕上がりになっていると言えるでしょう。

 

アンダース:良い質問だね。今回のアルバムは、今回のアルバムでやろうとしてことは、と言ったほうがいいかな、それは最初の2枚のアルバムのミッシングリンクを作ること。つまり、ファースト・アルバムの激しいアグレッションと、セカンド・アルバム、それから前作のテクニカルなスキルを持ったコンパクトでユニークな、そしてそれぞれの曲が違ったアルバムにしたかったんだ。

 

ー タイトルはノルウェー語なのでしょうか。

 

アンダース:実はミックスなんだ。”edder”というのは古いデンマーク語、ノルウェー後で”poison”という意味。英語にも「毒ヘビ」を意味する”adder”という単語がある。”bile”は肝臓から出る緑色の液体(胆汁)のこと。つまり、「毒と胆汁」という意味さ。これは、「邪悪なものを流れ出させる」ということ。中世では、邪悪なものは体液と関係あると考えられていた。だから病気になると、体内の液体のバランスを整える必要があると考えられて、悪いものを出してしまえば治るとされたのさ。

 

― なるほど。では、歌詞の内容はどのようなものですか。

 

アンダース:人間の状況。状況を変えようとする無駄な努力。人間は決して何も学ばないようだ。みんな次に何が起こるかわからずに、日々暮らしている。いつかは死ぬのだから、最高の生き方をしたい。誰にでもあてはまるそんな内容だよ。

 

― あなたがヴォーカルをとるのは本作が初めてですよね。

 

アンダース:2012年くらいに曲を書き始めてね。それで出来上がったデモを、いろいろ知り合いのヴォーカリストに送ったんだ。その中の1人が、ずっと知り合いのフィル・アンセルモだった。デモには俺のヴォーカルが入っていて、フィルが俺のヴォーカルをどう思うか、あわよくば参加してくれないかなんて考えていてね。すると彼は、俺のヴォーカルは非常に興味深いものだから、自分で全部やるべきだと。それで俺は自分自身について深く考察して、このヴォーカル・スタイルを見つけたのさ。去年の夏にフィルに会ったときに、ありがとうって言ったんだ。サジェスチョンしてくれたことについてね。

 

ー マサカーのカム・リーとポゼストのジェフ・ベセーラがゲスト参加しています。どのような経緯で彼らの参加が決まったのでしょう。

 

アンダース:カム・リーも、デモを送った相手の1人だった。彼とはMyspaceの時代からコンタクトがあって、ずっと何か一緒にやれたらという話をしていたから、「フィード・ザ・ピッグス」が出来た時に、彼に送ったんだ。彼の貢献は素晴らしいものだったので、アルバム用にとっておくことにしたんだ。俺がサビをやって、彼がヴァースをやった。過去への、デス・メタルのルーツへの目配せさ。一方、ジェフ・ベセーラはまったく別なんだ。俺がこのレコーディングをする間に住んでいたスタジオで、ポゼストが写真撮影をやっていてね。たまたま彼に会ったんだ。ダークの奥さんが、ポゼストの写真を担当しているんだよ。俺たちのもね。だからファミリー・ビジネスみたいなものさ(笑)。彼からのインスピレーションは大きかったし、子供の頃、そして今も尊敬しているからね。このスペシャルなコラボーレションをお願いしたところ、とても乗り気で。レコーディングしてみたら、パーフェクトな結果となった。彼はビデオにも出たいということだったので、ビデオにも参加してもらったよ。彼もハッピーだったようだし、俺ももちろんハッピーだよ。

 

 

 

― 本作でインスピレーションを受けたバンドはどのあたりなのでしょう。

 

アンダース:大きなインスピレーションを受けたのは、古いカダヴァーだね(笑)。自分の古い作品を聴き直して、俺がどんなことをやっていたのかを確認しようと努めたんだ。とてもオリジナルなものだったので、その視点から新しい曲を書いていったよ。初期の頃から2000年代に至るまで、俺たちがやってきたことからインスピレーションを受けたよ。

 

 

ー バンドが復活したのはいつなのでしょう。ソースにより10年、14年、19年と様々なのですが。

 

アンダース:オフィシャルに再結成したのは2019年だけど、2014年の夏くらいから、曲は書き始めていた。デュオとしてね。14年から曲を書いて、レコーディングをしたのは19年。現時点でもデモ段階の曲がたくさんあるんだ。今は完全に活動中だよ。

 

ー カダヴァーの音楽はデス・メタルだと思いますか。

 

アンダース:俺にとってはそうだね。そういうのが一番シンプルだから。もっとオープンなものかもしれないけれど、ジャンルにこだわりはないから。俺にとってはデス・メタル、他の人にとってはエクストリーム・メタルかもしれない。よくわからないけれど。何でも好きに呼んでもらって構わないよ。

