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ダニエル・オライセン
イングヴェ・クリスチャンセン
(ブラッド・レッド・スローン)
独占インタビュー

『インペリアル・コングリゲイション』は、ダントツで
最高のブラッド・レッド・スローンのアルバムさ
だけど、将来はもっとエピックな作品を
作ることになるだろうけれど!

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Matthias Moser

ノルウェーが誇るベテラン・デス・メタル・バンド、ブラッド・レッド・スローンがニュークリア・ブラストに移籍し、ニュー・アルバムをリリース!ということで、ギタリストのダニエル・オライセンとヴォーカリストのイングヴェ”ボルト”クリスチャンセンに話を聞いてみた。

 

ー ニュー・アルバム『インペリアル・コングリゲイション』がリリースになります。過去の作品と比べて、どのような点が進歩していると言えるでしょう。

 

 

 

ダニエル:10枚目となるこのアルバムの最初の狙いは、プロダクション的にステップアップすることだった。つまり、素晴らしいリフは常に書いてきたけれど、俺たちがこれまでに作ったアルバムのいくつかは、プロダクション的に問題があったからね。あるスウェーデンのバンドの作品を聴いて、一体誰がミックスしたのかを尋ねたんだよ。その後そのRonnie Björnströmと超仲良くなってね。彼は最高の人間さ。彼はすでに俺のアルバムを3枚手がけてくれている。『Fit to Kill』は最高のアルバムだったけれど、個人的にはプロダクションが弱すぎたと思う。もっとモダンなサウンドが欲しかったんだ。ヘヴィなギターとドラム、だけど一方で今回のアルバムで聴けるようなクリアなミックス。Ronnieはそれを実現してくれたよ。それに今回はリフを書き始めた時点で、これまでで一番のアルバムになるだろうともわかっていたよ。ただ17個のリフを突っ込んで曲だって言うのではなく、きちんと曲をアレンジすることに凝っているんだ。作曲は非常に重要で、曲全体が初めから終わりまで流れる必要がある。それに俺のソロも今までで最高のものだと言える。とてもメロディックで、だけどダサくない。俺は素晴らしいメロディが大好きで、ブルータルな曲の中でイカしたバリエーションになっていると思う。つまるところ、俺はアルバムごとにソングライターとして成長して、常により良い作品を作ろうと頑張って来たということ。『インペリアル・コングリゲイション』は、ダントツで最高のブラッド・レッド・スローンのアルバムさ。だけど、将来はもっとエピックな作品を作ることになるだろうけれど!

 

ー タイトルの『インペリアル・コングリゲイション』にはどのような意味が込められているのでしょう。

 

ボルト:いろいろと歌詞を書いているのだけど、どれも同じような内容になってしまうんだよね。『インペリアル・コングイゲイション』というタイトルは、このアルバムで扱っているトピックをすべて包括しているようなものなんだ。「イティカ」だけは別だけど。政府、政治的、最高権威といったものたちによる巨大な集会さ。クリエイティヴな思考によるものだから、正確な内容を伝えるのは難しいのだけど。俺の頭にイメージとしてあるものだからね。ファンには歌詞を聴いたり、読んだりして欲しいんだ。まあデス・メタルだから、聴くというより読むということになるだろうけれど(笑)。それで彼らなりの意味を見つけて欲しい。

 

ー やはり反権威、反宗教的な内容ということですか。

 

ボルト:そういうことをすべて包括している。反宗教的な面は大きいけれど、ここは正確に説明をしたいな。俺は宗教的な人々には一切反対しない。クリスチャンでもイスラム教徒でも、それ自体はまったく問題がない。問題は、宗教をコントロールする権威なのさ。信仰というポジティブなものから権力を作り出そうとそうとすることが問題なんだよ。本来は人々に希望や意味を与えるものだろう?そういうポジティヴさを権力にねじまげてしまうのさ。13年に初めてブラッド・レッド・スローン用の歌詞を初めて書いた時は、デス・メタルの歌詞として期待されるものを書いた。血やゴアとかね。もちろん俺のエッセンスも入っていたけれど。デス・メタルとはこういうものだというのがあって、そういう歌詞を書いたんだ。次の『Union of Flesh and Machine』では俺は歌詞は書かなかった。というのも、ゴアな歌詞をもはや思いつかなかったから。次の『Fit to Kill』では再び歌詞を書くようになって、この時はもっとメタファーを使って、宗教や政治的な内容になった。俺らしい内容になったということだよ。だけど、この時は歌詞を書くのは本当に大変だった。歌詞を書き始める準備をするためだけに1週間かかったりとかね。ところが今回は、1曲書くのに15分もかからなかった。俺の中から湧き上がったものを、そのまま紙に書きつけて、一切の書き直しをしなかったんだ。今回ほど自分の歌詞を誇りに思ったことはないよ。他のメンバーも素晴らしい才能を持っているし、アルバムとして完全なパッケージになったと思う。ともかく歌詞の内容は、反権威、反宗教、そして自分自身たろうとしないことへの嫌悪。自分自身であることにハッピーになれること。それだけが欲望、権力への欲望を撃退する方法なんだよ。自分自身がハッピーであるならば、それ以上のものは必要ないのだから。アルバムで言いたいことは、ハッピーであることなのさ。自分自身を見つけ、ハッピーでいろということ。このアグレッシヴでマッシヴな音楽の一部に、ハッピーさを取り込みたいんだよ。メタルファンの多くはハッピーな人たちだよね。彼らの生活はバランスが取れていないかもしれないけれど、彼らの心はバランスが取れているものさ。

