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Michael Schenker Fest

ピュアな自己表現で音楽の楽しさを広めることをミッションにしていた

                                   

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川嶋未来

デビュー作『レザレクション』から約1年半ぶりとなるセカンド・アルバム『レヴェレイション』を9月20日に発表するマイケル・シェンカー・フェスト。テッド・マッケンナ急逝という悲劇を乗り越えて完成された本作には、サイモン・フィリップス、ボド・ショプフというマイケルとゆかりの深い2名のドラマーが参加。また、レインボーや若井望率いるDESTINIAで活躍するロニー・ロメロもゲスト参加している。さらに、日本盤の目玉がLOUDNESSの高崎晃がゲスト参加しているボーナストラック、「ザ・ビースト・イン・ザ・シャドウズ」だ。インタビュー中にも言及されている東西スーパー・ギタリスト2名によるソロ・バトルは、まさに圧巻の一言だ。

 

リリースに先立ち、アルバムのプロモーションでマイケル・シェンカーが日本にやってきた。本インタビューの前日、マイケルと夕食を共にし、3時間ほどいろいろとありがたい話を聞かせてもらうことができた。ホワイトスネイク、オジー・オズボーン、モータヘッド、エアロスミス、果てはローリング・ストーンズに加入を打診された話や、何度引っ越してもフィル・モグとご近所になってしまう話など、興味深いエピソードは尽きなかった。中でも「他人の音楽は絶対に聴かない」、「息子たちにギターのアドバイスを求められても絶対にしない」というポリシーは、マイケル・シェンカーの神髄に迫るものと思われたため、このインタビューではそこにポイントを絞り、30分じっくりと話をしてもらった。

 

 

 

― ニュー・アルバムについてのインタビューが続いているかと思いますが、今回は趣向を変え、昨晩の延長というか、あなたの音楽的哲学を中心にお話を伺いたいと思います。

 

マイケル:オーケー。

 

― あなたは他の人が書いた音楽を一切聴かないとのことですが、いつ頃からですか。どのような理由から、他人の音楽を聴くのをやめたのでしょう。

 

