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ヴィクター・スモールスキ
(アルマナック)独占インタビュー!

ミュージシャンとレーサーを両立!元レイジ~現アルマナックの天才ギタリストが語る独占インタビュー!
『バッハにはとてもメタルを感じるんだよ』

                                   

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文:川嶋未来

元レイジのスーパー・ギタリスト、ヴィクター・スモールスキ率いるアルマナックが、ニュー・アルバム『ラッシュ・オブ・デス』をリリース。プロのレースドライバーでもあるヴィクターに、新作のこと、音楽的バックグラウンド、そしてレースについてなど、いろいろと話を聞いてみた。

 

 

― ニュー・アルバム『ラッシュ・オブ・デス』がリリースになります。過去の作品と比べてどのような点が進化していると言えるでしょう。

 

ヴィクター:このアルバムを作り始めて、どういう方向性にしようかと考えたときに、俺の過去30年間にわたるキャリアの特徴、スタイルとは何なのかを振り返ってみたんだ。それで、俺のスタイルとは、クレイジーなギター・ソロやレイジ時代、特に『Unity』や『Soundchaser』でやったようなヘヴィなリフ、それから「Suite Lingua Mortis」でのオーケストレーション、アルマナックの過去の2枚の作品でやったような様々なヴォイスということが思い当たった。『ラッシュ・オブ・デス』を聴いてもらえれば、俺の音楽的な歴史が詰まっていることがわかると思うよ。一方で、このアルバムには多少の変化もある。ラインナップ・チェンジがあったからね。去年は本当にたくさんツアーをやったのだけど、以前のラインナップではこれが難しくなってきたんだ。メンバーがドイツに住んでいないと、リハーサルをやるのも一苦労だった。正直彼らは普通の仕事もしていたから、いつもいつもツアーに出るわけにはいかなかったし。それでメンバーチェンジを決断した。小さなクラブから大きなアリーナまで、とにかく多くのショウをやるためにね。韓国やロシアにも行って。新しいメンバーのおかげで、サウンドはさらにヘヴィになった。新曲はもっとタイトになっているよ。

 

 

プレデター(リリック・ビデオ)

― アルバムのテーマはどのようなものですか。

 

ヴィクター:このアルバムのコンセプトについて話し始めたときは、『Tsar』や『Kingslayer』同様、歴史的な内容にしようと思っていたんだ。俺は歴史が大好きだからね。色々なトピックを見ていって、最終的にグラディエイターを選んだ。グラディエイターというと、奴隷が自由を求めて戦っているという見方が一般的だろう。だけど、俺たちは例外もあるということも気づいたんだ。中には戦いに勝って自由を獲得したにもかかわらず、グラディエイターをやめなかった人たちもいたんだよ。何と言いえばいいのかな、アリーナに留まって、スターになりたかったというか、戦いで出るクレイジーなアドレナリンを忘れられなくなって。そういう人たちは、奴隷ではなくファイターだったということさ。彼らは通常死ぬまで戦ったんだ。「ソイルド・エグジステンス」で描いたみたいにね。フランマという有名なグラディエイターがいて、彼は30回以上の戦いに勝利した。勝つたびに自由になれたのに、彼は戦い続けたんだ。こういう風に別角度からグラディエイターについて描いてみるのも面白いだろうと思ったのさ。5曲がグラディエイター、つまり歴史的内容になっている。これらは「Suit Lingua Mortis Part2」のように、オーケストレーションが施されているよ。他の曲は、歴史から離れ、現代の話になる。俺にとっては、現代のグラディエイターは、レースドライバーさ。似てるだろ?アリーナでレーストラックがあって、オーディエンスが見ている。みんなクラッシュを期待しながらね(笑)。ドライバーは、時に個人的限界にまで近づくファイターだ。俺はプロのレースドライバーとして、25年もレースをやっているからね。その感覚がよくわかる。たくさん勝ったし負けたこともある。クラッシュをしたこともある。ニュルブルクリンク24時間レースのような特別なレースにも出た。本当にクレイジーな体験だったし、ニキ・ラウダ、カルロ・サインツのような、伝説的なドライバーと話をすることもできた。ニキ・ラウダが「レースをやっているときに友情なんて存在しない。」って言っていたことを覚えてるよ(笑)。レースをするときは、戦わなくちゃいけないからね。ジェームズ・ハントは「死は感じるよりも近いところにある」なんて言ってたな(笑)。

 

ボート・アンド・ソールド(リリック・ビデオ)

