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ヘルムート
(ベルフェゴール)
独占インタビュー

俺はヒッピーじゃない
本物の、荒々しくて狂ったもの
そして何より可能な限りイーヴルでなくてはならない
人間の心のより暗い領域に浸ることは価値ある探索だし
芸術は検閲されるべきではない

                                   

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文:川嶋未来 Photos by Cartismandua

オーストリアが誇る悪魔、ベルフェゴールが、12枚目となるニュー・アルバムをリリース。ということで、バンドのフロントマンでリーダーのヘルムートに話を聞いてみた。

 

 

ー 前作から5年と、ベルフェゴール史上一番長い時間が経っています。なぜ5年を要したのでしょう。

 

ヘルムート:ヘイル!いわゆるパンデミックのせいで、とにかく遅れまくったのさ。もともとの予定では20年の終わりにリリースのはずだったのだけど、結局22年6月になってしまった。リリース日が待ちきれないよ。セルペントと俺は、『ザ・デヴィルズ』の仕上がりを非常に誇りに思っている。今までで一番成熟した、そして最もヴァラエティに富んだ作品になっていると思う。パンデミックの制限は悪化してバカげていたけれど、俺たちはその時間を利用して、これまでのアルバムよりも時間をかけてリハーサルをやれた。おかげで自分たちのシグニチャーのサウンドの中で、さらなるコンセプトを見つけることができたよ。この12枚目となるモンスターは、それだけ時間をかけた甲斐のあるものになった。コントロールできないシチュエーションを最大限利用することが大切なんだ。すべてのプロセスがやりがいのあるもので、完璧に22年の俺たちが欲するサウンドになった。さらに俺的には、アートというのは対立も辞さない、異常な、タブーを破るようなものであるべきもの。そうでなければ、そんなものは俺にとってクズだ。22年現在、誰もが過敏で、キャンセル・カルチャーに生きている。言論の自由にとっては恐ろしいことだ。芸術の去勢は悪質な行為だよ。自分たちのやり方、やることを人に指示される言われはない。俺たちはいかなる人物、団体の前にひざまずいたり、祈ったり、這い回ったりはしないのさ。

 

ー 過去の作品と比べて、どのような点が変化、進歩していると言えるでしょう。

 

ヘルムート:俺はアルバムを比べるようなことは好まない。どのLPも日記のようなもので、俺の人生の中の一時期であり、それぞれが独立しているんだ。今回は実験や新しいアレンジメントという点で大きな進歩があったとは言えるかもしれないけどね。人に説教することは自分で実行しろ。俺にとって、平凡なブラックやデス・メタルに堕することがないようにするというのは重要なのさ。俺はヒッピーじゃない。本物の、荒々しくて狂ったもの、そして何より可能な限りイーヴルでなくてはならない。人間の心のより暗い領域に浸ることは価値ある探索だし、芸術は検閲されるべきではない。俺は有神論者ではないけれど、サタニズムというテーマを尊重しているよ。審判を恐れて生きるのではなく、人生を通じて自分の道を歩むという意味でね。

 

ー 『ザ・デヴィルズ』というのは非常にストレートなタイトルです。これにはどのような意味が込められているのですか。

 

ヘルムート:俺はニヒリスティックなヴィジョンを持った無神論者なんだ。デヴィルというのはパワフルなフィクションのキャラクター。俺は歌詞の中で、サタンや光の使者ルシファーについての哲学を使っている。あらゆる影響に抵抗する誇り高い、高貴で威厳のある存在として。誘惑者さ。サタニズムは俺が個人的に信じる宗教ではない。宗教には迷信や自分の外部の何かへの崇拝が関わってくるけれど、俺はそういうのは好まない。どんな行為や神を中心にしていようとね。サタンはキリスト教徒自身の発明で、彼らが敵とみなしているもの。俺は教会が綺麗な団体だとはとても思えないね。教会で蔓延っているペドフィリアを見てみれば、それがいかに腐敗しているかわかる。不快だよ!「敵の敵は味方」というだろ?キリスト教は酷い宗教さ。ずっと反抗してきたし、あの抑圧的なやり方には怒りを感じている。だから、奴らに対する奴ら自身の敵対者を使うのは当然に思えるんだ。

 

 

 

ー 歌詞の内容はどのようなものでしょう。どのようなところからインスピレーションを受けるのですか。

 

ヘルムート:すべての要素は、ベルフェゴールの中で追い求める邪悪な雰囲気を表現するために作られる。例えば、ラテン語は死語で、特に不気味なトーンを作り出す。ドイツ語の響きはアグレッシヴでブルータル。母国語で歌うのが好きだし、そのハードな発音は、命令口調にピッタリさ。英語は世界中で理解される。俺たちのテーマは普遍的なもの。世界のどこに行っても、押し付けられるものに反抗する人々がいる。言語や時代を超えてね。自由と探索は、すべての人間が人生のうちに追い求めるべき価値のあるものだと思う。だから、邪悪で異常な要素というのはベルフェゴールの利益なんだよ。

 

ー アートワークは何を表現しているのですか。

 

