スウェーデンのオーペス、17年のラウドパーク以来2年ぶりとなる来日公演。場所は Zepp Tokyo 。15年のEX THEATER ROPPONGIで行われた単独公演は正直厳しい入りという感触であり、ヨーロッパとの人気格差を感じたものだが、今回は場内ビッシリの満席。ここ日本におけるオーペス人気も浸透してきたということであろう。開演時間になり、ニュー・アルバム『イン・カウダ・ヴェネノム』のオープニング・ナンバー、「Livets Trädgård」のイントロが流れ始めると、場内は真っ暗に。「本日は演出の都合上客電を完全に消す」という注意書きが貼り出されていたが、手元がまったく見えないほどの暗さだ。
メンバーが続々と現れ、アルバムの流れそのままに「Svekets Prins」へ。青いライティングが実に幻想的。場内を真っ暗にした理由は、このライティングの効果を最大限にするためだ。続いては、01年の名作『Blackwater Park』のオープニング・ナンバー、「The Leper Affinity」。デス声もフィーチャした、ところどころヴォイヴォドを思わせる10分超の大作。キメに同期したライティングが視覚効果を煽る。そして再び新作へと戻り、「Hjärtat Vet Vad Handen Gör」。わずか3曲が終了した時点で、すでに30分を思いっきり超えている。もしオーペスを知らない人がこのショウを見たのなら、ここまでに何曲プレイされたのか、絶対にわからないだろう。そのくらい曲は長大で複雑に入り組んでいる。サイケデリックなライティングが実に美しく、ときにメンバーはまるで影絵のよう。
3曲MC無く淡々と進んできたので、徹底的に幻想的に行くのかと思いきや、ここで一転。「今日はレコファンに行きたかったのだが、行けずに残念。でも店長がレコードを持って来てくれたんだ」と、レコード・コレクターらしいミカエルのMCに場内は一気に和やかな雰囲気に。続いては05年の『Ghost Reverie』から、「Reverie / Harlequin Forest」。これも12分を超える大曲。こんな大曲すぎる大曲を一気に聴かせてしまうのだから、オーペスの才能には驚かされるばかりである。で、またまたMC。「俺が帽子をかぶっているのはリッチー・ブラックモアの真似だ。リッチーみたいにプレイはできないけど、格好だけは真似できるからね。そうそう、この間レインボーと一緒にプレイしたんだ。で、リッチーと一緒に写真を撮れるんじゃないかと期待したんだけど、ダメだった。俺たちのことを気に入らなかったみたいだよ」というミカエル・ジョークに場内は爆笑。
「奇妙(odd)な曲をやる」とプレイされたのが、「Nepenthe」。11年の『Heritage』収録のナンバーだ。一般的な基準からすると、オーペスの楽曲はどれも「odd」であろう。その中でもミカエルがわざわざ「odd」と表現するだけあり、これは非常に不思議な聴感を持つ曲だ。「次回は東京、大阪以外でもプレイしたいな。レコード屋に行きたいから」と、またまたレコード・コレクター・ジョーク。ミカエルってこんなに喋るタイプだっただろうか。続いては14年の『Pale Communion』から「Moon Above, Sun Below」。これも10分超のナンバー。ここまでわずか6曲で、すでに1時間が経過。
先ほどのリッチー・ブラックモアの話に続いて、今度はディオが話題に。ラウドパークでプレイした際に、ディオと飲む機会があったらしい。ディオは本当に人格者で、彼がこの世を去った日は非常に落ち込んだそうだ。そんなディオの思い出話にふさわしい「エモーショナルな曲」ということで、03年の『Damnation』から「Hope Leaves」。「ぜひ一緒に歌ってくれ。歌詞を間違えたらつまみ出してもらうけど」とも言っていたが。しかし、さすがにオーペスの楽曲となると、一緒に歌っている(歌える)人はほとんどいなかったのではないか。参加するより完全に傍観者として見る、実にプログレらしい雰囲気のコンサートだ。「音数が多いから、このホールではどんな風に聴こえるかわからない」という紹介でプレイされたのが、08年の『Watershed』から「The Lotus Eater」。「速いからみんなシートベルトを締めておけよ」というミカエルの警告通りの、ブラストビートを含むナンバーである。
「悪いニュースだ。次が最後の曲」というMCに続いては、先週末ファイナルツアーを終えたスレイヤーに関する時事ネタ。「トム・アラヤみたいなスクリームはできないから、カバーはやらないよ。むしろ『Angel of Death』とは対極にある曲だ」、ということで、再び新作から「Allting Tar Slut」。「俺たちがニュー・アルバムをリリースするのは、ツアーをやるためさ。中には解散するといってツアーをし、翌週に再結成をするバンドもいるけどね。」というミカエルに対し、客席からは「モトリー・クルー!」の声が。だがミカエルは、「俺はモトリー・クルーは好きだよ。一番好きなバンドではないが、彼らはいないよりいてくれた方がいい」と擁護に回る。ここで本編終了。わずか9曲だが、すでに100分!
アンコールは前作のタイトル曲「Sorceress」でスタート。オーペスにしてはコンパンクトな、しかしドヘヴィなナンバーだ。90歳になるというキーボーディストのお父さんへのハッピーバースデー・コメント動画撮影を挟み、最後を締めるのは「Deliverance」。13分超、オーペスの真髄が詰まった壮大な楽曲で、2時間に渡るオーペス劇場は幕。本当に濃密な、圧巻としかいいようがない内容であった。一般的には「難解」と言えるような音楽をプレイするバンドが、Zepp Tokyoをいっぱいにできるなんて、実に素晴らしいことではないか。終演後のミカエルも、実に上機嫌な様子であった。
文 川嶋未来
写真 Aki Fujita Taguchi
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Setlist
- Livets trädgård
- Svekets prins
- The Leper Affinity
- Hjärtat vet vad handen gör
- Reverie/Harlequin Forest
- Nepenthe
- Moon Above, Sun Below
- Hope Leaves
- The Lotus Eater
- Allting tar slut
Encore:
- Sorceress
- Deliverance
オーペス『イン・カウダ・ヴェネノム』
【帯付き直輸入2枚組LPレコード(スウェーデン語ヴァージョン) 】
WRDZZ-923 / 4,950円(税抜 4,500 円)
【2枚組LPレコード収録曲】
[SIDE A]- Livets Trädgård
- Svekets Prins
- Hjärtat Vet Vad Handen Gör
- De Närmast Sörjande
- Minnets Yta
- Charlatan
- Ingen Sanning Är Allas
- Banemannen
- Kontinuerlig Drift
- Allting Tar Slut
【メンバー】
ミカエル・オーカーフェルト (ヴォーカル/ギター)
フレドリック・オーケソン (ギター)
マーティン・メンデス (ベース)
マーティン・アクセンロット (ドラムス)
ヨアキム・スヴァルベリ (キーボード)
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