マイケル:17歳のころから音楽を聴いていないんだ。もうほとんど半世紀だね。15歳のころからそんな感じになってきて、17歳のときに完全に聴かなくなった。だから、人の音楽をコピーするという傾向は、15歳、16歳、17歳とどんどん少なくなっていったんだよ。直観的に、自己表現というものこそが自分の興味の対象であることがわかっていたからね。それも可能な限りピュアな。そして、可能な限りにピュアにやるには、人間の脳というのはスポンジのようなものだから、ほかの音楽を聴いてしまうと、どうしてもそれを利用してしまうということがわかっていたからね。私はそれを望まなかったんだよ。私たち人間というのは、みんなそれぞれユニークなものさ。すべては選択の問題なんだ。自己表現をするのか、それともトレンドをただリサイクルするのか。自己表現というのは、過去には表現されたことがなかったものを表現するということ。というのは、それはそれぞれ違った人間の内側から表現されるものだから。もし、自己表現として自らの内側からの創造を続けるという選択をし、それをやり続けるのなら、ヴォーカルであれギターであれ、それは非常にユニークでオリジナルなものになることは間違いない。もちろん、私も最初からそれに気づいていたわけではないよ。ただ、他人はすでにああいうことをやっているわけだから、私が同じことをやる必要はない、という風に感じていただけだった。他の誰もやっていないことをやりたかったから、私は私のやり方でやるしかなかったんだ。それに、私は一本の弦だけでどれだけのことを表現できるかということに非常に魅かれていたというのもあった。たった一本の弦だけでも、「ディーン」、「ディンディン」、「ディーン、ディディーン」といくらでもパターンを生み出せる。右手と弦一本だけでね。そこにビブラートをかけることもできる。本当にたくさんの違ったことができるんだ。たくさんのことをやる余地があるわけさ。まるで実験室のようにね。そういうことに私は魅かれていた。音を3つ使ってどんなコンビネーションが作れるか。最初の音2つを弾くと、そこからインスピレーションを受けて、3つ目の音が導かれる。その3つ目にふさわしい音を見つけたときは、「Yeah!」なんていう感じさ。今はこうやって言葉で解説しているけど、実際にこれらのことは素早く起こるんだ。休日にじっくり曲を書く場合は別だけどね。テープが送られてきて、美しいバラードにイントロをつける場合だと、これをスローモーションでやる。すべての音がしっくり来て、意味があるものになるようにね。基本的に、たった一本の弦でどれだけのことができるかという興味、まあ実際は6本もの弦を使えるわけだからね(笑)、無限のパターンが生み出せるんだよ。すべての人にはこういうことをやるチャンスがあって、すべては選択の問題なのさ。そしてその選択をするにあたって、もし君が急いで有名になってお金を稼ぎたい、ほかの人と競争をしたいと思うならば、こっちの道に進むべきではない。これで成功できるという保証はないからね。トレンドに乗って、簡単な道を進むべきだ。私のやり方は、とにかく楽しむということ。これはとても報われるやり方だと思うよ。これをやっていて、鳥肌が立つこともあるからね。もちろん、他の人が自分たちのやっていることに満足しているなら、それは素晴らしいことさ。だけど、私としては、重要なのは私自身がどのようなトーン、サウンドが欲しいのか、どういうものを自分が聞きたいのか、はっきりわかっていたということ。私は自分のやりたいことが明確だったから、私はこっちの道を選んだのだけど、アルバムごとに自分が進化しているのがわかったし。そして『Strangers in the Night』の時点で、私のジャーニーの第一部が完了したと感じたんだ。それで、次に何ができるだろうと考え始めたんだよ。映画音楽とか、ほかのことをやりたいなんて思った。もっといろいろな実験をしたくなったんだ。『Lights Out』が出て、大ヒットになった時点で、もう私はほとんどやめたくなっていた。人々が私に期待をするようになっていたからね。そういうのは私は好きじゃないんだ。でも、結局『Strangers in the Night』までは続けてきて、音楽的にもっと実験をしたいと思ったんだよ。ロックスター気取りの天狗ではない、一緒に楽しく作業をできる無名のシンガーを探して、ビッグになること、成功することを目的としない活動をしたかった。ピーター・メンチと一緒にやってきて、彼はビッグになること、成功することが目的だったけれど、そうでなければ私の人生には何も起こらず、自分の小さな世界で遊んでいるだけだっただろうけれど。92年からは、自分のやりたいように、小さな世界で遊び始めたんだ。ピーター・メンチもいなかったしね。それで『Thank You』を作って、インディペンデントで活動をした。「死後、どのような人物であったと言われたいですか」と聞かれたことがあるのだけど、「ピュアな自己表現で音楽の楽しさを広めることをミッションにしていた」と答えたんだ。これが私だよ。

 

― 普通はインプットがないと、アウトプットを出すのは難しいものです。何十年も、外からのインプット無しに音楽を作り続けるというのは、ただならぬことだと思うのですが。

 

マイケル:おそらく私は自分の内面に何があるのかがはっきり見えているんだろうね。昨日も言ったけれど、私の中では泡のようにどんどんとアイデアがわいてくるんだよ。まるでお湯が沸騰しているかのように。だから、スコーピオンズにいてくれと頼まれたときも、それは私にはできない相談だった。私はいろいろと実験したくて、私の中には表現したいことが山のようにあったから、彼らも私のやることを気に入らなかっただろうし、そもそも80年代の彼らのコマーシャルなアプローチにはそぐわなかっただろう。私が無意識に70年代にデザインしたものは、80年代にも使われただろうけれど。少しの間私がシーンから姿を消したのは、というか消そうと努めたのは、まあ私は有名だったから、簡単には人々は姿を消させてくれなかったのだけど、結局はピュアな自己表現というものをどのくらい深く理解しているか次第なのさ。私と同じくらいそれを楽しむなら、自己表現をやらないという理由なんてないんだよ。それに私は人と競争したり争ったりする人間ではない。「俺のほうがお前よりうまいぞ」とか、そういうことには一切興味がないんだ。ただただクリエイティヴであることに満足して、そのステップを楽しむだけ。不思議なことに、私は有名になりたいなんて考えもせずに有名になってしまったわけだけど。奇妙なことさ。

 

 

― 音楽理論についてはどうお考えですか。有益でしょうか、それとも害でしょうか。

 

マイケル:何について?