ヘルムート:今回もセト・シロ・アントンが素晴らしいアートを作り上げてくれた。彼は素晴らしいよ。俺が思い描くコンセプトを現実のものにしてくれる完璧なアーティストさ。情熱的でクリエイティヴな人間と一緒にやるのが好きだし。メタルを聴く、あるいはやっている人であれば、なお良い。だから彼と一緒に仕事をするのはいつも楽しいんだ。どういうアートワークが欲しいのかというヴィジョンが俺にあって、彼は再びそれを理解し、ペンで現実のものにしてくれたよ。ベルフェゴールのテーマは、常に邪悪で漠然としたイメージを中心にしている。そういうものにインスパイアされるんだ。セトと俺は素晴らしいチーム。彼に頼むのは、06年の『Pestapokalypse VI』以来、これで4枚目。アートワークの要素は、ルネサンスや中世の絵画から影響されている。ありきたりのキリストの体にナイフや釘が刺さっているものではなく、もう少々洗練された冒涜にした。それから俺にとってはワニはとても重要。なぜワニなのかと聞かれるのだけど、ほとんどのバンドは鷲やライオン、蛇のイメージを使うよね。同じように俺たちはワニを使うのさ(笑)。ワニというのはずっと邪悪で予想がつかない。ライオンと散歩したり、サメと泳いだりはできる。だけどワニと一緒に泳いでいる人は見たことがない。俺の意見では、ワニは人間を除けば食物連鎖の一番の捕食者さ。この魅力的な動物を、何年もかけて研究してきたから、そろそろベルフェゴールのアートワークに登場させる時だと思ってね。永遠の無慈悲さという、彼らに自然が与えたものの表象として。このアートワークをとても気に入っているよ。曲や歌詞の中身に完璧にフィットしている。

 

 

ー 今回は前作とは異なり、デイヴィッド・ディーポルドがドラムを叩いています。

 

ヘルムート:ベルフェゴールは根本的にはセルペントと俺のバンドなのさ。前作でドラムを叩いていたサイモン”ブラッドハマー”シリングは、マーダックに入った。奴はアルバムでも素晴らしいドラムを叩いてくれたし、世界を一緒にツアーできたのも素晴らしかった。いまでも連絡をしているし、悪い感情もない。何年もの間、同じバスで旅をして、同じテーブルで食事をし、世界中に邪悪な音楽を届けたんだからな。どんな関係も同じで、時に人々は袂を分つ。そしてどうやら俺たちは22年の11月22日に再会するようだ。今ははだ詳細は明かせないけれど。オーストリアの仲間、デイヴィッド・ディーポルドは、すば抜けたドラマーだよ。彼を雇って『ザ・デヴィルズ』の曲をリハーサルしてみたら、彼こそが完璧なチョイスだとわかった。この男は世界のメタル・ドラマー・トップ10に入るね。そのオーガニックで精密なドラミングが曲にもたらしたものは多いし、おかげで『ザ・デヴィルズ』というアルバムが、さらに輝かしいものになったよ。

 

ー 今回初めてイェンス・ボグレンをプロデューサーに迎えています。

 

ヘルムート:俺たちは過去にさまざまなプロデューサーと仕事をしてきた。Andy Classen、Alexander Krull、Eric Rutan、Peter Tätgren、Jason Sucofとかね。俺たちはいつも自分たちのシグニチャー・サウンドの中で公式を変えて、違ったスタジオやプロデューサーを使い、そのことで創造性や想像の炎を絶やさぬよう自分たちをワクワクさせ、挑戦させてきた。今回も、すべての曲の中でステップアップをした。プロデューサーのイェンス・ボグレンは、このアルバムのために持てる知識をすべて動員して、素晴らしいクリアなプロダクションで曲を黒いダイアモンドのように輝かせてくれた。もし彼の手が空いているのなら、ぜひまた次のベルフェゴールのプロジェクトでも一緒に仕事をしたいね。作曲から歌詞、そしてアートワーク、サウンドに至るまで、あらゆる点において完璧に自分たちのエネルギーを集中させることができたよ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ヘルムート:ぜひまた日本、アジアに呼んでもらえることを期待しているよ。前回から時間が経っているから、そろそろまた行くべき時さ。俺たちはアジア中のファンのためにライヴをやり、『ザ・デヴィルズ』をプロモートをしたい。最上のブルータリティで、俺たちのサウンド・コラージュをみんなに聴かせるためにね。An honor – this hoRRor!

 

 

文 川嶋未来

 

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2022年6月24日発売

ベルフェゴール

『ザ・デヴィルズ』

CD

【CD収録曲】

  1. ザ・デヴィルズ
  2. トーテンタンツ – ダンス・マカーブル
  3. グロリフィツィエルン・デ・トイフェル
  4. ダムネイション – へレンシュトアツ
  5. ヴィルトゥス・アシナリア – プレイヤー
  6. キングダム・オブ・コールド・フレッシュ
  7. リトゥス・インチェンディウム・ディアボルス
  8. クリーチャー・オブ・ファイア
  9. ブラッケスト・サバス 1997 [世界共通ボーナストラック]

 

【メンバー】
ヘルムート(ヴォーカル/ギター)
セルペント(ベース)

 

デイヴィッド・ディーポルド(セッション・ドラム)