― アートワークにもレースカーが描かれていますよね。

 

ヴィクター:あれはクラディエイターのアリーナだよ。レースカーとレースドライバーが、未来のバケモノと戦っている。俺が書いた「Soundchaser」みたいにね。つまりアートワークも俺の歴史なんだよ。レースカーは実際に俺の車がモデルだし、バケモノは俺が書いた曲がモチーフ。そういうものがミックスされてる。

 

― 命の危険を感じるようなクラッシュを経験したことはありますか。

 

ヴィクター:一番危険だったのは、だいたい10年くらい前のニュルブルクリンク24時間レースだった。霧の深い夜で、ほとんど何も見えなくてね。俺は集団の先頭を走っていて、2位の車と激しい争いになったんだ。それで、あの気象条件にしては明らかにスピードを出しすぎていた。ついてないことに、コーナーでハンドル操作を誤って、200kmの速度で壁に激突してしまった。車は大破して俺も入院するハメになったよ。無事だったけど、とても危険な体験だったね。あとから冷静になってヴィデオを見返してみると本当にクレイジーだと思うんだけど、やってる最中はね。勝ちたくてアドレナリンが出まくってるから(笑)。

 

― そのような事故にあって、レースはもうやめようとは思わなかったですか。

 

ヴィクター:思わなかった。この事故で、自分をコントロールすることを学んだからね。俺にはレースや高揚感が必要なんだ。音楽からのリセットというのかな。音楽について本当にたくさんのことをやっているからね。アルマナック、ギタースクール、ワークショップ、いろんなバンドのためにオーケストレーションもやっているし、頭の中はいつも音楽のことでいっぱいなんだ。なかなかリラックスできないんだよ。だから、週末レーストラックで車に乗り、エンジンのボタンを押すと、まるでそれが俺の頭の中のリセットボタンのように感じるんだ(笑)。頭の中から音楽が消えるんだよ。週末レースをやると、エネルギーが充満する。バケーションのようなものさ。集中力を必要とする危険なバケーションだけどね。

 

 

― そもそも音楽との出会いはどのようなものだったのですか。お父様がクラシックの作曲家だったんですよね。

 

ヴィクター:そうだよ。俺は音楽的な家庭に生まれたんだ。父はクラシックの作曲家だったから、家にはいつも音楽が流れていた。だから俺にとって、音楽を聴くというのはとても自然な行為だったんだ。父は俺をオーケストラやオペラシアターのリハーサルにも連れていってくれたから、クラシックにも馴染みがあった。だけど彼はとても賢くて、俺に音楽を押し付けることはせず、ただ音楽とはどういうものかを見せてくれた。音楽の世界の扉を開けてくれたんだよ。それが良かったんだろうね。6歳のときに音楽を学びたくなって、音楽学校に行ってチェロとピアノを学ぶようになった。11歳のときにはギターと出会ってね。それでロックやジャズのコースに通って、完全なギターの虜になった。今でもチェロやピアノをプレイするし、それらの楽器も大好きだけど、やっぱりギターには俺の世界を変えられたからね。ギターこそが俺の楽器だよ。ロックのエネルギーもまさに俺向きだし。ラッキーなことに、父はあらゆる種類の音楽に対して寛容だった。保守的なクラシックの作曲家ではなくてね。彼はロックもジャズも聴いた。クオリティが高くて興味深くて、プロフェッショナルなものであればだが。俺が毎日狂ったように8時間もギターを弾いているものだから、父も俺をサポートしてくれた。14歳で最初のバンドに入って、確かその2年後に最初のツアーに出たんだよ。あの頃から何も変わってない(笑)。俺は今でも音楽を続けていて、とても楽しんでいる(笑)。当時のベラルーシはソビエト連邦の一部だったけれど、あの頃のクラシックの教育というのは信じられないくらい素晴らしいものだった。あそこまで高いクオリティの音楽教育は、他では見たことがないよ。色々な理論を素晴らしい教師たちから学ぶことができた。俺の人生にとても役に立ったよ。俺はジャズも学びプレイしたし、ロックもやっているけど、それらのハーモニーやアレンジメントを理解するのはとても簡単だった。俺はクラシックが好きだし、クラシックのコンサートにも行くけど、ほかにも様々な音楽を聴くけれど、ヘヴィな音楽というのは、俺にとって特別なエネルギーを持つものさ。俺にとってベストなものだよ。

 

― そのヘヴィな音楽とはどのように出会ったのですか。

 