 

― 音楽理論です。

 

マイケル:それはどういうもの?

 

― スケールであるとか、コード進行の規則であるとか。

 

マイケル:ああ、自己表現にとっては危険だろうね(笑)。例えば、スケールなんて自分自身のものを作りだせばいいだろう?いくらでも新しいものを作りだせるのだから。他の人が考えたスケールをプレイする必要なんてないよ。過去にやられたことを繰り返すなんて、退屈なだけさ。新鮮なもの、新しいものを聴きたいだろう?

 

― なるほど。音楽理論は一切学んでいないのですね。

 

マイケル:その言葉すら知らなかったくらいさ(笑)。技術的な話をされると、「Auf Wiedersehen(さようなら)」っていう感じだよ(笑)。ついていけないからね。理解できない、聞いたこともない技術的な言葉はたくさんある。そういうレベルでは私は一切コミュニケートできない。私にとって音楽とは、それを分析することや名前をつけることではないからね。私は音楽について語るのではなく、それをプレイするわけだから。もし私が音楽を語るのであれば、そういった言葉も理解する必要があるだろう。話している内容を理解する必要があるだろうからね。でも語るのでなければ、ただ音楽をプレイすれば良いだけさ。

 

 

 

― 音楽を聴くのをやめる前はどんなものを聴いていたのですか。

 

マイケル:私はドイツに住んでいたから、ラジオを聴くのは楽しかったし、私の部屋はルドルフが貼ったスターのポスターでいっぱいだった。彼はそういう人たちの熱狂的なファンだったんだよ。私たちは英語がわからなかったから、ただラジオを聴いていた。そこでヒット曲、例えばローリング・ストーンズとか、ビートルズとか、ビートルズは大好きだったよ。ハンク・マーヴィンも聴いたな。初めてインストゥルメンタルの曲を聴いて、一瞬で好きなった。そのときすでに、コードよりも1本の弦に興味を持ったんだ。13歳くらいまでは、そういう音楽を聴いていた。「Yummy yummy yummy I got love in my tummy」とか。(笑)それで、そういった曲が、どうやって演奏されているのかを学んだんだ。最初は普通に、これらの曲をコピーして。そしてそれを理解したら、次のステップ、つまり内面へと移行したのさ。初めは道具の使い方を学ぶ必要がある。当時は英語もわからなかったから、歌詞も理解できなかったのだけど、歌も音としてコピーしたものさ。「I wanna hold your hand~」って。たまに合っていることもあったり(笑)。まあでも歌詞は理解できなかったから、歌詞の方にあまり興味はいかなかったな。いつも興味の対象はサウンドそのものだった。ヴォーカルもサウンド。歌詞ではなくてね。今振り返ってみると、それはとても重要な見方だったと思う。そしてそれが起こった。歪んだギターのサウンドを聴いたんだ。ビブラートをかけてキュイーンなんていう感じの。「ちょっと待てよ、わかったぞ」なんていう感じで、自分のやりたいことが見えた。一音弾けば、その音をずっとキープできる。フィードバックさせてもいいし、(ビブラートで)「ウーウーウー」なんてやることもできるし、ベンドをかけてもいい。アコースティック・ギターにピックアップをつけて、それをラジオにつなぐと歪んでフィードバックができた。それだけで何時間も遊んでいられたよ。他人の音楽を聴くよりも、この無限の可能性を追求することに夢中になったんだよ。音楽を聴くよりも、自分で新しいものを作り出すことにね。私は消費者ではなく、クリエーターになったということ。それに、消費することはエネルギーを使うということにも気づいていた。直観的に、他人の音楽からは距離を置くべきだと気づいていたんだ。ただ影響を受けてしまうといことだけではなく、音楽に集中すれば、消費者であることはエネルギーを使わされるということ。新鮮でいて、エネルギーを使わされず、かつずっとそれを愛し続けるためには、自らの創造にとどまり、新鮮で新しいものを生み出しつづけるべきなのさ。トロピカルな海のようなものだよ。いろいろな魚が現れ続けるだろう?アイデアが尽きることはないんだ。ヘアスタイルの本を見てみても、無限にパターンがあるよね(笑)。イマジネーションが無限で決して尽きることはないということを一度理解すれば、良い場所を見つけたということ。無限の創造の泉を見つけたといことだからね。アイデアが尽きることはないんだ。

