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スヴェン・ド・カルヴェ
(アボーテッド)
独占インタビュー

最近は過去にないくらい
ブラック・メタルとデス・メタルが
絡み合ってきているから
そういうムーヴメントはクールだと思う

                                   

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文:川嶋未来

ベルギーのブルータル・デス・メタル・バンド、アボーテッドがニュー・アルバム『マニアカルト』をリリース。リーダーのスヴェン・ド・カルヴェ(Vo)に話を聞いてみた。

 

ー ニュー・アルバム『マニアカルト』がリリースになります。過去の作品と比べて、どんな点が進歩していると言えるでしょう。

 

スヴェン:今回の作品は、とても包括的なものになっていると思う。前作はアトモスフェリックなパートやテクニカルなパートもあったけれど、最初から最後まで激しかったからね。それになかなか消化しにくいパートもあったと思う。一方で今回のアルバムは、バランスを取ることに重点を置いていて、しばらくやっていなかったこともやっているよ。グルーヴもあるし、とてもヴァリエーションに富んだ作品さ。前作よりもライヴ向けになっているよ。

 

 

 

ー 確かにダークなパート、ブラック・メタルというかポスト・ブラック・メタルっぽいパートが印象的でした。これはどのようなところからのインスピレーションなのでしょう。

 

スウェン:曲はすべてケンが書いているから、彼に聞いてもらった方が良いのだけど(笑)、ケンやイアンはワテインとかが大好きだからね。ブラック・メタルが大好きなんだよ。俺個人的にはブラック・メタル・シーンのことはあまり詳しくないのだけれど。最近は過去にないくらいブラック・メタルとデス・メタルが絡み合ってきているから。そういうムーヴメントはクールだと思う。

 

ー 『マニアカルト』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょう。

 

スヴェン:基本的にはここ数年世界で起こっているクレイジーな出来事のメタファーさ。直接的な内容としては、80年代っぽいクレイジーなシリアル・キラーが、悪魔を使って人類を滅亡させるというようなものなのだけど、ここ数年社会で顕著な分断や精神病といった問題のメタファーさ。人々が面と向かって話し合いができないということや、クレイジーな陰謀論を恐れたりとか。アルバムはそういうコンセプトになっているんだ。

 

ー これはコンセプト・アルバムなのでしょうか。

 

スヴェン:ある程度はね。どの曲も同じようなテーマを持ってはいる。すべての曲が大きな物語になっているようなコンセプト・アルバムは好きではないけれど。そういうのは言えることが制限されてしまうからね。人々の間の分断は、ここ数年でますます大きくなっているし、極右の思想に惹きつけられる人たちも増えている。人々を和解させたり、共通の認識で結びつけたりすることは、どんどん難しくなっているのさ。これがタイトルの「マニア」という部分に関係している。それに加えて、ここ数年増え続けている精神病の問題も、重要なテーマさ。個人的には無視されるべきではない問題だと思う。

 

ー 「グロテスク」は他の曲とは随分と違った内容ですよね。

 

スヴェン:(爆笑)。歌詞読んだんだね(笑)。これと「ア・ヴァルガー・クアグマイアー」の2曲は、ウンコについての曲さ。俺たちはずっとアルバムに1曲はウンコについての曲を入れるようにしてきたのだけど、前作では忘れてしまってね。うっかり忘れてしまったんだ。だから、今回は2曲入れたんだよ(笑)。「グロテスク」はウンコをするという技術についてだよ(笑)。

 

ー メッセージも何もなく、単にウンコについて歌っているのですか。

 

スヴェン:その通り(笑)。

 

 

ー バンドを始めた頃は、どのようなバンドから影響を受けていたのですか。

 

スヴェン:始めた頃はサフォケーション、エントゥームド、ナパーム・デス、カーカスみたいなクラシックなデス・メタルから影響を受けていた。こういうバンドを聴いて育ったからね。バンドを始めた頃は、間違いなくこれらのバンドから影響を受けていたよ。

 

ー それは時と共に変わって行ったのでしょうか。

 

スヴェン:そう思うよ。キャリアを積んでいくと、様々なものに触れるし、アーティストとして自分のサウンドというものを見つけようともする。俺たちも自分たちのサウンドを見つけられたと思う。色々なバンドとツアーをして、新しいものを見たり聴いたりすると、それらが曲作りに影響をすることもあるだろうし。ケンはポップスもたくさん聴くけれど、さすがにそれがアボーテッドに影響を与えることは無いだろうけれどね。

 

ー サウンドトラックやクラシックからの影響はありますか。

 

スヴェン:もちろん。ホラー映画のサウンドトラックはたくさん聴くよ。ジョン・カーペンターの作品や、シンセウェイヴもよく聴く。雰囲気的にそういうものからの影響は受けていると思う。ホラー映画はアボーテッドの世界観に大きな影響を与えているよ。

 

ー アートワークもホラー映画のジャケットっぽいですが。

 

スヴェン:もちろん故意だよ。

 

 

ー 自体なども含めホラー映画の『マニアック』を思い出したのですが、これは故意ですか。

 

スヴェン:それはないな。言いたいことはわかるけれど。あれは素晴らしい映画だよね。基本的には80年代、90年代の映画風にしたということさ。中心の人物はウェイランド・サーストン。『クトゥルーの呼び声』の語り手さ。キャラクターをよく見てもらうと、(『死霊のしたたり』の)ウェスト博士っぽいところや、ジェイソン、マイケル・マイヤーズっぽいところがある。一人のスラッシャーにすべての要素を盛り込んだんだよ。