 

ー 「イティカ」というのは何なのですか。

 

ボルト:面白い話で、あれは偶然生まれたんだ。あの曲を聴いていたら、リズムが「イティカイティカ」って聞こえてね。それで「イティカって何だろう」と思ってグーグル検索をしてみたら、いくつか意味があったのだけど、中でも「賢いけれど時々愚かなこともする美女」というのが面白くてね。それで、デス・メタルの中で、女の子をどうやってテーマにしたら良いかと考えた。となればもちろん、死んだ女の子しかない(笑)。だから他の哲学的、俺の深い思考をテーマとした曲とは違う内容なんだ。「イティカ」は、死んだ女の子に恋をするラヴソング。いくら男が思いを寄せても、女の子は反応しない。死んでるんだから、そりゃそうだよね(笑)。

 

 

 

ー アートワークはやはりアルバムのタイトルを表しているのでしょうか。

 

ダニエル:ボルトの書く歌詞は、人間性や俺たちのシステム、宗教がいかに俺たちを盲目にするかについてというような内容。俺は彼の歌詞が大好きだし、それに彼の考えるタイトルは月並みなものじゃないからね。「インペリアル・コングリゲイション」は最初の頃に書かれた歌詞の1つで、アルバムのタイトルとして完璧だと思うって伝えたんだ。年をとった宗教のリーダーたちが集まって、彼らの法を人々に押し付けることについて議論しているところが思い浮かんだ。ニュークリア・ブラストがMarcelo Vascoを紹介してくれてね。彼はすぐに俺が求めていることを理解してくれたよ。少々修正しただけで、素晴らしいオールドスクールのカバーが出来上がった。ブラッド・レッド・スローンの歌詞の多くを表現するカバーさ。自分自身らしくいろ、自由でいろ、そして人生における良いものを楽しめ、つまりデス・メタルをね!

 

 

ー ブラッド・レッド・スローンはどのようなバンドからインスピレーションを受けているのでしょう。

 

ダニエル:俺はブラッド・レッド・スローンがオリジナルだと思ったことはない。違ったものや特別なものを作りたいと思ったことがないんだ。ただクソカッコいいデス・メタルを作りたいだけなんだよ。俺たちが何かに似てるなんてごちゃごちゃ言う奴もいるけれど、そんなことはどうでもいい。それにそういう奴らは間違ってると思うんだ。基本は間違いなくデス・メタルだけど、俺たちが何か特定のバンドに似ていると言うことはできないよ。どうでもいいけど。俺は90年代にデス・メタルを聴いて育ったし、今でもそれが俺にとって一番のインスピレーションさ。俺としてはデスとチャック・シュルディナーが常に最高だけれど、他にもインスピレーションを与えてくれるバンドはいる。それに、ブラッド・レッド・スローンを常に良くしたいという衝動も、俺にとってはインスピレーションさ。

 

ー そもそも「ブラッド・レッド・スローン」というバンド名にしたのはなぜですか。

 

ダニエル:「ブラッド・レッド・スローン」というのは、実はチョートが書いたとても古い歌詞に出て来る言葉なんだ。彼とデス・メタル・バンドを始める時、彼がこの名前を提案してね。俺も賛成した。この名前を聞けば、間違いなくメタルを思い浮かべるだろうし、血(ブラッド)は死(デス)へとつながるもの。だからとてもデス・メタルな名前だろ?

 

 

ー ボルトのお気に入りのヴォーカリストは誰ですか。

 

ボルト:もともと俺はデス・メタルは聴いていかったのだけど、08年に以前のバンドでシックス・フィート・アンダーとツアーをしたんだ。その時初めてデス・メタルというものに接した。毎晩ステージ袖からクリス・バーンズを見て、以前には感じたことのないエネルギーを感じた。俺がグロウルをやるようになったのは、クリスがきっかけさ。それからジョージ・フィッシャーやグレン・ベントン、チャック(シュルディナー)。特別に印象深いのは、キャトル・ディキャピテーションのトラヴィス・ライアン。数年前彼らとサフォケーションとツアーをしたのだけど、彼は声を楽器のように使うよね。彼のヴォーカルは本当に高く評価するよ。まあたいていはまったくメタルではないものからインスピレーションを受けるし、俺はデス・メタルを聴いて育った訳ではないのだけど。このバンドのオーディションで初めてグロウルをやったんだ。だから、他のヴォーカリストからのインプットではなく、自分のスタイルを見つける必要があった。随分と時間がかかったけれど、今回のアルバムではウォームアップも必要なく、すべて一発で歌えた。ほとんどがワンテイクだよ。自分の声というものを見つけたからね。