 

― 今回の音質はとてもオーガニックですが、やはり初期デス・メタルを意識したのでしょうか。

 

アンダース:オーガニックであることにはとてもこだわった。リアルなドラムで、トリガーやエレクトリック・ドラムも無し。リアルな楽器、アンプを使った。だから、同じ部屋でみんなが一斉にプレイしたみたいなサウンドになっているよ。とにかくレコーディングして、ベストなものを使う。温かみがあるだろ。

 

― あなたはシンセ・ポップのバンドでもギターをプレイしていましたが、そもそもの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのですか。

 

アンダース:80年代のブラックやデス・メタル。85年にエクソダス、メタリカ、スレイヤー、ヨーロッパのスラッシュなんかが全部入ったコンピレーションを手に入れてね。

 

― 『Speed Kills』ですか?

 

アンダース:そう、『Speed Kills』の最初のやつ。これでヴェノム、ケルティック・フロスト、スレイヤー、ヴォイヴォドなどからインスピレーションを受けて、俺の音楽的なものが形成されたんだ。それから当時、メイヘムとも知り合いになって。ずいぶんと早い段階でね。彼らからの影響はとても大きかった。エクストリーム・メタルの初期が、俺のルーツなんだ。

 

― 最初からエクストリーム・メタルを聴いていたということでしょうか。

 

アンダース:そう、13歳の頃からね。

 

― 90年代初め、ノルウェーではブラック・メタルが大きなブームとなりましたよね。

 

アンダース:シーンはとても小さかったからね。全員が知り合いだった。バンド、ファン合わせてせいぜい30−40人くらいだったんじゃないかな。とてもユニークな時代で、音楽的にも興味深かったよ。俺が好きだったのは、メイヘムやダークスローン、ソーンズとか、ヘヴィでファストでエクストリーム、無調の方が好きだった。メロディックなバンドにはあまり注意を払わなかったよ。

 

― 教会の放火などの犯罪についてはどのように見ていましたか。

 

アンダース:俺たちはああいうことはシーンの一部だとは考えていなかったよ。あくまで音楽だけで。今、人々はああいう行為もシーンの一部だと考えているようだけど、実際にあの場にいたものとしては、あまり注意を払っていなかった。あくまでエクストラのパートであり、俺たちにとっては音楽しか意味がなかった。

 

― 00年代は一時期カダヴァー・インク名義で活動をしていましたよね。名前を変えた理由は何だったのでしょう。

 

アンダース:もともとのメンバーが俺しかいなかったからね。やりたいことも違ったし、もう2000年代になっていて、未来的な内容、SF的なもので、初期の頃とは違ったアイデアを持っていたから。

 

― あの時はブラック・メタル+インダストリアルといった作風でしたが。

 

アンダース:そうだね。当時のノルウェーのシーンでは、Dødheimsgardとかサティリコン、アルクチュラス、ウルヴァーとか、みんな少々インダストリアルフレイヴァーを取り入れていたんだ。00年になったということで、SF的要素を入れたかったというのもある。今考えると笑っちゃうけどね。2000年なんてもうずっと昔のことだから(笑)。

 

― 当時ウェブサイトは殺人の証拠隠滅を請け負う会社を装っていたため、警察からの介入があったということですが、これは実話なのでしょうか。

 

アンダース:本当の話だよ。当時はインターネットの状況もずいぶんと違ったからね。SNSなんかもなかったから、自分たちでホームページを作って、殺人のアリバイを提供するという内容にした。出来が良かったものだから、みんな本物だと思ったんだ。今そんなことをやったらあっという間に削除されるだろうけどね、当時はそんなことも簡単にやれたんだ。それで警察からコンタクトがあった。IPアドレスから俺のことを突き止めたんだろう。これはバンドのプロモーションの一環で、殺し屋を雇うサイトじゃないと説明するハメになったよ。面白かったね。

 

― 具体的にどのようなウェブサイトだったのですか。アリバイを提供するのか、それとも証拠を隠滅請負いだったのでしょうか。

 

アンダース:殺人現場の片付けをします、という内容だったんだ。面白いことに、この2年後、ニューヨークで実際に、こういう清掃を請け負う会社があることに気づいた。アパートで人が死んで、親戚もいなくて発見までに1ヶ月かかった、なんていう現場を清掃するんだ。

 

― 特殊清掃の会社は日本にもあります。

 

アンダース:当時そういうビジネスのことは知らなくてね。ビジネス・チャンスを逃したのかもしれない(笑)。

 

― 実際に殺人現場清掃の依頼はあったのですか。

 