ヴィクター:ヘヴィな音楽を探すのは時に大変だったよ。人気もあまりなかったし、政府もそういう音楽を奨励していなかったからね。でも、ロックをやっているアンダーグラウンドなバンドはたくさんいた。普通のお店でレコードを買うなんていうことはできなかったけどね。海外の人たちが学生と連絡をとって、送ってもらったり。レッド・ツェッペリンやジューダス・プリースト、AC/DCのレコードを手に入れるのに、苦労しなくちゃいけないんだよ(笑)。手に入れるのが難しいと、余計魅了的に感じるものだろ(笑)。禁じられてるものほど興味深いんだよ(笑)。

 

― 人間の性ですね。

 

ヴィクター:そうなんだよ。面白い時代だったよ。それで自分のバンドをやるようになって、ツアーをするようになって。その頃ペレストロイカが始まって、バンドにとっては良い時代になった。たくさんツアーして、たくさんコンサートをやったよ。大きなスタジアもとかでもね。ただ、ソビエト連邦の外に出ることは禁じられていたことは気に入らなかったけど。80年代終わり頃に始めて国外をツアーするようになって、もっと色々な世界を見たいと思ったんだ。それでドイツに引っ越したのさ。

 

 

― アルマナックへの影響を与えた音楽となると、どのあたりなのでしょう。

 

ヴィクター:それは難しい質問だな。というのも、俺は本当に色んな種類の音楽を聴くだけじゃなくて、色んな種類の音楽をプレイしているからね。アルマナックはとてもスペシャルなバンドで、新しい実験をすることにためらいはない。俺がそういうのが好きだということは、ファンもわかってくれている。メタルのベーシックな部分は、ジューダス・プリーストやアクセプト、それからドリーム・シアターのようなもっとモダンなスタイル、メシュガーのようなクレイジーなリズム、グルーヴィなものとか。違ったスタイルのメタルのフュージョンだと思うよ。作曲するときは、こういうスタイルにしようということは考えないけどね。ただ、音楽を書くだけ。すべて自然に湧いてくるものさ。さっきも言ったとおり、色々な音楽を聴いているから、アルマナックへの影響も様々だよ。それから、ラインナップが変わるごとに、バンドがより強力になっていったということもある。新しいドラマーは本当に素晴らしいし、メンバーが変わるごとにいつも新たにスペシャルなものが持ち込まれるんだ。俺は、ただ俺の書いた曲を演奏するだけのメンバーは望まない。チームワークが欲しいんだ。俺もフィードバックを受けて、新しいアレンジメントのアイデアを思いついたり、ドラマー、ベーシスト、ヴォーカリストから新しいことを学ぶ。俺は新しいことを学ぶのが大好きだから、フィードバックは大歓迎なんだよ。リハーサルを楽しみたいというのもあるからね。自分でデモを作って、それをメールで送ってみたいなやり方はしない。何か新しいアイデアを思いついたら、俺はリハーサル・ルームに行って、生身のミュージシャンとプレイしてみるのさ。そのアイデアがクールか、グルーヴィかってね。デモは好きじゃない。生で演奏する方がずっといいよ。

 

― クラシックの作曲家だと、どのあたりがお気に入りですか。

 

ヴィクター:俺はクラシックでもメタルでも、特にお気に入りの作曲家、アーティストなどはいないんだ。俺にとっては、お気に入りの作品があるだけ。うーん、何というか…

 

― ではどの時期の作品がお好きという聞き方の方が良いでしょうか。

 

ヴィクター:それならばバロックの作品が好きだね。バッハとか。バッハにはとてもメタルを感じるんだよ(笑)。とてもストレートで、バッハはメタルの作曲家だよ。凄くロックだし。たくさんハーモニーがあってストレートで、オンタイムに演奏されるだろ。ドラムを乗せるにはパーフェクトさ。一方で、もっとモダンなものも好き。チャイコフスキーとかラフマニノフとかね。彼らは新しいことを試みて、とても壮大な音楽を書いたよね。例えば車の運転をしながらとか、単にバックグラウンドミュージックとしてリラックスして音楽を聴くこともある。だけど、俺は普通はもっと音楽を深く聴くんだ。何というか、音楽を理解するというか、アレンジメントを分析したりとか。俺にとって音楽を聴くことは、他の人が本を読むようなものかもしれない(笑)。アルビノーニのアダージョなどはとてもシンプルでメロディも素晴らしいし、ムードも良い。だけどアレンジメントとか、テクニカルな面からすると、それほど興味深いものではない。一方、ショスタコヴィッチなんかはとても複雑なアレンジメントだから、一体どんなことが起こっているのか分析するのはとても興味深い。メタルも同じだよ。AC/DCはクールでグルーヴィだけど、スペシャルな興味深いものが聞きたいと思ったら、Thresholdあたりを聴くかな(笑)。