 

ー お気に入りのホラー映画を教えてください。

 

スヴェン:『エルム街の悪夢』、『ヘルレイザー』、『死霊のはらわた』、『死霊のしたたり』とかのクラシックだね。ジョン・カーペンターの作品も素晴らしい。『パラダイム』や『ゼイリブ』とかね。『ヴァンパイア/最期の聖戦』や『ハロウィン』も好きだよ。あの当時のホラーが大好きなんだ。クライヴ・バーカーとか。彼は当時最も素晴らしくてオリジナルで、一番不愉快な作品を作る(笑)監督だったんじゃないかな。デヴィッド・クローネンバーグも素晴らしいね。『ザ・フライ』のリメイク版は、今日の基準からしても最もショッキングな映画の一つだよ。

 

ー Abortedという名前はCDショップでABC順に並べられると一番最初に来そうだからという理由でつけたというのは本当ですか。

 

スヴェン:(大爆笑)。イエス!その通りだよ。

 

ー 2-3年に一枚アルバムを出しています。21世紀の基準からすると速いペースという気がしますが、これはポリシーなのでしょうか。

 

スヴェン:そういう訳じゃない。忙しくクリエイティヴにしているのが好きなんだ。ツアーをしていない時も曲作りをしていたいし、同じアルバムでずっとツアーをし続けるというのも好きじゃない。一年中ツアーをするのも好まないから、ツアーをしていない時は曲を書くようにしているんだ。

 

ー アボーテッドの音楽をどう描写しますか。やはりデス・メタルでしょうか。

 

スヴェン:そう思うよ。それ以外の要素ももちろんあるけれど、基本的にはデス・メタルさ。テクニカルなものやグラインドコア、ブラック・メタルからの影響もあるけれど、コアな部分はブルータル・デス・メタルさ。

 

ー 現在アボーテッドはあなたを除いて全員ベルギー国外のミュージシャンです。国外のメンバーとやる方が、やりやすいですか。

 

スヴェン:状況次第じゃないかな。ベルギーでは、ツアーをしたり音楽にすべてを賭けられるミュージシャンを見つけることができなかったんだ。少なくとも当時は大変だった。今はどうかわからないけれど。ケンとはもう11年も一緒にやっているし、メンバーも安定しているからね。それに久々にメンバーに会うと、ハッピーな気持ちになれるというメリットもある(笑)。良いバランスだよ。

 

ー お気に入りのヴォーカリストは誰でしょう。

 

スヴェン:各世代から挙げるとすると、サフォケーションのフランク・マレン。Illdisposedのボ・サマー。最近出てきた若い世代だと、Shadow of Intentのベン・デュールは凄い。Infant Annihilatorのディッキー・アレンもいいね。素晴らしいヴォーカリストが次々出てきていて、全員を挙げるのは難しいよ。

 

ー エクストリーム・メタルを聴き始めたきっかけは何だったのでしょう。

 

スヴェン:良い質問だね。俺が育った小さな町は大きなメタル・シーンがあったから、友達や友達のバンドを通じて接していたんだ。Dragon’s Blazeというフェスティヴァルを立ち上げた友人もいてね。俺の記憶が正しければ、ヨーロッパ本土で初めてイン・フレイムスやダーク・トランキリティ、ソイルワーク、クレイドル・オブ・フィルスなんかがプレイしたフェスだったんだ。まだ彼らがファースト・アルバムを出したばかりの頃さ。とてもスペシャルでクールな思い出だよ。

 

ー いきなりデス・メタルから入ったんですか。

 

スヴェン:いや、もともとはアリス・イン・チェインズやボディ・カウントとか。90年代初め、グランジがとても人気があったから、そこから入った。だけどすぐにパンテラやナパーム・デス、ディーサイドなんかを聴くようになった。あっという間にデス・メタルに行ったんだ。

 

 

ー 今後の予定を教えてください。

 

スヴェン:今年は何の予定も無い。メンバー2人はカリフォルニアに住んでいて、もう1人はイタリア、そして俺はベルギーに住んでいるからね。会うことすらできていないから、今年はもう何もできない。だけど来年の2月からThe Acacia Strain、Benighted、Fleddy Melculyとツアーをやる予定。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

スヴェン:難しいな(笑)。サフォケーションの『Despise the Sun』(EP)。それから、エンドゥームドの『Left Hand Path』。カーカスの『Heartwork』。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

スヴェン:まず、俺たちの音楽を聴いてくれてありがとう。新作も聴いてくれると嬉しいな。前回日本に行ってから数年が経ってしまっているから、早くまた行ってみんなとエクストリーム・ミュージックを楽しみたいよ。

 

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年10月22日発売

アボーテッド

『マニアカルト』

CD

【CD収録曲】

  1. フェルデルフ
  2. マニアカルト
  3. インペタス・オディ
  4. ポータル・トゥ・ヴァキュイティ
  5. デメントフォビア
  6. ア・ヴァルガー・クアグマイア
  7. ヴァーボルヘン
  8. セレモニアル・イネプティテュード
  9. ドラグ・ミー・トゥ・ヘル
  10. グロテスク
  11. イ・プレディレッティ – ザ・フォリー・オブ・ザ・ゴッズ
  12. グルーム・アンド・ジ・アート・オブ・トリビュレーション(2021 エディット)《日本盤限定ボーナストラック》

 

【メンバー】
スヴェン・ド・カルヴェ(ヴォーカル)
イアン・イェケリス(ギター)
ステファノ・フランチェシーニ(ベース)
ケン・ベデネ(ドラムス)