 

― 良い音楽と悪い音楽はなく、すべては好みの問題だと言われてしましたが、そのことについてもう少し教えてください。

 

マイケル:その通りだよ。ただの表現方法の違いさ。例えば、今回日本のボーナストラックとしてアキラに参加してもらったのも、私にとって面白いアイデアだと思ったからさ。あれも、アキラはアキラ、マイケルはマイケルとしてやった。それだけのこと。彼は彼のやりたいようにやるべきだし、私はマイケル・シェンカーであるべきで、「アキラ、私のギターソロをどう思う?」なんて聞く必要はないんだよ。そんなことは重要ではないのだから。もし彼が彼のパフォーマンスに満足なら、それがすべてさ。聞いた人がそれを気に入るかどうかは、まったくの別問題であって、彼が彼のやりたいようにやったということがポイントなんだよ。私が息子たちに言ってるのはそういうことさ。自分が満足であること、それが大切なんだって。私のやりたいように彼がプレイしたのでは、彼は満たされるはずがない。故意に自分の気に入らない方法でやる必要なんてない。感じるとおりにやってみればいいのさ。問題は、多くの人は自信がなく、人に判断してもらおうとするところだ。そもそも人に聞かせることを恐れてしまうなんていうケースもある。拒絶されたらどうしよう、気に入ってもらえなかったらどうしようなんてね。自分がそれを気に入っているなら、泡と戯れることが楽しいのなら、他人がどう思うかなんて関係がないだろう。私は一本の弦で楽しむことで、いろいろなことから自分を守っていたのさ。私は直観的に自分のすべきことがわかったから。何のためにやるのかはわからなかったけれど。振り返ってみると、これまで説明してきたことを、意識的にやっていたわけではない。ただやることをやっていただけさ。分析もしなかった。おそらくは私の中に、私を導くものがあったんだろうね。

 

 

― おっしゃることは理解できます。あなたや高崎さんは超一流のプレイヤーであり、そのレベルではすべてが好みの問題だというのはわかります。しかし、例えば楽器や作曲の初心者などは特にアドバイスが欲しいものではないかと。

 

マイケル:そうかもしれない。ただ、それは君のものの見方だよ。私は他人の音楽をジャッジすることに、そもそも興味がないからね。音楽を聴かないから、そんなことをする必要もないのだけど。そういうことをしなくてはいけない状況にならないよう、自分を守っているのさ。同じように、やはり他の人も私に承認を求めるべきではないんだよ。彼ら自身が素晴らしいと思うやり方でやるべきだから。それが私の好きなことなんだ。他人が「これは良くない」なんて言ったって、関係ないんだ。私がまだ成長をしている段階では、そこまで自分をさらけ出さなかったのかもしれない。あるいは、そういうときでも、私は常に自分が「これはとても良い」と思えるものを見つけたと思っていたのかもしれない。だから、誰かに「これはどう思う?」なんて聞くことはなかった。私はただ、「クラウス、新曲ができたよ」というだけだった(笑)。ただそうやって、新しい曲を歌って聞かせたんだ。そうするとクラウスがそのメロディを引き継いで、兄貴のルドルフが修正する。そういうシステムで曲を作っていた。そうやってクラウスに伝えてたんだよ。君の言いたいことはわかるし、私のやっていることが普通ではないこともわかる。多くの人ができることではないよね。まあでもそれが私なんだよ。

 