 

 

― 先ほど言われていたように、あなたは和声や対位法、オーケストレーションに至るまでさまざまな音楽理論を勉強されていますが、ミュージシャンは音楽理論を学ぶべきだと思いますか。

 

ヴィクター:役には立つだろうけど、必須だとは思わない。時にミュージシャンは音楽を感じて良いサウンドを作ろうとし、それがうまく行くこともある。音楽理論をまったく知らなくても、素晴らしい音楽を作れるミュージシャンはいるだろう。音楽理論を知らなくても良い音楽を作れる才能があるのなら、それで良いのさ。それで何の問題もない。だけど、音楽理論を知っていれば、欲しいサウンドにより簡単に、より素早く到達できるということもある。特に、ただのロックンロールやブルースではなくて、オーケストラやキーボードを使った複雑なアレンジメントが必要な時はね。さすがにオーケストラのアレンジメントをするのに、理論を知らずにというわけにはいかないからさ(笑)。

 

― あなたはギターやチェロだけでなく、シタールも演奏するんですよね。

 

ヴィクター:そうなんだよ。何年か前にインドをソロツアーしてね。インドの各地を回ったんだ。それでこの楽器に完全に魅了されてしまって、弾き方を学んだんだ。だけど、チューニングをキープするのがとても難しいから、ドイツに戻ってきたときに、シタールを俺のカスタムギターの会社に持っていたんだ。それでスペシャルな、ギター・シタールのようなものを作ってもらった。シタールなんだけど、ギターのようなネックになっている。このカスタム楽器をライヴで使ってるんだよ。音は100%シタールだけど、きちんとしたチューニングをキープしたままプレイできる。俺はギターでこういう実験を色々やっているんだ。ハーフ・フレットレス・ギターとか、ダブルネック、ピッコロベースとか、色々クレイジーなことを試してる。とても面白いよ(笑)。

 

― あなたの書く音楽はロシア的なものだと思いますか。

 

ヴィクター:うーん、俺の音楽にはロシアからの影響は大きいと思う。というのも、俺は人生の半分をそこで過ごし、勉強をしたからね。一方で、俺は世界中の色々なところを旅しているから、他の影響もミックスされていると思うよ。南米、アジア、東京でも色々なミュージシャンに出会ったし。俺は常に音楽的な面で色々な文化について学ぼうとしている。そういう意味で、世界中の音楽のフュージョンではあるんじゃないかな。その方が面白いしね。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ヴィクター:1枚目は、おそらくレッド・ツェッペリンの『Physical Graffiti』。あとは、うーん、何かな、AC/DCの『High Voltage』。それから随分と最近の作品になるけど、ドリーム・シアターの『Awake』。

 

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ヴィクター:ファンのみんなには本当に感謝している。日本には何度も行っているけど、いつも信じられないほど温かく迎えてくれるからね。ギタリストにとって、日本はスペシャルな国さ。本当にたくさんのギターフリークがいるだろ。ステージの前にいるファンを見るのもとても興味深い。彼らは俺のやっていることをじっと聴いてくれて、ギター・ソロも一緒に歌ってくれる。他の国でそんな経験をしたことはないよ。日本だけのことさ。素晴らしいね。長いことサポートしてくれてありがとう。ツアーで会えるのを楽しみにしているよ。

 

文 川嶋未来

 


2020年3月6日 世界同時発売

最新スタジオ・アルバム

アルマナック『ラッシュ・オブ・デス』

【CD】 ¥2,500+税

【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】

 

【CD収録予定曲】

01. プレデター
02. ラッシュ・オブ・デス
03. レット・ザ・ショウ・ビギン
04. ソイルド・エグジステンス
05. ボート・アンド・ソールド
06. ザ・ヒューマン・エッセンス
07. サティスファイド
08. ブリンク・オブ・アン・アイ
09. キャント・ホールド・ミー・バック
10. ライク・ア・マシーン

 

【メンバー】

ヴィクター・スモールスキ(ギター)
パトリック・サール(ヴォーカル)
ジャネット・マルヒェフカ(ヴォーカル)
ティム・ラシッド(ベース)
ケヴィン・コット(ドラムス)

 

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