 

ー もともとデス・メタルをあまり聴いていなかったにもかかわらず、ブラッド・レッド・スローンのオーディションを受けたのは何故だったのですか。

 

ボルト:オーディションを受けたのは11年だからね。08年くらいからデス・メタルは聴くようになっていたんだ。俺は何かを気に入ると、一気にハマるタイプなんだ。俺が以前にやっていたバンドは、イヴァンのバンドや、ダニエルのZerozonicとよく一緒にライヴをやっていたから、もともと彼らのことはよく知っていてね。俺の以前のバンドは、リハーサル・スタジオにブラッド・レッド・スローンのポスターを貼っていたほどさ。息子が赤ちゃんだった頃、寝かせるのによくベビーカーに乗せて散歩してね。息子が眠るとレコード屋に行くんだ。それでブラッド・レッド・スローンの『Souls of Damnation』を見つけて聴いてみたら最高で。それで彼らを知ってファンになった。その後ノルウェーのインターネット・サイトで彼らがヴォーカリストを募集しているのを見て、ダニエルにメールをしたんだ。そうやってデス・メタルは俺の生活の大きな一部になったんだよ。

 

ー ではダニエルんお気に入りのギタリストを教えてください。

 

ダニエル:俺のお気に入りは3人。ジョー・サトリアーニ、チャック・シュルディナー、ダイムバッグ・ダレル。以上さ。

 

ー ダニエルはエクストリームな音楽を聴くようになったきっかけは何だったのでしょう。

 

ダニエル:俺は1987年からロックやメタルを聴くようになった。80年代のハードロックとかね。でもすぐにメタリカみたいなバンドにハマって。それから1991年にぺスティレンスとオビチュアリーを初めて聴いて、「何だこれ、これこそ俺がプレイしたいものだ」って思ったんだ。それで1992年にギターを手にして基本的なことを学んで、1993年にはすでにデス・メタルのリフを作り始めていた。当時もデス・メタル・バンドをやりたかったのだけど、このスタイルをきちんと叩けるドラマーが見つからなくてね。それにブラック・メタルにもハマっていて、1996年にはサティリコンのライヴ・ギタリストも務めていたから。だけど、ずっとドラマーは探していて、フレディが俺のホームタウンに現れた時に、ブラッド・レッド・スローンを始める準備が整ったということさ。

 

ー ノルウェーでトラディショナルなデス・メタルをプレイするというのは、どんな感じですか。ノルウェーというと、やはりブラック・メタルという印象を持つ人も多いと思いますが。

 

ボルト:まあ、俺たちはノルウェーではあまりプレイしないからね。それに俺自身もブラック・メタルを聴くことが多いし。だけど、状況は良くなってきているよ。俺たちの名前を広まっているし。俺たちは旅に出るのが好きだし、外国の方がノルウェーよりビールが安いし(笑)。これ以上ノルウェーのデス・メタルがビッグになるべきかは、よくわからないな。ノルウェーにはブラック・メタルがあるし、ブラック・メタルこそがノルウェーのものさ。もちろんノルウェーにもデス・メタルのリスナーはいるし、ブラッド・レッド・スローンはノルウェーで一番ビッグなデス・メタル・バンドさ。まあデス・メタルはそれほどの競争が無いのも事実だけれど(笑)。

 

ー ノルウェーのデス・メタル・シーンはどんな感じですか。おすすめの若いバンドはいますか。

 

ダニエル:2021年現在ノルウェーいはいくつかのデス・メタル・バンドがいるけれど、俺のお気に入りはDeceptionだね。若くて才能のある奴らさ。何度も俺たちのサポートをやってくれているよ。チェックしてみてくれ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ボルト:(何故か日本語で)ニホンノファンニケイイヲアラワシマス。ワタシタチハ、アナタタチノスバラシイクニニ、ショウタイサレルコトヲノゾンデイマス。

 

ダニエル:世界に様々なところに行ったけれど、アジアだけは行ったことがないんだ。日本でプレイするのが夢なんだ。日本にも俺たちのファンがいることは知っているし、ぜひみんなに会いたいよ。Metaaaal!

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年10月8日発売

ブラッド・レッド・スローン

『インペリアル・コングリゲーション』

CD

【CD収録曲】

  1. インペリアル・コングリゲーション
  2. イティカ
  3. コンカード・マレヴォレンス
  4. トランスペアレント・イグジステンス
  5. インフェリア・エレガンス
  6. ウィ・オール・ブリード
  7. 6:7
  8. コンシュームド・イリュージョン
  9. ヒーロー・アンティクス
  10. ツァラトゥストラ

 

【メンバー】
ダニエル・オライセン(ギター)
イングヴェ・クリスチャンセン(ヴォーカル)
イヴァン・グジク(ギター)
スチャン・ガンダーセン(ベース)