― やはりあなたには類まれなる才能があるのでしょう。

 

マイケル:多分、そうだな、まあ聞いてくれ、私が何でもできるというのは、おそらく私が音楽の神の息子だからなんだよ。

 

― そのとおりだと思いますよ。

 

マイケル:私の言いたいことはわかるだろう?すべての展開の仕方、そしてそれを人に笑われることがあったりであるとか、こうやって私がフライングVコンセプトにはりつけになっている、(MSFのニュー・アルバムの)ああいうジャケットにしたのは、私の歩んできた道はジーザスのストーリーを彷彿とさせるからなんだ。人間としてではなくて、あくまで音楽としての話だよ。私は音楽的なレベルで、ジーザスがスピリチュアルなレベルで経験したことを経験していると思うんだ。おそらく私は音楽的レベルで、私の父が音楽のマスターであった(=キリストの父親が神であった)ということじゃないかな。昨日話したあとに考えたのだけど、自分が理解できることを、なぜ他人が理解できないのかをを理解するのは難しい。人々に、コピーをすることと、あれ、何だっけ、昨日すごく良い例を思いついたのだけど。そうだ、例えば私が設計図を作るとする。そこに誰かがやってきて、その設計図の写真を撮る。そしてその設計図を売って、お金を儲ける。しかし、その設計図を作ったのは誰だろう?設計図のコピーというのは、ただの紙切れでしかない。しかし、私が日々作るような、曲作りの基礎となる短い曲の断片である設計図そのものというのは、そうだな、例えば電球があるだろ。電球が発明されるまでに、どのくらいの時間を要したと思う?最初に電球を発明した人が現れるまでの時間、つまり何百万年、何億年もかかったということだ。では、その電球をコピーするのにどのくらいの時間が必要だろう?あっという間だよね(笑)。設計図を作れば、誰でも簡単にそれをコピーできる。誰かが音楽的なものを作り上げれば、「ああ、そんなの俺でもできるよ」なんて言い出す人間が出てくる。もちろん練習すれば、できるようになるだろうけれど、そんなことに何の意味があるのだろう?「俺でもできるよ」「俺はもっとうまくできるよ」なんていうことに、何か意味があるだろうか。人のコピーをして、素晴らしい演奏をしてみせるのが得意な人々というのはいる。それを発明した人よりも、うまく演奏してみせるケースもあるよね。でも、そういう人たちは、自分の音楽を演奏しなくてはいけないとなると、何もできない。

 

 

― 表面的なものになりますよね。

 

