ロニー・ロメロが彼自身の名前を冠した新バンドとしてアルバムをリリースする。今回はそのアルバムのドラムであり、エンジニアであり、プロデューサーのアンディ・Cに話を聞いてみた。
若井望: やあ、アンディ!このような形で君にインタビューできてとても面白いし嬉しいよ!
アンディ・C: ハロー、望!お時間を割いてくれてありがとう!
若井望: 早速なんだけどロニー・ロメロ・バンドの『Too Many Lies, Too Many Masters』(以下『TMLTMM』)について質問させてもらうよ!アンディは作曲家、エンジニア、そしてロニーとの共同プロデューサーとしてアルバムに関わっていますね。このアルバムでは最初からそのつもりだったのですか?
アンディ・C: ロニーと僕は長年一緒に仕事をしてきた。Lords of Blackのドラムとヴォーカルも僕のスタジオでレコーディングされたんだ。以来、リッチー・ブラックモアとのレコーディング、フェリーメン、ディスティニアなど…僕のスタジオで一緒にやったし、それらのレコードのヴォーカル・エンジニアも僕だった。彼は僕のプロデューサーとしてのキャリアを知っているし、僕が何年も僕のスタジオでバンドをプロデュースしてきたことも知っている。『TMLTMM』の制作を始めたとき、彼は僕に電話をかけてきて、彼の初めてのソロ・アルバムのプロデューサーになってほしい、一緒にやってほしいと言った。そこで僕たちは、アルバムを構成する曲の制作に取りかかったんだ。
若井望: このアルバムは、前作のようにゲストを入れるのではなく、固定メンバーによるバンドとして制作されたていますね。日本のファンは、Lords of Blackのメンバーであったロニー、アンディ、ハビ・ガルシアのことはある程度知っているので、特に2人のギタリストについて、経歴も含めて教えてもらえると嬉しいです。
アンディ・C: いくつかの情報が出ているようですが、それは完全には正しくないんだ。レコーディングに参加したミュージシャンは、ロニー・ロメロがボーカル。ホセ・ルビオがギター。ハビ・ガルシアがベース。フランシスコ・ジル・トーレスがキーボード。アンディ・コボス がドラム、ピアノ。ホセ・ルビオはスペインとラテン・アメリカでよく知られたギタリストなんだ。ロニーがスペインに渡って最初に入ったバンド Nova Eraのメンバーだった。ホセは、スペインの偉大なバンド Warcry, Jose Andrea, Uróborosと共演し、ソロアルバムも5枚出しているんだ。フランシスコはピアニストで、ホセと共に Nova Eraで活動している。キーボード・アレンジに熟練したミュージシャンだね。
若井望: このアルバムのタイトル『Too Many Lies, Too Many Masters』の理由は?
アンディ・C: ロニーが歌詞とアルバムタイトルを担当しているから…。彼なら可能な限り最善の説明ができると思うよ(笑)
若井望: OK、機会があったら彼に聴いてみるよ(笑)今回、ロニーは全曲の作曲に携わっているようですね。これは自然な流れからですか?それとも計画されたものですか?
アンディ・C: 今回のレコーディングでは、ロニーは最初から歌詞とヴォーカルのメロディーを担当することを望んでいた。すべてロニーと最初から計画していたんだ。その時代から何曲かは僕が作曲して、彼が歌詞とヴォーカルラインを担当した事もあったから自然に出来たよ
若井望: Lords of Blackを制作していた時も、ロニーと共同で曲を書いたのですか?
アンディ・C: Lords of Blackでの仕事のやり方は、今回のアルバムとは全く違うんだけど、何曲かは一緒に仕事をしていて、僕が作曲して、彼が歌詞とヴォーカルラインを担当したこともあるね!
若井望: 2枚のカヴァー・アルバムをリリースしてからこのアルバムが完成するまでの制作期間がとても短かったように感じました。これはプロデューサーとして意図的だったのでしょうか?