アンダース:そこはよくわからない。申し込みフォームを提出できるようにしてあったのだけど、ほとんどの人は、これがジョークだとわかっていただろうからね。中には本当のものも混じっていたかもしれない。追跡しなかったからわからないけれど。

 

 

 

ー ケルティック・フロストに加入したきっかけはどのようなものだったのでしょう。

 

アンダース:2005−2006年頃、俺はApoptygma Berzerkでギターを弾いていて、ツアーにも参加していたんだ。知らなかったのだけど、トム・G・ウォリアーがApoptygma Berzerkの大ファンだったらしく、チューリッヒのショウを見に来ていて、それで共通の友人から俺の連絡先を聞いたらしい。Apoptygma Berzerkが好きで、俺のギター・スタイルも気に入ってくれたらしく。それで突然連絡が来て、オーディションを受けないかと。ケルティック・フロストのことはもちろんずっと大好きだったから、トムが俺に加入してほしいと思っているなんて、信じられなかったよ。それでチューリッヒにいってリハーサルをして。とても興味深い、スペシャルな時間だった。

 

ー ケルティック・フロスト時代の、何か面白いエピソードはありますか。

 

アンダース:バンドでのことについて一切口外しないとサインさせられてるんだ(笑)。だから、俺の書くケルティック・フロストの本は、他のメンバーが全員死んだ後になるよ、というのは冗談で、特にこれといったエピソードはなかったな。マーティン、トム両方と知り合えてとても良かったし、なぜ彼らが一緒にバンドをやるのが大変だったかも理解できた。天才的なバンドに2人の才能あるミュージシャンがいるケースもあるけれど、彼らの場合は、あまりに違いすぎた。まったく違う人種だったんだよ。17年にマーティンが死んでしまって、とても悲しかった。あの時トムから電話があってね。今もトムとは時々やりとりしているよ。

 

ー ケルティック・フロストで一番好きなアルバムは何ですか。

 

アンダース:やっぱり『Morbid Tales』だね。あれが最初に聴いたアルバムだったから、俺にとってスペシャルな作品さ。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

アンダース:やっぱり『Morbid Tales』。それから『Reign in Blood』。あとは『Master of Puppets』。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

アンダース:ぜひ日本にいってライヴをやりたいね。俺はケルティック・フロストとサティリコンで2度日本に行っているから、日本のファンの情熱は良く知っている。当時『…In Pains』の日本盤が出たけど、日本盤は歌詞カードやいろいろなインフォメーションがついているよね。こういうことは他の地域では滅多にない。さっきも言ったように日本には2度行ったことがあるけれど、もっと日本に行ってみたい。俺は日本の文化や人々が大好きだから。これを読んだ人、ぜひパンデミックが終わったら、俺たちを日本に呼んでくれ!ぜひ行きたい国の1つだからね。

 

ー 正式メンバーは2人ですが、ライヴ・メンバーは決まっているのですか。

 

アンダース:今年『…In Pains』でベースを弾いた以前のメンバーとライヴを1度やったんだ。ダブルベースを使っていたから、まるでジャズのベースプレイヤーみたいで、ライヴで面白いサウンドになったよ。ペストマスクをかぶって、ダブルベースをプレイして。とてもスペシャルなものだから、日本のファンも気に入ってくれると思う。ダークが参加できない場合は、バックアップとしてノルウェーのドラマーもいる。スタジオでクリエイティヴな作業をすることに関しては、常にダークがドラマーだけれど、彼にはメガデスもあるからね。メガデスは俺たちより100万倍ビッグだから、こっちを優先させるわけにもいかないし。だけど、将来的にクリエイティヴな作業をする時は、必ずダークがメンバーさ。

 

ー セットリストはどんな感じになるのでしょう。

 

アンダース:古い曲も演奏するよ。どのアルバムからも5曲くらいずつリハーサルしているから、いろんな時代の曲のミックスになる。だから、それぞれの時期のファンも満足してくれると思う。俺たちにとっても、古い曲、新しい曲両方プレイするのは興味深いことさ。

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2020年12月11日発売

カダヴァー(CADAVER)

『エダー&バイル』

CD

【CD収録曲】

  1. モルグ・リチュアル
  2. サークル・オブ・モービディティ
  3. フィード・ザ・ピッグス
  4. ファイナル・ファイト
  5. デスマシーン
  6. リボーン
  7. ザ・ペスティレンス
  8. エダー&バイル
  9. イヤーズ・オブ・ナッシング
  10. レット・ミー・バーン

 

【メンバー】
アンダース・オデン(ギター / ベース / ヴォーカル)
ダーク・ヴェルビューレン(ドラムス / バッキング・ヴォーカル)