ドイツのヘヴィ・サイケデリック・バンド、カダヴァーが初の日本上陸を果たした。
ドゥーム・メタルの生ける伝説ジ・オブセストとの“DOOM IS THE LAW”と題されたライヴ・イベント。2日間のライヴでセットリストを大幅に変えながら、会場を埋め尽くした観衆を汗だくにさせた。
2日目のライヴは初期のハード・ナンバー「Creature Of The Demon」からショーに突入。怒濤のファズ・サウンドが襲う。ここは2020年の東京なのか1968年のサンフランシスコなのか。往年のブルー・チアーもかくやという轟音の雪崩は、続く「イントゥ・ザ・ワームホール」のタイトルの如く、時空の磁場を狂わせていく。
ヘヴィなサウンドとアシッドなトリップ感で脳を侵す彼らの音楽性だが、ステージ上ではヘヴィ・メタルやハードコア・パンク的な鋭いエッジを交えながら、さらにズシンと重量感を増す。
ルーパス・リンデマン (ヴォーカル、ギター)、タイガー・バーテルト (ドラムス)、シモーヌ・ブートルー (ベース)の振り乱す長髪・ヒゲ・胸毛と、おびただしい体毛に覆われたビジュアルがアニマル感をかき立てる。カダヴァーKadavarというバンド名は死体cadaverの綴りをヒネったものだが、殺しても死ななそうな生命感を放つライヴは、会場全体にエネルギーを脈打たせていた。
ルーパスがギブソンSGでドゥーム・リフを弾くサウンドはブラック・サバスを根っこにしながら、より奔放で開放感を伴うものだ。バース・コントロールやナイト・サンなど、往年のジャーマン・ハードを彷彿とさせながら、ベーシックなトリオ編成で奏でるオーガニックなヘヴィ・ロックはタイムレスなロック魂を揺さぶるものだった。
ファースト(2012)からの「ブラック・サン」、セカンド『アブラ・カダヴァー』(2013)からの「カム・バック・ライフ」など、初めての日本お目見えに相応しくバンドの歴史を網羅したセットリストで臨んだ今回のライヴ。5作目となる最新アルバム『フォー・ザ・デッド・トラベル・ファスト』(2019)から演奏されたのは「ディーモンズ・イン・マイ・マインド」のみという構成だったがデビュー以来、決して大きな音楽性のシフトを経ていないバンドゆえ、結成10年の軌跡がひとつの音の塊になって覆い被さってくる。随所でジャムを交えたロング・ヴァージョンにしながら最後、ファーストからの「All Our Thoughts」に至るまでほぼ1時間近く、観衆をうねりに巻き込むライヴは船酔いすら催させるものだった。
フル・セットでないとはいえ、鮮烈なインパクトを残した初来日公演。トリのジ・オブセストが出てくる前に完全燃焼してしまい、喫煙所にうずくまる観客もいたが、次回はヘッドライナーとして日本のオーディエンスを完膚無きまでに叩きのめして欲しい。カダヴァー伝説の序章を実感させるライヴだった。
文:山崎智之
【Setlist】2020/01/18 東京・渋谷GARRET
- Creature of the Demon
- Into the Wormhole
- Black Sun
- The Old Man
- Demons in My Mind
- Die Baby Die
- Come Back Life
- All Our Thoughts