Slayerのケリー・キングによる新バンドのヴォーカリストを務めるDeath Angelのマーク・オセグエダ。一体彼はどのようにして、その座を射止めたのか。マークにバンド加入の経緯、そのヴォーカル・アプローチなどについて聞いてみた。
― ケリー・キングのバンドのヴォーカリストに選ばれた経緯はどのようなものだったのですか。
マーク:Slayerが終わるという話を聞いた時、ケリーは音楽をやめる意図はなく、新しいバンドを始める予定だということも聞いていたんだ。ケリーと俺は長いつきあいなので、メールを送ったんだよ。新バンドをやると聞いたけれど、俺も加えてくれないかって。まあヴォーカリストとしての俺の喉が、そのポジションを欲していたのさ!だけど、彼からの返信は、「うん、まあ…」なんていう調子でね。「確か彼の頭には何人か候補がいたはずだよな」なんてことが脳裏をよぎって。とりあえず俺は心に余裕を持って、「リード・ヴォーカルのポジションは必ず俺のものだ」という考えに集中した。その時点でケリーはまだ誰にヴォーカルを任せるか、決めていなかったのさ。そこから長いハードワークが始まった。ケリーがギターだけの曲のアイデアを送ってくるようになってね。それからドラム入りのデモが来て、そして歌詞とメロディ用のガイド・ヴォーカルが来た。俺は全力で歌詞とメロディを覚えて、それらを自分のものにしていった。さんざん練習して習得したんだ。その後、ケリーと何度かリハーサル・スタジオで会い、ヴォーカルをデモ録りして、彼やポールとジャムをしたりもした。その頃、もうバンドのメンバーは決まっていたんだ。ヴォーカリスト以外。つまりその時点でも、俺がヴォーカリストだと決まった訳ではなかった。俺は自分たちで作ったデモを聴き返して、どんな改善ができるかを考え、頑張り続けた。あの頃ケリーと会うことも多かったな。彼とはとても気が合うのだけれど、この時はさらに絆が深まったよ。俺は彼の仕事に対する姿勢を本当にリスペクトしているし、彼も俺の努力を見てリスペクトしてくれていたに違いないと思う。だけど、それでもまだ俺が採用されたという確証はなかった。数年間色々とやりとりをして、一緒に作業をしたあと、ケリーにラスヴェガスに誘われたんだ。NFLを見に行こうって。ヴェガスについたのは試合の前日、2023年2月4日のこと。彼はテキーラを何杯かあおったあと、俺を見てこう言ったんだ。「さて、もしこの仕事が欲しいのなら、君のものさ」って。俺は「ファック・イェア!もちろん!」と答えた。彼をハグし、テキーラのグラスで乾杯して、ついにバンドの最後のピースがハマったという訳。そのピースは、俺だったのさ。
― その時の気持ちはどんな感じでしたか。
マーク:本当に興奮したよ。アドレナリンが吹き出して、気持ちが燃え上がった。何年にも渡るハードワークが、俺にこのポジションをもたらしてくれたことはわかっていたし、そのハードワークがほんの始まりでしかないこともわかっていた。ケリーには、彼が正しい選択をしたとずっと思ってもらいたいからね!今でも興奮して、アドレナリンが止まらないよ。
― 本作でのヴォーカル・アプローチはDeath Angel時と大きく異なっているように思います。ケリーから、具体的な指示などはあったのですか。
マーク:ケリーはどういうものが欲しいのか、明確にわかっていて、それは彼のガイド・ヴォーカルがはっきりと示していたよ。とてもアグレッシヴでね。だから、俺はただ彼の欲したアグレッションを最高のレヴェルで、そして彼の欲した激しさをさらにもう1ランクアップさせて提供したかっただけ。2人でデモを分析して、どこを残し、どこを変えるべきかを検討した。ヴォーカルのレコーディングが始まった時点では、十分に準備ができていたということ。スタジオでは俺とケリー、(プロデューサーの)ジョッシュ・ウィルバーみんなで、ケリーが頭の中にあった激しさを俺から引き出そうと、一緒に頑張ったんだ。
― トム・アラヤを思わせるパートもありましたが、意図的に彼に寄せた部分はあるのでしょうか。
マーク:いや、トムのように歌おうという意図はなかった。もちろん彼のアイコニックな声はリスペクトしているし、それは過去も未来も変わらない。だけれど、俺は俺だからね!俺はこれらの曲に、自分のヴォーカルというスタンプを押したかった。それこそがどんな場合でも俺が取るヴォーカル・アプローチ。俺には自分のヴォーカルのアイデンティティがあって、それを見つけ確立するために、生涯かけて頑張ってきた。とは言いつつも、自分が作り上げたスタイルを拡張すること、ヴォーカル的にやれることを増やすことはやめないけれどね。このバンドはまだ始まったばかりなのさ。
文 川嶋未来
【CD収録曲】
- ディアブロ
- ホエア・アイ・レイン
- アイドル・ハンズ
- トロフィーズ・オブ・ザ・タイラント
- クルーシフィクセイション
- テンション
- エヴリシング・アイ・ヘイト・アバウト・ユー
- トキシック
- トゥー・フィスツ
- レイジ
- シュラプネル
- フロム・ヘル・アイ・ライズ
【メンバー】
ケリー・キング (ギター)
マーク・オセグエダ (ヴォーカル)
フィル・デンメル (ギター)
カイル・サンダース (ベース)
ポール・ボスタフ (ドラムス)