マイケル:そう、そこに中身なんてないんだ。自分で作り上げたことなんてないから、何も作り出せないのさ。自己表現というのは、そもそもなぜそれをやるのかということから作り上げるということ。もしそういうことをやったことがなければ、30年後になってもそれはできやしない。それに、もし頭の中が、他人の作ったアイデアでいっぱいになってしまっていたら、そこから逃れることはもはやできないんだ。すでにそれがハンディキャップとなって囚われてしまい、そこから出ることはできない。例えば、同じスケールを繰り返し弾いていたら、もうそこからは逃げられなくなる。だから、私は自分自身のスケールを作ることを好むんだ。たとえそのスケールから逃げられなくなったとしても、自分の作ったスケールなわけだからね(笑)。問題は、プレイをしている人物が何者なのか、何を求めているのか、ということ。初心者が私にアドバイスを求めてきたら、私はこう言うよ。まず、君が何を求めているのか。金持ち、有名になりたいのか。それともアーティストとして自己表現をしたいのか。これが最初に答えるべき質問だよ。その答えがわかれば、進むべき道がわかる。アーティストになりたいのなら、その方法は教えられる。それの意味することを教えることができる。なぜそれがとても楽しいのか。たとえ物質的に、トレンドを追っているだけのものよりもすぐに成功はできなくても、その瞬間の喜びを享受することができる。これは素晴らしい報酬だけれど、それを報酬だと感じるためには、それを感じられる状態にいなくてはいけない。お金持ちなって有名になりたいと考えているなら、それを報酬と感じることはできないだろうね。それはまた別のものだから。私のギターの弾き方というのは、砂場で遊んでいる子供のようなものさ。私自身は気づくことなく、何かを作り上げてしまった。そし、人々にそう言われて怖くなった。だから『Lights Out』が出て初めてのヒットになったとき、失踪したのさ。ヒットが出たことで、金の匂いを嗅ぎつけてくる人たちが現れた。工場にぶちこまれて、ものを作り続けさせられそうになった。私は自分がやってきたことをやり続ける必要があったから、すべてを捨てたんだよ。今はやりたいことは何でもやれる。もうやり残したことなんて何もないからね。もし望むなら、ジャズやゴスペルをやることだってできる。やりたいことは何でもやれるけれど、私が今やりたいのは、基本的に、面白いのはさ(笑)、『Strangers in the Night』のあとすべて一旦棚上げにしたことを、今楽しんでいるということだよ。当時棚上げにせず楽しみ続けることもできたであろうことを、棚上げにしたことで、現在の基盤を作り上げたのだと思う。そのことによって、私のヴィジョンが完成したのだから。もはや欲しいものは何もない。80年代風に振る舞うこともできる。こうやってサングラスを2つかけたり(笑)。スポーツカーでドライブすることもできる。だけど、そんなことはもはやどうでもいいんだ。大きい車でも小さい車でも関係ない。プレイするのが大きな会場でも小さなところでも関係ない。なぜなら、私はこういうことすべてを経験してきたから。どんなことにも適応できるのさ。お客さんが50人でも50万人でも良いんだ。これじゃなくちゃダメだということはない。私は何にも特別に依存していないからね。2万人の会場で30年、40年、50年とやってきていると、突然人気が下降してきた場合キツイだろう。ドラッグみたいなもので、中毒になるから。でも、私にはそういうことはない。私は何か特定のものに慣れてしまってはいないからね。素晴らしいことだよ、どんな状況も受け入れられるというのは。金持ちの男性と結婚した女性は、離婚するときに財産の半分を手にするよね。一度ぜいたくな生活に慣れてしまうと、それが忘れられなくなるんだ。長いことぜいたくしてそれに慣れてしまうと、簡単にはそういう生活を捨てられなくなる。以前よりも生活水準が下がることを恐れる。そして嘘の話を作り上げるようになる。どれだけクリックがあったとかさ。まったく無意味なことだよ。大切なことは現在さ。現在しかないのだから。80年代にどんな人間であったとしても、もはや今はその人間ではないのだからね。80年代に得たものを、今得られるわけではない。過去の記憶はあるかもしれない。だけど、それはただの記憶であり、今どういう人物かということではない。今君に起こっていることは3次元のことであり、どう感じるのか、外的に、内的に実際に何が起こっているのかであり、過去のことは幻想でただの記憶なんだ。アイスケーキを食べているときは、確かにそれはそこにあるだろう。だけど食べ終わったらさ、それはもはやケーキの記憶だろう(笑)?それはケーキじゃないんだ。つまり、結局は選択ということさ。それぞれにアイデアがあって、それは現在自分がどういう人間であるかに基づいている。誰も他人にはなれないからね。そして、その選択の結果が次のステップへとつながる。ハートはこうしろと言う。一方で頭ではこっちにしろと言う。ハートではなく、頭に従った結果、まったく間違った方向へと進んでしまう。ハートに従えば、本当に行きたいところの近くへと連れてってもらえる。ある方向は、誰かに競争へと駆り立てられ、「お前より俺の方が優れている」なんていうものかもしれない。そして、どんなにつらかろうが、すぐに大金を稼げることを知ってしまい、かつてのクラスメートと同じくらい稼いだぞ、こんなに大きな車を手にいれたぞ、ローンがあったって関係ない、これを手に入れられたんだから、なんてやっていると、結局は混乱を生み出すだけだ。こんな方向へ進んで、地獄を作り出しているだけさ。もう一つの方向は、基本的にパラダイスを作り出す。そこにあるものは、誰も奪うことができないものだからね。そこが一番大切なのさ。地震が起これば、すべてのものは崩れ去ってしまう。しかし私の内面にあるものは崩れはしない。大きな車、大きな家、口座に入っているお金。そんなものは消え去ってしまう可能性がある。すべてを失ってしまう可能性があるんだ。だけど、正しい道、間違った道があるというわけじゃない。すべては発見さ。すべての人は違っていて、すべての人はそれぞれのやり方で道を見つける。誰もが希望を持つチャンスを得るべきであり、その方法が1つしかないとしたら、それも正しいはずがない。私は人はみんな違っていると信じているし、自分たちで道を見つけるべきだと思っているから、私のようにやってみろとは人には言うことはできないんだよ。私にとって正しいやり方は、あくまで私にとって正しかったというだけのこと。山の頂上に達する道は、たくさんあるんだよ。森を通っていくのか、それとも岩を登るのか、あるいは水を超えていくのか。とにかく一番大切なのは、自分が創造したものに満足するということ。自分自身、自分自身が素晴らしいと信じていることを信じることが大切なのだから。他人から認めてもらうことなしにね。