アンディ・C:各アルバムの発売時期は、実はフロンティアーズ・レコードが決めているんだ。彼らは僕たちにアルバムを準備する日を与え、僕たちは仕事に取り掛かった。すでに何曲か作っていたので、スタジオに入る準備はできていたね。
若井望: クレジットを見ると、ロニーとホセはそれぞれ自分たちでレコーディングしたようですね。
アンディ・C:フランシスコ・ギルと僕は家が近いので、多くのパートを一緒にレコーディングすることができた。ホセはガリシアに住んでいて、僕の住んでいる町から700km近く離れているんだ。彼は自分のレコーディング・スタジオを持っていて、そこでレコーディングし、僕にトラックを送ってすべてを監督するのがベストだと判断したんだ。僕たちはこうしてとても快適に仕事をしているよ。彼は午前中にレコーディングを行い、午後にはセッションに加えるものをすべて僕に送ってくれた。ロニーはルーマニアという別の国に住んでいる。ロニーはルーマニアにスタジオを持っていて、そこでいつもレコーディングをしているんだ。彼は1週間もかからずにすべてのトラックを僕に送ってくれて、僕たちは2、3の変更を加えただけだったと思う。ロニーと僕は何年も一緒に仕事をしてきて、たくさんのレコーディングをしてきたからね。
若井望:レコーディング期間中の興味深いエピソードや、こだわりがあれば教えてください。
アンディ・C:アルバムのレコーディング、編集、ミックス、マスタリングは5週間で行われたんだ。レコーディングをスタートさせるのはとても大変な作業だったよ。とても思い出深いエピソードが一つあるんだ。マスターを仕上げてフロンティアーズに送ったら、もう1曲、日本向けのボーナス・トラックが必要だと言われたことだ。ロニーと相談した結果、「アイヴ・ビーン・ルージング・ユー」のアコースティック・ヴァージョンを作ることにしたんだ。締め切りに間に合わなくなりそうだったので、ロニーは午後にスタジオに行って、僕が送ったピアノ・ソロ・バージョンにヴォーカルを録音して、新しいヴォーカル・トラックを送ってくれた。その日の夜中の3時頃、僕はルバートやアレンジの変更、エレクトリック・バージョンとは少し違う構成で、その新しいバージョンを解釈し始めた。ミキシングしてマスターを作り、午前4時ごろに送りました。完全に疲れ果てていたんだけど、結果にはとても上手く仕上がったんだ!スタジオでピアノを弾きながら、夜遅くまで疲れ果てていて、君とのMetal SoulsやLords of Black、日本にいたときのことを思い出しながら、気持ちを込めて演奏したんだ。
若井望: それは私にとっても、日本のファンにとってもすごく嬉しい事ですね!ありがとう!ちなみにアルバムの楽曲についても教えて欲しいな。本作は普遍的なハード・ロック・スタイルで幕を開け、ピアノの起伏を生かしたフックのあるアレンジがとても素敵な「アイヴ・ビーン・ルージング・ユー」に続きます。あなたはピアノを弾くマルチプレイヤーですが、曲の構成も自分で決めているのですか?
アンディ・C:曲を作るときは、楽器のメロディーと構成を決める。自分の曲に対する提案や他の意見にはいつでも耳を傾けている。でも、僕はたくさんの曲を書いてきたし、作曲に多くの時間を費やしてきた。だから、すべてを完成させて、歌い継ぐ準備ができている状態で納品するんだ。
若井望:あなたが作詞作曲を手がけた 「ガール、ドント・リッスン・トゥ・ザ・レディオ」では、ロニーは、エクストリーム・メタル・バンドに見られるようなダーティー・ヴォイスを使っていますし、「ア・ディスタント・ショア」ではキーボードを使ったモダンなアプローチをとっていますね!このあたりはロニーのスタイルに対する新たな挑戦のような気がしますが、彼のリクエストなのでしょうか?それともあなたが持ち込んだアイデアですか?
アンディ・C:通常、僕が曲を書くときはピアノから始めて、メロディやコード・シーケンスから始めることが多いんだけど、「ガール、ドント・リッスン・トゥ・ザ・レディオ」ではまったく違うアプローチでギターだけで書いたんだ。メイン・リフがあり、それが曲の残りの部分のアイデアとなった。最初は、ロニーのスタイルにはリスキーすぎるし、違うんじゃないかと思ったんだけど、彼がこれを聴いて気に入ってくれたので、アルバムに収録することにしたんだ。ロニーがヴォーカル・トラックを録音するときに、曲のタイトルと歌詞を教えてくれて、古いラジオから聞こえてくるような声の処理をしてほしいと言われたんだ。それで、60年代の古いラジオのような効果を出すために、フィルターやディストーションを少し使ってみたんだ。でもコーラスでは、エフェクトをかけずに自然な声のままにすることにしたんだ。素晴らしいアイデアだったと思う。「ア・ディスタント・ショア」はまた全くテイストの違う曲だね。個人的にはとても特別な曲で、実家で作曲したんだ。僕の父はピアニストで家にピアノがあるんだ。少し煮詰まった時があって、もう作曲はできないだろうと思っていたし、その気にもなれなかったし、インスピレーションも得られなかった。でも、実家にあるピアノはいつも素晴らしい曲を僕に与えてくれていたから、鍵盤の前に座ると、突然、一人で弾き始めたんだ。それは僕に大きな喜びを与え、突然また作曲する意欲を取り戻した。この曲のヴォーカルの扱いについては、ロニーがトラックを送ってきたときから、僕とロニーは明確に決めていた。何もない大きな部屋で歌っているような、広い空間が欲しかったんだ。そのアプローチは、歌詞と彼が歌った気持ちをとてもよく表していると思う。ロニーにとっても特別な曲だと思うし、歌詞は彼にとってとても個人的なことを歌っている。
若井望:このアルバムではミキシングとマスタリングも担当されていますね。その際、特に苦労した点はありますか?