 

文・取材 川嶋未来

写真 Yuki Kuroyanagi

 

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2019年9月20日世界同時発売予定

マイケル・シェンカー・フェスト『レヴェレイション』

【CD+Tシャツ】 GQCS-90733〜4 / 4562387209828 / ¥6,000+税

【CD】 GQCS-90735 / 4562387209835 / ¥2,800+税

【日本盤限定ボーナストラック3曲収録/日本語解説書封入】

 

【メンバー(予定)】

マイケル・シェンカー (ギター)

ゲイリー・バーデン (ヴォーカル)

グラハム・ボネット (ヴォーカル)

ロビン・マッコーリー (ヴォーカル)

ドゥギー・ホワイト (ヴォーカル)

クリス・グレン (ベース)

サイモン・フィリップス (ドラムス)

ボド・ショプフ (ドラムス)

スティーヴ・マン (ギター/キーボード)

ロニー・ロメロ (ゲスト・ヴォーカル/レインボー, DESTINIA)

 

【CD収録予定曲】

  1. ロック・ステディ
  2. アンダー・ア・ブラッド・レッド・スカイ
  3. サイレント・アゲイン
  4. スリーピング・ウィズ・ザ・ライト・オン
  5. ザ・ビースト・イン・ザ・シャドウズ
  6. ビハインド・ザ・スマイル
  7. クレイジー・デイズ
  8. リード・ユー・アストレイ
  9. ウィ・アー・ザ・ヴォイス (feat. ロニー・ロメロ / レインボー, DESTINIA)
  10. ヘディッド・フォー・ザ・サン
  11. オールド・マン
  12. スティル・イン・ザ・ファイト
  13. アセンション

《日本盤限定ボーナストラック》

  1. ドクター・ドクター (ライヴ)〔2017年10月15日 LOUD PARK 17公演〕
  2. アソート・アタック (ライヴ)〔2017年10月15日 LOUD PARK 17公演〕

16. ザ・ビースト・イン・ザ・シャドウズ (feat. 高崎晃 / LOUDNESS)

 

マイケル・シェンカー・フェスト 特設サイト

http://wardrecords.com/page/special/msf_revelation/

 


 

MSG 40th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE

MICHAEL SCHENKER FEST

Revelation Japan Tour 2020

 

【ジャパン・ツアー・メンバー】

Michael Schenker – Guitar

Gary Barden,  Graham Bonnet,  Robin McAuley,  Doogie White – Vocals

Steve Mann – Guitar / Keyboards

Chris Glen – Bass

Bodo Schopf, Simon Phillips – Drums

 

【東京公演】

Day1 2020年3月10日(火)東京国際フォーラム ホールA

Day2 2020年3月11日(水)東京国際フォーラム ホールA

【大阪公演】

Day1 2020年3月12日(木)大阪 Zepp Namba

Day2 2020年3月13日(金)大阪:Zepp Namba

OPEN 6:00PM / START 7:00PM

 

★一般発売情報詳細は近日発表

(問)東京音協:03-5774-3030