アンディ・C:ロニー・ロメロという世界的に有名なアーティストのアルバムであり、彼自身初のソロ・アルバムでもある!ギターの轟音、破壊的なドラム、存在感のあるクリアなヴォイス、でも音楽より上に立つことなく、同時に僕がとても好きな70年代ロックのオーガニックな面も維持したかったんだ。
若井望: 私はこのアルバムで、ロニー・ロメロのソロ・プロジェクトがバンドとしてスタートしたと感じているのですが、どう思いますか?
アンディ・C:このアルバムが、ロニー・ロメロのインディペンデント・ソロ・アーティストとしてのキャリアの始まりだと思うよ。ジャケットには彼の名前があり、ファースト・アルバムとして、彼がやりたいスタイルと音楽の方向性を大きく示していると思う。
若井望:ロニーを昔から知っているあなたから見て、ロニー・ロメロはどんな人ですか?
アンディ・C:ロニーと僕が最初に出会ったバンドはレインボーのカバーバンドだった。そして、僕たち2人とも、その後に起こることすべてを想像することはできなかった。最初から音楽的なつながりがあったし、後のLords Of Blackでは個人的なつきあいも深まった。彼はとても勤勉で、他の人の仕事を尊重し、常に同僚の意見に耳を傾けようとする人だ。これほど長い年月を共にしたのは、両者が音楽に打ち込み、良好な関係を築いている証だ。
若井望:素晴らしいリレーションだね!作品にもよく表れてると思うよ!ちなみに、あなたはロニー・ロメロ・バンドとしてフェスティバルに出演した直後だと思いますが、このプロジェクトに対するオーディエンスの反応や手応えを聞かせてくれたら嬉しいな。
アンディ・C:今のところ、新しいレパートリーで演奏したのは、ドイツの RohnRock Fest とイタリアのValledoriaでの Rock’n’Beer Fest で2ショウやったんだ。新曲に対する観客の反応はとてもいいね!まだアルバムが発売されて間もないし、一般の人たちはまだ曲を知らないんだけどね。9月からはヨーロッパ・ツアーが始まるんだけど、その時にはアルバムはすでに現地で発売されてるから、観客が新曲をどう思っているか、より明確な意見を持つことができると思うよ。
若井望:きっと君たちのアルバムを多くのファンは歓迎してくれるんじゃないかな。そう願っているよ!今日は、たくさんの質問に答えてくれてありがとう!最後に一言お願いします。スタジオの宣伝でも構わないよ(笑)。
アンディ・C:インタビューありがとう!9月の発売が楽しみだよ!フルでアルバムを聴いてもらえるからね。ロック好きの皆さんならきっと楽しめると思う!全曲をとても繊細に仕上げて、僕はこの仕事にとても熱中できからね!編集、ミキシング、マスター作業はすべて僕のスタジオ、KV62Studioで行っているので、僕と仕事をすることに興味がある人は誰でも連絡してください!ところで、僕のスタジオの名前を付けたとき、その意味はとても分かりやすいものだと思っていたんだけど、みんなにその意味を聞かれ続けているんだ(笑)KV62って何?知っている人がいたら、手紙をくれると嬉しいよ!
若井望: KV62について知ってる人は是非アンディに連絡を!(笑)最後に私から…。このアルバムは、ロニーの才能と、プロデューサー/ソングライターとしてのあなたの才能によって、とてもいいアルバムが完成したと感じているよ!そしてもちろん、あなたは素晴らしいドラマーだって事も再認識した作品でした!また世界のどこかで会いましょう!
アンディ・C: ありがとう、望!
文 若井望
【CD収録曲】
- キャストアウェイ・オン・ザ・ムーン
- マウンテン・オブ・ライト
- アイヴ・ビーン・ルージング・ユー
- トゥー・メニー・ライズ、トゥー・メニー・マスターズ
- ガール、ドント・リッスン・トゥ・ザ・レディオ
- クロスロード
- ノット・ジャスト・ア・ナイトメア
- ア・ディスタント・ショア
- チェイスド・バイ・シャドウズ
- ヴェンジェンス
- アイヴ・ビーン・ルージング・ユー (アコースティック・ヴァージョン)《日本盤限定ボーナストラック》
【メンバー】
ロニー・ロメロ (ヴォーカル)
アンディ・C (ドラムス)
ホセ・ルビオ (ギター)
フランシスコ・ギル (キーボード)
ハビ・ガルシア (ベース)